ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-6 圏内事件
Story6-13 心の変化
第3者Side
十字の丘に残された4人。
「……シャオン君、かっこよかったよ」
「え?」
「私もそう思う」
「俺もだ」
「本当に《愛してる》って言いたいのなら、その人のすべてを受け入れてから言え、とか、
生きてる人には、死んだ人の『生きた証』を、守り続ける義務があるだろ! とかね。
あんな場面で、あんなにかっこいいこと、私には言えないよ。
やっぱり……シャオン君は、優しいね」
「そんなんじゃない。あれは、俺が俺自身に言った言葉だよ。
大切な人たちを守れなかった……俺へ、な」
その言葉で少し場が静まる。
「ねぇ?」
再び、フローラが呟く。
「2人ならどう思う?もし、君達が仮に誰かと結婚した後になって、相手の隠れた一面に気づいたとき」
グリムロックを認めたくない。
が、男性はそう言うものなのかどうか、2人で見極めてみたいとも思っていた。
「え……」
「んー……」
キリトはまさか、この流れで自分にふられるとは思っていなかったから、思わず声が裏返る。
シャオンはただ純粋にその問いについて考えていた。
ふと、視線を前にやる。
するとフローラと目が合った。
「俺なら、そう言う状況になれたらそれだけでも嬉しいかもしれないな。
自分が愛するべきところが増えるかもしれないし」
「お前は嬉しい、か。多分そう言うんじゃないかって思ってたよ」
アスナはあまり追求しない方が良いと思ったようだ。
続けてフローラは聞く。
「じゃあ、キリト君はどうなの?シャオン君だけに答えさせといてだんまりは、ずるいって思うけど?」
フローラは笑いながらキリトを見る。
「うん。フェアじゃないよね」
「解ってるよ」
かく言うキリトは集中砲火を浴びたからか、四面楚歌な気分を味わっていたようだ。
少し戸惑い、動揺しつつも、キリトは口を開いた。
「オレならラッキーだった、って思うかな?」
「え?」
アスナは、キリトのその言葉を聞いて思わず声を上げた。
よく、理解し切れなかったからだ。
「だってさ?結婚するってことは、それまで見えてた面はもう好きになってるわけだろ?
だから、その後に新しい面に気づいてそこも好きになれたら、に、2倍じゃないですか」
知的でないにも程がある、と自分自身は思っていたようだ。
だが、アスナは眉を寄せた後首を傾け、少し微笑んだ。
「ふぅん、まぁ良いわ」
アスナは、答えに満足なのか満足じゃないのかよくわからないが、とりあえず笑顔になっていた。
「そろそろ、行こうぜ?もう最前線を離れて2日も経ってんだ」
「そうだね!キリト君の言うとおり。明日からまた頑張ろ!」
「だな」
シャオンはそう一言だけ言うと、アスナの方を向いた。
「そろそろ行くんだろ?まだ、あいつ等がまだ付近にいないとも限らないしな」
「あっ、そ、そうね」
アスナは、慌てて頷く。
そして、4人揃って、戻るときだ。
「!!」
まず気がついたのはフローラだった。その不可思議なものに。
フローラが振り返って見たのは、何気なくだ。
朝日の光が丘を照らしていた。
グリセルダさんが眠っている墓にも。
その神々しい光の中で、女性が立っていた。
決して、幻じゃない。間違いなく立っていた。
「どうしたの?」
驚き、凝視していたフローラに気づいたアスナ。
その視線の先を見てみる。
「!!」
アスナもその存在に気がついた。
2人の様子から、男性陣も気がついた。
この世界では、アインクラッドではあらゆる感覚情報はコードに置換可能なデジタルデータである。
だからこそ心霊現象というものは存在するはずが無い。
よって、今、4人が見ている者はサーバーのバグか、或いは生体脳が生み出した幻覚。というものになる。
だが、4人同時にその様な現象が起こるとは考えにくい。
「あの瞳は……」
それは、必ずいつか、この世界を終わらせようとする意思を秘めた攻略者の瞳。
それを見たその時、彼女の表情が変わった。
穏やかな微笑を浮かべていた。そして黙したまま見つめていた。
そして何かを差し出そうとするかのように、開いた右手を皆に向けて伸ばした。
自然とその差し出された手に答えるように皆同時に右手を差し伸べ、4人の掌にほのかな熱を感じた瞬間、
きゅっと握り締めた。
その温度が体を流れて胸の奥に火を灯した。
「間違いなく存在してる。
幻なんかじゃないね、この温もり」
「ああ。
あなたの意思は、オレ達が確かに引き継ぐよ。いつか必ずこのゲームクリアして、みんなを解放してみせる」
「ええ、必ず。約束します。
だから、見守っていてください。グリセルダさん」
「あなたの歩いた、『生きた証』を、俺たちが刻んでいくよ」
皆の囁き、それが夜風に乗って、彼女にまで届いた。
それらを見たグリセルダは、透き通るその顔に、にっこりと大きな笑みがこぼれ出た。
その次の瞬間には、そこには誰もいなかった。
皆、手を下ろし、暫くその場に立ち尽くしていた。
やがてアスナがキリトの、フローラがシャオンの右手を握り、微笑んだ。
「さ、帰ろ。明日からまた、頑張らなきゃ」
「だね!しっかり対策もしよ!シャオン君!」
笑顔を見せる2人。
その笑顔に答えるようにシャオンもキリトも表情を緩めた。
「ああ、今週中に今の層は突破したいな」
そして、朝日は昇っていき、神々しい朝日に丘が包まれていった。
Story6-13 END
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