魔法少女コミカルあやめ
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第零話 プロローグなの?
「海鳴よ! 私は帰ってきた!」
と、初めてきた土地で叫ぶ。
管理外世界、地球、日本、海鳴市。
実験に飽きて研究所から逃げ出して、宛てもなく次元世界をさ迷っていた末、君がいない夜を越えてやがて辿り着い
た場所は虹が見える楽園ではなかった。
そんな訳で。
「ばたんきゅ〜」
ほとんどの魔力を封印され、封印を逃れた残りの魔力も、更に体力も完全に尽きた私は雪の上に崩れるように倒れた。
「ぷ、ぷよぷよ?」
そんな私を興味津々に見つめるオレンジ色の髪の幼女が一匹。どうやら私の大ファンらしくサインが欲しいようだ。
「ふ、普通にはじめましてだよ。それにサインなんて欲しくないの」
勘違いだった。
「あの、だ、大丈夫なの?」
「ちょっと誰も踏み入れた事がない雪原に倒れて自分の跡を残して楽しんでるだけだから問題ないよ」
「も、問題しかないの。まず、あなたの下の雪は踏み荒らされてほとんど泥になってるよぉ……」
「そんな馬鹿な。私には一面真っ白にしか見えないのに。あ、でも冷たさを感じない……って、あれ? 幼女が消えた」
「消えてないよっ! それ眼が見えてないだけなのっ! 限りなく大ピンチな状況に追い込まれてるだけだよぉ!」
「空腹過ぎて視界も空白になっちゃいましたー、みたいな?」
「全くもって笑えないのっ!」
良いツッコミスキル持ちの幼女だ。
しかしこの幼女との漫才を楽しむには私の体力は不十分らしい。
「だからこの漫才の続きは来世でやろう。楽しみにしてるよーじょ」
「まだ幼い子供に期待するには重圧過ぎる期待やめてよっ! ふざけた感じで言ってるけど内容が重過ぎるよ! それになのはの名前は幼女じゃなくて高町なのはなの! ちゃんと名前で呼んで!」
「ふむふむ、菜の花さんか。私の名前は確かアイリスだったと思う。菖蒲の花だから菜の花さんと似た名前だね」
「菜の花じゃなくて、な! の! は! てゆーか暢気に自己紹介してる場合じゃないよっ! しっかりして、え、えっと……あ、あやめちゃん?」
「もうニックネームを付けるとは馴れ馴れしい。さては友達いないなぁー?」
「だ、だって声が掠れて名前がよく聞こえなかったから……じゃなくて! だからそんな状況じゃないの! てゆーか馴れ馴れしいのはあやめちゃんも同じなの! 確かに友達いないけど失礼なの!」
「………………」
「あ、あれ? あやめちゃん?」
「……我が生涯に一片の悔い無し」
「どうしたの、あやめちゃん!?」
「………………無念……がくっ……」
「け、結局どっちなの!? あ、あやめちゃーーん!!」
※雪降り積もる真冬の野外で長時間過ごすのは、危険なのでやめましょう。
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