【完結】剣製の魔法少女戦記
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第六章 正義の在り処編
第百八十七話 『罠、そして現れる騎乗兵』
前書き
久しぶりに更新します。
完結のめどが立ったので一日から三日おきで順次投稿していきます。
ではどうぞー。
はやての許しを得て翌日、シホはキリングドールの残骸が保存されているラボへと赴いていた。
おそらくなにかの発見があるだろうという予測で。
シホの近くに一緒にいるのはアルトリアとネロは当然として一緒に捜査をすることになっているギンガがついている。
シホは本心としてはフェイト辺りにも一緒に同行して共同で捜査できたらよかったなぁ、くらいな気持ちでいたが、それでもギンガの捜査能力も108部隊で鍛えられているので期待はできるからいいとした。
ギンガ自身も今はもっぱらは捕えられている戦闘機人達の教育の任務についているが、それは現在は他の人に任せてシホに捜査協力をしている形である。
「ですが、こうしていますとスカリエッティ事件の時のような緊張感がありますね」
ギンガがそう呟く。
それにシホとアルトリア、ネロも同意のようで無言で頷いた後、
「確かに……。パークロードの一件から一歩間違ってたら大惨事になっていたかもしれないからね……」
「うむ。あの時は事前に情報があったからこそ対処できたのだ。しかし、モリアの奴もこれで用心深くなっているのだろう、なかなか動きを見せてくれないからな」
「厄介、ですね……」
納得といった感じでギンガは頷く。
そこにアルトリアも会話に参加してくる。
「そしていつまた暴動を起こすのかもわからない現状では、やはり私達は後手に回らざるえないのが現状です。なにか彼らにつながる情報が今回の捜査で見つかればよいのですが……」
「そう不安がるな、アルトリアよ。奏者が本腰を入れて捜査をするのだ。なにかしら手がかりは見つかるだろうさ!」
「そうですね。シホの力ならば!」
従者であるアルトリアとネロはシホ本人がいる中でそんな会話をしているのでそれを聞き耳を立てているシホはというと、
「(……あんまり期待はしないでほしいわね。私でも捜査の限界があるんだから。あ、胃が緊張で痛んできた……)」
あまりの期待度に内心で緊張をしているシホなのであった。
ギンガもそれを聞いて感心した表情を浮かべながら、
「シホさんはそれほどの捜査能力をお持ちだったんですか? 初耳です」
「あ、それに関してはねー……」
それでシホは管理局上層部から魔術の多量使用の禁止令を出されていたことをギンガに話す。
ギンガはそれを聞いていくうちに少し、いやかなり上層部に対して不満を顕わにしていた。
「そんな……捜査に役立つのならば使えるものは使わなければいけないのに、シホさんに禁止令を出すなんて……。
魔術が認知されるようになってからかなり時が経ちますのに……」
そう言ってギンガは心底残念がっていた。
シホは「でもね」と言葉を続けて、
「私だけこんな扱いなのは理由があってね。まぁ、昔にやらかしたことが原因なんだけど、ジュエルシード事件や闇の書事件で大っぴらに強力な魔術を使っちゃったじゃない?
それが原因で上層部もその力が自分達に向くんじゃないか、とか恐れられちゃってね。
そして他にもなのはやフェイト、はやてにアリサ、すずか、士郎と当然私も含めてだけど強力な力を秘めているサーヴァントを従えているからそれも後押しをしているのが現状なのよ」
そう言ってシホはため息をつく。
シホがこの世界に来てからもう十年も経過してある程度信頼は得てきているのだが頭が固い者はいくらでもでてきている。
幾分魔術による捜査を許されている魔術事件対策課も危険対象に指定されているのだからままならない。
魔術と魔導、方向性は違えど同じ人間が使う術なのだからそれを正しい方向で使えるように指導していけばいいものを……とシホは昨今で抱えている悩みをギンガに話す。
「はぁー……やはり確執みたいなものがあるんですね」
「その通りです、ギンガ。今まで使い慣れてきた魔導の他に魔術という新しい力が出てくれば組織とすれば警戒する対象に含まれるのは当然というべきか、そんなところですね」
「アルトリアの言うとおりね。考えてみて、ギンガ」
「なにをですか……?」
「逆の考え方をすれば私達の元の世界である魔術が繁栄している世界では、魔導という新たな要素が出てきたらどうなる……?」
それでギンガは少し考えた後に、
「警戒、しますね……」
「でしょう?」
ギンガの表情は理解も納得もできるが、だけど、だからこそ手を取り合って共存すればさらによりよく発展していけるという考えが浮かぶ。
「少しずつでも共存できれば……」
そのギンガの小さな呟きもシホ達は聞き取り、
「そう。それが今の私達の世界の現状なのよ。力は力、異分子でもいつかは共存できる。それがいま私達の時代で試されているのよ。
だから悪く言えば一歩間違えれば魔導師と魔術師による戦い……いや、もしかしたら戦争にまで発展してしまう可能性も未来には孕んでいる」
「そんな……ッ!」
シホの最悪の未来予測にギンガは声を荒げて叫ぶ。
「安心してください、ギンガ。そうならないように今も上ではリンディを始めとした魔術師支持派が共存の道を上層部に訴えかけているのです」
「うむ。いつの世も争いは絶えぬが、なにも剣を取り争うこともせずに、言葉で戦っていければそれで道はいつか開かれるというものよ」
アルトリアとネロの言葉に幾分落ち着いてきたのか、ギンガは安心した表情で「そうですね」と頷く。
そしてシホも頷いた後に「それにね……」と言葉を続けて、
「かの三提督である『ラルゴ・キール提督』、『レオーネ・フィリス提督』、そして『ミゼット・クローベル提督』のお三方も魔術師に対しては支持派に回ってくれているのよ」
「三提督が……」
ギンガはその三名の名前が出たことによってより安心感を浮かべた顔になった。
それだけ三提督達が偉大かが分かる一面である。
この三人がバックにいるとなれば安心度はかなり増すといってもいい。
「これなら……」
「ええ、一応安心と言ってもいいと思うわ。……これで不穏分子がなければの話だけれどね」
「不穏分子ですか?」
「ええ。三提督がもしかしたら標的になるかもしれないからね。実際モリアは大勢の観客を人質に取ろうとしたから」
「リオンもそのモリアという人物に利用されていたんですよね、シホさん?」
「ええ。幸いなんとか救えて今は機動六課でほとぼりが立つまで匿っているところよ」
「よかった……。リオンが無事で……」
胸に手を持っていきギンガは安心そうに優しい顔になる。
「……さて、と。それじゃ話もそこそこにいきましょうか」
「はい、了解です。シホさん!」
◆◇―――――――――◇◆
それからシホ達はキリングドールの場所まで到着した。
「それで、シホさん。これからどうするんですか? これらはもう何度も検査を受けたんですよね? 今更でてくるものなどないと思いますけど……?」
「ま、見ていなさい。私流の捜査を見せてあげるわ」
そう言ってシホはキリングドールの残骸に手を添えて、
「解析開始」
キリングドールの解析を開始したのだ。
ことシホの解析魔術に関してはだれにも負けない自負はあるとシホは思っている。
なんせ宝具すら解析してしまうほどの性能を発揮するからだ。
衛宮士郎時代にも壊れたストーブや電化製品などを解析して悪いところを交換して幾度も瀕死の状態から復活させてきたのだから。
そして今回行う解析は宝具解析の応用である。
シホの解析と投影の手順は大まかに六つ。
―――創造の理念を鑑定。
―――基本となる骨子を想定。
―――構成された材質を複製。
―――制作に及ぶ技術を模倣。
―――成長に至る経験に共感。
―――蓄積された年月を再現。
この六の工程を踏んで最後にすべての工程を覆して一つの幻想を形にするのである。
そして今回注目するのはこの六の工程のうちの一つ。
制作に及ぶ技術を模倣。
これを使うわけだ。
この手順を踏むときにシホの脳内には作り出された光景や過程などの景色なども見えることがある。
ただそれだけではどこで作られているかはまだわからない。
だからさらにその工程にだけ神経を限定して絞って解析をかけていく。
そうすればさらに周りの風景や場所が視えてくるからだ。
一種の透視、サイコメトリーにも近い能力である。
………数分間目をつぶって解析作業をしていたシホは少しして、
「……解析終了」
そう言って閉じていた目を開ける。
「どうですか、シホ?」
「どうなのだ、奏者よ?」
「なにかわかりましたか、シホさん?」
三人の問いかけにシホは、
「ええ、このキリングドールの製造工場の位置をある程度掴んだわ。ギンガ、地図を……。おそらくミッドチルダのどこかにあるはずだわ」
「わ、わかりました! すぐに用意します!」
そう言ってギンガはミッドチルダの地図を取りに行った。
ギンガが地図を取りに行っている間にシホは近くにあった椅子に腰掛けて一呼吸をする。
「ふぅ……やっぱり限定解析は神経を使うわね」
「お疲れ様です、シホ。しかしやはりシホの解析魔術は強力ですね」
「うむ。さすが宝具を解析できるほどのものだな」
「まぁ、これくらいにしか役立たないんだけどね……」
シホは「あはは」と笑うが、アルトリアが「そんなことはありません」と言葉を繋ぐ。
「シホの魔術は確かに特化型ですが、ですがそれでも極めれば使い道はさらに広がっていきますね。
その成果としましてはツルギ愛用の魔術『概念抽出』がその一例です」
「うむ。奏者はもう立派な魔術師だ。魔術が使えない余からすれば羨ましいものだぞ?」
「そうね。ありがとうね、二人とも」
「はい」
「うむ!」
シホの心の底からの感謝の言葉に二人は素直に嬉しそうに頷くのであった。
それからしばらくしてギンガが地図を持ってきてシホは解析魔術で読み取った風景や場所などを地図や映像などで特定していった。
そしていくつか候補が上がりすぐさま四人は移動を開始することにしたのだった。
◆◇―――――――――◇◆
四人はバリアジャケットや戦闘衣服などを纏って特定した隠された工場の居場所をつきとめて中へと侵入していった。
アルトリアが前衛、シホとギンガが中間、ネロが殿を務める形で工場の中を移動していく。
事前に入る前に解析をかけて工場内部の移動通路や部屋割りなどもシホは把握しているので心配はなく安心して、しかし緊張感をもって進んでいく。
そしてあるでかい扉がある部屋を発見した。
「ここが怪しいわね」
「はい」
「奏者よ、誰が突入するか?」
「そうね……アルトリア、頼める?」
「了解いたしました」
そしてアルトリアが扉を無理やりこじ開けて中へと侵入していき、続いて三人も中へと入っていく。
部屋の中は暗いままだったがシホは電気のスイッチを発見してオンにする。
そして照明が照らされたそこにあったのはゆうに百体以上はあるキリングドールの姿があった。
「ビンゴ、ですね。シホさん、さすがですね」
「ありがとう。さて、それじゃはやてに通報しておこうかしらね。工場の一つを発見したって……」
そう言ってシホは通信を試みようとするが、
「あれ? 繋がらない……?」
「シホさん! こちらも繋がりません!」
ギンガも通信を試みたようでシホと同じく繋がらないようであった。
「まさか……ここは罠か!?」
―――その通りだよ!
その時、謎の女性の声が響いてきた。
「誰っ!?」
シホ達は辺りを見回し、見れば金網で作られている二階部分にフードを纏った人がいた。
「奏者よ! わずかながらサーヴァントのような気配を感じるぞ!」
「また、サーヴァントのような気配なのね?」
「うむ!」
そしてフードの人物が二階から飛び降りてきて地面に着地して、
「また会ったなぁ!」
「また……? それではあなたは……」
「そうさ!」
そう言ってフードの人物はフードを自ら剥ぎ取った。
そして下から現れたのはギザギザの短髪ながらも銀色に輝いている髪、そして紅い瞳。
身長はライダーと同じくらいの女性だった。
「銀色の髪に紅い瞳……? まさか、あなたはホムンクルス?」
「お? よくわかったな! 俺は、まぁ名前がないんでな。ライダーでいいぜ! ま、とにかくここからは逃がさねえぜ?」
「その言い様だと、もうなにか事件が起きているという事ですか?」
「さてな……。マスターには何も聞かされていないからな」
「マスター……。まさかヴォルフ・イェーガー!」
「またビンゴだな! まぁ、そんなことはいいんだよ!………戦おうぜ?」
その言葉が合図となったのだろう、キリングドール全機が起動する。
そしてライダーは一枚のカードを取り出して、
「あのカードは!?」
「いくぜ? 夢幻召喚!!」
瞬間、カードが光り輝き魔法陣が出現して光の帯がライダーに絡みついていく。
そして光が晴れた先には方天戟を手に持ち、紅い鎧を身に纏うまさに武神のような姿のライダーの姿があったのだった。
後書き
わかりきっていたかもしれませんが、インストール使いました。
そして次回急展開、かも?
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。
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