グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第15話:あの娘どこの娘この娘はアホの娘
(ラインハット城・コリンズ王太子私室)
ポピーSIDE
城外西側の草原で、兵士達が筋トレを行っていた。
何であんな場所でやってるのかは想像が付く。
リュリュが来たのだろう……そしてデルコの下へ行き『デルコさんお願い、私を強くしてぇン♥』ってな事を言ったに違いない。
んで、間違いなく拒絶され、悩んだあの娘は……
(バァン!!)「ポピーちゃん助けて! 誰も私に協力してくれないの!!」
ほら、ここに来た。
ノックもせずに、ラインハット王太子の私室へ押し入り、訳の分からん絶叫をする美少女リュリュ。
これでも私の妹なのよね。腹違いだけど妹なのよね……
「本当に来たよ……」
窓辺で佇む旦那は、呆れた口調でリュリュの訪れを嘲笑う。
「あ、また言われた。何なのそれ!?」
意味の解らないリュリュは不機嫌そうに言葉の意味を尋ねる。
だが私達は説明しない。
お父さんが事前に『多分リュリュが行くはずだから、相手にしないでね』と連絡をしてた事を。
お義父様もデール様も、勿論夫達も来るとは思っていなかった。
だが内容を聞き、私は100%来ると確信。
リュリュが頼りそうな人物の所に行き、事前にお父さんの意思を伝えておく。
言い換えれば“この件でリュリュに手を貸せば、リュカ陛下を怒らせる事になるぞ”と言う事を伝えておいた。
一応私はマーサお祖母様の所に行き、お父さんの意思を伝えようとしたが、既にお祖母様とリュリュのモンスターズの所には来てたらしく、がっちり連携はとれていた。
流石お父さん。二手も三手も先を行ってる。
しかもティミーからの連絡も先程あった。
『お前か、アレ教えたの?』と、私が教えた“おっぱい強調懇願”を苦笑いで責めてきた。
『危うく首を縦に振るとこだったよ(笑)』とMH越しに私の胸を見ながら。これはお前んじゃねーぞ!
「みんな酷いの! 私は強くなりたいだけなのに、誰も協力してくれないの!」
それだけじゃねーだろ。
醜く歪んだ恋愛模様が織り混ざってるだろ。
あぁ……リュリュじゃなかったら追い出してるのに。
面倒臭いわねぇ……変態な妹を持つと面倒臭いわねぇ~。
同じ変態でもフレイの様な大人しい変態は問題も少ないけど、この娘の様にアクティブな変態は始末が悪い。
「そう、可哀想にリュリュ……みんな貴女を見限ったのね?」
抱き付いてきたリュリュの頭を撫でながら取り敢えず話を合わせてみる。
でも、私だってお父さんを敵にしたくないから、結論は決まっているのだ。
「どうしよう……私どうすれば強くなれるかしら? 闘技大会で優勝したいのに、修行の方法が思い付かないの!」
この娘は素直で良い娘だ。だが素直すぎて基本的に受動的になる。
何かを考えても、行動する手段を思い付く事がない。
誰かに頼る事で解決に向かおうとするのだ。
だからお父さんの罠に簡単に嵌まってしまう。
代理で女王を務めてた時もそうだ……
国を変えなきゃならないと思っても、その方法を考える事が出来す、誰かに頼んで進もうとした。
カリスマはあっても王には向かない。オジロン大叔父様と同類である。
誰かが行動を決めないと動けない。
操ってくれる人形遣いが居ないと、動く事が出来ないマリオネットだ。
そのかわり素直で良い娘だから、行動が決まれば全力で頑張るから好感が持てる。
「貴女は女の子なんだから、そんな野蛮な大会で優勝しなくても良いんじゃないの? 強くなる必要はないんじゃないの?」
「何を言ってるのポピーちゃん! 大会で優勝すればどうなるのか知らないの? 凄いのよ、お父さんは凄い事を言ってくれたのよ!」
知らない訳ねーだろ。
もう大会出るの諦めろって言ってんだよ!
お前の変態祭りに付き合ってられねーんだよ!
「勿論知ってるわよ……お父さんからもお兄ちゃんからも連絡があったから」
「え……既に知らせがあったの? じゃぁお父さんが協力するなって言ってきたの? だからみんな私の姿を見て吃驚してたの!?」
「私と貴女のお父さんが、関係各所に何も知らせない訳ないでしょ。何があったのか、どんな結論になったのか、全部話してくれたわよ……で、みんな思ったの。『リュリュに協力するのは止めよう』って。お父さんが協力するなって言ったんじゃなく、状況を理解して各々結論を出したの」
「じゃ、じゃぁ……みんな私が間違ってる事をしてるって思ってるの?」
「逆に聞くけど、正しい事をしてるつもりなのリュリュは!?」
変態もここまで行くと匠の世界だ。自分を信じて突き進む……困ったわね。
「あ、愛が止まらないのよ……」
何が“愛が止まらない”だ……馬鹿な事を言いやがって!
“愛”って言葉で全てを片付けるんじゃない、“愛”って言葉は万能ではないのだよ。
「そう……貴女のお父さんを愛する気持ちは大きすぎるのね」
「わ、解ってもらえるポピーちゃん!」
解るか馬鹿……と言いたいけど、私もお父さんの事は好きだしなぁ……
「解るわよ勿論。でもね、本当にお父さんの事を愛してるのなら、誰かの力を当てにしちゃダメなんじゃないの?」
「ど、どういう事でしょう?」
「つまり……お父さんは貴女の“愛”を試したいのよ。誰かに強くして貰うのではなく、自身の力で強くなり闘技大会で優勝して貰いたいのよ! そうする事で『リュリュの愛は本物だな。これでは僕もリュリュの愛に応えなければ……』ってなるのよ」
ならねーよ! 自分で言っててツッコんじゃうけど、そんな事には絶対にならない!
「もしリュリュの修行に私が協力して、その結果大会に優勝できたとするわよ……それを見てお父さんはどう思うかな? 『確かにリュリュは頑張った……でも凄いのはポピーの協力だな』って思うんじゃないのかな?」
「そ、そうかもしれない……」
どうしよう……最近この娘が馬鹿なんじゃないかと思えるんだけど!
「ね、誰も貴女に協力しない訳が解ったでしょ?」
これで納得するなら、この娘はアホの娘決定だ。
「そっか……みんな私の事を応援してくれてたのね」
うん、アホの娘だ。
「でもティミー君は『僕に今すぐ処女くれたら協力する』って言ったわよ……あれってどう言う事?」
あの馬鹿そんな事言ったのか!
「アイツは例外ね……本心を言っただけよ。もう同じ遺伝子で出来てるんだから、お父さんの息子でも良いじゃないの。大会には出ないでティミーとヤっちゃえば?」
「な、何て事を言っちゃうのポピーちゃんでは! 私はそんな軽い女じゃありませン」
解ってるわよ……アンタは重量級のアホの娘よ。
「でも解った気がする。お父さんがこの大会で私に何を言いたいのかを……」
この部屋に押しかけた時は泣きそうな顔をしてたが、今は晴れやかな表情を振りまいてる。
チラッと旦那を見たが、案の定デレッとアホ面しくさってやがる。
(ピロン、ピロン)
そんなタイミングでリュリュのMHからコール音が聞こえてきた。
多分ウルフね……良いタイミングだ。
「は~いリュリュで~す」
取り出したMHから、ウルフの立体的ビジョンが浮かび上がる。
『あ、リュリュさん? 至急陛下の執務室まで来て下さい。何か用事があるってさ』
お父さんからの呼び出しって事は……アレね!
「は~い。直ぐに戻りますぅ」
そう言うとMHを仕舞いベランダへ向かって歩いて行く。
「じゃぁ私帰りますね。お父さんから呼び出されちゃったから♥」
他の奴がベランダに向かいながら同じ事を言ったら“そっちは出口じゃねーよ!”とツッコむのだが……
「じゃぁまたね」
「うん。色々ありがとうポピーちゃん……ルーラ!」
私もよく使用するからツッコむ事は出来ない。
便利なのよあそこ。
飛び去ったリュリュの姿を目で追いかけて思う……アホって幸せなのかもしれないわ。
ポピーSIDE END
後書き
次話もポピーとコリンズが出るよ。
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