ザンネン6……何か悪いの?
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四話
「MJP機関、チームラビッツ。ウンディーナ基地での戦闘において多大な功績を
与えたことに対し、三等褒章を授与する。」
イズルの胸には、名誉の証である勲章が着けられる。
「・・・・・・。」
◇
「では。各社順番にご質問をお願いします」
その後ウンディーナ基地内にあるとある記者会見の会場では、この戦場を勝ち抜いた若きヒーロー達に対し、記者会見が開かれていた。
「では、まず伺いたいのですが……。あなた達は何ですか?」
「あの機体は?」
「GDFの秘密兵器ですか?」
最初の男の質問を皮切りに、次々に質問が飛びこんでくる。それも、答えにくい質問ばかり。
答えに困ったアサギは、困ったような表情でスズカゼの方を見る。答えても大丈夫なのかと伺うように。
アサギの様子を見たスズカゼは――
「彼らは、「グランツェーレ都市学園」に在学中の学生です」
彼らの代わりに答えることにした。
「所属は、MJP特務機関」
「MJPとは?」
聞いたことのない組織に、記者の一人が質問する。
「Military Junior Pre-Academy。将来の士官を育成する組織です。彼らが搭乗した≪アッシュ≫は、GDF最新鋭の機体ですが、詳細についてはお話できません」
半分真実、半分虚偽が混じった答えを返すと、ついでにと、≪アッシュ≫についても説明をする。
「グランツェーレ都市学園」の実態を教えれば、世界は大混乱に陥るだろうと予想したスズカゼの的確な判断である
え~。では、MJPの皆さんに改めて伺います」
スズカゼの説明を聞き終えた記者の一人が、改めて少年達に質問をする。
「この作戦を命じられた時の心境は?」
と、無難な質問がされた。
「はい!大変名誉なことだと……」
そこまで順調に答えたアサギだったが、突然言葉をつまらせ、何かを耐えるように顔をしかめる。
「アサギ?どうしたの?」
心配になったケイが声をかけると、アサギはつらそうに
「腹……緊張で……」
と言った。
つまり、いつもの緊張癖がこんなところで出たのである。
「他の方々は……」
「同じです」
他の全員にも同じ質問をした記者は、ケイの簡潔すぎる受け応えに、キョトンとしてしまう。
「タマキ」
「ほわぁ!?」
ケイが、イズルの左側に座るタマキに答えるように促すと、タマキは妙な声を上げて驚く。
何か言おうとマイクを取るが、手を滑らせてマイクが宙をまい、それを慌てて取ろうとしたが、そのマイクはタマキの頭に直撃してしまい、コーンという音を発してマイクが机の上に落ちた。
更にその左隣に座っているスルガは、机の下で密かに見ていたこの記者会見の様子を見て
「コメント数すげ~」
と呟いていた。
「お前も答えろよ」
この後も記者から様々な質問をされることとなり、彼らの心労がピークに達しそうになったが、その前に時間となり、記者会見が終了された。
会場から出て、疲れた表情を押し込めながら廊下を歩いていると、彼らを拍手で迎える集団がいた。
口々に「ありがとう」という感謝の言葉を言いながら出迎えた彼らは、ウンディーナ基地で見捨てられるはずだった民間人達だったのだ。
「……」
集団の中にいた少女が、手紙のような物を持ってマヤの元へ小走りに向かい、その手紙を直接手に渡す。
折角貰った手紙なので、マヤは手紙を開いて中を見ると、「ありがとう」という感謝の言葉が綴られていた。
これを見て不覚にも泣きそうになるが、それを誤魔化すようにその子の頭を撫でる。
それを皮切りに、次々と大人達がチームラビッツの元へ向かい、感謝の言葉と共に握手をしたり、抱擁をしたりした。
目の前の護れた光景に泣きそうになるイズル。それを茶化すが、言葉が若干震えているケイ。それを驚いた表情で見るタマキ。動揺した表情で皆からの感謝の言葉と行動を受け入れているアサギとスルガ。そして、頬に一筋の涙を流すマヤ。
この教え子達の光景を、スズカゼは微笑みながら見守っていた。
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