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戦国異伝

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第百八十六話 国崩しその四

「そのうえで拙僧の考えを伝えてくれ」
「畏まりました」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 すぐにだった、信長の下に顕如からの使者が送られた。そうしてだった。
 信長は使者から顕如の言葉を聞いてだ、使者である下間にこう言った。
「わかった、ではな」
「どうされますか」
「顕如殿と会う」
 そうするというのだ。
「そのうえで詳しく決めたいがよいか」
「法主様と直接ですか」
「そうじゃ、会いたい」
 こう言うのだった。
「返事を聞きたい、よいか」
「わかりました、では」
 下間も応えてだ、そうして。
 すぐに石山に戻り今度は顕如に信長の言葉を伝えた。これには本願寺の高僧の誰もが驚いた。
 そのうえでだ、口々にこう言った。
「一体どのつもりか」
「織田信長、何を考えているのか」
「法主様に会いたいとは」
「どういった思惑があるのか」
「それでどうされますか」
 下間は顕如に彼の考えを問うた。
「ここは」
「それならばじゃ」
 顕如だけは驚いていなかった、そしてだった。
 その落ち着いた顔でだ、こう下間に答えた。
「会おう」
「そうされますか」
「うむ、そうしてな」
 そのうえでだというのだ。
「織田信長と話そう」
「そうされますか」
「前にも会ったがな」
 あの和睦の時のことも思い出しての言葉だった。
「ここはな」
「合われて」
「そうして話をしたい」
「それでは」
「法主様、では」
「我々も」
 高僧達もだった、顕如に言って来た。
「お供します」
「法主様だけを行かせませぬ」
「我等も最後まで」
「法主様と共に」
「そうするか」
 膝下にすがりつく様に言って来る彼等にだ、顕如は応えた。
「御主達もそう言うのならな」
「はい、では」
「今より」
「ではです」
 雑賀も言って来た。
「それがしも」
「御主もか」
「最早ここまで来れば何もないと思いますが」
「拙僧の身の回りの安全の為にか」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「お供させて頂きたいのですが」
「わかった、ではな」
 顕如は雑賀の申し出も受けた、こうしてであった。
 信長と顕如は会うことになった、その場は織田軍の本陣となった。顕如は雑賀と高僧達を連れそのうえでだった。
 石山御坊を出て織田軍の本陣に向かう、その顕如達を見て織田軍の者達はそれぞれこう言った。
「あれが本願寺の法主か」
「顕如じゃな」
「あまり悪そうな顔ではないのう」
「うむ、卑しい顔ではない」
「決してな」
「むしろ徳のある顔じゃ」
 彼等が見たところだ、顕如はそうだった。
「灰色の法衣もな」
「本願寺のものじゃな」
「民百姓の色じゃ」
「本願寺の言うな」
 そうだというのだ。
「とにかく悪いものは感じぬのう」
「何故それで織田家と争うことになったのじゃ」
「わし等に戦を仕掛ける意味もないと思うが」
「それはどうしてじゃ」
「どういうことなのじゃ」
 全く以てわからないという顔でだ、織田家の足軽達は首を捻っていた。彼等にはどうしてもわからなかった。 
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