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とある緋弾のソードアート・ライブ

作者:常盤赤色
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第五話「士織ちゃんの受難」

 その人物は「美しい」と「可愛い」の両方を兼ね備えていた。
 
 流れる青がかかった黒色の長髪からは朝日を反射する水滴のように神秘的な輝きを放ち、ほのかに香る椿の匂いがステージ裏のスペースに吹き抜けた風によってなびいた髪とともに辺りに広まる。

 その唇はほのかなピンク色をし、静かな華やかさを備えた一対の瞳と共にナチュラルメイクが施された顔に不思議な色香と魅力を感じさせた。

 年頃の少女の身長にしては長身な彼女だが頭につけた青いカチューシャには花が、ヘアピンには小さなクローバーの飾りが付いており、身に纏ったプリンセスドレスとその端正な顔立ちも相まって、その可愛らしさ、そして美しさを際立たせていた。

 正に今蕾を開いたばかりの花のような少女だった。「美しさ」「可愛いさ」の中間的にいながらその両方を持っているような。彼女を見れば10人が10人、紛れもなく美人、もしくは美少女と答えるだろう。

 そんな周りを魅了する華やかな見た目とは裏腹に、彼女の気分は憂鬱そのものであった。
 何故こんなことになってしまったのだろうか。 彼女はステージ裏の準備スペースで悩み、そして後悔していた。

 場の雰囲気に乗せられて即座に断らなかったからだろうか。それとも「嫌だ」という気持ちを相手に伝えなかったからだろうか。

 …………いや。あの状態ではどんな手を尽くしてもこの結果は避けられなかっただろう。多勢に無勢という言葉があるが、あそこでは何かもっと恐ろしい物の片鱗を味わった気がした。

 女子とは恐ろしいものだ。「おもしろそうなこと」を見つけた時の彼女たちの行動力はそれは凄まじいものがある。

 純粋な気持ちは、それがどんな物であろうと巨大な力を生み出す。それを改めて再確認することとなった。本音を言うとこんな形で再確認するとは毛頭思ってなかった

 そんな事を考えながらもう一度自分の服装を見、彼女──いや彼はあれから何度目か分からないため息をほぼ無意識につく。

──事の発端は今から30分ほど前に遡る。











 日本には古来より「男の娘」というジャンルが存在する。

 「男」の「娘」と書いて『おとこのこ』。『おとこのむすめ』という読み方も出来るが、一般的な読み方はそうではないので注意して欲しい。

 これは近年作られた造語で、生物学的には男でありながら、女子のように可愛い外見を持つ者、それも女性と言われても違和感の無いレベルの者を指す。また、女装の完成度が異様に高いことでその他の人物の性別の判断を狂わせる男性も、これに値いするだろう。

 明確な発祥の分からない言葉であるため、その定義は曖昧である。例えば、この言葉に当てはまる年齢の大半は10代前半かそれ以下の少年、いわゆる「ショタ」だが、10代後半からそれ以上の年齢の「男の娘」も、もちろん存在する。人によってその判断基準は様々だろう。

 昨今の妄想力逞しいオタク達によって生み出されたこの言葉だが、意外にもその起源は古い。有名な物では日本最古の歴史書である「古事記」に記された英雄、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)による熊襲武尊(クマソタケル)兄弟の暗殺劇がある。

 古事記によると景行天皇の皇子である彼──もしくは彼のモデルとなった人物──は、女装し、宴会をおこなっていた熊襲兄弟の寝所に忍び込み、そのまま色仕掛けでこの2人と接触。そして油断した2人を隠し持った武器で討ち取ったのである。その際に「タケル」の名を熊襲兄弟の弟の方、タケルより献上されたと記述されている。

 他にも日本には武蔵坊弁慶を討ち取るために女装した牛若丸、南総里見八犬伝の犬塚信乃と犬塚毛野などの例がある。海外の伝記や神話にもその例は尽きないと言えるだろう。

 このように女装した美男子「男の娘」という創作のジャンルは古来より世界中に存在していたと言えよう。











「──あのー。ちょっと君いい?」

 その時だった。士道がそう話しかけられたのは。

 声の主を探す為振り返る士道と美九。

 そこにいたのは1人の女性。士道より頭一つ高い、令音と同じくらいの年代の女性だ。長い髪を背で無造作に一纏めにしており、その顔にはマンガに出てくるようなグルグルとした模様が浮かんだ、牛乳瓶の底のようなレンズの眼鏡を付けていた。

 眼鏡だけではなく、スタッフ用の制服も袖やズボンの丈が明らかに短い。そもそも服がまったく着こなせてない。元は良さそうなのに、こういうのを残念美女というのだろう。

「…………あのー。なんでしょうか」

 妙に鼻息の荒いことに引きつつも、律儀に返事をする士道。美九も「こんにちわー」と挨拶をしている。こちらはあまり引いてはいないようだ。

「────いい」
「は?」

 眼鏡と伸びた前髪で見えない表情から放たれた言葉に思わず眉を寄せる士道。相変わらず鼻息は荒く、そろそろ警察に連絡されても仕方なさそうな状態だ。いや。学園都市に警察はいないので風紀委員か警備員だが。

「──うん!君なら文句は無いだろう!」

 女性はそう言うと周りの誰も反応できない──こういうのを正に「刹那」というのだろう──速さで手を伸ばし、当人、つまり士道が掴まれたことに気づかないほどの微妙な力加減でで士道の両肩を掴んだ。

「へっ」

 刹那、女性の小脇に士道は瞬間移動していた。速い。何が起こったのか、自分がいつ地面に平行になったのかも分からなかった。というかまるで状況が読めずきょろきょろと視線を周囲に巡らせる士道。

「はいレッツゴー!!」

 そして女性は小脇に士道を抱え、そのまま駆け出す。

「え、あ、ちょ!?」
「だ、だりーん!?」

 状況が飲み込めないまま攫われる士道。美九もそれは同じで呆然と士道が攫われるのを見ることしかできなかった。みるみる美九の姿が遠ざかっていく。

「──貴様!シドーをどうする気だ!!」
「十香!」

 と、そのまま疾る女性の前に足止めするかのように立ち塞がる影があった。十香だ。どうやら事を察知し、引き返して士道奪還のため駆けつけたらしい。

 ヒールを履いてるにも関わらず音も無く、とにかくものすごい速さで向かってくる女性から士道を取り戻そうと構える十香。だが──

「あ、ついでにゲット」

 気がつけばスライディングしながら──滑り込むように十香は脇に抱えられ、そのまま士道と同じくように連れ去られていた。

「なっ……」
(な、なんという機動力……!)

 人知を超えた存在である精霊の十香ですら奇声を上げたそれに反応することができなかった。精霊以上の恐るべき機動力だ。

「あーさっきの子も捕まえてくればよかったけど……ま、いっか」
「このっ……!おい離せ!くそ!」
「ちょ、なんなんだよあんた!って力強いな!」

 小脇に抱えられた2人は必死にもがくものの、まるで脱出できそうにない。思春期の男子でそれなりに力もある士道はおろか、十香ですら何もできない始末である。
 
 後ろを振り向けば琴里や他のメンバー達が必死にこちらを追いかけている姿が見える。しかしあまりに女性が速いため、その距離はみるみる開くばかりである。

「こ…………のっ!」
「待て十香!鏖殺公(サンダルフォン)はやめろ!シャレにならん!」
「だが…………!」

 天使を使おうとする十香を慌てて止める。ここがいくら自分たちの住む街とは違うとはいえ、天使なぞを人に使えば、ややこしいことになるのは目に見えている。

 その様子を遠目に見ていた琴里は小さく舌打ちするとポケットから携帯電話を取り出し、緊急のコールをする。
 相手はもちろん、琴里たちの上空で待機している、フラクシナスだ。

「神無月、見てる?」
『はい司令』
「なら説明しなくても分かるわね。どんな手を使ってもいいわ。あの女を足止めしなさい──」

 こうなればなりふりは構ってられない。もしかしたらあの女性は士道と十香の「力」のことを知ってあの行動を起こしているのかもしれない。そうなれば──

 と電話で指示を出していた琴里だったが、ふと、ある物に気づく。

 ミーン・ストリートに並ぶ商店街の屋根の上。その上を何が疾る。

 人だ。

 士道と同じくらいの年代の少年だ。

 それが屋根の上を疾りながら、こちらへと向かってくる。遠目からでもその異常なスピードが見て取れた。思わず立ち止まりそうになる琴里。

 少年が走るその先にあるのは屋根の端。「ミーン・ストリート」と「キングダム・プラザ」。その境界線で屋根は途切れている。

 少年が屋根の上の最終地点に来た次の瞬間──

「はっ…………」

 飛んだ。

 飛んだのだ。

 跳んだ(,,,)のではない。飛んだ(,,,)のだ。

 琴里が素っ頓狂な声を上げるにも仕方ないだろう。少年は屋根の上から幅跳びのような体制で50メートルは離れていようこちらまで飛んでくるのだ。

 否。

 正確には。

「──何やってんだよ椿ーー!」
「あ、ソウちゃおごっ」

 士道と十香を脇に抱え疾走する女性に向かって。

 琴里がそれを理解したのは少年の蹴りが女性の顔にクリーンヒットした後であったという。


「お前は何をやっているんだ……」
「いやー。ごめんごめん。つい、理性のブレーキがはずれたっていうか……」

 椅子に座っている士道一行の目の前で、先ほどの女性が他の女性に正座させられ反省を促されていた。しかし頭を抱えるスタッフの女性に対し、加害者の女性はケロリとしている。反省してるかしてないかを見てくれだけで見れば、間違いなく「否」だろう。

「全く……お前は相変わらず…。一歩間違えたら警察に捕まってもおかしくないんだぞ。もう少し考えて行動しろ」

 そう言いながらため息をつく女性。話によるとこの女性はステージのキャストチーフらしく、ここの責任者としてキャストを纏める立場らしい。

「ホントめんごめんご。(みぞれ)ちゃんの助けになりたくてさー」
「お前は高校時代からそんな感じだな……君達、本当にすまなかったな。この馬鹿が迷惑をかけて」

 そう言って頭を下げるキャストチーフの女性。正座してる方の女性もそれに釣られて土下座する。

「ホントごめんね。この通り!だから許してくれない?」
「いや……まぁいいですけど」

 土下座して謝ってまで許さないほど、士道たちもしつこいわけではない。

 この場合、士道たちが一番危惧していたのは彼女たちがDEM社やASTの関係者ではないかというところだが、どうやらそれは無いらしい。まだ完全に可能性が消えたわけではないが、ひとまずここは安心していいだろう。

 士道が横に振り向くと琴里もそう判断したようだ。一旦、フラクシナスに通常通りの体制に戻るようにインカムを通して小声で神無月に伝える。

「──一つ聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「あ、イイよん──」
「お前は黙ってろ。ややこしくなる」

 琴里の問い掛けに答えようとしたのは白衣の女性だったが、それをもう一方の女性が止める。口を膨らまして不満を示した女性だったが「正座を解いてよし」と言われると、素直にそれに従った。

「なんで士道を攫おうとしたのかしら?」

 やはり、と士道は頭の中で呟く。そこばかりはちきんと説明してもらわなければ、この場にいる士道たちも、この一連の事態を見ているフラクシナスの職員たち全員も納得しないだろう。

「ああ、それ?それはね」
「お前は黙ってろって言っただろ」
「えー。私がやったことだよ?霙ちゃん、理由分かるの?」
「お前の考えなんて手に取るように分かるわ」

 再度のため息をつきながら女性は頭を掻く。

 ものすごい美人である。出るところは出て、しまるところはしまっているモデルも羨みそうなモデル体型は令音を彷彿とさせるが、こっちはもっと「できる女性」という感じを匂わせていた。雰囲気からして、さぞ部下に慕われ上司なのだろう。

 と、見惚れていることに気づいて慌てる士道。女性と一緒に旅行してるのに他の女性に見惚れるだなんて失礼にもほどがある。周りを見渡すが、誰も士道が女性に見惚れていたことには気づいてないらしい。とりあえず息を吐く。

「お前、今から始まるイベントの特別枠を探していたんだろう。大方私がいい奴がいないか、と言っていたのを盗み聞きしていたのだろう。で、その枠に良さそうな少年を求めて徘徊していた……違うか?」
「おお!流石霙ちゃん!あったりー!」
「はぁ……ステージ周辺に徘徊する怪しい女性がいるとお客様の方から目撃情報が来たから慌てて総司を急行させたが……予感が的中するとはな」

 どうやら、士道を攫おうとした女性は今から行われるイベントに士道を参加させたかったらしい。それなら口頭できちんと理由を話せばいいのに……。と一行の誰もが思っただろう。

「それなら何故士道を攫おうなどとした?しかも私まで」
「あ、それはね──」
「姉さーん」

 まるで女性の話を遮るように備品室に入る人物がいた。見れば先ほどこの女性を取り押さえた少年が扉を開け、中に入ってきた。
 超人的な身体能力を見せたこの少年──キャストチーフの女性の話によると学生のアルバイトで、能力者らしい。なるほど、学園都市の能力者なら先ほどの跳躍も納得できるだろう。士道たちはその説明に、なんの疑問も抱いていなかった。

 ──しかし一人だけ、妙な不安を頂いている人物がいた。本人もあまりに小さな違和感を気づいてない、が。

 それに気づかないことが後にどう影響するのか──この時点では誰も知らない。

「もうイベント始まりますよ」
「──ああ。そうだったな」

 腕時計を見て時間を確認してみると、確かにイベント開始まで残り10分を切っていた。彼女がキャストチーフである以上、これ以上ここにいるわけにはいかないだろう。

「すまない。これ以上は……」
「あの、最後に一ついいですかー?」
「む、何かい?」

 パイプ椅子から立ち上がった女性を机のちょうど正面に座っている美九が呼び止める。最後に一つだけ、質問があるようだ。

「イベントにおける特別枠ってなんですかー?」
「ああ、それか」

 そういえば女性が士道を攫った理由に「イベントの特別枠が──」という話があった。美九は恐らくそこが気になったのだろう。

「このイベント、パークを訪れたお客さんの中から一人、特別な衣装で参加してもらうというものがあるんだ。ところが今回はことごとく断られてなぁ……いくら困っているといえどこいつのような行動に出るやつはこいつ以外いないが」

 それで困って女性はあの様な行動に出たらしい。いや、それでもあんな行動を取るとは予想できないだろうが。

「そういうことだ。この話は──」
「──あの」

 ここで士道が言葉を挟む。一同の目が、士道に集まる。

「──よかったら参加しましょうか?」
「え!ホントもがふが」
「……いいのかい?」

 士道の言葉に反応した女性の口に手を被せながら、目を向けるキャストチーフの女性。士道はそれにうなづくと、他の皆にも同意を求める。

「別にいいよな?」
「うむ!シドーがいいというならいいぞ!」
「困ってるみたいですしね」
『士道くんの好きにしなよー』
「まったく、仕方ないわね……。別に時間が無いわけでも無いし。この後この埋め合わせができるなら、いいわよ」
「いいだろう。共通財産といえ、それくらいの自由なら許すくらいの器はある」
「同意。士道が参加したいのならそうすればいいのです」
「だーりんのカッコいい姿も見たいですもんねー」
「いざとなれば私の能力使えばいいもんね」

 皆、士道の考えに乗ってくれたらしい。顔をキャストチーフの女性に向け直すと女性は複雑な顔をしながら再度尋ねてきた。

「本当にいいのかい?」
「ええ、いいですよ」

 了諾の意を言葉で示す士道。他の者も──「仕方ない」という顔をしている者もいるが──全員、大丈夫のようだ。

「──いや、しかし」
「もー霙ちゃんしつこいぜい!本人が良いって言ってるからいいじゃん!」
「あのな──」

 なおも苦言を漏らすキャストチーフの女性。流石にここまで苦言を漏らすと何かあるのだろうか、と士道が勘繰る前に女性から再度同意を求められた。

「ねぇ、いいんでしょ?」
「え。はい」
「……分かった。ではお願いするよ」

 そう言った瞬間、士道と十香を攫った方の女性がものすごい勢いで部屋を飛び出て行った。先ほどといい、精霊である十香達も唖然とするものすごいスピードだ。

 と、十秒もせずに、部屋に戻ってきた。戻ってきたのだが。そこには一つ違う点が。

「…………ぁあれ?」

 もしかして自分はものすごい思い違いをしていたのではないか。自分が選択したそれは、もしかしたら途方なく悪手なものだったではないのか。なんて考え出す士道。頭の中に警戒音が鳴るというのはこういうことなのだろう。

 女性が先ほどと違う点──それは彼女が先ほどは無かったドレスを手に持っているからである。

「あ、あの…………それは?」

 恐る恐る尋ねる。どうかこの嫌な予感が的中しないで欲しい。これを自分が着る、などという予感など、当たるわけがない。そう思いたい。

 しかし現実は無情だった。

「やだなぁ!君がこのコンテストで着る衣装だよー!私の五日間徹夜の自信作!」

 死刑宣告とは、なにも首吊りや電気椅子だけではない。精神的に大きなダメージを負わせるものも充分に該当するだろう。

「…………あ、あの」
「──やはりこのことを知らずに了諾したのか」

 少し涙目で顔を向ける士道に、女性は半分呆れ気味に応えた。

「うちのは少し特殊でね……このイベントでは毎日、誰か一人でも女装のお客さんを出すことになっているんだ」
「そ、それって……」
「このイベントの特別枠とは、ようは女装枠のことだよ」

 途端に横から異様な視線を感じ、身震いする士道。

「み、美九?目が怖いぞ……」
「また士織ちゃんが見れるとは……わたしも付いてますねー」

 異様な雰囲気を察して動こうとするも、後ろから2人のスタッフに羽交い締めにされる。

「ほらほら移動するよー。ソウちゃんそっち持って」
「あいあい」
「ちょ、ちょっと待ってください!服のサイズとか化粧とかどうするですか!?」
「んー?どっちも学園都市の科学力でどうにでもできるから心配しないでー」
「いや!そこのところを詳しく……」
「安心しなさい。士道君のあられもない姿はちゃんとデジカメに押さえておくから」
「私、家宝にしますー!」
「いやしなくていい──ちょ、待っ、待ってぇぇ!!」

 そのままズルズルと連行されていく士道を見ながら、琴里たち──十香と八舞姉妹はいきなりの展開にキョトンとし、四糸乃はこの事態に少しオロオロとし、よしのんと七罪は士道の不手際に心の中で笑い、美九は高揚した顔をし、琴里呆れかえり果てていた──は席への移動を始めた。

「さ、士道の勇姿を見に行くわよー」

 後は言わなくても舞台裏にいる美少女までのプロセスは分かるだろう。

 ──かくして、学園都市に謎の美少女「五河士織」が初上陸したのである。





第五話「士織ちゃんの受難」 完
 
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