旧エクリプス(ゼロの使い魔編)
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第37話 宝探し(前編)
ブリミル暦6242年 アンスールの月 ヘイムダルの週 ユルの曜日
皇紀2800年 7月10日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院
トリステイン魔法学院は今月半ばから夏休みに入る。原作では二ヶ月半もの長い夏休みであったが、今は教える内容が増え、夏休みは一ヶ月半となっている。その代わり冬の降臨祭と春休みが少し増えている。
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
昼休み、当然話題は夏休みの計画についてである。
「私はやっぱり正輝くんに会いたいわ。」
「「・・「私も!」・・」」
ルイズの意見に皆が賛同する。
正輝は今年生まれたばかりの、カトレアと晃第二子です。
「フォンティーヌ伯爵領に行く事は決定として、祖父からメールが届いている。題名は "宝探し" だ。折角の夏休みだ。態々、祖父が送って来たのも気になる。宝探しに挑戦するのも、面白いだろう。」
「光輝おじさまからね。きっと凄い宝に違いないわ!」
「面白そう。」
「何を話しているの。私も混ぜなさいよ。」
ルイズ達の話にキュルケが割り込んで来る。
「フォンティーヌ領に行くついでに、宝探しをしようって話だ。キュルケも参加するか?」
司がキュルケに簡単に説明する。
「勿論、参加するわ。実家に帰ってもお見合いしろと、五月蝿いからね。」
「何、貴方達。フォンティーヌ領に行くの?私も連れって欲しいの。」
モンモランシーが話に加わった。
「モンモランシーが行くなら、僕も混ぜて欲しいな。」
ギーシュも話に加わる。
「何でモンモランシーがフォンティーヌ領に行きたいの?」
「だってアキラさんは、水メイジの憧れよ。医療関係の魔法の本を沢山執筆しているし、魔法を使わない病気の治療だって詳しいんだもの。トリステイン王家の御殿医の一人でもあるわ。」
そこへシエスタ銀のトレイにケーキ乗せ、配りながらが現れた。
「シエスタ、夏休みの予定入っている。」
「いえ、特には入っていません。実家に帰るだけです。」
「良かったら俺達の宝探しに付き合ってくれ。実家に送ってあげるからついでに竜の羽衣へ案内してくれ。」
「えぇ、喜んで参加します。」
司の誘いにシエスタは返事をする。以前ギーシュに絡まれようとした時に司が庇ってくれたのだ。シエスタにとっては、司は憧れの存在である。
こうして、夏休みの宝探しのメンバーが決まった。
ルイズ、夢、タバサ、ジョゼ、キュルケ、モンモランシー、ギーシュ、引率に司である。後、それぞれの使い魔達である。
Sideout
ブリミル暦6242年 アンスールの月 エオローの週 虚無の曜日
皇紀2800年 7月17日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院 司の研究室
トリステイン魔法学院では夏休みが始まった。
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
朝食を終えた、宝探しのメンバーは司の研究室に集まっていた。
「それで、どうするの。」
「待って、今メールの内容を再度確認する。
"虚無の魔法より新たな道が開かれん。宝の鍵は竜の羽衣と共に。"
これだけだ。多分謎解きだと思う。竜の羽衣もの場所は、シエスタが知っている。」
「それでシエスタを誘ったのね。」
「そうだ。」
「竜の羽衣の場所については、私が知っています。任せて下さい。」
ルイズと司の会話に、シエスタが加わった。
「問題は虚無の魔法だ。虚無の魔法にそれらしい呪文がない。そこで手掛かりを探しに、学園都市の大図書館の特別閲覧室に行こうと思う。」
「賛成!」
「僕は大図書館には、行った事がないよ。」
「私も。」
ギーシュとモンモランシーが答える。
Sideout
ブリミル暦6242年 アンスールの月 エオローの週 虚無の曜日
皇紀2800年 7月17日 トリステイン王国 トリステイン学園都市 大図書館
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
ここは魔法学院のある、トリステイン学園都市である。大図書館は学園都市の中心にある。
「ここが大図書館だ。トリステイン王国で一番大きく、蔵書の数も一番多い。学園都市は魔法学院の他、多数の学園がある。」
「でっかいなぁ。僕の家より大きい。」
「ゲルマニアの学園都市の方が大きいわよ。」
「ガリアも同じく。」
司の説明にギーシュとキュルケとタバサは、感想を漏らす。
「それは国の人口の違いだな。それで学園の規模も違うし、大図書館の共用スペースも多くとってある。蔵書の数はあまり変わらない。ここでは蔵書の貸出を行っていないが閲覧は自由に出来る。ここの図書館の特別閲覧室では、貴重な本なんかを閲覧出来る。さっそく行ってみよう。」
司の案内で図書館に入り、一行は特別閲覧室へ向かった。
特別閲覧室にはゲートがあり、身分証明書を提示しなければならない。
ゲートにはアンドロイドが待機していた。
特別閲覧室の入場には制限がある。トリステイン貴族か魔法学院の生徒、教員のみ許される。各自は身分証明書(ICチップ内蔵)カードを提示して特別閲覧室へと入る。シエスタと使い魔達は、司の教員資格で同伴が許された。
特別閲覧室に入った皆は、それぞれ虚無の魔法が書かれた書籍を探す。
暫くしてキュルケは、虚無の魔法と書かれた一冊の本を見つけた。
「この本、開かないわよ。」
「どれどれ、俺に貸してみな。あぁ、魔法の封印のしてある。虚無の担い手にしか、開かないようになっている。」
司は本を開きページをめくる。
「ダーリン、本を開けるって事は虚無の魔法が使えるの?」
「俺達の国では誰でも皆、虚無魔法を使えるよ。」
「そっ、そうなんだ。」
「司さん、凄い。」
キュルケは呆気にとらわれている。一方でシエスタは魔法に詳しくない為、感心していた。
「あっ、カードが挟まっている。うん、これだな。トリスタニアの休日S35と書いてある。」
「あっ、知ってる。今話題の映画だよ。アンリエッタ姫の婚約を祝して、王女と平民に変装した皇太子との切ない1日の恋を描いているの。トリスタニアの名だたる観光スポットを登場させていることでも有名なの。今は、トリスタニア映画館で先行ロードショーをやっている筈よ。」
夢が解説する。
「それじゃ、トリスタニア移動しよう。」
司の号令で全員が移動する。
Sideout
学園都市からはローカル線の電車が走っている。トリスタニア中央駅までは、電車で一駅である。大人数の為、電車で移動したのだ。
トリスタニア中央駅は新王宮の城下町である、新市街
にある。旧市街も再開発されている途中であり、住民の多くは新市街に移転している。
ブリミル暦6242年 アンスールの月 エオローの週 虚無の曜日
皇紀2800年 7月17日 トリステイン王国 トリスタニア 新市街
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
「トリステインは小国だけど、中央駅は立派ね。」
「それは、そうさ。トリステインはガリアとゲルマニアの中間にある。両国を行き来するのに、立地的に都合が良いのさ。それだけに、トリステイン魔法学院は一番、他国からの留学生を受け入れている。」
キュルケの感想に、司が答える。
「バス乗り場はそこよ、映画館までは最寄りのバス停まで二つだわ。」
夢が携帯端末で案内する。一行はバスに乗り映画館に着いた。
「ここね。後はS35は座席の番号だと思うけど、どこかな?有った、二階観覧席のS3ルームだ。S3ルームをお願いします。」
「はい、どうぞ。次の上映時間13時からになります。」
「次の上映時間まで1時間以上あるな。そこら辺のカフェで軽い食事をして行こう。」
お洒落なカフェを見つけて、軽い食事を済ませてから映画館に戻って来た。一行は早速、S3ルームに向かった。司がチケットを渡すと案内係が席まで誘導した。S3ルームは貴賓室になっており、席が三段になって10人以上が優に座れた。ここは貴族の家族などが利用し易いように従者の席まで用意されていた。
「うわっ、こんな豪華な席で私も良いのでしょうか?」
豪華な内装に、シエスタは驚いている。
「大丈夫よ、シエスタ。お兄ちゃんは高給取りなの。多分、オスマン学院長より、給金を貰っているわ。」
夢の言った事は半分当たっており、司は高給取りである。魔法学院では教師待遇で雇われており、光輝からは魔法学院のカリキュラム変更の為、別途支給されている。これだけでオスマン学院長と給金が変わらない。それに加えて各世界に特許を取っており、総額はその辺の伯爵より多いのだ。魔法学院の研究室も光輝に頼んでいるが、費用は司が出している。コルベールと隣合わせでコルベールの研究室も一緒に建て替えてある。
「流石はダーリンね。いつでもツェルプストーにお婿に来てね。今では皇帝も、ブリミルの血統よりイチジョウ家の血統を欲しがっているぐらいだもの。ゲルマニアで士官すれば辺境伯ぐらいすぐ成れるわ。私の聞いた話では、お兄さんのアキラさんはトリステインに功労があったとして、侯爵に任ぜられようとしているらしいわ。」
「凄いはね。モンモランシに欲しいわね。」
「モンモランシー、僕という者が有りながら・・・。」
ギーシュは小さくつぶやいた。
「そんな事より、S35席はどうなったの。映画が始まるわよ。」
ルイズは嫉妬しない。例え王家の婚姻でも、一条家は断るのを知っている。それに司はルイズにとって、兄の様な存在であった。
「あぁ、ここだ・・・。座席の下にカードがある。この場所で当たりのようだな。何なに、小さな獣に道を尋ねよって書いてある。小さな獣のね、まぁ、心当たりがあるな。」
「「私も。」」
司の返答にルイズと夢が答えた。
「宝探しは後にして、折角の特等席だ、今はやっくり映画を観て行こう。」
全員の意見が一致して、映画を観る事になった。
トリスタニアの休日は、ローマの休日をリメイクしただけあって、中々良く出来た作品になっていた。
「燃える恋も素敵だけど、切ないのも良いわね。」
キュルケらしい評価である。暗に高評価である。
「お姉様、素敵なのね。きゅ〜い。」
タバサの使い魔のシルフィードも映画の余韻に浸っていた。
会場のあちこちで女性の溜め息が漏れていた。
「それでは次の目的地を目指すか。」
「お兄ちゃん、次はフォンティーヌ領ね。」
「そうだ。」
「何なに、どう言う事。ツカサやユメは知っているみたいだけど、フォンティーヌ領に何があるの?」
「行ってのお楽しみよ。」
司と夢の発言にモンモランシーが尋ね、ルイズが答える。
Sideout
一行はフォンティーヌ領に向かった。
トリスタニア中央駅から高速リニア鉄道に乗り換える。ラ・ヴァリエールの駅は一駅である。隣の駅はツェルプストーであり、終着駅はゲルマニア首都ヴィンドボナである。この高速リニア鉄道は時速500キロリーグ(約500km)で走っており、トリステインとガリア、ゲルマニアを結んでいる。
ブリミル暦6242年 アンスールの月 エオローの週 虚無の曜日
皇紀2800年 7月17日 トリステイン王国 高速リニア鉄道
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
「わぁ、凄い。ファーストクラスの席はこうなっていたの。」
シエスタがはしゃいでいる。
それもそうである。ファーストクラスは貴族用に作られている。
室内が豪華に装飾されている。一般車両にもファーストクラスがあるが、特別車両は警備も兼ねて一般車両と行き来できない様になっている。また、窓には紫外線防止のフィルムが貼られ、外から中が見えない様になっていた。
本来ならシエスタは特別車両の従者用の席に座らなければならないが、司が個室を予約した為、皆と同じ席に座る事が出来た。
他の客は知らないが、特別車両にはAMF(アンチマギフィールド)が張られており、特別車両内では魔法が使えないようになっている。
司だけは知っていた。何を隠そう、リリカルなのはの世界の技術で特別車両を設計したのは、司本人である。
社内アナウンスが流れ、もう直ぐラ・ヴァリエール駅に到着する。
「あっと言う間ね。」
「高速リニア鉄道が通ってから、家の竜籠はお蔵入りよ。」
「私の所も同じね。」
モンモランシーの発言に、ルイズとキュルケが答えた。
タバサやジョゼも同じなのだが、偽名を使って留学しているので迂闊には答えない。
「ラ・ヴァリエール駅についたらローカル線に乗り換えだ。折角ここまで来て貰ったんだ。フォンティーヌの街を案内しよう。」
「やったー。フォンティーヌにはトリスタニアにないものがいっぱいあるって、聞いているわ。ショッピングね。」
モンモランシーが一番はしゃいでいる。香水の調合レシピの版権をエクリプス社が買ってくれたのだ、それをモンモランシーブランドで発売して、売れた数におおじてロイヤリティが入る仕組みだ。司がアドバイスしてエクリプス社に連絡してくれたのだ。今では秘薬研究会を作ってそこの会長をしている。プチ成金で懐が暖かいのだ。
Sideout
ブリミル暦6242年 アンスールの月 エオローの週 虚無の曜日
皇紀2800年 7月17日 トリステイン王国 フォンティーヌ領 中心街
Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
「凄いはね。」
「凄過ぎます。」
「・・・。」
初めてフォンティーヌ領に来ると、皆固まるのだ。
「あはははっ、高層ビルは初めてかい。トリスタニア等には作れないからね。」
「えっ、どうして。」
「ほら、王宮の近くに建てると貴族を上から眺めるのはけしからん。と言う貴族がいるから、王宮より高い建物がないんだ。フォンティーヌ領主は、気にしないからね。それに高層ビルを建てると、それだけで空き地が出来るだろう。空いたスペースに牧場を作ったり、自然公園を作ったりしているよ。伯爵邸は中心街から離れた自然公園の端に作られているよ。」
「へぇ、変わっているんだ。」
「慣れると便利なんだ。初めは住民達も戸惑っていたけど、今は高層ビルを受け入れているよ。今ではラ・ヴァリエールとツェルプストーにも高層ビルが建っているよ。但し本邸の近くには建ってないけどね。理由は簡単だ、他国の諜報員に警備状況を知らせない為さ。
ショッピングして伯爵邸へ行こう。兄さんにはメールを入れてある。今夕に歓迎会を開いてくれるそうだ。」
Sideout
一行はショッピングを楽しんだ。
シエスタには歓迎会用の衣装と宝飾品を司が贈った。司はシエスタにもお客さんとして扱っている。
正輝は生まれて間もないので、その日は会うのを遠慮した。
歓迎会は身内なので派手ではなかったが、豪華な料理が振る舞われた。
後書き
宝探し(前編)の話でした。
やっと一日目が終了です。
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