戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十三章
休憩×一真隊の不安
久遠の会話を聞きながらだったが、川中島上空にあるゲートはまだ開かない様子だ。というか、長尾勢もそうだが、こちら側も川中島までの道のりは長い。車があればすぐに行けるし、トレミーなら加速したらすぐ到着というオチでもある。若神子城を後にした武田軍は、諏訪まで続く真っ直ぐな道を抜けて、諏訪の手前で大きく曲がり、八ヶ岳の麓に延々と続く峠道に差し掛かっていた。
「ここの水は美味い・・・・。水の精霊の言った通りだ」
「水が冷たくて気持ちいいですね・・・・!」
休憩以外はずっと馬の上なんだから、越後から来たときと状況は違うけど。休めるときに休まないと、後は辛いし。まあ俺の馬はただの馬じゃないから乗り心地はバイクを乗っているかのようにいいが速さが足りない。馬は限界はあるが、バイクはない。燃料があるだけ走れるような感じだし。
「ご主人様。ただいま戻りました」
「おう。ご苦労さん」
若神子城からは別行動をしていた小波。先行して川中島まで行ってくれた、まあトレミーからの衛星カメラからの映像でも分かるが前にも言ったように人の目で見る事は大切だ。目的としては、他のスパイたちと同じく敵情視察をしてくれた。あとは・・・・。
「はっ。ですが・・・・」
「やはり持っていない様子だったか」
距離が遠すぎて届かないのであれば、近くに寄って話しかければいいことだが。残念なことに守り袋は回収されていたから、一真隊のメンツや一葉も持っていなさそうだったと小波から聞いた。俺は長尾勢がいるところに風の精霊に話しかけたが、これも同じだった。
「一真様の思い通り、一葉さんが何か理由を付けて、隊の皆さんに守り袋を回収したのでしょうね」
あれがあったら美空側の作戦が筒抜けだからな、美空の命令かは知らんがそのまま放置しておくのはしないだろ。
「恐らくは。一真隊への直接接触も試そうとしたのですが、周囲の軒猿の警戒が厳しく・・・・」
「向こうも小波さんの事は警戒しているでしょう。それにもし接触している所を見つかると、一真隊が不利な立場に追い込まれる可能性もあります」
「そうですね・・・・」
今までの作戦の中核は小波と黒鮫隊との連携。今は制限されている様子だが、問題はなさそうだ。守り袋は回収されても風からの言霊で知らせる事も出来る。小波の返事に覇気がないが。
「あまり気にすんな。小波が接触しなくても、こちらは把握済みだし。風の精霊から直接頭の中に言霊を発すればいい事なんだしな」
「そうでした。上空から見ているし、ご主人様が直接頭の中から話しかけられた事ありましたね」
頭の中にダイレクトに発するのは、隠れ話になるけど。やってみたことがあった。一真隊が遠くにいても、俺が上空にいて直接頭にダイレクトコールしてみたら見事に聞こえたとね。
「あ、お兄ちゃん」
「どうかした?」
「光璃に薫か」
「内緒話?」
「そういうわけではないが」
「句伝無量?」
「あらら。気付いていたか」
「一真隊の連携は不自然」
「そう・・・・ですね。確かに、不自然と言われれば」
まあ小波が仲間になった後からは、それに頼ったりとしてきたわけだし。黒鮫隊の連携もたぶん不自然と言われるが、これについては俺達の技術しか言えないことだ。知らん奴から見れば絡繰りか何かかと思うだろうし。
「ですが、それでも門外不出の奥義の名までは分からぬはず。・・・・失礼ですが、何処から?」
「湖衣から」
「湖衣様から・・・・?」
「湖衣の師は、藤林長門守」
「ああ・・・・であれば、得心がいきました。湖衣様の身のこなし、伊賀に通じる物だとは思っておりましたが・・・・藤林に連なる者でしたか」
「その藤林って?」
「藤林家は服部家と同じく伊賀を治めていた三忍が一つ。藤林家であれば、我が一族の秘伝の知識が残っていても、不思議ではありません」
「へえー。じゃあその湖衣も句伝無量を?」
「・・・・・・・」
答えはノーだった。どうやら湖衣には知識だけで、技そのものは伝わっていないようだ。
「じゃあ俺ら黒鮫隊の連携方法が何かは知っている?」
と言ったら首を横に振る。やはり知らないようだから、通信機を手に取ればこんな小さい物でとはさすがの光璃も驚いていたけど。で、光璃と薫に話したい事があったが川の音がうるさかったので、俺らの周りだけ結界を包み込んだ。そして内緒話をしていた。一方長尾勢にいる一真隊はというと。
「はぁ・・・・。一真様、元気かなぁ」
「元気なのは間違いないと思うけど、こっちに来てる軍に一真様の旗もないっていうから心配だよね」
「旗は雫ちゃんがいくつか持って行ってたはずだけど・・・・来てないのかなぁ・・・・一真様」
「一真は来てるの。きっと」
「だよねぇ・・・・。とはいえ、私たちは妻女山から降りちゃダメって言われているし、小波ちゃんのお守りもないし・・・・確かめようがないよね」
「雀、退屈だよー」
「・・・・・・・」
「待つのが仕事って、それは分かってるけどさー」
「何をしていらっしゃいますの、皆さん」
「ああ、梅ちゃん」
「お帰りなのー」
「一葉様たちのご様子はいかがでした?」
「美空様達と暇潰しに将棋を指してらっしゃいましたわ。・・・・ですが、武田の皆さんがようやくいらっしゃったようですわよ」
「ホントですかっ!」
「ええ。今本陣に伝令が来て、この妻女山の向こう、海津城に入ったとの連絡が」
「一真様はっ!」
「残念ながら、ハニーの獅子の旗は見つかりませんでしたわ」
「そっか・・・・でも、良かったのかも」
「どういうこと?」
「だって、一真様が武田陣にいたら、私たちも一真様と戦う可能性がないわけじゃないでしょ?」
「・・・・・・・」
「お兄ちゃんがそういう事、するかなー?」
「しないとは思うけど・・・・。一真様の性格上、半分戦闘狂だし、こうやって陣を構える事になっちゃったんだし・・・・」
「だよね。・・・・一真様は前線で戦くお方。そうなったら、やだなぁ」
「・・・・・・・」
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