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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章 幕間劇
  一真隊全員での食事会×川中島戦後録×二人だけの空間

夕方になる前の事だった。俺は部屋でのドウターが現れる頻度や出る状況についてをヴェーダにて、情報を送りシミュレーションをしてみた。いつどこで現れるかを、小型ゼットンについては、解析したがいつ現れるなんて決まってはいないようだったけど。この世界に来てからのドウターゲートについては、計算が出来たようであった。その結果を見ようとしたら夕食の時間となったので、ノーパソを空間に入れてからその部屋に向かった。

で、今の状況を伝えると俺の目の前には膳がある。それも薫の料理で、それも俺を頂点としてずらりと並んでいた皆の膳があった。それぞれの膳に腰を下ろしていくのは、顔馴染のメンツばかり。一真隊、一度は越後で離ればなれとなってしまい戦の中でようやく再会出来たこの世界の仲間たち、そして全員と同じ場所で夕食をするのは久しぶりのようだった。

「一真様!」

「おう。梅に雫は祈りは済んだかな?」

「はい」

「大丈夫ですわ!」

「それならあとは、こほん。神界よ、我の声に参上されたし。来い!」

そして空席のところには、俺から呼んだ護法五神に各神仏たち。まあ全員は呼べないから、八大夜叉大将に代表をした夜叉数人として来てくれた。あとは新羅三郎義光もだけど。護法五神が美空のお家流で使役しているなら、新羅三郎義光は光璃のお家流の力となる存在だ。まあ神仏は下界の食べ物は食えないが、神界から持ってきた物なら食べれるので、呼んだ者の前には神界で作った膳を置いてある。

「うわー。雀、神仏は何回か見たことあるけど。まさか一緒に食べるとは思わなかったね、お姉ちゃん!」

「・・・・・(コクコクコク)」

「護法五神はお分かりになりますが、そちらの方はどちらですの?」

「そういえば、一真隊の一部の者しか知らないんだったな。こいつは武田家の家祖で新羅三郎義光だ、光璃のお家流の力になる者だ。まあ今回は俺のダチだから呼んでみた。ということで」

料理そのものと、用意してくれ薫に神界から用意してくれた食の神に感謝を。そして一番は、また一真隊全員揃って食事を出来る事に感謝を込めて掛け声は一つだけだ。

「いただきます」

『いただきまーす』

と声をかけてから、食事会スタートとなった。一真隊はいいが、神仏たちはそれぞれ酒や膳を食べたり飲んだりしている。神仏たちに用意した酒はトレミーに保管されている日本酒だ。まあこの世界の酒でもよかったんだが、ここには大人が俺と神仏のみだからなのか。一真隊の皆は酒は飲んだことあるかは知らんけど、飲む風景を見たことないので今回は俺と神仏のみとなった訳だが。

「ああ・・・・ハニーとお食事なんて、何だかとても懐かしい気がいたしますわ・・・・」

「まあそうだろうな。あれからどのくらい時が経ったのか、分からんからな。それにこうやって揃っての食事は久しぶりだもんな」

「そうですわねー。ハニーのいないお食事は、どれだけ寂しいか改めて思いましたもの」

「それだけじゃないんだろ、ころ」

「はい。梅ちゃんは一真様が、いませんわいませんわってずーっとぼやいてましたし・・・・」

「ころさん!それは言わないお約束じゃありませんの!」

「ははは。まあそれだけ心配をかけたし、寂しかったんだろ?」

「そうですねー。一葉様も、一真様がいないからって美空様と共謀して訳の分からない事始めちゃいますし・・・・」

「主様が言った通り、寂しかったのじゃからの。仕方あるまい」

まあ一葉の件については、一真隊との合流後に大型ハリセンでブッ叩いたからな。それで済んだから、まだいいけど。

「寂しかった、だけでは済まないことだったんだからな。反省しろ」

「なんじゃと・・・・!梅はそれだけで済んで、なぜ余はダメなんじゃ」

「当たり前です、公方様」

「余と美空の一計を案じたからこそ、こうして一真隊も再び集う事が出来たというに!どうして余が黒幕のように言われておるのじゃ!」

「だったら、もっと一真様と連絡を取ってくださいよ!」

「そうですよ!」

「ぐぬぬ・・・・。主様・・・・」

「策はよかったけど、小波のお家流を潰して連絡不能にした張本人が何を言っているんだか。だいたい、俺の特大ハリセンでブッ叩いたのでお仕置きをしといただけで済んだのだから。有難く思えってんだ。それと悪巧みなら、俺も混ぜてほしかったな~。なあ、小波」

ハリセンでブッ叩いたというと、どのくらいの大きさだったと聞かれたんで空間から取り出したけど。改めて思うけど、大きいな~と思った。そしてそれで叩かれた一葉にどのぐらい痛かったの?という疑問に終始一葉は思い出したくないようにしていた。まあブッ叩いた本人の隣にいた幽によると、叩いたあとはしばらく魂が抜かれた状態でタンコブも出来るぐらいであったと。それを聞いた一真隊の諸君は、心の中で思ったそうな。『一真様を本気で怒らせてはいけない』と思ったそうだが、俺には聞こえたけど。一真隊の暗黙のルールという感じではあった。

「でもでも、また一真とご飯食べれて嬉しいの!」

「そうですね。まさか、これほど早く再び一真隊全員で食事が出来るとは思いませんでした」

「ほれほれ!やはりそこは余の手柄であろ!」

どうにも手柄にしたい一葉であるが、正直合流できたのは俺の勘によるもので一葉の手柄でこうなったのではないからな。

「ふふっ。詩乃さんは少し残念だったのではありませんか?」

「そんな事はありません」

「本音はー?」

「一真様の隣に座れるのであれば、だれが居ても変わりありませんし・・・・って、何を言わせるのですか雀さん」

「え?お姉ちゃんが言えって言ったから・・・・」

「・・・・・・・」

「全力で否定しておいでですなぁ」

「・・・・なるほど。詩乃は主様の隣を、そのような気持ちで陣取っておった訳か」

「見損なったよ、詩乃ちゃん!知ってたけど!」

「一真隊の風上にも置けませんね、詩乃ちゃん!知ってましたけど!」

「・・・・知っていたのであれば良いではありませんか」

と詩乃はそう言っていたけど、実際はそうじゃない。俺の隣を陣取っていたのは、護法五神か新羅三郎義光かだったし。それを教えたら、ひよたちは『え?』という風な顔をしていた。そして雫は事実ですよと言ったので、さらに固まったひよ達だった。まあ神仏と一緒に食事をしていたのは本当の事だし、美空たちとこっちに来ていたときも護法五神は俺の呼ぶ声に反応してから来る。もちろん美空の許可無しだったからなのか、戦前は美空の周りにいなかったのはそういう事である。

「・・・・・」

「どうしたですか?」

「ううん。賑やかだな、と思って・・・・。それに食事風景に、武田家の家祖と長尾が使役しているはずの護法五神と。一緒に食事している風景を見れるとは思わなくて驚いているところ・・・・」

「薫ちゃんは一真隊が揃って食事をしている所のを見るのは、初めてでしたよね?それに敵だったはずの神仏と一緒に食事をしているところは私たちも驚いているところです」

「まあ、姦しいのが自慢の部隊ではありますから。それに護法五神と武田家の家祖が食事できたのも、一真様のお陰かと」

「そ、そうなんだ・・・・。まあお兄ちゃんのお陰で長尾と武田が和平できたもんね」

「ねえねえ。薫は一緒にご飯食べないの?」

まあ長尾と武田の使役している神仏が、一緒に食事なんてレアな光景なんだろう。というか、神仏と一緒というより俺も神仏の一員なんだけどな。いつも大天使化して食事とかはしていないからかもしれない。あれになるのは鬼が出たときとかだけだし。あとはまあ鞠の疑問には頷けると思った。薫は脇に腰を下ろしているだけで、彼女の前には膳がないからな。

「うん。お食事の用意に来ただけだし・・・・」

「そんなのつまんないの。薫も一緒にご飯食べるの!みんなで食べた方が美味しいの。ね、一真!」

「それもそうだな。先に食べたのならしょうがいが、そうではないのなら一緒に食べちゃえばいいんだが」

「え?でも・・・・いいのかな?薫、武田だし・・・・」

「もちろんですよ。武田勢とはいえ、同じ一真隊の旗を掲げて戦った仲じゃないですか」

「そうですわ。一真隊はそのような小さな事に文句を言う方など、誰一人としていませんもの。それに護法五神と新羅三郎義光様も頷いていますわよ?」

「どなたやらを筆頭に、その辺りの規律には緩い面々が揃っておりますからな。あとは神仏が頷いてあるのですから」

「じゃ、じゃあ・・・・お兄ちゃん、いい?」

「無論だ。ここには武田勢だからと言って、一緒に食事をしてはいけないと言う輩はどこにもいない。薫も一緒に食べるがいい、新羅三郎義光もそう言っている」

「やった!じゃ、用意してくるね!」

俺を筆頭に一真隊全員とここにいる神仏も一緒に頷いたので、薫は嬉しそうに立ち上がり元気よく台所の方に走り去っていくのが見えた。まあ薫の本心はこの席に混じりたいという想いが伝わってきていたから。早めに声をかければよかったのだが、一声かけた鞠には感謝だ。一真隊、武田勢だ、長尾勢だ、と分かれて食事などしたくはない。

「鞠よ、よくやったぞ!」

「えへへー!一真に褒められたの!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・どうしたんだ、二人とも?」

何かひそひそ話が聞こえてくるな。発信源は、ひよところの辺りからだった。鞠は笑顔な感じだったけど、ひよところは何やら神妙な様子で顔を見合わせていた。

「いえ。戦っている最中は気付きませんでしたけど・・・・」

「だよね。これはあれだよね・・・・」

「あー、何となく予想はつくなー」

「光璃様の妹君だったから気にしなかったけど・・・・」

「・・・・じゃが、双葉の前例もあるからの」

「そうですわね。間違いありませんわ」

「・・・・うーん、俺としては何と発言してはいいんだ?詩乃」

「・・・・いつものあれですから、一真様はお気になさらずとも良いかと。それに答えはもう出ているのでしょう?」

いつものあれって事だから、あれなんだよな。だからなのか、詩乃も気にするな的な発言だし。まあ恋敵が増えたと俺的に解釈していいのか?

「それにしても、一真様は罪なお方ですなぁ。足利の公方姉妹だけでは飽き足らず、武田家も姉妹揃ってとは・・・・」

「・・・・一葉みたいに、大型ハリセンでブッ叩かれたいの?」

「申し訳ありません・・・・。ついそれがしの口が滑ってしまったので、それだけはご勘弁を」

「でも一真のは、今に始まった事じゃないの」

「まあそれはそうなんだが・・・・」

「そう考えると『お兄ちゃん』は強敵ですわね」

「だよね・・・・。一真様をお兄ちゃんと呼ぶの、今までお市様だけだったから・・・・」

「え、あの、雀は・・・・?」

「お市様は浅井様の奥方様ではないのですか?」

「雀もお兄ちゃんって呼んでいるんだけど・・・・」

「そうなんだよね・・・・。だからあんまり気にしていなかったんけど・・・・」

何か雀が無視られているのが、可哀想に見えてくるな。それにお兄ちゃんと呼ばれるのは、ここだけならそうなんだと思うが俺の妻の中にはお兄ちゃんと呼ぶ妻は数人いるな。確か鈴々、璃々ちゃん、季衣、流琉、風、小蓮・大喬&小喬、はお兄ちゃんで子住姉妹は時々兄と呼ばれるけど。もう妻の一人だからなのか、旦那様とか桃香たち蜀軍の連中が呼ぶからかご主人様と呼ぶこともある。

「詩乃。お主、対策は講じておらなんだか?」

「対策も何も、こればかりはどうしようもないでしょう。・・・・それにご本人も呼ばれて違和感などありませんから」

「・・・・そうであったな」

「言っておくが、兄と呼ぶ者はお前らが知っている者たち以外にもいるんだから、そこはもう諦めろ」

「一応聞きますが、私たちが存じ上げていないのは・・・・?」

「もう分かっているだろ。俺の妻たちだよ、戦後に現れただろ?ドウターを倒すときにいた中に」

戦後というとと聞かれたから、もちろん川中島の戦後だと言ったら驚愕の顔をしていたな。だから、全員ではないとも言ってやった。

「一真様の妻の中にも『お兄ちゃん』と呼ぶ方がいるのですね~。強敵出現でもありますし、私たちもお兄ちゃんと呼んだ方がいいかな・・・・?」

「お兄ちゃんかー。一真様、確かにそんな感じでもあるもんね」

「うぅぅ・・・・。確かに雀たち、一真隊じゃないけどさー」

「・・・・・・・・」

烏は雀が言ったことに同意したのだった。まあ八咫烏隊は一真隊というより、公方である一葉の傭兵部隊でもあるから。給金がなくなれば、縁は切れるけど俺はそうはさせない。唯一主要人物以外の者で救助する者たちは、烏と雀の八咫烏隊だからなー。

「お姉ちゃんに慰められてもあんまり嬉しくない・・・・」

「お兄ちゃんなの?鞠、お兄ちゃんいなかったから一真がお兄ちゃんになってくれるなら嬉しいの!」

「・・・・あのね、諸君」

話の方向性は先まで見えているんだけど、路線変更というか方向転換か。それをしようとしているな、それにここにいる護法五神も兄と慕われてるんだがな。帝釈天は創造神様か旦那様かお兄様なんだが、毘沙門天はお兄ちゃんのままで他の3人はにいにとかおにいとか兄さんとかそれぞれだし。それに総勢十人以上の様々なタイプの妹武将を引き連れて、乱世に平和をもたらせればいいのかな、俺は。

「お待たせ!私の膳も用意してきたよ!お兄ちゃん!」

「おお、早かったな。ん?夕霧も一緒か」

薫だけかと思ったら、夕霧も部屋に入ってきた。そしたら一緒に食べていた護法五神と武田家の家祖である新羅三郎義光が、一緒に飲み食いをしてたのには驚いていたけど。

「うん。さっきそこで会ったの。お兄ちゃんにご用があるんだって」

「護法五神と我らの家祖が一緒に飲み食いしているのは、不思議な光景でいやがる。兄上達もお食事中でやがりましたか」

「あ、兄上!?」

「まあ、武田の次女からすれば、長女の未来の良人は兄であろうな」

「また新機軸ですわね・・・・」

「何やら賑やかでやがりますなー」

「夕霧も一緒に食べる?」

「むー。夕霧はもう食事は済ませたでやがりますよ」

「そうか、じゃあまた今度な」

「終わるまで待つでやがります」

「薫さん。良ければ隣にどうぞ」

「ありがとう!詩乃ちゃん!」

詩乃が珍しくスペースを空けてくれて、俺の隣には薫の膳を置いて手を合わせた。ちなみに護法五神や新羅三郎義光とか他の神仏たちは、人間サイドと神仏サイドで分かれていたため、薫は俺の隣にと座れた。というか一応ここは俺ら神仏にとっては下界だからな、人間同士で話したい事もあるのでそうさせた。俺は現在人間の方だからだけど。

「それじゃ、薫も・・・・いただきままーす!」

薫が食べ始めてから、結構時間は経ったが俺は食い終わったと同時に呼んだ神仏たちも神界へと帰っていったけど。

「ふう~。ごちそうさまでした」

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったけど。名残惜しいとはあるが、料理は温かい内に食べた方が美味しいからか俺達は手を合わせて食事と楽しい時間を感謝だ。

「ふー。お腹いっぱいなのです!」

「ちょっと綾那、お行儀が悪い」

「歌夜のその小言も、久しぶりに聞くと何やら落ち着くの」

「公方様はお小言は聞き慣れておりますからな」

「別に好きで聞いておる訳ではないわ」

まあそうなんだと思う。こういう小言も、久しぶりに聞けば懐かしくも感じるとも言う。

「で、夕霧は何か俺に用があるんだろ?」

「そうでやがります。済んだら、姉上の所に行くでやがりますよ」

「それは何の用事?」

「もちろん兄上だけでやがります。姉上が、この間の川中島での出来事を聞きたいと仰っていたでやがりますよ」

「・・・・だったら、薫も行った方がいい?」

「薫はいいでやがります。兄上と一緒に行動をしてやがったから、一真隊の動きは兄上に聞けば良いでやがりますよ」

「ホント?」

「じゃ、薫は鞠と遊ぶのー!」

「あ、そうだ。だったら・・・・ころも来てくれるかな?」

「・・・・・・・・・・・はひっ!?」

「なぜ驚く?」

「いえ、軍の動きの話だったら、一葉様か詩乃ちゃんか、後は精々長尾方の一真隊を率いていた梅ちゃんじゃないのかなと・・・・」

「どうしてそこで、私がオマケみたいな扱いなんですの!」

「そっちの話ではない。光璃がな、ころに会いたいというのを思い出したからな。ついでにどうかなーと思ったんだが」

「・・・・・・・・は?光璃様が・・・・・私に・・・・・?」

「ああ」

「はああああああああっ!?」

まあデカい声で驚くのは当たり前だ。そりゃ、ころは野武士の出だからなのかいきなり一国の主である光璃が会いたいというから。

「な、何でころちゃんなんですか?」

「そ、そそそ、そうですよ!普通、一真隊で光璃様と顔合わせが必要なのは、公方の一葉様か、今川家の鞠ちゃんじゃないですか!それが何で、私・・・・」

「武田家の棟梁として、木曽川を牛耳る川並衆の棟梁がどんな子なのか気になるんだとよ」

「棟梁の格が違いすぎるじゃないですかあああああああ!っていうか、何で川並衆の事まで・・・・!?か、一真様ですか話したの!何話してるんですか!」

「俺じゃねえよ。武田家は各地の情報集めが得意な連中を持っているから、俺が話す前から知っていたんだと」

「うわあああああ・・・・・。ちょっと、勘弁して下さい・・・・・。さすがにそんな事、いきなりは心の準備が・・・・」

「それほど驚く事でもあるまい。公方に説教をするころが何を今更うろたえておる」

「いや、私だって別に好きで公方様にお説教をしてる訳じゃないんですけど・・・・」

「そうか、今日はやめておくか?」

まあ、今更であるが武田の棟梁に面談というサプライズをするつもりではなかったが、ころ本人にとってはサプライズというよりシークレットゲストという感じになるからな。

「すみません・・・・。もうちょっと心の整理が付いたらという事で・・・・」

「そうだ!だったら、薫、ころちゃんの料理の話が聞きたいんだけど・・・・」

「料理?一真様のではなく、私ですか。まあそれなら、いくらでも・・・・」

「やった!一真隊で二番目の料理上手って聞いていたから、どんな子か楽しみにしてたんだ!もちろんお兄ちゃんが一番だというのは、知っているよ。心と勝負してみたら、お兄ちゃんの方が美味しかったから」

まあそうだろうなー。この前、心と料理勝負をしてみたんだけど。その先からは言わんが、俺が勝ってしまった。と、同時に俺の料理を食べた長尾と武田の武将たちは俺曰く『女のプライドが傷ついた』と心底落ち込んだ女性陣だった。さすがに詩乃たちは食べ慣れているからか、そこまでダメージはなかったけど。

「え、いやちょ・・・・一真様!?」

「それについても俺ではないぞ」

「じゃあ・・・・・」

また俺なのではと視線が飛んできたが、否定をしてので視線がゴロゴロしていた綾那とその脇にいた歌夜だったけど。

「綾那じゃないですよ」

「私でもありません」

「だ、だったら・・・・!」

そして俺でもないし、綾那と歌夜でもないとすると、視線が詩乃と雫に向かった。

「事実を話しただけですが?ねえ雫」

「あはは・・・・そうですね・・・・」

「何なんですか皆・・・・」

「いいじゃない。今日のころちゃん、何だか輝いて見えるよ!」

「こういう目立ち方、したくないよ・・・・。だったらひよが目立てば良いのに」

「そういえば、最近はころの料理も久しく食べていないな。薫か俺が食事当番をしていたから」

「久しくって、越後を出てからまだそんなに経ってないじゃないですか。それに一真様の料理は私のより美味しいじゃないですか!」

「ほらほら。だから、ころちゃんがお兄ちゃんの喜ぶ料理を色々教えてくれると嬉しいんだけどなー?それについてはお兄ちゃんに同意するけど、お兄ちゃんの料理はたまにしか食べれないし」

「はぁ・・・・・。そういう事なら」

「だ、だったら私も手伝う!」

「鞠もお手伝いするのー!」

「やった!お兄ちゃんと作るのも楽しかったけど、それよりも楽しくなりそう!」

「話が纏ったという事で、俺は行ってくるからな。皆はゆっくりしていろよー」

「はい。・・・・お気をつけて」

声では言えないが応援しているからな、今日のころは俺がこの世界に降り立ったぐらいに輝いているからな。そんで一真隊の部屋を後にした俺は、夕霧に連れられ光璃の部屋へと案内されるというか向かっていると言う感じだ。

「しっかし、賑やかな妾連中でやがりますなー。あれじゃ、ちょっとした宴でやがりますよ?」

「まあ、俺らの部隊での食事風景は、いつもあんな感じだよ」

「ふむー。あの妾連中に離縁しろなんて言ったのは、ちょっと悪かったでやがりますな・・・・」

「気にしないでくれ。あの時は、夕霧も内情というか事情を知らなかったのだから」

初見が一真隊を見て、こういう環境だなんて。普通は分からんだろう、それに一真隊もあんな感じだけど黒鮫隊の食事風景はもっと凄いぞ。何せ食堂のコックは、俺の料理のレシピや腕を受け継いでいる者だし。

「それにしても、薫は連れて来なくてもよかったのか?」

「いいでやがりますよ。薫があんなに楽しそうにしてやがる所なんて、久しぶりに見たでやがります。そういう邪魔は、なるべくしたくないでやがりますよ。ホントは薫も呼ばれやがってましたけど、姉上も事情を話せば分かってくれるでやがりますよ」

「それならそれで助かる。まああの場から離すなんて、一種の野暮だしな。良い姉だな、夕霧も」

「ふふん。当たり前でやがりますよ!・・・・・ひゃっ!?」

「悪い、ついつい癖が出てしまった」

夕霧の声で、つい夕霧の頭を撫でてしまったので手をひっこめた。この高さに頭があると、無意識にそうなるからな。もう直せねえよ、この癖は。

「べ・・・・別に、謝る事なんかないでやがります・・・・・」

「そう言ってくれるなら助かるよ」

「・・・・・も、もう・・・・・」

「何だ?」

「もう、お終いでやがりますか?」

「なら、もう少し撫でてやるよ。ここまで案内された礼だ」

と俺はもう少しの間に夕霧の頭を撫でてやった。そしてしばらくするともういいというので、やめたけど。

「姉上ー。兄上を連れれ来たでやがりますよー」

「・・・・入って」

光璃の部屋に入ると、いつものように光璃がちょこんと座っていた。座布団の数は、予想通り四つだった。

「・・・・薫は?」

「一真隊の皆と一緒にいたから、来なくて良いって言いやがりました」

「一真隊の動きは俺が薫の分まで説明するからと、隊の皆の所で楽しく話してからな。居させてあげると助かるんだが?」

「・・・・薫、楽しそうだった?」

「あんなに楽しそうな薫は、久しぶりに見たでやがりますよ」

「ならいい。・・・・座って」

「この前の川中島について何だって?」

「記録にまとめる。それぞれの状況、聞きたい」

さすが情報は武器だと言い切る武田家だな。戦の情報も、それぞれ視点が違うからなのかそれを記録するらしい。まあ俺らはデータとして纏めているから、過去の事はフォルダ名で残している。トレミーとヴェーダにな。まあ武田家じゃなくとも、織田家とか他家の合戦の記録なんてのはどうなっているかは知らんが。

「夕霧から話・・・・聞かせて」

「分かったでやがります!」

「夜叉から聞いたけど、本陣に夕霧はいなかったな?」

「あれは夜叉でやがったか。まあ夕霧は春日と一緒に敵陣に当たってやがりましたからな。敵の奇襲が来るのは姉上が想定してやがりましたから、正面の陽動を受け止める役でやがりますな。それで最後の最後で夜叉が夕霧たちと長尾勢を無力化されたでやがるが」

正面の指揮というのは、そこにいた夜叉から聞いた通りだった。まあ俺達は裏からだったから、見てはいないんだったな。

「どうだった?」

「だいたい予想通りでやがります。鉄砲と矢戦だったから、結局夕霧も春日も出番なかったでやがりますよ・・・・」

「そう。被害は?」

「矢も鉄砲も、ほとんど射程外でやがりましたからなー。うっかり前に出た連中がちょっと怪我しやがったくらいで、ほとんど無傷でやがりますよ」

やはりか、これも夜叉の報告通りだ。あとは冥界にいる閻魔大王も、今回の戦で死んだ人間はほとんどいなかったと聞くくらいだ。だから犠牲は最小限で済んだということだろう。

「春日は?」

「ピンピンしてやがりますよ。どうかしやがったですか?」

「それならそれでいいんだ」

不死身とは聞くが、やはり春日は無傷だったか。まあ夜叉からの攻撃でも傷つかずだったそうで。

「ただ、いつ仕掛けてきやがるか分からない素振りはずーっとあったでやがりますからな。その辺りはさすが長尾でやがりましたよ」

「だから、戻れなかった?」

「本陣の援護に戻りやがれなくて、申し訳ないでやがります」

「いい。美空なら、そのくらいはする」

「まあ美空の性格からしてみれば、夕霧たちが隙を見せたら遠慮はしていないだろうな」

美空と光璃のサシの勝負は、互いを見定めるためのだったようだし。余計な犠牲を出す事自体が、俺の計算外のはずが計算内だったので。

「龍だのなんだの言いながら、相変わらず女狐でやがりますな・・・・」

「他に気付いた事は?」

「長尾のヒョロヒョロ矢は距離さえあればどうにでもなりやがりましたが、とにかく、一真隊の鉄砲がおっかなかったでやがりますなー」

「本陣にも聞こえてた。あれは恐い」

「今回は一真隊も戦う気がなかったでやがりますな?兄上」

「うむ。俺らが一真隊と合流を狙ってか、補給を早めるために無駄撃ちをしていた。その分派手に射撃していたそうだけど、そんなに厄介だったのか?」

「無茶苦茶でやがりますよ。兵はビビりやがる、馬は暴れやがる、たぶん長尾の矢よりも味方の暴れ馬に蹴られた兵の方が多かったでやがりますよ?」

「うーん。俺らでいうならそれも策だと思うよ、第一俺直属部隊は一真隊の鉄砲よりも激しいと思うし。それに鉄砲の射程は直属部隊の方が上だから」

無敵の騎馬隊や戦巧者の光璃や夕霧たち、武田家の者でもそう思うのか。まああの数での乱射は、最強の騎馬隊でもビビるとは思ったけど。

「・・・・鉄砲は厄介。一真直属部隊ももっと厄介?」

「まあな一真隊は射程というのがあるが、直属は射程外というのはここから山を2個超えた辺りまでだと思うよ」

「そんなにでやがりますかー。まああんなの相手に突撃なんかしやがったら、いくら無敵の我が騎馬隊でも踏み潰す前にこっちが蜂の巣でやがりますよ」

「馬は無理。沼地やくぼみでも作られたら、良い的」

「城攻めは当たり前でやがりますが・・・・・。後は、野原の真ん中に逆茂木や柵を立てられても面倒でやがりますな」

ん?それって。俺はもしやとも思ったんだが。

「・・・・それって、普通は野原のど真ん中に柵なんて立てないよな?」

「立てやがりませんけど、夕霧が鉄砲で本気で騎馬隊を仕留めようと思ったら、砦代わりに絶対立てやがりますよ?柵で流れをせき止めて、くぼみか何かで騎馬の足を取った所で、バーンでやがります」

「光璃もそうする」

「まあ、そんなあからさまに怪しい柵なんかあったら、普通は警戒して回り込みやがりますけどねー!」

よーく考えると、その対策を武田家がしていたら長篠の戦いは、普通に武田家が有利になるような気がするんだが。

「いずれにしても鉄砲対策は徹底的に研究しておかないと、騎馬隊なんて時代遅れになりやがりますな」

ふむ。史実というか俺らの歴史だと、長篠の戦いは武田信繁は参戦してなかったような気がするんで、スマホを取り出しwikiで検索。すると、参戦武将の中には武田信繁の名はなかった。それとも今回の件がなかったから、鉄砲の有効性を知らないのかな?まあこの戦は晴信である光璃の代ではないし。

「春日はどう?」

「春日も鉄砲は警戒してやがりましたよ。多分、対策も幾つか考えてやがります」

「分かった。また、皆で考える」

「でやがりますなー」

まあこの世界は外史であって正史ではないから、長篠の戦いは起きないと思うけど。それにもし武田の相手が俺達ブラック・シャーク隊だったら、瞬殺されるのがオチという訳になる。この時代の鉄砲と俺達が持つ最新技術の銃火器の射程は大幅に違うからな。狙撃班も結構いるし、八咫烏隊一の烏がいたとしてもこちらはスナイパーがたくさんいる。あとは騎馬隊が来ると予測されるポイントに地雷とか仕掛ければお終いだし、もし地雷を回避したとしても上空からのヘッドショットで終わる。

「次は一真の番」

「ああ・・・・。そうだな」

「夕霧はずーっと前線にいたから、向こうの一真隊が下がった後の事は知らないでやがりますよ」

「光璃も聞きたい」

「そうだな・・・・。まあ話すより見た方が早いんでな、まずはこれを見てくれ。向こうの一真隊が下がった所から話せばいいのか」

と俺は空間からノーパソを取り出してから、光璃と夕霧に映像を見せた。映像についての技術は、前に教えておいたからなのかすぐに理解をしてくれた。

「ほー。で、あの姦しい妾連中と長尾本陣から姉上の本陣までとって返そうにしたでやがりますか」

「まあな。それに夜叉たちに命令したのは俺だからな。だから、美空と光璃のサシの勝負が終わるまでは一真隊を武田勢本陣に入れさせないようにした訳」

「すると、兄上が止めたんじゃないでやがりますか?」

「ああ。サシの勝負が終わったら、一真隊を本陣に入れたら一本の木の所で仲良くしていたのさ」

「一真の出番は特になかったけど、勝負の邪魔を阻止してくれたのは一真が夜叉たちにそうしてくれたため」

「それに一真隊を止めていたのは、分身体の俺が大天使化をしての夜叉への命令。本体である俺は上空にて戦いをしていた」

分身体として気付いたのは、長尾勢本陣のところだし。まあ無事に仲良くで終わったからよかったけどな。

「まあ俺的には、二人が無事でよかったけどな」

「・・・・・・・」

「だったら次は姉上の番でやがりますな」

「一応夜叉や上空にいた者たちから報告を受けているが、光璃の口から聞きたいな」

「特に話す事、ない」

「ないというのは駄目だぞ。俺も夕霧も本陣にいなかったんだからさ、そっちの動きは気になるよな?夕霧」

「そうでやがりますよ。むしろ、それが一番聞きたいでやがります」

光璃はしばらく黙っていたが、黙秘は駄目だと思ったのだろうな。必要な事だろうし。

「・・・・分かった。なら、話す」

まあ光璃は、俺の妻の一人である恋と同じ話し方だけど、光璃はぽつぽつと話してくれた。俺達が妻女山に潜んでいる間のと本陣にて夕霧が前線で矢戦をしている間の話だった。まあ偵察機や夜叉たちに聞いてはいるけど、やっぱこういうのは当事者に聞いた方がいい。

「・・・・で、美空に事情を説明してたら、一真隊が本陣に入ってきた。一真隊が、光璃たちを見ているときにいつの間にかいた一真に話かけられた」

「まあちょうどサシの勝負が終わったと悟ったのでな、一真隊を入れた訳よ。そんで俺が疲れ切っていた美空と光璃に話しかけた訳」

「姉上が疲れ切っていやがったのですか?兄上」

「ああ。何かやり切った感というのが、あってな。それについては記録はしていないが、夕霧には見せたかったな」

「姉上の姿は見たかったでやがりますー」

まあ現代で言うなら写メ撮られるタイミングだったけど、あえて撮らなかったけど実は撮っているんだな~。俺の画像フォルダーにあるけど。これを見せたらきっとコピーして仲間内に回されているな。武田家は知らんが、一真隊なら薫辺りから詩乃に回り、最終的には久遠や美空辺りまで回ることになるだろうがあいにく俺は変顔というのはしないから安心だ。

「絵師を呼んだ方がいいでやがるか?」

「・・・・呼ばない方が身のためだと思うよ。光璃を見ろって」

夕霧が光璃を見たら、無言だけど怒ってます的な感じになっていた。

「今のは冗談でやがるとして、これで今回の戦の記録もまとめられそうでやがりますよ」

「ほう。記録を纏めるのは、夕霧何だな」

俺らブラック・シャーク隊なら、一番上の俺が纏めるんだがな。それぞれのを編集してから、纏めるのが俺の仕事の一つなんだけど。ここでは違うのかな。

「そうでやがります。姉上が疲れ切っていたというところの件も、ちゃんと記録に残しておくでやがりますよ!」

「・・・・そこは、残さなくていい」

まあ未来永劫葬り去りたいくらいの黒歴史でもあるとでも言おうか、誰にでもあると思うな。黒歴史は。

「それじゃ、失礼するでやがりますよー」

そう言い残して夕霧は席を立つと、光璃の部屋を後にする。俺はノーパソを閉じてから空間にしまったけど。

「大丈夫なのかね?」

「夕霧の記録は正確。・・・・だけど、今回は余計なのが記録されそう」

「まあそうだな。記録にいつもの口癖であるやがりますとか、付けないだろうな?」

「大丈夫。うまくやる」

「光璃が言うのなら、大丈夫か」

光璃の黒歴史もなかったことにしてくれるとは、思わないけど。こちらとしての報告書には纏めてある、今は副長の劉零がしてくれるだろうし。それに今までのデータとかを黒神眷属による今まであった事を映写機で、見せているだろうし。

「お疲れ様、一真」

「光璃こそな、俺はいつもの事だから」

「・・・・・・」

うーん、何だか今日の光璃は元気がなさそうな気がする。いつもよりテンションが低めだし、今日は何か違和感を感じるけど。

「光璃・・・・何かあったのかな?」

「どうもしない」

「いつもと比べて元気がないのは分かるんだが?」

「・・・・・・?」

首を傾げてもな。

「もしかしてだけど・・・・・久遠に会うのが心配なのか?来る事は知っているけど」

そう聞いてみたけど、光璃は首を横にふる。

「そうか・・・・。まあ心配はしない方がいい、久遠はあれでうつけとか呼ばれているけど、光璃みたいに道理の分かる相手だ。話せば、理解してくれるさ」

「それは、心配してない。信長がいい政をしてるのは、知ってる。一真の扱いも、鬼を倒すための考えも、分かる。信用してないのは、戦のやり方だけ」

「まあそれは分からないわけでもないさ」

金ヶ崎の敗戦が気になるそうだが、あれの予知をしていたのは俺だ。まあ予知以前にいつも知っている久遠ではなかったし、おかしいという部分はあったような戦い方。

「信長の事じゃ、ない」

「ふむ。美空の事でもなさそうだな」

「違う。鞠も来たし、予定通り。・・・・ううん。予定以上」

光璃は小さくため息を吐いて・・・・そっと押さえたのは、ケープに覆われた胸元。

「でも・・・・この辺が、しゅん、てなる」

「しゅん、ねえ」

「一真」

「何?」

「さっき、何してた?」

「さっき?もしかして、この部屋の前で夕霧の声が聞こえたことか?」

さっきというと、一真隊で食事をしていたのは、知っていると思うし。その前だとドウターについてを考えていたから、さっきというとこの部屋の前の事だと思った。

「・・・・(コクッ)夕霧、凄く嬉しそうにしていた。・・・・何?」

「夕霧が妹思いのいい姉だと思ってな、頭を撫でていたところだ」

「頭・・・・」

「もしかして、撫でてほしいのか?何なら撫でてもいいぞ。光璃には頭撫でていないしな」

「・・・・いいの?」

「ああ。光璃はいい姉として、妹思いだし。俺の妾の一人だ、妾がして欲しいというのなら、俺はしてやってもいいんだぞ」

言った直後にこくこくと頷いてから光璃はその身を寄せてきた。まあ普通なら近いというが、俺にとってはこれは甘えたいのだなという解釈で解決しているからな。

「こんなに近くで見るのは、何だか初めてかもな」

「光璃も・・・・」

印象的な大きな瞳も、きめの細かい白い肌も拗ね気味の口元も・・・・。こんなに可愛い子がここまで寄ってくるのは、普通の男は緊張するだろう。まあ俺は長く生きているからなのか、緊張とかはしない。むしろいい気分になりそうな感じではある。光璃に催促されずに、俺は光璃の頭に軽く手を置いて撫でた。そしたら反応が凄く可愛い。ふんわりとした髪を撫でまわすと、光璃は気持ちよさそうに吐息混じりのかわいい声が出た。

「ん・・・・・・。ん、ぅ・・・・・」

手を止めたらもっとと言うので、撫でるのを一時停止した手を再び撫でたのだった。しかもこの格好を外から見るとキスシーンみたいな感じで、もう少しで口と口が合わさりそうなくらいの近さでもある。

「一真の手・・・・おっきい」

「まあ、大人の手だからな。大きいと見えるけど」

「それに、あったかい。・・・・・んぅ・・・・・」

「気持ちいいかぁー?」

「・・・・とっても・・・・・・・」

俺の手が動いても、光璃は身体を震えないでいる。俺の手は安心しているのかなと思うと、今度はあったかいと言う。こういうの胸の中が温かい気持ちになるんだよなー。夕霧はずるいという発言が出たので、夕霧よりも長く撫でてやるからそれについては言わないでくれと頼んだら了承してくれた。夕霧をダシにしてしまうのも、どうかと思うけど光璃が喜んでくれるならいいかと思った。

「一真・・・・・」

「なんだい?」

「あのね・・・・・。独り占めしたい」

「独り占めって、俺を?」

光璃はその問いに頷いたけど、俺は一瞬冗談かと思ったけど冗談ではなさそうだ。

「光璃のものにして、二人で躑躅ヶ崎館に籠もる。美空にも、一葉様にも、信長にも渡さない」

「んー、そうしたいのは山々だが無理な話だな」

「・・・・なぜ?・・・・理由は?」

「光璃も知っていると思うけど、俺にはな。ここでいうなら正室がいる、本妻である奏がいる。それにこの世界ではなく異世界にいる、そんでもって側室もここと異世界にいる。そんな俺はそういうのはさせられないし、光璃だって本当は分かっているんだろ?」

「・・・・うん。一真は皆のモノ。同盟の要。でもそう考えると、この辺がしゅんってなる」

なるほどな。それでさっきの話に繋がる訳か。でもなー、この外史は崩壊寸前のところまで来ているから。まあ崩壊したとしても、桃香や吉音たち同様に保護するのが俺らの役目であるから。

「そうなった時は、一真を光璃の物にしたいって思う。さっき、夕霧と一真の声が聞こえた時も、しゅんって・・・・・あ」

それ以上は言わせねえよと思いながら、頭を撫でていただけだったけど、光璃を抱きしめていた俺であった。

「そういう時になったら、いつでもこうするが。それは二人の時だけな、それに俺の事をこんなに思ってくれているのなら感謝というか凄く嬉しい」

「今、しゅん・・・・じゃなくて、ほわっとしている。夕霧や薫と一緒にいる時みたい、ぎゅってされているのは撫でてもらうよりも・・・・嬉しい」

「俺も幸せだ。まあ本妻がいようとも、今ここにいるのは俺と光璃だけだ。二人っきりの時間はこうしていたい時もある」

「一真も?」

「ああ・・・・。俺も本当は光璃を独り占めしたいとは思っている、けどそれは駄目な事だ。でも今ここにいるのは俺と光璃だけ、そして二人だけの空間」

抱きしめたままではあるが、躑躅ヶ崎館に籠もるのも悪くは無いかなとは思うがそれではダメな事だ。平等の愛を捧げる事が、奏との約束でもあるのだから。

「光璃と同じ・・・・。とくとくと言っている」

とまあ、この先からは何となく分かるが、俺と光璃はキスをした。光璃曰く顔が熱いし、我慢が出来ないようで。ホントはキスする音をここで再現したいが、それは想像ということで。でまあこの先何したかまでは言わないけど、押し倒してはいないがその身を受け止めていて、光璃もそれを嬉しがるように一層身体を預ける。そしてキスだけに終わらず例の行為を始めた俺と光璃。今回もこの部屋に来ない様に人払いと認識されない結界に防音結界と三重にしたおかげで、俺も光璃も火照っていたのだった。ここからは言えないけど前戯をしたあとに挿入してから中出しをしたが、もちろん行為後に浄化をしたので服にも身体にも行為していないかのような感じにはなった。けど俺と光璃は何だか疲れ切った感じではある。

「ごちそうさまでした」

「何がとは言えないけど、おそまつさまでした。でもこれで分かっただろ、光璃は一人ではないって」

「・・・・・(コクッ)一真の気持ちが分かった気がする」

俺の気持ちか、まあ俺の奥さんと離ればなれになったあとは光璃のようにしゅんという気持ちにはなったけど。今はこの躑躅ヶ崎館の上空にいるけどね。

「一真・・・・。好き」

「うん。俺もだけど、好きって言ってくれたの初めてじゃない?」

「たぶん。・・・・好き、一真」

その一言だけで、気持ちが繋がるような感じがした。その言葉だけでも大切に思えてくる光景のようで、まるで大切にしている宝石という表現だな。まあ大切な指輪は、いつも肌身離さず付けているけど。

「俺も好きだよ。会って日も浅いけど、一緒に戦って、時間を過ごす。今だけは光璃の事だけを思うと、俺も光璃の事が好きだ」

「嬉しい。・・・・胸の中、また、ほわってなっている。でも、このほわってなるの・・・・ないしょ」

まあたぶん「しゅん」と「ほわって」というのは、気持ちの問題なのではと思った。俺は無言で頷いて内緒と思い、人差し指を口に当てて内緒話ということとなった。二人だけの内緒話となったと言ったら、なんだかどきどきすると言った。まあそれはそうだろうな、妻一人一人にも一つは俺と二人の内緒というのはあるのだから。奏にもあるし、他の妻にもある。光璃は内緒が多いが、今回は何だか不思議のようで。光璃は元々秘密主義という感じ、それか必要な事以外は語らない方だ。今は新しい秘密がまるで初めてのような言い方となり、頬を赤く染めたのだった。 
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