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遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~

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第2章 風神竜と謎の男
  第8話 圧倒的な力

学校帰りの遊雅に接触して来た謎のローブの男。
《フレスヴェルク・ドラゴン》について何かを知っているような口振りの男は、風神竜のカードを渡せと遊雅に迫り、デュエルを仕掛けて来るのだった。

「先攻は貴様だ」
「なら遠慮なく行くぜ」

遊雅は最初の手札となる5枚をデッキからドローする。
それらのカードを確認して、遊雅は驚愕した。

(やばっ……!)

手札に2枚ある魔法カード。その片方は、《風神竜(ふうじんりゅう)復活(ふっかつ)》だった。
《フレスヴェルク・ドラゴン》がデッキに入っていない以上、このカードは全く意味を為さない物となってしまっている。
もう1枚のサポートカードである《風神竜(ふうじんりゅう)(とむら)い》共々、遊雅はデッキからそれらのカードを抜き取る事を失念してしまっていた。
しかし、何も残りの4枚が手札事故を起こしているわけでもなかった。

「俺は手札から、《こけコッコ》を特殊召喚!」

フィールド上に、可愛らしい鶏のような姿のモンスターが姿を現す。

「お互いのフィールド上にモンスターがいない時に特殊召喚した場合、《こけコッコ》のレベルは3になる!更に俺は《シールド・ウィング》を召喚する!」

《こけコッコ》の隣に、美しい翼を持った一見すると竜のようにも見えるモンスターが姿を現す。

《シールド・ウィング》
☆☆ 風属性
ATK/0 DEF/900
【鳥獣族・効果】
このカードは1ターンに2度まで、戦闘では破壊されない。

「そして、レベル2の《シールド・ウィング》に、レベル3の《こけコッコ》をチューニング!」

《こけコッコ》が光の輪に変化する。
そしてその中を潜り抜けた《シールド・ウィング》もまた、眩い光に包まれた。

「シンクロ召喚!現れろ、《旋風(せんぷう)のボルテクス》!!」

光に包まれた《シールド・ウィング》は、様々な武器で武装した鳥人の姿に生まれ変わった。
ここで遊雅は、《風神竜(ふうじんりゅう)復活(ふっかつ)》の活用法を見出す。

(罠カードだと思って警戒するかもしれないな)

リバースカードへの警戒心を身に付け始めた遊雅なりの策だった。

「俺は永続魔法、《鳥兵令(ちょうへいれい)》を発動。更に、リバースカードを1枚セットして、ターンエンドだ!」
「俺のターン」

男は静かにカードをドローした。
そして6枚の手札を確認し、すぐに動き始める。

「カードを2枚伏せ、魔法カード《手札抹殺(てふだまっさつ)》を発動」

実体化したカードには、奈落の底へ落ちて行く数枚のカードが描かれていた。

手札抹殺(てふだまっさつ)
魔法カード
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

「手札交換カードか」
「俺は3枚の手札を捨て、デッキから新たに3枚のカードをドローする」

遊雅もその効果に従って、残った1枚の手札を墓地に捨て、デッキから新たに1枚ドローした。

「ここで、今墓地に捨てた《暗黒界(あんこくかい)龍神(りゅうしん) グラファ》の効果を発動する」
「なにっ、墓地に捨てて発動する効果!?」
「カードの効果によって手札から墓地に捨てられた時、相手フィールド上のカードを1枚破壊できる。俺が墓地に捨てたグラファのカードは2枚。よって、貴様のカードを2枚破壊させてもらう」

暗黒界(あんこくかい)龍神(りゅうしん) グラファ》
☆☆☆☆☆☆☆☆ 闇属性
ATK/2700 DEF/1800
【悪魔族・効果】
このカードは《暗黒界の龍神 グラファ》以外の自分フィールド上に表側表示で存在する『暗黒界』と名のついたモンスター1体を手札に戻し、墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。
相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手の手札をランダムに1枚確認する。
確認したカードがモンスターだった場合、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

「破壊するのは、永続魔法カードとモンスターカードだ」

男のデュエル・ディスクの墓地から溢れ出した禍々しい力の奔流が、遊雅のフィールドを蹂躙する。
それによって、《旋風(せんぷう)のボルテクス》と《鳥兵令(ちょうへいれい)》は破壊されてしまった。

「くっ……何て効果だ……!」
「更に、先に伏せておいた魔法カードをここで発動する。《暗黒界(あんこくかい)(いかずち)》」

暗黒界(あんこくかい)(いかずち)
魔法カード
フィールド上に裏側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。
その後、自分の手札を1枚選択して捨てる。

「その伏せカードを破壊だ」

遊雅の伏せた《風神竜(ふうじんりゅう)復活(ふっかつ)》に、激しい電流が生じ、そのまま消滅してしまう。
あっという間に、遊雅のフィールドはガラ空きになってしまった。

「そして、手札を1枚捨てる。ここで、今捨てたカードの効果を発動する」
「またか……!?」
「捨てたカードは《暗黒界(あんこくかい)武神(ぶしん) ゴルド》。カード効果で手札から捨てられた場合、自分フィールド上に特殊召喚できる」

男のフィールド上に、巨大な斧を握り、黄金の装飾を身にまとった悪魔が姿を現した。

暗黒界(あんこくかい)武神(ぶしん) ゴルド》
☆☆☆☆☆ 闇属性
ATK/2300 DEF/1400
【悪魔族・効果】
このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、このカードを墓地から特殊召喚する。
相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手フィールド上に存在するカードを2枚まで選択して破壊する事ができる。

「更にもう1枚の伏せカード、《暗黒界(あんこくかい)取引(とりひき)》を発動。お互いのプレイヤーはカードを1枚ドローした(のち)、手札からカードを1枚墓地に捨てる」

暗黒界(あんこくかい)取引(とりひき)
魔法カード
お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる。

2人は共にカードをドローし、自ら選んだカードを墓地に捨てる。

「そして再び、捨てたカードの効果を発動。ゴルド同様、手札から捨てられた時にフィールド上に特殊召喚できる。出でよ、《暗黒界(あんこくかい)軍神(ぐんしん) シルバ》」

両手に剣を逆手に握った、銀色の体を持つ悪魔が、黄金の悪魔の隣に並び立った。

暗黒界(あんこくかい)軍神(ぐんしん) シルバ》
☆☆☆☆☆ 闇属性
ATK/2300 DEF/1400
【悪魔族・効果】
このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、このカードを墓地から特殊召喚する。
相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手は手札を2枚選択して好きな順番でデッキの下に戻す。

「攻撃力2300のモンスターが……2体……」
「バトルだ。2体のモンスターで、貴様へ直接攻撃を行う」

おぞましい形相の2体の悪魔が、遊雅に襲い掛かる。
2本の剣と大斧の連続攻撃によって、遊雅は後ろへ吹き飛ばされてしまった。

「うわぁっ!!」

南雲 遊雅
LP/4000→LP/0

「ふん、他愛(たわい)もない。さぁ、大人しく風神竜のカードをこちらに渡せ」
「くっ……だから、今は持ってないって言ってるだろ……!」
「あくまでも世迷言を抜かし続けるつもりか。ならば無理にでも奪わせてもらうぞ」

男は遊雅に近づき、デュエル・ディスクから強引にデッキを奪い取った。

「くそっ、返せ!!」

遊雅の静止も聞かず、男はデッキの物色を続ける。
強引に取り返そうと考えた遊雅だったが、どういうわけか体が言う事を聞かなかった。
まるで、ソリッドビジョンではなく実体から攻撃を受けたような、そんな感覚で、体は重々しくまるで動かせない状態だ。

「なにっ、まさか本当に……!」

デッキの物色を終えたのだろう。男は悔しさのような、怒りのような感情を露わにした。

「くっ、風神竜はどこだ!答えろ!」
「へっ……、誰が、答えてやるもんかよ……」
「貴様っ……!!」

ようやく見えた男の顔は、先程の2体の悪魔にも引けを取らない形相に歪んでいた。
男は遊雅に詰め寄る。しかし、遊雅の胸倉を掴んだ所で、男は急に怒気を忍ばせた。

「はっ、しかし。……かしこまりました」

誰かと会話するような口振りの男は、そのまま遊雅を掴んでいた手を離し、デッキもその場に落として、「次はこうは行かんぞ」と捨て台詞を残して去って行った。

「何だったんだ、あいつ……」

息も切れ切れに、遊雅は散らばった自分のデッキを回収し、ようやく重々しさも収まり始めた体で、覚束ない足取りながらも残りの帰路を急いだ。
程なくして、遊雅は自宅前に到着する。
母親に何かを問われた時の言い訳を頭の中で整理し、玄関の扉を開く。
案の定、ふらふらとした足取りの遊雅を見た母親が、何事かと訊ねて来た。

「お帰りなさ……遊雅、あんたどうしたの?」
「いや、カード見るのにはまっちゃって遅くなったから、走って帰って来たんだよ」
「走ったぐらいでそんなになるわけないじゃない。どうしたのよ?」
「いや、だから……」

そこで、ダイニングルームから今度は父親が姿を現した。

「どうした?何かあったのか?」
「お父さん……遊雅の様子が変なのよ。聞いてもちゃんと答えてくれなくて」

我ながら嘘が下手だと痛感しながら、遊雅は正直に話す決心をした。

「分かった。正直に話すよ」
「その前に、まずは腰を落ち着けよう。お前もその方がいいだろう」

3人でダイニングルームへ向かう。
食卓について少し待ってから、遊雅は一連の出来事についてを両親に話して聞かせた。

「実は……帰りに、亜璃沙の家であいつと別れた後に、妙な奴に絡まれたんだ」
「絡まれた?」
「ああ。そいつ、《フレスヴェルク・ドラゴン》の事知ってるみたいで、あのカードをよこせって言って来たんだ」
「……《フレスヴェルク・ドラゴン》を、か……」
「そんで、デュエルを挑まれて……あいつのモンスターの直接攻撃を受けたら、思うように体が動かなくなったんだ。今はもう、いくらかましになったけど」
「そう……それで、その人はどうしたの?」
「分からない。俺にカードの在り処を聞き出そうとする途中で、何かぶつぶつ独り言言いながら、どっか行っちまったんだ」

そこまで話すと、両親は急に黙り込んでしまった。
遊雅は、朝からずっと気になっていた事を、両親に訊ねた。

「なぁ、《フレスヴェルク・ドラゴン》って、どうやって手に入れたんだ?」
「えっ……どう言う事?」

とぼけたつもりだろうが、母親は目に見えて動揺していた。
実の息子である遊雅が、そんな様子を見逃すはずがなかった。

「朝、クラスメートに言われたんだ。色んなカードカタログを見たけど、あんなカードどこにも載ってなかったって」
「た、たまたま、載ってないカタログを見てたんじゃ……」
「そうかもしれない。俺もそう思ったよ。けど、あのカードを狙って実際に襲撃されたとあっちゃ、疑わざるを得ないだろ」
「け、けど……」
「母さん、いい。俺から話そう」

反論しようとする母親を制して、父親がその様に告げた。

「いいか、遊雅。今から話す事は全て真実だ。お前を誤魔化そうと嘘をついているわけじゃない、と言う事を先に言っておく」

その宣言に、遊雅は言葉の代わりに首肯を返した。
それを見た父親は、ゆっくりと語り始める。

「お前に渡した3枚のカード、《フレスヴェルク・ドラゴン》と2枚の風神竜のカードは、お前が産まれて来た時に抱えていた物なんだ」
「えっ……?」

無論、遊雅は驚いた。
とても信じられない話だが、父親の『嘘はつかない』と言う宣言が、彼にこの話を信じさせた。
父親は自分が言った事を絶対に貫き通す人間だと言う事を、遊雅は知っていたからだ。
これまでの人生の中で、父親が約束を破った事など、遊雅は一度も見た事がなかった。

「産まれたばかりのお前が、あの3枚のカードを抱きかかえていたんだ」
「……どう言う事だ?」
「勿論、俺達も驚いたさ。赤ん坊が何かを持って産まれて来る。ましてそれがカードだなんて、信じたくても信じられないからな。だが、それは現実だった」
「だからあのカードは俺に何か関係があるって事で、俺に渡したのか?」
「そうだ。何かの縁があって、ひょっとしたらお前のお守り代わりにもなるかもしれないと母さんと話した上で、お前にあの3枚を渡したんだ」
「……そう、なのか」

ダイニングルームは、しばしの間静寂に包まれる。
それから最初に口を開いたのは、遊雅の母だった。

「遊雅、もうあのカードは手放しなさい」
「母さん、どうして?」
「あのカードが狙われているなら、素直に渡した方がいいわ。そうじゃないと、あんたの身に危険が及ぶかもしれないのよ?」

確かに、母親が言うのは最もな事だった。
たかがカード。その為に、自分の身が危険に晒される必要はなかった。
しかし、遊雅は――

「嫌だ」

――それを拒否した。

「どうして!」
「フレスヴェルクは……あいつは、小さい頃からずっと一緒だったんだ!どこのどいつかも知らない奴に、あいつを渡したくなんてない!」
「遊雅、現にお前は襲われたんだぞ?それでもか?」
「それでもだ!襲って来るんなら、片っ端からぶっ倒してやればいい!今日は負けたけど、絶対もっと強くなってやるんだ!」
「遊雅!」

母親が声を荒げる。
無理もない。自分達の大切な息子が、危険に晒されているのだから。

「俺は絶対に嫌だ!」

何と言われようと、遊雅はこの意思を貫き通したかった。
幼い頃からずっと一緒だったから、と言うだけではない。
あのカードは絶対に手放してはいけない。先程の男と接触した時から、遊雅の心中にはそんな感情が芽生えていた。

「母さん、やめておけ。こいつは俺に似てる奴だからな。こうだ、と決めたら折れないだろう」
「お父さん!遊雅が危ないのよ!?」
「本人がぶっ倒してやると言っているんだ。それだけの自信があるって事だろ?」

遊雅の目をまっすぐに見据えながら、父親はそう遊雅に訊ねた。
力強く頷いた遊雅を見て、父親は顔を綻ばせる。

「なら、俺はもう何も言わんよ。遊雅、お前の夢は、最強のデュエリストだもんな」
「ああ」
「それなら大丈夫だ」
「お父さん!」
「暴行を受けたわけでもない。遊雅が挑まれたのはデュエルだ。ならこいつが強くなれば、それで解決だろう?」
「……どうしてそんなに楽観的なのよ」
「別に、楽観的だと言う意識はないさ。母さんも、遊雅を信用してやれ。俺達の応援が、何よりこいつの力になるはずだ」
「……遊雅」

父親の信頼の眼差しと、母親の不安の眼差しが交じり合った視線が、遊雅に向く。
遊雅はそれを、真正面から受け止めた。

「母さん、大丈夫だよ。俺は誰にも負けないから」
「……そう。思えば、小さい頃からあんたが大人しく言う事聞いた事もなかったわね」
「そう言えばそうだ。全く、嫌な所が似てしまったもんだなぁ」

2人はそんな事を言いながら笑っている。
遊雅も少し複雑な気分ではあったが、ひとまず、信頼を勝ち取れた事を喜ぶ事にした。
暫くしてから、母親が夕食の準備をする為にキッチンへ向かう。
遊雅も一旦、自分の部屋に戻る事にした。

「……よしっ」

決意は確固たる物になった。
後は、自分が強くなるだけだ。
遊雅は自分のデッキの上に手を置いて、気を引き締めた。
最強のデュエリストになってやると言う気持ちは、よりいっそう強くなったのだった。 
 

 
後書き
はい、すみません。風神竜の設定思いっきりARC-Ⅴの柚子のブレスレットの設定と被ってますね。
ただ1つ言い訳をさせてもらうと、パクったわけではないです。何とか色々考えたんですが、私の中でしっくり来る設定がこれしかなかったわけです。はい。

と言うわけで、まずは1つ明らかになった風神竜の謎。
この謎がこれからどのように動いていくのか。是非是非、ご期待くださいませ。 
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