ドリトル先生と学園の動物達
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第六幕その三
「寒くて氷に覆われていて港もないからね」
「ああ、普通の船もね」
王子もそのことがわかりました。
「行き来出来ないね」
「だから日本では自衛隊が特別な船を持っているんだ」
「南極に行く船を」
「うん、それに乗って行くんだ」
「そうなんだ」
「だからね」
それで、というのです。
「あの場所には滅多に行けないんだ」
「先生も行ったことがない位に」
「一度行ってみたいけれどね」
それでもなのです、先生も。
「縁がなかったから」
「行くことがなかったんだ」
「そうなんだ、とにかくね」
あらためて言った先生でした。
「南極は他の場所とはまた違うんだよ」
「船にしても」
「そうだよ、あそこはね」
南極、そこはというのです。
「だからこそ行きたいとも思っているんだけれど」
「縁がないから」
「まだ行けていないんだ」
先生も残念そうです、そうしたお話をしながら。
ヒョウアザラシは虫歯がないので先生の今回の診察の相手ではありません、それでヒョウアザラシに別れを告げて。
ゴマフアザラシのコーナーに行きました、こちらのアザラシはです。
とても大人しいです、それで動物の皆も笑顔でお話するのでした。
「このアザラシはね」
「うん、大人しいしね」
「優しいし」
「安心出来るよね」
「そうそう」
「ああ、ヒョウアザラシさんのところに行ったんだ」
ゴマフアザラシは皆の言葉からそのことを察して言いました。
「あのアザラシさんはね」
「そうそう、怖かったよ」
「猛獣だったよ」
「お口も大きくて歯が鋭くて」
「危なかったよ」
「油断すればね」
まさにその時はだったのです。
「一緒にいた時にそうすればガブリ、ってやられて」
「終わりだよ」
「アザラシっていっても色々なんだね」
「怖いアザラシもいるんだ」
「そうだよ、けれど僕達はね」
ゴマフアザラシが言うにはです、見ればゴマフアザラシは他にも何匹かいて先生の診察をのんびりと待っています。
「あそこまではね」
「怖くないんだ」
「そうなんだ」
「うん、だからね」
それで、というのです。
「僕達については安心してね」
「そうさせてもらうよ」
「ここでね」
「それで先生のお手伝いさせてもらうから」
「このままね」
「そうしてね」
「ううん、君達もね」
先生が診察をしながら言うことはといいますと。
「虫歯が多いね」
「うん、それで痛くてね」
「困ってるんだ」
アザラシ達も先生に言います。
「それで先生が来てくれてね」
「本当に嬉しいよ」
「先生が名医なのは僕達も聞いてるから」
「頼むよ」
「ううん、僕が名医かはともかく」
先生は自分ではそう思っていないのです、それでそのことには自慢も嬉しがったりもせずにこう応えたのです。
「けれどね」
「うん、僕達の歯はね」
「かなり酷いんだ」
「抜かないといけない子もいるよ」
この子達もそうなのでした。
「麻酔があるから安心してね」
「うん、お願いするね」
「虫歯は大変だよ」
「一旦なったら治らないし」
「どんどん酷くなるし」
「そうだね、しかし」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
「君達もお菓子を食べたんだね」
見ればアザラシ達のお口の中にもお菓子の食べカスがあります、先生はその食べカスも見て言うのです。
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