Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜
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戦いの中で
前書き
どうも作者です。
なかなか毎日が忙しく、執筆する時間が限られてて辛いです。
時間を、時間をください〜。
「俺に……剣を教えてくれ」
瞬間、空気が静まり返った。いくら自分の武器を見つけたからといって勢いで言うもんじゃなかったか……?と少しビクビクしながらセイバーへと視線を向ける。
「セイ……バー?」
俺の肩に置かれた彼女の手が離れた。一体何をするのかと疑問に思ったその瞬間だった。パァンと俺の頭に衝撃が走る。
「いっ……たっ!!」
俺は頭を押さえ、しゃがみ込む。何が起こったか説明するとセイバーがただただ無言で俺の頭を叩いたのだ。あまりリアクションが大袈裟だと思われるが実際のところ威力は半端ではない。本人は軽く叩いたつもりかもしれないが、それに鎧の重さをプラスしたら軽い凶器のようなものだ。
「お前は莫迦なのか?いや、莫迦だな」
セイバーは特に怒気を荒らげることもせず淡々と話す。彼女の言う通り確かに莫迦な事だとは思うけどこれは俺なりに考えた答えだった。
「怒ると思ったけど意外と冷静だな…」
「別に良いのだぞ?怒っても。一応これでもかなり抑えているほうだからな」
俺は必死に首を左右に振り、止めてくれと懇願する。もしそれをやられるとこっちとしても精神的にも肉体的にも保ちそうにない。
セイバーはふん、と鼻を鳴らし、剣を床に刺し、腕を組んだ。
「やっぱり……ダメか?」
おずおずと聞くと、兜の中から大きな溜め息の音が聞こえてきた。
「剣を教えることについてはオレとしては一向に構わない」
その答えに若干の希望を持ったが、セイバーはそこで、だが、と付け加えた。
「それを教えたら、お前は何をするつもりだ?」
彼女の問いで全てを察した。セイバーは俺が剣を学んだその先何をしようとしているのか何となく分かっているのだ。正直に言うべきか迷ったが、パートナーである彼女に嘘はもうつきたくない。
「セイバーと一緒に戦う」
瞬間、
「いだっ!?」
セイバーが問答無用に俺の頭をまた叩いた。
「呆れを通り越して滑稽だぞ」
じんじんと痛む頭を摩る。俺は何かおかしなことでも言っただろうか?まぁ、言ったかもしれないが……それでも人としては立派なことを言ったつもりだ。
「死ぬぞ、お前」
セイバーが試すように俺に言う。死ぬ、そんなことはどの戦いにおいても同じだ。俺は立ち上がりセイバーに自分の覚悟を言い放つ。
「そんなこと分からないさ。ただ、俺は自分一人だけ傍観してるのが嫌なんだよ!」
セイバーは何も言わず黙って聞いている。内心向こうからしたら俺のこと幻滅してるのかもしれない。だけど、後には引けない。さらに俺は言葉を続けた。
「俺は死なない。どんなに辛くても、苦しくても、足掻いて足掻いて足掻き続けてやる!それで、最後までお前と生き残ってやる!」
決意の篭った言葉をセイバーにぶつける。少しの沈黙のあとセイバーは俯いた。彼女なりに迷っているのか、何も言わない。
「セイバー?」
「………なよ」
すると、セイバーがボソボソと答えた。が、なんて言っているのか聞き取れずなんて言った?ともう一度尋ねる。もう一度か細い声でセイバーが言うが何言っているか全然分からない。もう一度お願い、とお願いする。すると、火山の溜まりに溜まっていた火山の噴火のようにウガー!!とセイバーが吠えた。
「何度も言わせるな!!良いか?!その言葉忘れるなよ!!」
ハァハァと呼吸を荒立てるセイバー。初めの方はあっけらかんとしていた俺だったがすぐに言葉の意味を理解した。体から喜びが湧き上がり、そして。
「よっしゃぁぁぁ!!」
遂には声を上げてまでいた。嬉しかった。やっと誰かのために戦えることができる。歓喜に満ちている俺とは対照的にセイバーのテンションは冷めていた。
「どうしたんだよセイバー?」
「お前について一つ腑に落ちない点がある」
「……なんだよ」
「何があった?」
セイバーの言っていることがよく分からない。何があった?と聞かれては逆に何が?と聞き返す他ないだろう。俺は首を傾げそう彼女に言った。
すると、
「なぜお前自ら戦おうとする?危険をおかしてまで戦う意味はあるのか?」
セイバーの言っていることは正論だ。確かにわざわざこっちが危険を承知で戦う義理はない。それなのに俺が戦おうとする理由は一言で言うなればただの正義感だ。
女の子が傷ついて倒れる様を見ていられないと思ったのが一番の理由だ。しかし、これを本人の前で言ったら殺されること間違いないのでここは…。
「さっきも言った通り自分一人だけが傍観してるのが嫌になったんだよ。それに、セイバーの強さに憧れて俺も剣を使いたくなったていうのもある」
ということにしよう。
「やっぱりお前は莫迦だ。まったく……嫌なマスターと契約してしまった」
そこで大きな溜め息を吐くと、セイバーは剣を引き抜いた。
「行くぞマスター。時間が惜しい」
「お、おう!」
セイバーが前を歩き始め、俺もその後に続く。
今俺たちがいるのはアリーナの一角にあるフロアである。このフロアは他のエリアと違ってえらく自然的な造りだった。床はちゃんとした土で作られ、周りには岩場のような物が設置されている。背景こそは変わらないがここだけ特異な場所のような気がした。
なぜこのような場所にいるかは分からない。ただセイバーの後ろを付いて行ったらここに辿り着いていたのだ。
当の本人は周囲をチェックして、安全かどうかを確かめている。
それから数分後、彼女はここが安全だということが分かると俺を呼びつけた。
「どうしたんだ?」
セイバーの近くに駆け寄りながら言う。
「礼装を装備しろ」
何を考えているかは分からないが、とりあえず礼装を装備することにした。最初、どうやって礼装を出すのか苦労するも念じることで剣を出すことに成功した。
「よし、装備したな」
「一体何が始まるんだ?」
ふと疑問に思った事をセイバーに言ってみた。すると、呆れたと言わんばかりにこう返す。
「決まっているだろ。これから剣を教えるのだ」
そういうことか、と納得する。
「ところでセイバー、俺がこいつを持ってどうするんだ?素振りの練習でもするのか?」
「いいや、そうじゃない。これからお前はその剣でオレを斬ってもらう」
「ッ!?」
何を言ってるんだ。無抵抗のセイバーを斬りつけるなんてそんなこと出来る訳がない。そんな俺の気持ちを知ってか知らずかセイバーは言葉を続けた。
「言っておくが、オレも無抵抗ではないぞ。多少なりとも剣は使うが大体素手で戦おう。終わりはそうだな……オレの鎧にお前の刃を当てたらそこで稽古は終了ということにしよう」
そういうことなら安心した。一方的に斬りつけるのは俺も望まない。だが、セイバーが兜の向こう側からこちらをほくそ笑む様がどうしても浮かんでしまうのは気のせいだろうか。少しは剣を使うとは言え、素手で戦うとは俺に勝てる自信が相当あるということだ。
それはやっぱり悔しい。このまま馬鹿にされるのは悔しい。刀を持つ手に力が入る。
「分かった。けど、あまり俺を舐めるな。すぐにお前の鎧に俺の剣を当ててやるからな」
「随分と威勢の良いことを言うものだ。口先だけでないことを祈るぞ、マスター」
そう言葉を交わした後、俺はセイバーから距離を置いた。その距離大体二十五メートル。
この場が静まり返り、残るのは緊張した空気。俺は剣を持っていない方の手でゆっくりと柄を握る。セイバーもこちらに剣を構えた。あっちも準備万端のようだ。
「それでは……行くぞ!」
セイバーから放たれた言葉が開幕の火蓋となった。俺はすぐさま鞘から剣を抜き、セイバーに向かって走り出した。一方、セイバーも俺と真正面から戦う為、走り出す。
握る刀に力を込めながら目の前まで来ているセイバーに狙いを定める。幸いなことに向こうはまだ構えてすらいない。ちょうど刀の攻撃範囲内にも収まっているし狙うなら今だ。そう思い、俺は剣を縦に勢いよく振る。
しかし、それが彼女に当たることはなかった。
「ッ!?」
俺の振り下ろした刀は彼女の鎧の寸前の所でガチャガチャと音を立てながら止まっていた。最初、何が起きたかは分からなかったが自分の腕の感触ですぐに理解した。
俺の腕にはガッチリとセイバーの片手が握り締められていた。しかもこっちからどんなに力を入れても全く動かない程の腕力だ。つまり、剣は止まっていたのではなく止められていたのだ。このセイバーの腕力だけで……。
「やはり素人か……踏み込みが甘い。太刀筋も並以下。スピードも遅い。これではまともに戦うことすらできないぞ」
セイバーはそう言った瞬間、足を勢いよく振り払った。同時に、俺の視界がグラついた。気付いた時にはバタンと音を立てて俺は地面に倒れていた。動く暇もなく目の前に剣先を突きつけられ、なす術がない状況になる。これで一回勝負がつく。
「いてて……」
セイバーは自分の大剣を俺から退けるともう片方の手で手を差し伸べてくれた。
「足元がガラ空きだ。視野をもっと広くしなければ相手の攻撃に対応できんぞ」
悪い、と言いながら俺は差し出された手を掴んだ。なんとか立ち上がると、背中に付いた埃をある程度払う。
「さて、これで一回死んだな」
言葉のチョイスが些かアレだが、まぁ確かにこれが本当の戦場だったら俺は死んでる。彼女は剣を担ぎながら俺から離れる。ある程度まで距離をとると、俺へと視線を向けた。
「では再開するぞ」
なかなかハードな修行だ。相手が戦いのプロなだけにこっちの攻撃を簡単に去なしてくる。これは一筋縄ではいかない。俺は再び礼装の『守り刀』を装備し、構える。
死ぬ気でやるしかない。生き残るために。
「ああ、頼む!」
後書き
Extra にない要素を入れようと考えた結果、主人公が剣の修行に入りました。
うーん……なんか嫌な予感が……。
当初の予定では本編の主人公同様、直接の戦闘はせずサポートをするぐらいにしようと思っていたのですがあまり面白くない、と思ったのでこの路線で行きました。
後悔はしていない……たぶん。
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