遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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十話 乱入です。
前書き
LDS vs 遊勝塾のタックデュエル二戦目、柚子vs真澄にて、
まさかのワンターンキル
真澄さん、マジ強過ぎっすよォ!
「じゃんじゃじゃ〜ん!善かれと思って、私、参、上!」
「ね、姉ちゃん!?」
「ゆ、優希!?」
突如として現れた乱入者ーーもとい、私に皆、驚きを隠せず、口を開けてポカンとしている。
まぁ、そうなるようにタイミングを計ったんだけどねー。
「今更来てもデュエルは終わったわよ!」
「えー、別にいいじゃん。それとも、LDSさんはこんな弱小塾にでも負けるとビビってるのかな?あっ、ごっめーん。先行プレアデス(笑)君は負けちゃったんだっけ〜?」
『おうふ……なんか優希さんのテンションがおかしいです。やっぱ、ファントム・オブ・カオスをワープに使うのは不味かったですかね?SAN値がゴッソリ削られてるようです……。まぁ、すぐに戻るでしょう」
なんか、デスガイドが怪しい事を言ってるが、無視だ、無視。そんなことすら気にならないほど私はテンションがハイッ!なのだよ!!
この昂りを抑えるためには、デュエルしかない。
「というわけで、ますみん、デュエルしろよ!」
「ちょっ、優希!?あなた、何かおかしいわよ!」
「いいわ、真澄さん。そんな小娘のして差し上げない。」
「ふわぁっ!?理事長せんせー!?」
まさかの理事長からGOサインが出て焦るますみん。まぁ、どっちにせよ、デュエルできるのだからどーでもいい。
◆◇◆
柚子:LP0 vs 真澄:LP4000 vs 優希:LP4000
「くっ、こうなったらやってあげるわ!
私はカードを一枚伏せてターンエンドよ。」
焦った表情から一転し、デュエリスト特有の凛々しい表情となると私を見据える。ちなみに、すでにリタイアしている柚子はアクションフィールドの端っこに避難している。
ますみんの手札は三枚、内一枚はラピス。場はダイヤと伏せ一枚か……。伏せカードはおそらく相手ターンでも融合が行える【輝石融合】か、【廃石融合】の線が濃厚だろう。めんどうなのは、【強制脱出装置】とかのフリーチェーンだけど、そっちなら【マスクチェンジ】で別のHEROに取り替えてしまえば、OKだ。
もっともそんなことは関係ない!正面から叩き潰す!
「私のターン、ドロー!手札から【E・HERO ブレイズマン】を召喚!効果でデッキから【融合】魔法を手札に加える!」
「なっ、融合ですって!?」
と、ピンクのハート型という奇抜な髪型をしたおばさんがヒステリックな声をあげる。そりゃそうだろ、融合召喚はLDSの専売特許。どこの馬の骨かもわからない小娘に使われていたら、そんな反応もわかる……
……わけねぇよ!!融合なんてテキストに記されたモンスターを集めて、墓地に送るだけだろ!
と徹に話したら、まぁ、知ってる人だけが言える台詞だよ。と呆れられた。解せぬ。
「きたわね、優希のHEROデッキ。今日こそは勝つ!」
闘志をギラギラと滾らせながらこっちの動きを伺っているますみん。ものすっごく怖いんですけど!?
「できるもんなら、やってみろ。【愚かな埋葬】を発動!デッキから【E・HERO シャドーミスト】墓地に送る。そして、ライフを1000ポイント払い、【簡易融合】を発動!エクストラデッキから【旧神ノーデン】を特殊召喚し、効果で墓地のシャドー・ミストを蘇生する。そして、特殊召喚したシャドー・ミストの効果を発動し、【フォーム・チェンジ】を手札に加える。」
瞬く間にモンスターが増え、レベル4のモンスターが三体並ぶ。これで、勝利の方程式は整った!
LP4000→3000
「レベル4のノーデンとシャドー・ミストでオーバレイ!エクシーズ召喚【鳥銃士カステル】!!」
ノーデンとシャドー・ミストの二体が光球となり、紅く輝く渦へと飲み込まれる。そして、強烈なライトエフェクトと共に銃口の長い銃を携えたモンスターが登場する。
「え、エクシーズ召喚だと!?あいつ、融合だけじゃねえのか!」
と、エクシーズ召喚コース主席の志島北斗が声をあげる。
そーいや、私が融合使うことはともかく、エクシーズ召喚は使うって知らなかったっけ?
「カステルのオーバーレイ・ユニットを二つ取り除き、ダイヤをデッキに戻す。カステル、ダイヤを撃ちぬけ!」
標準をマスター・ダイヤへと向け、引き金を引く。
「させない!リバースカードオープン【輝石融合】!手札のラピスと場のダイヤを融合する!現れよ、【ジェムナイト・ジルコニア】!これで、対象がいなくなったから、効果は不発よ。」
伏せていた【輝石融合】でカステルのバウンス効果を躱し、ドヤ顔を決めるますみん。
残念だが、割と予想通りである。
そして、ダイヤの代わりに召喚されたのはジルコニア。攻撃力が2900と3000までには微妙に届かない。
「私は手札の【融合】を発動し、ブレイズマンとカステルを融合!
正義のHEROよ!荒れ狂う風を纏いて、勝利の風を巻きおこせ!融合召喚【E・HERO Great TRONADO】!!」
【E・HERO Great TRONADO】 風 ☆8 ATK2800
「「おい、融合とエクシーズの両方を使う奴なんて聞いたことねぇぞ!?」」
使うの融合とエクシーズだけじゃないんだけどなー。
「Great TRONADOの効果を発動!相手の表側表示モンスターの攻守を半分にする。ダウンバースト!」
【ジェムナイト・ジルコニア】ATK2900→1450
暴風が襲い、ジルコニアを地面へと叩きつける。
「バトル!Great TRONADOでジルコニアを攻撃!スーパーセル!」
私の指示を受け、グレートトルネードが風を纏った拳をジルコニアに叩きつけ、粉砕する。そして、同時に巻き起された暴風がますみんを襲うも透明な障壁に阻まれていた。
「なん……だと……っ!?」
「残念だったわね。私はアクションマジック【クリスタルガード】を発動させたのよ。このカードはこのターン受けるダメージを全てのダメージを0にできるわ。
さっき起きた風のおかげで、アクションカードが手元に来てくれたのよ。」
どうやら、グレートトルネードの起こした風が裏目に出たらしく、配置されていたカードを吹き飛ばし、運良くますみんの手元にきてしまったらしい。
くそっ!インチキ効果がいい加減にしろよな⁉︎
「カードを二枚伏せて、ターンエンド」
ちっ、せっかくワンターンキルを決めてやろうと思ったのに。やっぱり、アクションカードはずるい。
「……こうなったら、最近になって習得した禁じ手を初お披露目してやろうか。」
ニヤリと口角を上げ、嗤う。
「き、禁じ手だって……!?ま、まずい!真澄、今すぐそのデュエルをやめるんだ!さもないと……ひぃ⁉︎」
観覧席の方から遊矢が顔を青白くなり、必死に何かを叫ぶがせっかくのデュエル、中断なんてさせないと優希に人睨みされ、まるでヴェノミナーガに睨まれたデスガエルよろしく行動を停止する。
『……ゆ、優希が恐いです。てか、何ですか、その禁じ手って?」
まぁ、見てれば分かるよ……フフフフ
「まったくなんなのよ……。ドロー!来たわね。
私は手札から【E・HERO プリズマー】を召喚するわ。」
水晶の体をもつ戦士が真澄の目の前へと召喚されると、このデュエルを見ていた全員が驚愕する。
「っ⁉︎なんで、真澄さんが姉ちゃんのHEROを使ってんのさ!」
と、徹が驚きの声を上げる。
「あぁ、それな。なんか真澄の奴、あの女に負けまくってよほど悔しいらしくて、なんとか勝ってやろうと考えてる内に、敵を倒すにはまず相手の事を知れ!と言われたらしくてよ。でまずHEROの事を知るためにデッキに入れてるんだと。」
「ちょ、ちょっと⁉︎刃!ペラペラ人のこと喋んな!」
知られて欲しくなかったことらしく、羞恥か怒りか、顔を真っ赤にして刃に抗議の声をあげる。
そして、優希はただ召喚された【E・HERO プリズマー】を見て呆然としている。そして、動き出したかと思うと、肩を小さく震わせ……
「クックックッ……ついに!ついに、ますみんがHEROの良さをわかってくれたんだね!!いやっほーい!」
ハイテンションになっていた。
HEROって、男の子っぽいってなんども言われてるからね〜。同性のしかも、身近な人に使ってもらえるってのは自分の考えが伝わったみたいな感じで嬉しいんだよ!!と後日、優希が語っていた。
「ち、違うわよ!こ、これは別に……HEROがどうこうじゃなくて、あんたを倒す為なんだから!」
「そーんなこと言っちゃて〜。ツンデレだな〜、ますみんは〜」
「ち、違うわ!てか、ますみんって呼ぶなぁ!このっ、このデュエルで勝って絶対そのあだ名やめさせてやる!」
「やれるもんなら、やってみろ!!」
バチリバチリと両者の視線が交差し、火花を散らす。一方、既にリタイアしている柚子は二人の放つ威圧感で小さくなり、震えていた。
「私はプリズマーの効果を発動!エクストラデッキの融合モンスター一体を相手に見せ、カード名が記されている融合素材モンスターをデッキから墓地に送る事ができる。そして、このカードはこの効果で墓地に送ったモンスターと同名カードとして扱える。
私は【ジェムナイト・ルビーズ】をオープンし、デッキから【ジェムナイト・ガネット】を墓地に送る。」
効果が発動され、プリズマーが光を反射し、ガネットの幻影を作り出す。そして、それに呼応するかのようにアクションフィールド《クリスタルコリドー》の水晶が放つ輝きも強くなる。
「綺麗〜」
「くぅーー!綺麗過ぎて、痺れるぜ〜!」
おいおい……ガキンチョ共、私を応援しろよな……。薄情者……
『大丈夫ですよ、優希さん。四六時中、いつだって私が応援してますから!』
デスガイド、お前は自重しろよ!
「さらに私は墓地の【ジェムナイト・ガネット】を除外し、【ジェムナイト・フュージョン】を手札に加え、そして、発動!私は【ジェムナイト・ガネット】扱いとなっているプリズマーと手札の【ジェムナイト・ラピス】で融合召喚!神秘の力秘めし石よ!今、七色の光と一つとなりて新たな力生み出さん!現れよ、【ジェムナイト・ルビーズ】!
まだ終わらない!私は手札から【ミラクル・フュージョン】を発動する。墓地の【E・HEROプリズマー】と【ジェムナイト・ラピス】を除外し、融合召喚!七色の光の戦士よ!今、大地の力を得て、新たな力を生み出さん!融合召喚!現れよ、その拳は大地を揺らす!地を砕く!【E・HERO ガイア】!」
ジェムナイトとE・HEROの二つを使用した二連続融合召喚。瞬く間に強力なモンスターがますみんの場に並ぶ。
「そして、【E・HERO ガイア】の効果を発動!エンドフェイズまで【E・HERO Great TRONADO】の攻撃力を半分にし、その数値分、ガイアの攻撃力に加算する!アース・ドレイン!」
「やらせないよ!チェーンして速攻魔法【フォーム・チェンジ】発動!私の場の融合HERO一体をデッキへと戻し、同じレベルかつ名前が違うM・HERO一体を特殊召喚する。私は【E・HERO Great TRONADO】をデッキへと戻し、エクストラデッキから【M・HERO カミカゼ】を特殊召喚!これで対象を失った事により、ガイアの効果は不発だよ。」
カミカゼの攻撃力はますみんの場のモンスター二体よりも上、私のライフはそう簡単には削らせてやらん。
「手札から魔法カード発動【死者蘇生】!墓地から【ジェムナイト・ジルコニア】を特殊召喚!」
はぁ⁉︎ここでジルコニアかよ!てか、不味くね
「私は【ジェムナイト・ルビーズ】の効果を発動!ジルコニアをリリースし、エンドフェイズ時までその元々の攻撃力分、攻撃力をアップさせる。ジルコニアの攻撃力は2900。よって、ルビーズの攻撃力は5400となる。
バトル!【ジェムナイト・ルビーズ】でカミカゼを攻撃!」
ルビーズが両手斧をカミカゼに向けて、振り下ろす。そして、その際の衝撃波が私を襲う。なんとか踏ん張って耐えるも、結構体に響くてか、痛い。
「うわっ⁉︎ぐ、ぐぅぅ……効いたよ。やるね、ますみん。」
優希LP3000→300
今の一撃でライフをごっそり減らされ、セーフティラインである残りライフ1000を大きく下回る。
「よし、やっちまえ、真澄!ダイレクトアタックでこの勝負は締め……だ?なに!」
ルビーズの攻撃を受けたはずのカミカゼが何事もなかったかのようにますみんの前へと立ちふさがり、睨み据える。
「カミカゼは戦闘では破壊されず、しかもこのカードが私の場に存在する限り相手は一度しか攻撃ができない。残念でした〜、私無事。」
「ちっ、次のターンでケリをつけてあげるわ!カードを一枚伏せてターンエンドよ。」
次があればね……だけどね……。
「私のターン、ドロー!」手札から【ブリキンギョ】を通常召喚する。」
某銀行のアレみたいなモンスターが機械が私の目の前に現れる。
「……融合じゃない?そんなモンスター出してどうする気よ、優希?まさか、勝ちを諦めたのかしら?」
自分の圧倒的有利を信じてかニヤリと笑みを浮かべてくるますみん。
おーおー、煽ってくるね〜。だが、たかが、ライフ4000なんて私のデッキの前じゃ0に等しいわ!
「私は召喚に成功したブリキンギョの効果を発動!手札からレベル4モンスターを特殊召喚できる。来て、チューナーモンスター【ライトロード・アーチャー フェリス】!」
緑の髪の毛をポニーテールに纏めた猫っ子が私の目の前に現れる。
「……チューナー……だと⁉︎あいつ、融合とエクシーズだけじゃなくて、シンクロも使えんのかよ‼︎」
と、シンクロ召喚コース主席の刃が声をあげる。
「私はレベル4のチューナー、フェリスにレベル4のブリキンギョをチューニング!シンクロ召喚!現れよ、【ギガンティック・ファイター】!!そして、まだ終わらない。手札から【ミラクル・フュージョン】を発動!墓地の【E・HERO ブレイズマン】と【ブリキンギョ】で融合召喚!来い、極寒のHERO!【E・HERO アブソルートZero】!」
Zeroの登場と共に回廊内に吹雪が吹き荒れ、一気に目の前が白く染まる。
「そして、【マスク・チェンジ】発動。Zeroを墓地へと送り、デッキから【M・HERO アシッド】を変身召喚!」
Zeroが光を纏い、変身。姿を変え、現れたのは昭和仮面ライダーの様なHEROだ。
「ガンガン行こうか!フィールドを離れたZeroと特殊召喚に成功したアシッドの効果を発動!アシッドの効果により、相手の場の魔法・罠全てを破壊。そして、Zeroの効果で相手の場のモンスター全てを破壊する!」
アクションフィールド内に猛吹雪が吹き荒れ、ますみんのモンスターを氷像と化し、アシッドにより、伏せられていた【聖なるバリア ミラーフォース】が撃ち抜かれる。
「い、一瞬で真澄の場がガラ空きに……。なんてやつだ、あいつ。形成逆転しやがった……。」
「……それがうちの姉ちゃんですから。それに……いや、ナンデモナイデス。」
徹がどこか遠い目をして、ポツリと呟く。
「う、嘘でしょ……⁉︎あ、アクションカードを……っ‼︎、う、動けない!」
忘れていたかのようにアクションカードを探しに行こうとするが自分の体……いや、足がまるで地面に縫い付けられたかのように動かない事に動揺する。
「こ、凍りついてる!?な、なんで!」
床一面雪に覆われ、真澄の足元を凍りつかせたのだ。ちなみになぜか優希の周りだけほとんど吹雪の被害がない。
コレは【E・HEROアブソルートZero】によるアクションデュエル特有のエフェクト。
遊勝塾に入学してからアクションデュエルを何度か経験することによって編み出したした優希の禁じ手。
ちなみにだが、禁じ手の試験者第1号となった遊矢は隅で頭を抱えてHERO怖い、HERO怖いと呟いている。
「……フッフッフッ。今更、気付いたところでもう遅いわ!フォーメーション、トライアングル!」
「ヒッ⁉︎」
優希が自身のモンスターに指示を出し、ますみんを中心に三角形を描くように位置取らせる。そして、三角形の中央にいるますみんは優希の使役するモンスターが放つ圧倒的威圧感に小さく悲鳴を漏らし、顔をひきつらせる。
「さーて、私に勝つとか言ってた人はどこのドイツだっけ〜?ま、す、み、さん?
そんな事言う人にはお仕置きが必要だよねー?」
「え?いや、ちょっ、待って!?」
「慈悲はない!やれ、ダイレクトアタック!」
「イャァァァァ!!??」
直後、毎網市全域に謎の悲鳴が響き渡ったとかないとか。
◆◇◆
「いや〜、スッキリした」
優希は清々しい笑顔をし、真澄と柚子の二人は互いに支え合い、よろよろと戻ってくる。優希の禁じ手は意外にも同じ場所に居た柚子にも影響が出ていたらしい。
そして、デェエルスペースから戻って来るのを確認すると子供達含め遊勝塾の面々が労いの言葉を言うために駆け寄る。……柚子に。
え、私は?私には、お疲れの一言もないんかい!
『まぁ、あんな戦い方見せられたら誰だって近寄りたくなくなりますよ。
けど、私は何時だって優希さんのお側に居ますからね。希望するなら、お風呂の時や寝る時だって……」
頬を若干赤らめ、いやんいやんと体をくねらせるデスガイド。
最早重症過ぎて私には手がつけられない。
デスガイドを華麗にスルーしつつ、ある事を思い出す。
そーいや、今って塾対抗マッチ戦なんだっけ?私、乱入しちゃって大丈夫なのかな?ま、必要なら私が相手を伸せばいいだけだし……多分。
チラリと視線を互いの塾の責任者二人の方へと向けると絶賛審議中だった。
元々、ルールは先に二勝したほうが勝ち。
そして、私がここに到着する前に遊矢が北斗を倒しており、一勝あげており、ますみんが柚子をワンキルし、これで同点。本来なら、次の試合が行われる予定だったのだが、そこに現れた私の言うイレギュラー。しかも、私が勝ってしまったため、遊勝塾が先に二勝をあげてしまったのだ。
ここで負けを認めるか、勝敗を有耶無耶にしておけば、LDSの風評被害も少ないのに……。と私的に思うのだが、勝てば遊勝塾を手に入れられるようでヤッケになってもう一戦やろうとしているピンク頭。
「この勝負、そちらに譲ってもいいのでは……理事長?」
あーだこーだと大人二人が言い合う中、物陰からフードを目深に被った人物が姿を見せる。そして、フードを取ると私が最も会いたくない人物がそこにいた。
「「「しゃ、社長!?」」」
「れ、零児さん!?どうして、ここに!それに、どういうことですか!?」
LDS生徒三人と理事長がおっかなびっくりと声をあげる。
私と一瞬だけ目が合うとすぐに理事長の方へと戻し、ごにょごにょと話し始める。
「沢渡シンゴが犯人は榊遊矢ではなく、それに似たそっくりな奴だと証言を訂正したので。それにもう一戦デュエルをして負ければ、遊勝塾に負けたとLDSの信用に傷が付く可能性もあります。なので、このまま有耶無耶にしたほうがいいと思ったので……。」
「……そ、そうね」
と、周りに聞こえないようにやりとりをする。
そして、話は終わったらしく社長は再びこちらに向き直る。
「この勝負、勝ちはそちらに譲ろう。」
「っ!?ゆ、譲るって……なんでそんな上から!先に二勝したのはウチだろ!」
上からの物言いに遊矢が声を荒げるが、塾長が手に肩を置き、黙らせる。
「そうですか、わかりました。」
「また、このデュエル自体口外しないで欲しい」
「くっ……分かりました。ただこちらからも条件があります。」
社長の終始上からの態度に耐え、大人の対応をする塾長。いつもは熱血だぁ!としか叫ばないので、こういった真面目な一面は珍しい。
「理解が早くて助かります。それで条件とは……?我々にできる範囲ならできるだけ要望に応えましょう。」
「そうですか……。では、我々、遊勝塾に今後一切の干渉をしてこない事を約束してほしい。」
社長はその言葉を聞くと一切表情を変えずに分かりましたと一言。この条件は予想通りだったらしい。
『しっかし、この塾長、ただの某熱血擬きじゃかったんですね〜。こんな真面目な一面があるとは……。今週の天気は曇りのち大寒波ですかね〜?』
待て待て、その評価はおかしいって!この人も塾の為に真剣なんだからさ、もうちょい労いの言葉をさ!
とか言ってる私もデスガイドの意見には同意である。口には出さないけど。
こんなやりとりをデスガイドとしている内に大人達の会話は終わったらしく、社長は私と遊矢の二人に視線を向ける。
「エンタメデュエルとペンデュラム召喚、融合、シンクロ、エクシーズの三種類の召喚方法を操る巧みな戦術。今日は中々面白いものを見せてもらった。」
「どうも」
「そうですか」
あれ、柚子にはないの?と一瞬思うがすぐに思考から除外し、素っ気なく返事を返す。
まぁ、柚子は頑張ってたけど、結局ますみんにワンキルされてたしね。社長にとって、アウトオブ眼中なんだろうね。
「榊 遊矢……君にそれと一つだけ忠告しておこう。確かにペンデュラム召喚は画期的な召喚方法だ。ただそれがいつまでも君一人だけのものだと思わない事だ。」
「っ!?あんた!それ、どういうことだよ!!」
「誰もがペンデュラム召喚を行える時代が来るという意味だ。」
社長が去り際に発した言葉に遊矢が過剰に反応する。
確か遊矢が使ってるペンデュラムカードは失踪した父親の残したカード。それをあんな風に言われたら動揺する気持ちはわかる。けど、社長の言っている事も正しいのは事実。所詮はカードだ。どこかの誰かがいつか作ろうとするのは明白。それも遊矢自身は薄々感づいてるはず。
まぁ、認めたくないだけか……。
動揺する遊矢にさらに追い討ちをかけるように社長が言葉を続ける。
「いつか来るという、言葉を訂正しよう。今現在、ペンデュラムカードは我々レオ・コーポレーションで独自に開発・試作が行われている。そして、それらがデュエルを楽しむ人々の手に渡る日はそう遠くはない。」
自分達もペンデュラム召喚ができる、ということに子供達も表情を一瞬だけ輝かせるが、わなわなと震えている遊矢を察してか、それをあまりおもてに出さない。
そして、そんな状態の遊矢に目もくれずLDSの面子を引き連れ足早に去ってしまう。
ちなみにショッキングな事実を突きつけられ、意気消沈する遊矢に塾長自ら、ン熱血指導が行われたのは、この後の話だ。
後書き
アクション魔法【クリスタル・ガード】
①このターン受ける戦闘ダメージを0にする。
どうも、お久しぶりです。
オチが無理やりな気もしますが考えていたのをそれとなく形にできました。
あれ?権ちゃんと柚子の修行フラグ建ってなくね?と思う人は多いと思いますが後々建築及び回収していくつもりです。
※オリアクションカード及びフィールド終始募集中です。メッセージでも、呟きの方でもいいので案を出してくれると嬉しいです。※
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