| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜

作者:黒米
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

ビストロと咎人.1

.1
 「俺はなにやってんのかな?」
「これから何やってきゃいいのかな?」
「俺ってなんなんだろう?」
 そんな事を考えながら、毎日天井ばかり眺めていた。他に何もやることがないからだ。
俺は「山田 賢太郎」何の変哲もない名前に、何の変哲もない生活を送っていた。
ちょっとしたトラブルを起こして今ココにいる。
ココとは、檻の中。そう、牢屋の中。
もう一年程経って、明日は仮釈放。
何の変哲もない生活を送って来たからか、ここでも、何の問題もなく毎日静かに目立つこともなく反省に務めた。
そうした勤勉さが認められたのだろう。
もちろん、この期間も気を緩めることなく勤勉に日常に励まねばならない。
「なに、そんなの今までと変わらないじゃないか。毎日、何の変哲もない生活をこれからも送ればいい」
その時はそう思っていた。実際そのつもりだった。前科こそあるが、探せば働く場所はいくらでもあるだろう。
しかし、その考えは僅かばかりの時間で消え去った。



 いよいよ、仮釈放の日。賢太郎は着替えと少し中身の入った財布とメモとペンと身分証を鞄に詰めて、刑務所を後にした。
明日からの食い扶持の為に、先ずはバイトでも何でも仕事につかねばならない。
しばらく食べては行けると思うが、どの道働かなければならない。
賢太郎は、求人表を手にしながら街中の「アルバイト募集中」のポスターにも目を留めた。
いくつかのバイト募集中の店をメモしながら、求人のある職場を探した。
「先ずは働かなきゃな」
賢太郎は求人表に載った職場の面接を転々と受けながら、一日回った。
その日は三社回って、内定通知を受けるまでに何日かかけて職を見つけるつもりだったのだ。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧