俺の名はシャルル・フェニックス
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猫と不死鳥
さて、1年もの旅を終えて6歳となった。
ぶっちゃけ6歳になったのはルーマニアに滞在して一ヶ月後くらいなんだが、気にしたら負けだ。
今から原作開始までやりたいことが俺にはある。
一つ目は朱璃さんを救うことだ。
ぶっちゃけ朱璃さんが生きていた方が朱乃は強くなるだろう。
雷光を使わなかったのは父への不信からだからだ。
まぁ、リアスの『女王(クイーン)』になるか分からなくなるが弱いままでいて貰っては俺が困る。
何故なら、あの愚兄にレーティングゲームで負けてしまうからだ。
あの屑が一時でも優越感に浸るなんて考えるだけで腹立たしい。
だから、俺はリアスの眷属を強化しなければならない。
だから、二つ目の黒歌、白音を黒歌がはぐれになる前に助けるのも同様だ。
はぐれになった後だと一悪魔でしかない俺が庇うことは不可能だ。
だから、先に助け出さねばならない。
二つともやれる可能性はかなり低いだろう。
一桁もいかないくらいの可能性だ。
それでもやるしかねぇ。
頑張りましょうかねぇ。色々と。
俺は今とある屋敷にいる。
無駄にきらびやかな屋敷だ。
何故ならここに黒歌達の主がいるからだ。
今日は譲って貰うための取引をしに来た。
「ようこそお越し下さいました。
フェニックス様今日はどう言った御用件で」
目の前に座っている男が媚へつらうように話しかけてくる。
生理的に受け付けねぇ奴だ。
ある意味欲深くて悪魔らしいぜ。
「今日来た理由は俺の今後のためだ」
「いやはや、その御年で将来のことをお考えなさるとは鬼才とは本当の御様子ですな」
いちいち持ち上げんじゃねぇよ。鬱陶しい。
「それほどでもない。
それで取引といきたい。
俺は将来レーティングゲームに参加する。
そのための眷属を今集めている」
「それで私に何か?」
「卿の眷属に猫ショウが2匹いると聞いた。それを俺の眷属に加えたい。
取引願おう」
「あーあれですか。しかしあれはウチの有望株ですからなぁ。
何と言っても僧侶の駒を二つも使いましたからな。
簡単なものでは……」
「俺が貰った悪魔の駒は当然として此方が取引材料に使えるのはフェニックスの涙だ」
持ってきていたスーツケースを相手に見やすいように机におく。
中にはフェニックスの涙が入った小瓶が10個入っていた。
「話になりませんな」
「フッ甘いな。人の話はよく聞くものだ。悪魔であるならな。
知らないか?
最近フェニックスの涙の効果がより強力になったフェニックスの宝涙と呼ばれる物が出回ってきていることを」
フェニックスの涙は部位欠損をすると再生は出来なかった。
元の部位、例えば腕を切り落とされたとして、その腕をくっつけて涙をかければつながることはできた。
けれど腕自体が無くなってしまえば再生することは出来なかった。
けれどフェニックスの宝涙はそれをも可能とする。
市場ではフェニックスの涙よりも桁が1つはつくほどの超激レアアイテム。
それが10個。
欲深い悪魔なら喉から手が出るほど欲しいものだ。
「まさかそれら全てですか……?」
ごくっと欲望にまみれた唾を飲み込み震えた声をだす。
「ああ、フェニックス家の名に誓ってな。
まず猫ショウの姉妹の身柄を此方にわたしてくれるのなら、この10個を渡そう。
そして俺が悪魔の駒を貰った時に僧侶の駒二つとともにもう10個、フェニックスの宝涙を渡す。
それでどうだ?」
男の瞳が揺れる。
迷ってるのだろう。まぁ、予定通りだ。
「まぁ、俺も未来の眷属足り得るのか実力がみたいからな」
ここでぐぅっと身をのりだしてピンッと男の目の前で人差し指をつきだす。
「ここで一つ模擬戦をしてみよう。
卿の屋敷の前に俺の眷属候補を待たせている。
まだ悪魔の駒で転生させていない人間だ。
それに勝てるのならば眷属としてどうしても欲しいからな。
宝涙の個数を倍にしよう。
どうだ?」
「わかりました!」
男は顔を興奮で赤く染め、上ずった声で肯定した。
男の中では人間が悪魔に勝てるわけがないから宝涙は40個は確実。
上手く交渉出来ればそれよりも多く売りつけられるだろう、と考えているのだろう。
だが、俺はあえて言ってやろう。
俺の勝ちだ。
恋は既に下級悪魔でも上位レベルだからな。
試合はあっさりと終わった。
まず黒歌が妖力を込めた球を打ち出した。
それを恋が避け、方天画戟を喉元に向けて終了。
実に呆気なかったがまだ黒歌も幼女から少女の間くらいであるから原作ほどの力はまだない。
それに悪魔になってからまだ1、2ヶ月くらいらしいしな。
「ふん、この程度か。
期待外れだな」
わざと全員に聞こえるように言う。
その言葉に男が青ざめた顔になり、負けて座り込んでいる黒歌を睨む。
黒歌のせいで取引がご破算になると思ったらしい。
つくづく気にいらん男だなコイツは。
「だが、まぁ、20個となら交換してやらんでもない。
どうだ?
いい交渉だと思うが……」
「そ、それでお願いします……」
まさか成立するとは思わなかったらしく、すんなりと了承された。
他愛ないな。
模擬戦をした所から交渉をした応接室らしき場所に再び移動した。
今度は恋も連れている。
黒歌は今すぐ荷物を纏めて白音をつれてくるように言われたぶん自室へと戻った。
「これで契約成立だ」
互いの名前を書き、印を押した契約書を俺は持ってきていた鞄にしまい、男は懐へといれる。
スーツケースを机におき、一言礼を言って玄関で荷物を持っている黒歌達を連れて俺らは屋敷の表に止めてある馬車に乗り屋敷を去った。
「あ゙あー、疲れたぁぁぁ」
「……お疲れ」
恋の労いの言葉を聞きながら自分の肩をポンポンと叩く。
ったく、交渉なんて面倒なことよくやるわ。マジで。
「あ、そうだ。さっきは貶して済まねぇ。
ああ、でも言わねぇと契約愚図られてただろうかんな。
ちょっと一芝居うたせて貰った」
警戒してくる二人に詫びをいれ頭を下げる。
二人の警戒心下げねぇと恋も二人のこと警戒しっぱなしだしな。
いつのまに忠犬になったのやら。
それに、まぁ、一方的に野次ったかんな。
詫びの1つや2つは当然だろ。
「……なんで私たちを買い取ったの?」
買い取る、買い取るか。
まぁ、物扱いしていたからそう皮肉られても当然か。
「ま、簡単に言ったら黒歌。
てめぇを俺の眷属にいれるためだ」
「……やっぱり私目当てか。
私は眷属で構わないから妹の白音だけは眷属にしないで!」
「……おねぇちゃん」
姉妹愛ってか?
いいねぇ。そうゆーの。
俺ら兄弟にはねぇぜ。
上兄と中兄は俺のこと警戒して近づいて来ねぇし下兄たる愚兄は俺のこと見下してるし妹たるレイヴェルはまだよちよち歩きしてるからな。
「……シャル、友達がいる。
だから、寂しく、ない」
ははっ、顔にでてたか。
慰められちまった。
苦笑して礼もこめて恋の頭を撫でる。
恋は嬉しそうに撫でられてくれた。
これが、愛ってか。
「だな。ありがとさん。
まぁ、黒歌は眷属になるのは確定だが、自由にして構わねぇぜ?
戦わなくていいし、何処に行っても構わねぇ。
居たいなら居てもいいしな」
「……」
裏があるのかと疑わしげな目でこっちを見てくる。
まぁ、話がよすぎるから警戒するのも当然だな。
「んじゃ、まぁ、突然だけどな、話をしよう。
この世界で一番強いのは誰だ?」
「……にゃあ?」
白音が首を傾げる。
お前警戒してたんじゃねぇのかよ。
「分からないわ」
ん、答えてくれてありがとさん。
でも、出来れば睨まないで欲しいね。
「オーフィス。不動の世界最強の『無限の龍神』だ。それより強いのが、『赤龍神帝』であるグレートレッドだ。
魔王でも神でもねぇ、龍が一番つえーのさ」
「でもな、俺は決めてんのさ。
強くなれ、強くあってくれと俺は頼まれた。願われた。望まれた。
だから、俺は最強になってやるってな」
俺は愛を感じとれる。
どうやら、俺を産んでくれた母さんの実家の血がそうゆー家系らしい。
だから、転生者である俺は産んでくれた母さんからの無上の愛を感じれた。
心地よかった。暖かかった。
だから、そんな愛をくれた母さんの唯一の遺言を俺は叶える。
これは一種の罪滅ぼしだ。
親孝行をしてやれなかった前世の両親への、"俺が殺した"母さんへの贖罪なんだ。
「それが俺の夢さ。
ま、てめぇを眷属にしようとする訳じゃねぇがな」
「……泣いてるの?」
「はぁ?泣いてる?俺が?」
白音に言われて目元を拭ってみる。
確かに濡れていた。
泣くつもりなんか無かったんだがな……
「っっっっ~~~」
何故か、黒歌が唸っていた。
舌でも噛んだのか?
「何この子!?凄く心が擽られるにゃん。
にゃ!これが母性!?
何か物凄く可愛らしいにゃああ!!」
何故か黒歌が母性に目覚めた+キャラ崩壊のお知らせ。
なんか警戒とか完全に忘れてるよな。
まぁ、恋、撫でてくれてありがとう。
白音、何でそんなキラキラと尊敬する眼差しで俺を見てんだ?
いや、もう、なんか、いいや。
こうして俺らは打ち解けられたみたいだ。
あぁ、そういやぁ、理子に土産頼まれてたな。
適当なところで買ってこよう。
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