英雄は誰がために立つ
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Life5 吃驚箱
「――――へぇー、つまり噂は本当だった訳か」
とある一室に、とある2人が居た。
1人は漆黒のローブに身を包み、模様どころか目や鼻や口のための穴すら開いていない純白の仮面を付けた怪人が、壁を背にもたれかかっていた。
もう1人は、青光りする黒髪の持ち主で、14、5歳位に見える端正な顔立ちの美少年が、木製の椅子に座り木製の机の上のノートパソコンに向かっていた。
「ああ。確かに歴代最強と言えるであろうな。あの分では、生命力を犠牲にする覇龍も膨大な魔力で補う事によって、普通に使えるだろうな。とは言っても――――」
「――――歴代に比べれば・・・・・・か」
美少年の答えに対して、無言の肯定をする怪人。
それは当然と言える。
確かに、あの歳からすれば数年後から十数年後には、恐ろしい位のレベルに育つことは間違いないであろうが、此処に居る2人・・・・・・?からすれば赤子も同然。
彼の無限の龍神や真なる赤龍神帝とも正面切って戦える存在なのだから。
「それにしても話を聞く限り、ずいぶんと感情的になっていたようだね?君にしては珍しく――――いや、僕が知る限り初耳だけど。あったんだね君にもちゃんとした感情が」
「――――それについては演技だ。心を籠められなくとも、知識はあるからな。故に別段、感情的になった覚えなどないが」
見た目的には年相応に友人をからかう様な表情を向けていた美少年は、対する怪人の答えに興味が消えたのか、「そうか」の一言で怪人に向けていた顔を液晶画面に戻した。
「言うなら、それにしてもは此方のセリフだ。ヒンドゥー教の三最高神の一柱がパソコンを使うのは勿論だが、その上ネット碁を娯楽の一つとして楽しんでいるのだからな。インドラは勿論、他の宗教の神々が聞いたら、誰も信じられないだろう・・・。特に驚くのは、今まさにお前と対戦中の人間だな」
「まぁ、そうなんだろうけど。僕の様に永く生き――――存在し続ける神にとっては、古く善き風習と風情を楽しむのが本来のあり方に成り得るんだろうが、新しきものに眼を向けるのだって決して悪い事では無いんじゃないかな?そもそも、このノートパソコンは君がくれたんじゃないか」
「別に咎めてなどいない。単に驚天動地の光景と言う、だけだ」
その言葉の後に、霧のようにかすんでいく怪人。
「もう、行くのかい?」
「ああ。それに、ネット碁の邪魔をするのも悪いだろう?」
「君が僕に気を遣った事なんて無いくせに、よく言うよ」
その返事に、またも無言。そして――――。
「それじゃあ、またねKra――――いや、『――――――――』」
「――――ああ。ではな、破壊神シヴァ」
言葉と共に怪人は消えて行った。
-Interlude-
ゼノヴィアが悪魔に転生してからオカルト研究部との邂逅から数日、士郎に朝稽古を付けてもらっていた。
「ハアァアアアアア!」
ゼノヴィアが木刀で、正面に居る士郎に唐竹割り風に振りかぶる。
「甘い」
「ッ!?クッ――――――」
それを士郎は真正面から片方の人差指だけで受け止めて、もう片方の拳でゼノヴィアに正拳を喰らわせる――――いや、寸での処で拳を止める。
「――――――――――っっ・・・・・・・・・ぅ」
瞼を開ければ、士郎の拳が目前にあった。
「はい。これで今朝は、32回目の負けだな」
「あぅ」
その拳から人差指だけ抜き出て、ゼノヴィアの額を軽く小突いた。
その事に、顔を俯かせてシュンとなる。
「前から言って居る様に、ゼノヴィアは素直な上に直線的すぎる。あれじゃ、受け流されて終わりだぞ?」
この士郎からの反省点を突き付けられて、ゼノヴィアは・・・。
(確かにそうだが、普通の人や並相手ならこれで十分過ぎるはずなんだ!にも拘らず指一本で受け止められる貴方が異常なだけだ!!そもそも、今の私は悪魔に転生してるから、教会の戦士だった頃よりもスペックも底上げされているはずなんだ!なのに・・・・・・それなのに!!?)
などと反論できる筈も無く、悔しそうにするしかなかった。
ところで話は変わるが、士郎がゼノヴィアを呼び捨てにしているのは単に彼女の希望だ。
そして、士郎もそれに応じた。今更照れる様な初々しさ等、この男には欠片も無いのだから。
「兎に角、次までに反「士郎ぉーーー!ゼノヴィアちゃーーーん!朝食出来たわよぉーー!」おっと、もうそんな時間か・・・。じゃあ、戻るか」
「―――――――はい」
と、不承不承で答えるゼノヴィアだった。
-Interlude-
放課後――――。
「――――そうか。あの神の子を見張る者のトップであるアザゼルに・・」
ゼノヴィアは現在、旧校舎内のオカルト研究部の一室に来ていた。
今この場に居ないのは、3年生のリアスと朱乃位だ。
そして談笑の話題は、一誠の昨夜の出来事についてだった。
コカビエルが起こした事件により、聖書における三大勢力が集まろうと言う会談前に、何と堕天使側のトップが一誠に接触して来ていたのだった。身分と気配もかくして。
「それはまた何というか、リアス・グレモリーが激昂しそうだな・・・・・・・・・うーーーん」
「確かにそうだね・・・・・・って、如何したんだい?ゼノヴィア」
「いや、兵藤一誠程の悩みでは無いんだ。と言うより少し自信を無くしているんだ」
ゼノヴィアの悩みと言うから、何かと思い浮かべる祐斗。
「・・・・・・・・・・・・あっ!?もしかして、日本の勉強に付いて往けないとかかな?」
しかし、祐斗の閃きに首を横に振り否定する。
「確かにまだその当たりは付いていけてるとは満足に言えないが、解らない処は全て士郎さんに判りやすく教えてもらっているから大丈夫だ・・・・・・・・・・・・が、問題はその士郎さんについてなのさ」
「如何いう事だ?・・・・・・って、まさか!迫られているとか!?」
「いや、それは無い。あの人は何時も紳士的な人さ」
と、一誠の疑問を即座に否定する。口にしておきながら無意識的には、不満そうなゼノヴィアだが。
「じゃあ、一体何なんだ?」
「実は――――――――――・・・・・・って事で、全く歯が立たないんだ。勿論、我々の世界を知らないにも拘らずトンデモナク強い人間がいる事は、極稀にあるという前例なども知っているが、あの人の強さは異常だ!」
あまりに力のこもったゼノヴィアの言葉に、アーシアは信じられないと言わんばかりに驚いているが、残りの3人は呆れつつもどこか納得している様子だった。
「如何して3人は驚かないんだ?」
「いや、それがな・・・」
「そう言えばこの件については、私たち以外で知っているのはあの時共に居た、匙元士郎先輩と支取会長に部長だけでしたね」
「そう言えばそうだったね」
ゼノヴィアの疑問に、アーシア以外の残りの3人である一誠達だけで納得していた。
その様子に無論ゼノヴィアは、要領を得てはいなかった。
「イッセーさん達は何か知ってるんですか?」
この事について、もう一人要領を得ていなかったアーシアが純粋な疑問をぶつける。
「ああ、そうなんだ。実はかくかくしかじかで―――」
「―――しかじかうまうまと言う事か・・・。まさかあのフリードを子共扱いで、のしていたとはな・・・。なら最近の件についても頷けるな(ボソッ)」
「え?何が頷けるんですか?」
「え?あっ!いや、その・・・」
誰にも聞かれない様に呟いたつもりだったゼノヴィアは、耳の良い小猫に聞かれて狼狽する。
その狼狽ぶりがだんだんと酷くなり、4人内一誠と祐斗は視線もジト眼になっていく。
この数日で理解できた事だが、ゼノヴィアは隠し事があまり得意じゃないと言う事を。
その視線に耐えかねたゼノヴィアはついに白状するのか、こらえながらも口を開いた。
何でも、一昨日位からムキになって稽古中の木刀に対して、魔力を込めて威力を上げたらしいのだ。
その事に、祐斗は呆れ顔を露骨に作る。
「いくらなんでもそれは不味いよ!もしどこかに直撃したら、藤村先輩大怪我じゃすまないよ!?」
「・・・・・・分かっては・・・いるんだが、つい勝ちたくて押さえが効かなくなるんだ。それに今日なんて、二本指だけで止められたんだ!本気で切ろうと思えば、コンクリートに罅を入れる自信がある一刀を」
「おいっ!?」
さらっと爆弾を落とすゼノヴィアに、堪らずツッコみを入れる一誠。
「それにしても、異常な強さ・・・・・・か・・・・・・って、うん?」
「――――ふぅ、お待たせ皆!」
そんな2人の会話をよそに考え込む祐斗だったが、リアスと朱乃が漸く到着したことにより、この話はこれで終いとなった。
-Interlude-
リアスと朱乃が到着してから昨夜の一誠の件を話すと、予想通りリアスは激昂し朱乃は堕天使と言う部類に嫌悪感を示しているようで、一見すれば何時も通りではあるが背後に黒いオーラを纏っていた。
しかしながら、相手は堕天使側のトップ。これについて如何したらいいモノかと困り果てていると、そこに我らが部長の兄君である紅髪の魔王ことサーゼクス・ルシファーが側近であり妻でもあるグレイフィア・ルキフグスを引きつれて。
・・・・・・・・・・・・・・・いや、もう一人いた。その人物は赤い上着を着込み、赤いフードで頭から覆い、髑髏の仮面を被った・・・・・・・・・って、幻想殺し!!?」
あまりに突然すぎるゲストの登場に、オカルト研究部の全員が立ち上がり驚いていた。
「アザゼルは昔からああいう男さ、リアス。先日のコカビエルの様な事はしないよ、アザゼルは。今回のように悪戯はするけどね。しかし、総督殿は予定よりも早い来日だな」
「成程、そうなのですか・・・・・・・・・って、違います!?お兄様の右斜め後ろにいる人物の登場について、私たちは驚いているんですよ!!」
あまりにマイペースで、態と噛み合わせないようにしているんではないかと疑いたくなる位の何時も通りの我らが魔王様に、すかさずツッコみを入れるリアス。
「アハハ、分かっているとも。今日はある事情で、共にこうしてお邪魔しに来たわけさ。とは言え、ほぼプライベート同然で来ているから、寛いでくれたまえ」
サーゼクスの反応に呆気にとられるも、何時もの様に跪こうとした処を制止されるリアス眷族(悪魔に転生して日が浅いゼノヴィアを除く)。
そして、この場でグレイフィア以外の者は全員気づいていない様だが、サーゼクスの右斜め後ろに居た筈の幻想殺しの姿が消えていた。
「そ、それで、とある事情とは何でしょう?お兄様」
「我が可愛い妹よ。そう事を焦ってはいけないよ・・。それにその事情だけで私は来た訳では無いんだよ?リアス。ほぼプライベートだって言っただろう?」
「そうでした。ですが、だとすれば一体何故なのでしょうか?」
リアスの疑問はオカルト研究部全員の代弁とも言うべきものだった。
「身に覚えがないとでもいうのかい?これの事を!」
語尾を力強くしたサーゼクスは、ある1枚のプリントをリアスは勿論、眷族全員にも見えるように突き出した。
そのプリントに身に覚えが有り過ぎるリアスは、幻想殺しが現れた時以上に驚愕した。
「え?なっ、如何してお兄様がそれを!?」
「理由なんて如何でもいいじゃないか!それよりもこのプリント用紙の内容である授業参観は、勿論参加させてもらうよ!!是非ともわが愛しい妹が勉学に励む姿を間地かで見たいのだよ!!!」
自分の口で説明していく内に、だんだんとテンションが上がっていくサーゼクス。
「グ、グレイフィアね?お兄様に伝えたのは・・・」
そんな兄とは対照的に、困った相貌を見せるリアス。
「はい。学園からの報告はグレモリー眷族のスケジュール私の下へ届きます。無論、サーゼクス様の『女王』でもありますので主への報告も致しました――――と言いたいところですが、実はリアスお嬢様の学園内でのイベントの件の報告については、私では無いんです」
「え?じゃ、じゃあ、一体誰が・・・?」
「解りませんか?お嬢様の身近にいる人物の中で、我々の世界を知り得ない者が御一人だけいるではありませんか?」
その言葉に益々、困惑さを露わにするリアス。
「では、もったいぶらずに言いますと・・・・・・・・・リアスお嬢様とは彼是、6年前からご友人に成られている藤村士郎様です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?・・・・・・・・・・・・・・・ぇええええええええ!!???」
予想だにしなかった名前がグレイフィアの口から出て、今日の中で一番驚くリアス。
「アハハ、驚いたかい?実は、私と士郎君は番号もアドレスも交換し合っている中でね、リアスが高校生になってから、この約2年半の間はずっと学園内でのリアスも拘わるイベントについても、それで知り得ていたのさ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(パクパクパクパクパクパク)」
あまりの事実に、水中で鰓呼吸をする魚のように口を動かすリアス。・・・・・・・・・呼吸ダイジョブか?
そんな彼女の目の前に、身も心も癒してくれるかのような香りを漂わせる紅茶が出される。
『リアス嬢。これでも飲んで、まずは落ち着い給え』
その目の前の紅茶に、直に飛びつき言われるでもなく飲むリアス。
こんな時でも飲み方は上品だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・ハァ、落ち着いたわ。有り難う、朱乃ぉおおおお!!?」
『落ち着いたかと思えば、まだ落ち着いていない様だな』
紅茶を淹れてくれたのが呉れたのは、自分の親友件眷族の『女王』の朱乃だと思って横を見れば、幻想殺しだった。しかも、リアスのと同じく淹れたての紅茶が入った人数分のティーカップを置いた、大きなお盆を持っていた。
「な、なな、何で貴方が!?」
『勝手ながらキッチンを借りた。だが、その反応だと口に合わなかったかね?』
「い、いえ、そんな事は無いわ!」
本心だった。
確かに、朱乃にしては何時の間に此処まで上手く淹れられる様になっていたのかと、驚きと関心が心を癒されると同時に湧きあがったものだった。
何せこの紅茶は、完璧な日本式の紅茶だったからだ。
兄の側近でもあるグレイフィアでも、ここまでの紅茶はまだ淹れられていないのだが、先程の話題の中の思いもよらなかった人物、藤村士郎が完璧に淹れられる為に知っていたのだから。
その答えに一応の納得を見せたのか、皆に配っていく赤い外套姿の怪人。
『どうぞ、サーゼクス閣下』
「うん、有り難う。でもいい加減、閣下呼ばわりはやめてくれないかな?」
『善処させていただきます。さぁ、グレイフィア殿も如何かご賞味ください。お役目を取ってしまい、大変遺憾ではありますが・・・』
「いえ、それほどの事ではありませんが、お言葉に甘えさせていただきます」
幻想殺しが淹れた紅茶を味わいながら呑み込むサーゼクスとグレイフィア。
「――――――うん。君の入れてくれた紅茶は久しぶりだけど、相変わらず美味しいね。グレイフィアは如何だい?」
「―――――――はっきり言ってしまえば、私の負けですね。まだまだ、修練が足りませんでした。これを機に、より一層精進します」
幻想殺しが淹れた、完璧なる日本式の紅茶を飲んでリフレッシュできたようだ。
「これでリアスも落ち着けたかな?だとすれば話を戻すが、例え魔王職の激務が有ろうと、休暇を入れてでも参加したかったのだよ。安心しなさい。父上もちゃんとお越しになられる」
「そ、そういう事ではありません!お兄様は魔王なのですよ?仕事を疎かにして、いち悪魔に特別視されてはいけませんわ!」
何とも説得力のある言葉ではあるモノの、実兄のサーゼクスの事を嫌ってはいない様だが授業参観に来てほしくないと言う感情は駄々漏れだった。
「いやいや、これも仕事でもあるんだよ、リアス。実は三竦みの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見に来たんだよ。彼と一緒にね」
我らが魔王のお言葉に、リアスもリアス眷族全員またしても、ほぼ一斉に立ち上がりつつ驚く。
因みに彼と言うのは勿論幻想殺しの事で、いつの間にか元の位置に戻っていた。
「―――――っ!?ここ、で?本当、に?それに、幻想殺し殿が共にとは?」
「ああ。この学園は如何やら奇縁に恵まれている様だ。私の妹であるおまえと、伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王セラルフォー・レヴィアタンの妹も所属し、コカビエルの襲来に最後は彼、幻想殺しの介入と来たものだ。最後のは私が頼んだからではあるが。だがそれでも、これは偶然では片づけられない事象だ。様々な力が入り交じり、うねりとなっているのだろう。そのうねりとなっているのが兵藤一誠君―――――赤龍帝だと思うのだが」
サーゼクスが一誠に視線を送る。送られた当の一誠は、些か緊張した趣の様だった。
「フフ・・・・・・っと、そう言えば、彼の事について話していなかったね。彼が何故この場に居るのかと言うのは、毎日ではないが明日から会談終了まで、警備を頼んだのさ」
サーゼクスの言葉にまたまた驚く一同。オカルト研究部の面々は、今日は驚いてばかりだ。
そしてリアスは、何とも言えないような表情を浮かべていた。
それもそうだ。何故ならリアスは現在悪魔業界において、この駒王町一帯を任されている上級悪魔なのだから。
にも拘らず、短期間と言え外部の者を警備に加えると言う事は、優しく言えばリアス・グレモリーとその眷属ら及びソーナ・シトリーとその眷属らでは些か不安が有ると言う言葉で済ませられるが、はっきりかつ無情な言葉を選ぶのであれば『戦力外通知』である。
この事実にリアスの中では、認知と否定が同棲状態になっていた。
因みに、リアスの心情を察知で来ていたのは朱乃と祐斗そして、ゼノヴィアだった。
無論、あの妹溺愛主義者であるサーゼクスからすれば、三勢力の会談までに戦力を充実させた上で、リアスの心労を軽減させようという考えなのであろうが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「リアス、君がどのように思っているかぐらいは分かるが、今この駒王町の責任者はリアスだ。だからこれは、いち魔王としての提案でしかないから決定権はおまえにある」
「・・・・・・わかっています。私リアス・グレモリーは魔王サーゼクス・ルシファーの提案を受け入れたいと思います」
「そうか。すまないね、嫌な思いをさせて」
「いえ、自分の実力の低さは痛感していますから」
葛藤の末に答えを出した故、何とも言えなく重い空気が広がったこの状況を打破したのは意外にも、ゼノヴィアだった。
と言うか自己紹介に近かったが、そのおかげでどんよりとした空気は晴れやかなものとなった。
「あっ!因みにねリアス――――」
「――――な、何でしょうか?」
まだ何かあるのかと警戒するリアス。
「父上に授業参観の事を教えたのも士郎君だからね」
この爆弾発言にリアスは、もう何度目になるかわからない驚きをする。
「!?#$%&‘$%&3!?!!?!!!」
「ハハハハハ、これも驚いたかい?これについては私もいつの間にかにと言った感じなのだけれど、父上とも連絡先を交換し合っていたのさ。だが、彼は此方側の人間では無い。ではどうやって連絡先の交換をし合っていたのかと言うと、私や君に内緒で父上も母上もお忍びでこちらに来た事が有るそうだよ。その時に偶然に士郎君に邂逅したそうでね、この街やそれ以外の場所の観光案内もしたそうだよ。この流れで実は母上とも連絡先を交換していたらしくてね。私もこの事実を知った時は大層驚いたよ!何せ、此方の言葉で言えば寝耳に水だったからね!それでね―――――――――」
そんな楽しげに語るサーゼクスの目の前に居るリアスは驚愕から一転、少しづつ笑顔になり笑っていた。背後に赤いオーラを纏わせて。
「フフフフフ、士郎。私、貴方に初めて殺意を覚えてしまったわ♪もう士郎ったら、何時もはあんなにも紳士な貴方は何所へ行ったのかしら?それにお父様ったら、どうせ聞かれて良い事嫌なこと関係なく士郎に聞かせたのね♪士郎も士郎で、断固として拒否すればいいモノを。これはもう尋m―――――拷問して吐かせるしかないわね☆ウフフフフフ♪なんだか楽しく思えて来たわ☆今なら世界も輝いて見える☆★」
そんな我らが部長様が満面の笑みで憤激に駆られている姿を見て、アーシアが泣きだす。
「こ・・・・・・怖いですっっ!リアスさん、怖いですぅぅうううう!!!」
「落ち着け、アーシア!部長はお前の事を怒っているんじゃなくてだなぁ・・・・・・」
そんな怯えるアーシアを一誠が何とか対応する一方で、祐斗と小猫も戦慄していた。
「ゆ、祐斗先輩、ど、如何しましょう?」
(小猫ちゃんも怯えている)
「朱乃さん!如何したらいいんでしょう?」
あまりの事態?に、困惑しながらも自分の手に負えない故に朱乃に助け?を求める祐斗。
「こうなったら、もう静観するしかないですわ」
「え!?」
「あんなリアスを見たのは私も久しぶりでしてね、正直もう如何しようもありませんわ。しかし、如何考えても八つ当たりなのでしょうけど、此処は士郎君に生贄になってもらうしかありませんわね」
そんな朱乃の言葉を聞いていたゼノヴィアも、困惑している。
「このままでは士郎さんが危険だ!私が是が非でも止めなくては!しかし今の私はグレモリー眷族、果たして止めるべきなのだろうか?」
と言った感じになっているオカルト研究部面々。
そしてそんな混沌な状況が繰り広げているのも拘わらず、サーゼクスは未だにぺらぺらと楽しそうに説明中。
そんなサーゼクスの後ろに控えているグレイフィアは、誰にも聞こえない様に隣人に呟く。
「心中、お察しいたします」
そんな言葉を投げかけられた幻想殺しは、とてもそんな言葉で冷静になれる心境では無かった。
士郎から言わせれば今のリアスは、“衛宮士郎”だった頃の憧れた人物であり、聖杯戦争後は第2の魔術の師であると同時に家族同然でもあり、何より恐怖の権化とでもいうべき存在の別種でもある“赤い悪魔”の再来に見えていた。いや、確信した!
(あー、明日は・・・・・・地獄だな)
その様に誰にも気づかれないようにしながらも、戦き震えながら天を仰ぐのだった。
因みに、サーゼクスが今日の宿泊地で困っている処で、一誠が名乗り上げると同時にリアスが反対の意を示すと言う別談が起きたが、そこは語るまでも無いだろう。
後書き
ジ・エンド?www士郎の明日はどっちだ!と言うか、あるのか?明日が?
今回は一万字いきませんでした。まぁ、無理に描くことも無いでしょうが。
では次回お会いしましょう。
ではでは!
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