| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

日向の兎

作者:アルビス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

1部
  29話

二日目の夜明け前に私達はテンテン、ネジと私とリーに班を分けて行動を開始した。
基本的に他班を見つけても手だしはしないという事だが、私とネジの白眼で罠や相手のチャクラ量などを判断し可能と感じた場合は狩る。
援護が必要になればテンテンが大規模な爆発を起こすか、リーが重りを外してネジ達を私のところまで連れてくるかだ。防御に特化させれば私一人でもイレギュラーにでも当たらない限り、十分に凌ぎ切る事はできりだろう。
「リー、敵を見つけた場合はまずは牽制に徹して貰うぞ。君の速度であれば牽制に徹すれば大したダメージを追うことなく、適度にダメージを相手に与えて、手の内を晒させる事が出来るからな。
私もその方が分析に集中できる分、対処方を組み立てる時間も短く済むというものだから」
「分かりました。その後、蓮華はどうしましょう?」
「分析が終わった後だな?……やめておこう。君の体への負担もあるが、表蓮華は一対一でなければ妨害によって対処されやすい」
「……そうですか」
リーは少し残念そうに呟きながら、不意に歩みを止めた。そして、何かに気付いたらしく地面を駆けていたリスを捕まえ、その背中に貼り付けたあった何かを握り潰した。
ふむ、リスの背中に起爆札……動物爆弾とでも言うべき物だな。私達には全く関係のない方向へ向かっていたので気に掛けなかったが、存外これを仕掛けた輩が近くにいるやもしれんな。
「ヒジリさん」
「ああ、分かっている」
白眼で周囲の観察を始めると、二班ほど発見することができた。片方はナルトの班だが……襲撃を既に受けた後なのかナルトとサスケが動けず、サクラが看病していると言ったところか。
もう片方はそれを狙う音隠れの里の班か。
ナルトの班は既に巻物を奪われた後のようで、誰も巻物を何処にも持っていない。音の巻物は……ダブりのようだな。
音の方は今まで戦闘をしなかったのか無傷、このまま放置すればナルトの班を完全に潰すだろう。
合理的に考えるならばこのまま放置して、ナルトの班が完全に潰れてから音の巻物を奪って処分するべきだ。
「しかし、私はどうにも甘いな」
「何がですか?」
「リー、南に二百メートルだ。今すぐ走るぞ!!」
「分かりました!!」
リーと私はナルト達の元へ最短距離で向かう事となった。



私達が着いたタイミングは中々ギリギリだったようで、もう少しでサクラがやられるところをリーが割って入り、私が起爆札で音の連中を一旦下がらせる事になった。
本来ならこちらの姿を晒すことなく始末するなりなんなりできたが、波の国以来、ガイ先生から殺しは無しと厳命されているのでこんな無様な登場になってしまったのだ。
「……ヒジリさんにリーさん?」
サクラは突然現れた私達に唖然としていた。
彼女は見た目こそ泥や血やらで酷いことになっているが、命に別条はないようだが……
「すまんな、もう少し来るのが早ければ髪を切らせる事も無かっただろうに」
「い、いえ……」
「ミイラ男と女は私が仕留める。リー、お前はそこの論外ファッションを仕留めろ」
「ろ、論外ファッションですか……確かに死なんて描かれた服というのは僕もどうかとは思いますが、随分と酷い呼び名ですね」
「あれの名前など知らんし、知りたいとも思わんからな。それに、あのミイラと君の相性は悪いが、論外ファッションは君の方が圧倒的に有利だ。
君のスピードでなら技術すら必要なく叩き潰せる」
ミイラの右腕にある物はスピーカーか何かにのようで、サクラのトラップを破壊したのもあれだろう。性質的には私の蓬莱の枝と同じく振動で攻撃するタイプだが、私のものは鋼や鉄などの硬いものを破壊することに特化したものだ。
一方、ミイラのあれは人体やらに異常を発生させる事に特化した物というべきものか。恐らくはチャクラで音に指向性を持たせて組み合った際に、音で耳や脳を攻撃することによって平衡感覚などを狂わせるのだろう。
組み合った時の関係上、リーのような体術系とは最も相性の悪いタイプだな。一撃でも防がれればミイラの音波攻撃の射程に捉えられるのだからな。
一方、論外ファッションは掌から体に伸びて肺に繋がっている体内の管から察するに、空気をチャクラで圧縮してそれを管伝いに発射すると言ったところだろう。
威力は中々だろうが、あの手の攻撃は構え、照準、発射という最低三つの動作が必要だ。そんなものを必要とする相手など、スピードを強みとする体術に特化したリーにとってカモ以外の何者でもない。
……女の方は持っている忍具から察するにトラップ系か。鈴とワイヤー、千本、音で相手の注意を引いて千本を他方向から放つと言ったところか。白眼の前では何の意味もなさないタイプだな。
「ボク達を随分と甘く見るね、君」
「いや、これでも過大評価だと思っている。所詮、君達の術は人体改造や武器ありきの物なのだからな。論外ファッションは体内の管がなければ、君はスピーカーが無ければ一体何が出来ると言うのだ?
急拵えの力、借り物の力、そういう力をさも自分の物だと誇っている愚か者……何か間違えがあるのならば指摘したまえよ」
「成る程……では、君の言う愚か者に殺されるといい」
ミイラは私に右腕を向けて襲いかかってきた。とはいえ、ミイラも私がスピーカーの事を知っていると踏んだらしく、左腕にはしっかりの苦無を握っている。
確かにミイラの攻撃はその特性上、右腕の攻撃は捌くのでもなく防ぐのでもなく、大きく弾かなければならない。それ故に最低でも片腕は防御にやらにまわすことができない。それを見越しての左手の苦無だろうな……
「だが、私がどのような手を打つか考えるべきだったな」
私はミイラの右腕を左腕で防御し、スピーカーから音が出る寸前にスピーカー内部に左袖から弁財天で水を仕込む。
直後、スピーカーが異音を発してミイラは驚きこそすれど、躊躇うことなく後ろに下がりスピーカーの異常を確認する。
「……水?」
「そうだ。先程の防御に合わせて、スピーカーの音の出る箇所に水の膜を張っておいた。
結果、君の攻撃となる超音波は著しくその威力を減衰させられ、文字通りただのスピーカーとなった訳だな」
「……この対処、君もボクと同じく音を使うのかい?」
「いや、振動を使うのは同じだが音ではないよ」
私が肩を竦めてそう言っていると、隣の方で誰かが吹き飛んでいった。
どうやらリーの方はすぐに終わったようで、論外ファッションは既に意識を刈り取られたようで木に張り付け状態になっている。
「さて……今現在の君達は一人が戦闘不能、君はご自慢のスピーカーが使用不能、もう一人はそもそも役に立たん。今なら巻物を置いて行くのであれば追撃はやめてやろう。
私は私でやるべき事があるのでな。逃げる相手を追いかけている程の暇はないが、まだ挑んで来ると言うのならば話は別だ」
ミイラは暫く考える仕草を見せてから、論外ファッションを回収してから巻物を私達の前の差し出した。
「分かりました。ですが、一つだけ確認をさせて下さい。
サスケ君は大蛇丸という人物に首筋を噛まれて動けなくなったんですね?」
サクラの方に視線をやると、彼女は静かに頷いた。そして、ミイラはそれを確認すると若干目を細めて疑心に駆られたかのうような感情を抱いた。
「そうですか、ありがとう……あと、僕はドス キヌタです。ミイラという名前ではありません」
音の三人はそのまま何処かへ逃げ去り、取り敢えず戦闘は終わった。
さて、サクラには色々と聞くべき事はあるだろうが、まずはナルト達の処置からだな。






 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧