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Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜

作者:黒米
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sin(罪)の厨房.4

.4
 お客さんの老夫婦は、笑顔で前菜を食べている。
その途中で、店の扉の鐘がカランと鳴った。
また、新しいお客様が見えた。
平泉はまた、お客様の座ったテーブルに水を注ぎに行く。
そして、今度はそのまま注文を取るとまた厨房へオーダーを告げる。
少し、厨房が慌ただしくなったように思った。
今度は平泉は、直ぐに机に料理の用意をしに行った。
机に並べられた、ナイフやフォークの種類が老夫婦の物と違う。
老夫婦の前菜の皿を下げに行った平泉は、そのまま先ほどの新しいお客様へと給仕に向かう。

さっきはあんなにゆっくり用意してたのに、今度は直ぐに出来たぞ!
賢太郎の不思議そうな顔を、相変わらずのニコニコの笑顔で見ながら、
平泉は小忙しそうに動く。だが、その動きに焦りや慌ただしさは微塵も感じられない。

新しいお客様はパスタと、肉のソテーを食べて帰った。
老夫婦は、コースを食べて帰った。
結局、その日はその後六組のお客様が見えた。

 平泉の動きは、滑らか以外の何とも表現できないほど、美しかった。
まるで、アイススケートを見ているかのようだ。

店の営業時間が終わって、皆が一息つき始める。
やっと1日が終わった。見ているだけで、疲れてしまう。
賢太郎がふーっと一息はくと、さっきの厨房の50歳くらいの男の人が話しかけてきた。

「よぉ!お疲れさん。どうだい?シェフ‥平泉のウェイターっぷりは盗めそうかい?」
賢太郎は平泉の動きを思い出しながら答えた。
「いえ、とてもあんな動きは簡単には盗めなさそうですよ。無駄がなくて、滑らかで、的確で…俺も早く身につけなきゃダメですね!」
そう答えると、男は大笑いしながら答えた。
「ハッハッハ、あの動きを身につけられれば店だって開けるさ!平泉は、たった一人で全てを始めたんだからな。」
「それにしても、シェフの皆さんも大変ですよね。何も言葉を話さなくても、平泉さんと連携が取れてるっていうか…」
「んー…ちょっと違うな」
「え?」
賢太郎が何が?という顔をしていると
男は続けた。
「シェフってのは料理長のことだ。シェフはこの店には平泉だけ。俺はスーシェフ、副料理長。他にもこの店にゃ、ソーシエ、アントルメティエ、ガルド・マンジェ、パティシエ、プロンジュール、そしてお前、ウェイターがいる。みんな料理は作るが、それぞれに役職がある。その最高責任者がシェフの平泉なのさ。」
「へ〜‥」

賢太郎が感心していると、平泉の声が店内に響いた。
「さぁ、皆さん!食事にしましょう。」
そう言うと、平泉は机に料理を並べ始めた。 
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