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吸血蝶

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第二章

 二人はサントドミンゴに向かいそこでだった、まずは話を聞いて回った。もう夜に出歩く者はいなかったが。
「血を吸われた後はか」
「ああ、それがな」
 警官がだ、事情を聞くヘミングウェイに恐れている顔で話す。
「あるにはあってもな」
「それでもか」
「小さいんだよ」
「小さい?」
「ほんの小さな穴なんだよ」
 その吸われた後は、というのだ。
「本当にごくごく小さいな、針を刺した位の」
「おいおい、それだったらな」
 兄と共にいるレスターが警官の説明を聞いて彼に問うた。
「吸血鬼はあれかい?注射針みたいなのを使って吸うのかよ」
「そうかもな」
「じゃああれか、吸血鬼はモスマンか」
 レスターは冗談めかしてこう言った。
「そいつだな」
「モスマン?そっちの国に出るっていうか」
「蚊と人間の間の子でな」
 この頃辺りからアメリカにいると噂になっている怪物である、大きさは二メートル程で姿はまさに蚊と人間の合成でだ、人の血を吸うのだ。
「そいつみたいだな」
「そうだな、言われてみればな」
 警官もだ、レスターの話を受けて言う。
「似てるな」
「似てるっていうかな」
「そのものだっていうんだな」
「その話を聞いてそう思ったよ」
 その血を吸った跡があまりにも小さいという話をだ。
「モスマンみたいだな」
「じゃあモスマンは犬とかの血も吸うんだな」
「悪食らしいからな」
「そうか、アメリカも大変だな」
「いや、こっちのモスマンは噂だからな」
 いないかも知れないとだ、レスターは警官に返した。
「けれどな」
「こっちはか」
「実際にいて大変なことになってるよな」
「観光地は夜も稼ぐんだよ」
 酒と女でだ。
「それがさっぱりだからな」
「商売もあがったりだな」
「俺はいいさ」
 警官である彼は、というのだ。
「けれど商売をしてる連中はな」
「そうはいかないな」
「だから早く何とかなって欲しいんだよ」
「そういうことだな」
「モスマンだとな」
 若しその怪物が犯人なら、というのだ。
「何とかして欲しいぜ」
「だから俺達がここに来たんだよ」
 ヘミングウェイはその大柄で逞しい身体でだ、警官に対してにやりと不敵な笑みを浮かべて言ってみせた。
「そういうことなんだよ」
「あんた達が真相を突き止めてか」
「解決してやるぜ」
「よし、じゃあ解決してくれたらな」
「その時はだな」
「政府は賞金出してるしな」
 犯人を見付け事件を解決してくれた者にだ。
「それに俺が美味い酒をおごるぜ」
「賞金は正直どうでもいいけれどな」
 それでもと言うヘミングウェイだった、明るく笑って。
「酒は欲しいな」
「そうか、じゃあ若しもな」
「俺達が解決したらか、事件を」
「その時は楽しみにしてろよ」
 その酒をというのだ。
「いいな」
「ああ、それじゃあ頑張ってくれよ」
 警官は確かな笑顔でヘミングウェイ兄弟に言った、そして実際にだった。
 ヘミングウェイとレスターはこの事件についてさらに調べた、やはりどの犠牲者犬も含めて小さな穴が身体に空けられそこから血を吸われていた。 
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