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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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希望に満ちて旅行することは、目的地にたどり着くことより良いことである


希望に満ちて旅行することは、目的地にたどり着くことより良いことである。
—スティーブンソン—






木の葉アカデミー編入書類が受理されたことを伝書蝦蟇から伝えられた

自来也は一足先に木の葉へ赴き、移住の手続きをしているらしい


・・・湯隠れに俺を一人置き去りにして、だ


湯隠れからどんなルートを使っても良いから木の葉へ行くこと

それが自来也の修行、最終試験


寝起き吐血で朝の目覚めが血生臭いうえ貧血気味のこの頭に、突如降りかかったこの問題

伝書蝦蟇も酷く同情してくれたうえ、面白いことを聞かせてくれた

18歳だし、一人旅ぐらい大丈夫、そう自分に言い聞かせるものの凄く不安げな自来也がいた、と



・・・18に見えなくてごめんな、自来也・・・



吐血痕を片づけ、身支度を整え、顔なじみになった宿の主人に声をかける

湯隠れから木の葉まで、|子供《・・》が一人旅で無事にたどり着けるルートを聞き出す

なけなしのプライドが木っ端微塵になったのは内緒だ

かなり主人を悩ませてしまったがなんとかルートを決めることが出来た


火の国の北東に湯隠れはあるが、忍びでない子供が真っ直ぐ木の葉へ向かうのは厳しいそうだ

なので、一旦雷の国へ行き、そこから船で火の国へ向かうことを勧められる

ずいぶんと遠回りになりそうだなと地図を確認しながらぼやいていると・・・


「坊主、大国レベルの医療技術じゃないとぶっ倒れた時がヤバイ」


両肩をつかまれえらく真剣に説得される

・・・そうだよな、俺、綱手が置いて行った薬で無事なんだもんな

薬が足りなくなったら蝦蟇経由で薬を貰いに行ってたしな・・・

最後に路銀の確認をし、チェックアウトを済ます(宿代は自来也が別にとっておいてくれた)


「じゃ、またいつか泊まりにくるよ!飛階のおっちゃん!」


長らく泊まった思い出深い宿

飯も美味かったし絶対また来よう


「吐血したままうろつくなよー」


新聞を見ながら声だけ返してくれる

ロマンスグレーの崩したオールバックが途轍もなく渋い

いつか俺もあんなオッサンになりたい、と脳裏に淡い希望を描く


歩みも軽やかに雷の国へ行く商隊を目指す

声をかけて一緒に連れて行ってもらおう










・・・そういや、飛階のおっちゃんって何処かで見たことあるような気がするんだが・・・

何処で見たんだろう?神殿時代の信者かな?

いくら唸ってみても記憶から導き出すことは出来なかった







悩みながら呆けて歩いていると躓いた

ちょうどデコのあたりに小石があったせいで無駄にダメージがでかい

しばらく蹲っていると人影が近づいてきた


「オメエ大丈夫か?うん?」


黒いポニーテールの青年が手を差し出してくる

出された手に大人しく掴まり立ちあがる


「デコに小石めり込んで痛かったけどもう大丈夫、心配掛けてすいません」


一礼して距離をとる

純粋に心配してくれただけかもしれんが用心にこしたことはない


「うん・・・お前、凄い血流れてるぞ、口から」


「通常運転であります」


敬礼して答える

面喰ったように瞬いて呆れたように見つめてくる


「・・・お前、本当に大丈夫か?」 


何処が?と聞きたいがまぁ、大丈夫なものは大丈夫だ

乱暴に口を拭って商隊を追いかけると何故か青年もついて来た


「兄さんも商隊に用があるのか?」


振り返って声をかける


「ん、雷の国までちょっとな
 あの商隊を追いかけるってことはお前も雷の国までか?うん?」


後ろにいたはずの青年はいつの間にか真横で歩いていた

・・・コンパスの差ですね妬ましい

頷いて返すと、青年は頷き返したあと大声で商隊に呼びかけた



聞きつけた商隊の人間が現れると、俺から離れ交渉が始まり、あれやこれやの内に馬車へ誘導される

されるがままに馬車に乗り込み腰かけると青年が笑った


「病気の弟を雷の国の病院まで連れて行くんだって言ったらコレだ、うん
 得した気分だ」


何やら利用されたが、こういうのも旅の醍醐味かもしれない


「髪の色違うから疑われるんじゃないの?」


「大人は複雑な関係を妄想したがるもんさ・・・うん」


青年の髪は黒、俺の髪は白髪・・・いや、乳白色だこれだけは譲れない

たとえドヤ顔で決められても、この青年と兄弟というのは嫌だ


「そもそも弟っていうのも気に入らない」


なにやら粘土を取り出してこね始めた青年

あまりにも自然に出してくるから吃驚した

粘土くせぇ

「うん?だって年下だろ?」

デフォルメされた鳥を作りながら問われる

・・・こいつが何歳であろうとこの発言を許してなるものか・・・


「18歳だ」


「・・・嘘は、駄目だぞ、うん」


額に汗を流し眼をそむけた青年

本当だよ馬鹿


「俺、コン
 あんたは?」


いい加減青年青年言うのも飽きたので自己紹介してみる


「うん?オイラは、ダラーってんだ
 道中よろしくな、|弟《・》」


金にうるさいのだろうかと考え込んだ

弟という言葉に何やら含みを感じた

・・・なんかこいつ、見ためよりまだ若いよな・・・


「・・・なぁ、お前何歳?」


問い詰めると粘土を弄る手を止める

冷や汗が出てきている



「・・・・・・・」



無言で顔をそむけた

・・・年下だったか・・・



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アニナルで木の葉から雷の国へ行くのに船を使っていたのでこんな感じに。

・・・ナルトの詳細地図は公式で出ないかな
 
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