ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine and step on blue light in Aincrad
Chapter-1 リンクスタート
Story1-2 遊びの終わり
シャオンside
俺たちは今、始まりの町の西側の草原にいる。
目の前でクラインがフレンジーボアと戦っている。
「ぬおっ!とりゃっ!」
ブヒッ ガン
「うひぇぇっ~!」
剣先が見事に空気をきり、その隙にモンスターの突進がクラインの股間にクリーンヒット。
ここ何回かの攻防でHPが半分まで減っている。
いやー……初心者の戦い方って笑えるシーンの宝庫だよなー……そんなことを考えてはいるが、今はクラインへのレクチャー中だ。俺は頑張って笑いをこらえ、
「クライン、大丈夫。絶対痛くないから」
と言った。
「あ、そっか」
クラインはひょいと立ち上がる。
「クライン、大事なのは初動のモーションだ」
「そんなこと言われてもよぉ、キリト。アイツ動きやがるし」
……そんなんで今後戦っていけるのか?
「動くのは当たり前だ、訓練用のカカシじゃないし。
簡単に言うとな、1,2,3じゃなくて、初動のモーションでタメを入れて、立ち上がってきたのを感じたら、一気に降り下ろす感じ。
シャオン、お手本よろしく」
「モーションを起こして……ソードスキルを発動させれば………システムが技を命中させてくれる。
こんな感じになっ!」
俺の拾った小石が緑色に光り、放物線を描きながらフレンジーボアに吸い込まれていった。
投剣スキル技〔シングルシュート〕だ。
フレンジーボアが鳴き、ターゲットがクラインから俺に変わった。
俺はフレンジーボアの突進攻撃を剣でブロックしながら言った。
「やってみろよ。一回出来りゃ、絶対できる」
「ズバーンかぁ………ん、おっ?」
クラインは分かったのだろう。剣を構えた。
お、よし……これならいけるな。
タイミングを計ってフレンジーボアをクラインの方へと蹴り飛ばした。
「オリャァァァ!!!!」
クラインが構え直し、フレンジーボアに向かって剣を降り下ろした。今度はシステムがモーションを検出し、クラインの剣がオレンジ色に光った。
片手用曲刀基本技〔リーバー〕だ。
その一撃は、ボアのHPバーを一気に消滅させ
バリィィィン!!
フレンジーボアは鮮やかに弾けて砕け散った。
「よっしゃあああ!!」
クラインは盛大にガッツポーズ。
「おめでとう、頑張ったじゃん」
俺は手を出し、クラインとハイタッチ。
しかし、キリトは空気を読まない。
「初勝利おめでとう。でも、あのモンスター、某人気ゲームでいうスライム並だけど」
誉めてあげようよ、そこは。
まぁ、キリトの言ったことは間違ってないんだけど。
「えっ。おりゃてっきり中ボスかと」
「んなわけあるか」
その後はモンスターと戦う事はせず、クラインはスキル発動の練習をしていた。反復練習も、立派な練習だ。
「おお〜〜!」
何度かやって、コツを掴んだようだ。
「なっ、ハマるだろう?」
キリトはそう言って笑う。
「スキルって色々あるんだろう?武器を作るとかさ?」
「ああ、スキルの種類は無数にあるって言われてる。
その代わり、魔法はないんだけどな」
そう、このSAOには、魔法は存在しない。
遠距離の攻撃手段はほぼないと言ってもいいぐらいだからな。
「RPGで、魔法無しか。大胆な設定だな!」
ごもっともな意見だな。
クラインは素振りの練習の様にスキルを使う。
「自分の体を動かして戦う方が面白いだろう?」
「確かにな」
「やっぱそうだよな」
俺たち三人はすっかり打ち解けていた。その後は狩りを再開していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、時刻は夕方。
夕日が沈んで行く光景は現実と全く変わらないものだった。
「何度見ても信じられねーな。ここがゲームの中なんてよ? 作ったやつは天才だぜ。マジでこの時代に生まれてよかったわ」
「それは俺も同感だよ。普段なかなか感じれないものがここでは手に入る。まだまだ終わりも見えないし、最高だ」
「大げさだな。お前らは。ナーヴギア用のゲームやるの、これが初めてなのか?」
キリトが聞いてきた。
「ああ。ってか、これが発売と同時にそろえたって感じだ」
「俺はVRMMO結構やってた。でも……SAOにしか興味は無かったな」
俺とクラインはそう言う。
「それにしてもよぉ、 我ながら運が良かったと思ってるぜ。たった1万本しかない初回ロットを手に入れられるなんてよ?ほとんどの運を使ったって感じだ。だけど、お前らほどじゃないか」
そう言ってクラインは俺たちを見た。
「確かにな」
「半年分の運を使ったよ。もうほとんどない」
2人同時に振り向く。
「Bテストに当選だろう? あれは1万の更に10分の1、1000本ぼっちだもんな」
そういえばそうだったっけ。
「おっ、そういえばよ。Bテストの時は何処まで言ったんだ?」
クラインがそれを聞いた。
「俺は2ヶ月で14層だったかな」
「へ〜。結構なペースで攻略できるんだな?」
「そいつは特別だよ。シャオンは、ほんっと異常なんだ。オレがどんだけ頑張っても10層までしか行けなかったのにな。初めっからほんとに………くそっ」
「かっ! はははっ! ほんっと悔しいんだな。キリトは。
なら、正式サービスの今、追い抜いたらいいじゃねえか。それにお前ら、相当にハマってるな?」
クラインはそう言って笑っていた。
「今が一番充実してる。仮想空間で生きるのも悪くないな、って思う」
「ここではこの剣一本でどこまでも上っていけるんだ。あの期間では寝ても覚めてもSAOの事しか考えていなかったよ。それにな、仮想空間なのに、現実世界より生きてるって感じがしてるんだ」
「だな」
「さて、もう少し狩りを続けるか?」
キリトがそう聞くと
「俺は続けるよ。今日くらいはキリトと一緒にな」
「あったりめーよ! ………と言いたいところだが」
ギュルルル
クラインの腹から音がなる。そこまで再現してるとは恐れ入ったものだ。
「5時半に熱々のピザを頼んでいるんだ!一度落ちるぜ」
「準備万端だなお前」
「まあ、その後にまたログインするさ。それよりもどうだ?オレこの後、仲間と落ち合う予定なんだ。良かったらフレンド登録しないか?」
「それもいいな」
しかし……
「え………」
キリトは難色を示していた。そういやこいつコミュ障みたいなとこあったな。
「いやいや!
無理にとは言わないんだ。それにそのうち紹介することもあるだろうしな?」
「そっか」
「ありがとな? この礼はいつか必ずする。精神的にな?」
「「期待しとくよ」」
はい、嘘です。期待なんてしてません。でも、僅かな望みを心に留めておきながら、近くの岩に腰を降ろした。
アイテムの確認&整理やステータス&スキルの確認をするためだ。
右手を振って出したメニュー画面でいろいろしてると
「あれ? ログアウトボタンがねぇ」
クラインが呟いた。
「無い? よく見てみろよ」
キリトにそういわれ、再び確認するクライン。
「ん、やっぱ、何処にもねーよ」
「メインメニューの一番下にないのか?」
俺も最初の画面に戻して確認するが、そのメニューには オプションとヘルプの二項目だけだった。
本来一番下にあるはずのものがなかったのだ。
「本当か?
………うん、無い」
キリトも確認するがやっぱり無かった。
「まぁ、今日が正式サービス初日だからな、こんなバグもあるだろう。今頃運営は半泣きだろうな」
クラインはそう言った。
「お前もな」
キリトがそう言う。
「あん? どう言うこった?」
「時刻を見てみろ。今17:25だ。後5分だろ?」
そう返すと
「あっ、ああああああああ!!!!!!!! 俺様のテリマヨピザとジンジャーエールがぁ!!!!!!」
「さっさとGMコールしろよ」
「は? とっくに試したさ。でも全然反応が無いんだよ。他にログアウト方法は無いのか?」
クラインが言った。
「無いな」
キリトは答えた。
「これさ、絶対におかしいって」
GMコールは俺も試した。だが、反応が無い。
そのことの異常さがすぐにわかった。
「どう言う事だ?」
「プログラムのバグはどんなものであれ、顧客の信用を失うことにつながる。
ゲームからログアウトできない、そんなバグが見つかったと少なくとも1万人に知られたわけだ。
そんなゲーム、今後誰がやってみたいと思う?」
俺はそう答えた。
その問いに皆の顔が曇る。
クラインがいろいろやってるが、マニュアルの中にも緊急切断システムは無かったはずだから無駄だ。
「異常があった時、Bテスト期間だったらアナウンスがちゃんとあった。信用問題にならない様に措置はしっかりとっていたのに」
キリトもそう答える。
「だったらどうすりゃいいんだ! おっ、そうだ! ナーヴギアを外すとか!!」
「無駄だよ。現実世界では体は動かない。ナーヴギアの後頭部の部分が脳から体に伝える信号を遮断しているんだから」
キリトはそう答えた。
「く〜〜どうすりゃいいんだ!」
「後は、現実でナーヴギアを外してもらうしかない」
「え〜でも、オレは1人暮らしだし」
「俺は妹と母親がいる。夕食には起こしてくれると思うが」
その言葉を聞いたとき
「な、なっ!? キリトに妹がいるのか!?」
クラインはキリトに掴みかかっていた。こいつ根はオッサン確定。
「ちょっ、妹は体育会系で、ゲーム嫌いだし、人種が……」
「いいじゃねえかよっ!」
クラインは喰らい付くのをやめなかった。
「しつこいぞっ!」
「ギャース! ってそうか、痛くないんだった」
クラインがキリトの渾身の蹴りから回復する。
「俺、今は家にみんないないからなぁ………」
「ぼっち組は寂しいよなぁ……」
「だな」
俺とクラインが雰囲気無視で軽くどんよりしていると、キリトが言った。
「明らかにおかしいんだ。少なくとも原因が分かるまでは、一緒にいた方がいい」
「俺もそう思う。日も暮れるし」
とりあえずは、3人で行動することにした。
数秒後、体が青い光に包まれた。
「なんだこれ?」
「この光……転移だ!しかも、強制転移……?」
ーーーーーーーーーその瞬間、世界は急激に、そして永久にその姿を変えることになった。
Story1-2 END
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