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ウルキオラの転生物語 inゼロの使い魔

作者:銭亀
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第1部
  第5章 使い魔の1日

 
前書き
こんにちは…作者です…

今日はマラソン大会でした。

800人中、123位と悪い順位ではありませんでしたが、2桁を目指していたので少し残念でした…

タイムも1時間50分と良くも悪くもない結果でした。

正直、もう寝たいです…はい。

まあ、それでも書くんですがwww 

 
ウルキオラがトリステイン魔法学院でルイズの使い魔として生活を始めてから、1週間が経った。

ウルキオラの使い魔としての1日を紹介するとこんな感じである。

まず、ウルキオラは寝る必要がない。

そのため、起きる必要もない。

時間になるとルイズを起こす。

ルイズは起こされると、まず着替える。

ウルキオラはルイズのために下着と制服を渡す。

ルイズはとんでもなく可愛らしい容姿をしている。

そのため、殆どの男は下着姿を見ると息が止まりそうになるだろう。

しかし、ウルキオラは毎朝物でも見るような目で見ている。

黒いマントと白のブラウス、グレーのプリーツスカートの制服に身を包んだルイズは、顔を洗って歯を磨く。

水道なんて気の利いたものは部屋まで引かれていない。

ウルキオラはメイドのシエスタに頼んでバケツに水を汲んで来てもらう。

ルイズが朝食をとったあと、ウルキオラはシエスタにルイズの部屋を掃除してもらう。

シエスタは床を箒で掃き、机や窓を雑巾で磨く。

部屋の掃除が終わるとシエスタは洗濯に行く。

ウルキオラはその間、この世界について知るため図書館で借りた本を読んでいる。

実は、ギーシュと決闘した次の日に学院長室を訪れ、オールド・オスマンに図書館の利用許可を貰っていたのだ。

オスマンはその代わりに学院生徒を殺さないようお願いした。

ギーシュとの決闘で、ギーシュとモンモランシーに攻撃を仕掛けようとしたのを見ていたからであろう。

そして、シエスタが掃除と洗濯を終えると、シエスタと共にアルヴィーズの食堂の裏にある厨房を訪れる。

ウルキオラはそこで紅茶を楽しむ。

決闘をした次の日にシエスタが、ギーシュとの決闘前に逃げた事の償いをしたいと言ってきた。

その時に飲んだ紅茶が美味しかったため、ウルキオラはこの厨房を敬愛している。

その日の朝もウルキオラは、シエスタと共に厨房にやってきた。

ヴェストリの広場で、貴族のギーシュを圧倒したウルキオラは、大変な人気である。

「『我らの勇者』が来たぞ!」

そう叫んで、ウルキオラを歓迎したのは、コック長のマントーの親父である。

40過ぎの太ったおっさんである。

もちろん貴族ではなく、平民であるのだが、魔法学院のコック長ともなれば、収入は身分の低い貴族なんかは及びもつかなく、羽振りはいい。

丸々と太った体に、立派なあつらえの服を着込み、魔法学院のコック長のくせに貴族と魔法を毛嫌いしていた。

彼はメイジのギーシュを腰に差した剣も抜かずに素手で応戦し、見たこともない魔法で圧倒したウルキオラを『我らの勇者』と呼び、まるで王様でも扱うようにウルキオラをもてなす。

マルトーは魔法嫌いなので、ウルキオラを警戒するのが普通である。

ましてや人間でもないのだ。

警戒しないほうがおかしい。

しかし、ウルキオラは魔法を盾に平民を苦しめるメイジとは違う。

ウルキオラは基本平民も貴族も自らの脅威となるもの以外に力を使うことはない。

それは、優しさではなく単に必要ないからである。

だか、マルトー達平民はそれを『優しさ』だと勘違いしているのだ。

ウルキオラが専用の椅子に座ると、シエスタがさっと寄ってきてにっこりと笑いかけ、温かい紅茶とショートケーキを出してくれた。

「感謝する」

「今日のケーキは特別ですわ」

シエスタは嬉しそうに微笑んだ。

ウルキオラは一口ケーキを頬張る。

「うまいな…」

そう言うと、包丁を持ったマントー親父がやってきた。

「そりゃそうだ。そのケーキは、貴族連中に出してるものと、同じもんさ」

「あいつらはこんなものを毎日食べているのか?」

ウルキオラがそういうと、マルトー親父は得意げに鼻を鳴らした。

「ふん!あいつらは、なに、確かに魔法はできる。土から鍋を作ったり、とんでもない炎の玉を吐き出したり、果てはドラゴンを操ったり、たいしたもんだ!でも、こうやって絶妙な味に料理を仕立て上げるのだって、言うなら1つの魔法さ。そう思うだろ、ウルキオラ」

ウルキオラは紅茶を啜ると言った。

「そうだな」

「いいやつだな!お前はまったくいいやつだ!」

マルトー親父は、ウルキオラの首根っこにぶっとい腕を巻きつけた。

「なあ、『我らの勇者』!俺はお前の額に接吻するぞ!こら!いいな!」

「その呼び方と接吻はやめろ」

ウルキオラは言った。

「どうしてだ?」

「俺は勇者じゃない」

マルトー親父は、ウルキオラから体を離すと、両腕を広げて見せた。

「お前はメイジのゴーレムを溶かしたんだぞ!わかってるのか!」

「ああ」

「なあ、あの魔法はなんだ?なんであんなにも強力なんだ?教えてくれよ」

マルトー親父はウルキオラの顔を覗き込んだ。マントー親父は紅茶を飲みに来たウルキオラに、毎回こうやって尋ねるのであった。

その度にウルキオラは同じ答えを繰り返した。

「さあな…知らん」

「お前たち!聞いたか!」

マルトー親父は、厨房に響くように怒鳴った。

若いコックや見習いたちが、返事を寄越す。

「聞いてますよ!親方!」

「本当の達人というのは、こういうものだ!決して己の腕前を誇ったりしないものだ!見習えよ!達人は誇らない!」

コックたちが嬉しげに唱和する。

「達人は誇らない!」

すると、マルトー親父はくるりと振り向き、ウルキオラを見つめた。

「やい、『我らの勇者』。俺はお前がますます好きになったぞ。どうしてくれる」

「知ったことか」

ウルキオラの本心である。

しかし、マルトー親父は、それを謙遜と受け取っている。

ウルキオラは可笑しな人間だなと思う。

ウルキオラは左手のルーンを見つめた。

実はあの日、虚閃を放ったとき、ルーンが光ったのだ。

虚閃はウルキオラが予想していた力を超えていた。

あれは……とウルキオラがぼんやり自分のルーンを見つめていても、マルトー親父はそれを達人の控えめ、と受け取ってしまうのだ。

マルトー親父は、シエスタの方を向いた。

「シエスタ!」

「はい!」

そんな2人の様子をニコニコしながら見守っていた気のいいシエスタが、元気よく返事を返す。

「我らの勇者に、アルビオンの古いのを注いでやれ」

シエスタは満面の笑みになると、ぶどう酒の棚から言われたとおりのヴィンテージを取り出してきて、持ってきたグラスに注いだ。

無表情でぶどう酒を飲むウルキオラを、シエスタはうっとりとした面持ちで見つめている。

こんなことが毎回繰り返される。

ウルキオラが厨房を訪れるたびに、マルトー親父はますますウルキオラのことを好きになり、シエスタはウルキオラのことを尊敬するのであった。




そして、その日は、そんなウルキオラを厨房の外から覗き込む赤い影があった。

若いコックが窓の外にいる影に気づいた。

「おや、窓の外に何かいるぞ」

赤い影は、きゅるきゅると鳴くと、消えていった。




さて、ウルキオラは厨房を後にすると、ルイズの授業のお供を務める。

初めはずっと立っていたウルキオラを見向きもしなかったルイズだが、ウルキオラがギーシュを圧倒してからは椅子に座るように促す。

しかし、ウルキオラは気にするなと言い、座ることはない。

また、今まではルイズをバカにしていた生徒もウルキオラが居ると何も言わない。

そのため、最近ルイズは機嫌がいい。

ウルキオラも初めのうちは、水からワインを作る授業や、秘薬を調合して特殊なポーションを作り出す講義に興味を持っていたが、慣れると飽きた。

そのうちに、興味がない授業は外で待つようになった。

教師としては注意すべきところだが、使い魔が授業に出なければならないという校則はない。

それ以上に、ウルキオラに注意のできる教師などいるはずもない。

その日の授業もウルキオラは外で待って居た。

すると、ウルキオラが授業に出なくなったことでルイズをバカにする生徒がちらほら出始めた。

そのため、ルイズはウルキオラに毎日のように授業に出るように言うがウルキオラは聞かない。

しばらくすると、授業を終えた生徒が教室から出てくる。

ウルキオラの力を目の当たりにした生徒たちは、どこかウルキオラを警戒している様子だ。

そして、ルイズの後を歩き次の授業を行う教室に向かう。

教室前に着くと、ウルキオラをじっと睨んでいる赤い影があった。

キュルケのサラマンダーである。

床に腹ばいになり、廊下の壁にもたれかかるウルキオラをじっと見つめている。

ウルキオラはそれに気づいた。

「お前はキュルケのサラマンダーか。名は確か…フレイムだったか?」

ウルキオラがそう言うと、サラマンダーは尻尾を振って、口からわずかに炎を吹き上げ、主人の後を追うように教室に姿を消した。

(俺に興味でもあるのか?)

ウルキオラは疑問に思った。




ウルキオラがルイズの授業終了を待っている頃、学院長室で、秘書のミス・ロングビルは書き物をしていた。

ミス・ロングビルは手を止めるとオスマン氏の方を見つめた。

オスマン氏は、セコイアの机に伏せて居眠りをしている。

ミス・ロングビルは薄く笑った。

誰にも見せたことのない笑みである。

それから立ち上がる。

低い声で『サイレント』の呪文を唱える。

オスマン氏を起こさないように、自分の足音を消して学院長室を出た。

ミス・ロングビルが向かった先は、学院長室の一階下にある、宝物庫がある階である。

階段を降りて、鉄の巨大な扉を見上げる。

扉には、ぶっとい閂がかかっている。

閂はこれまた巨大な錠前で守られている。

ここには、魔法学院成立以来の秘宝が収められているのだ。

ミス・ロングビルは、慎重にあたりを見回すと、ポケットから杖を取り出した。

鉛筆ぐらいの長さだが、くいっとミス・ロングビルが手首を振ると、するすると杖は伸びて、オーケストラの指揮者が振っている、指揮棒ぐらいの長さになった。

ミス・ロングビルは低く呪文を唱えた。

詠唱が完成したあと、杖を錠前に向けて振った。

しかし……、錠前からは何の音もしない。

「まあ、ここの錠前に『アン・ロック』が通用するとは思えないけどね」

くすっと妖艶に笑うと、ミス・ロングビルは、自分の得意な呪文を唱え始めた。

それは『錬金』の呪文であった。

朗々と呪文を唱え、分厚い鉄のドアに向かって、杖を振る。

魔法は扉に届いたが……。

しばらく待っても変わったところは見られない。

「スクウェアクラスのメイジが、『固定化』の呪文をかけているみたいね」

ミス・ロングビルは呟いた。『固定化』の呪文は、物質の酸化や腐敗を防ぐ呪文である。

これをかけられた物質は、あらゆる化学反応から保護され、そのままの姿を永遠に保ち続けるのだった。

『固定化』をかけられた物質には『錬金』の呪文も効力を失う。

呪文をかけたメイジが、『固定化』をかけたメイジの実力を上回れば、その限りではないが。

しかし、この鉄の扉に『固定化』の呪文をかけたメイジは、相当強力なメイジであるようだった。

『土』系統のエキスパートである、ミス・ロングビルの『錬金』を受け付けないのだから。

ミス・ロングビルは、かけたメガネを持ち上げ、扉を見つめていた。

(この中に破壊の剣が…)

ミス・ロングビルが心の中でそう言ったそのとき、階段を上ってくる足音に気づく。

杖を折りたたみ、ポケットにしまった。

現れたのは、コルベールだった。

「おや、ミス・ロングビル。ここでなにを?」

コルベールは、間の抜けた声で尋ねた。

ミス・ロングビルは愛想のいい笑みを浮かべた。

「ミスタ・コルベール。宝物庫の目録を作っているのですが……」

「はあ、それは大変だ。1つ1つ見て回るだけで、1日がかりですよ。何せここにはお宝、ガラクタひっくるめて、所狭しと並んでいますからな」

「でしょうね」

「オールド・オスマンに鍵を借りたらどうですか?」

ミス・ロングビルは微笑んだ。

「それが……。ご就寝中なのです。まあ、目録作成は急ぎの仕事ではないし……」

「なるほど…。あのジジイ、じゃなかったオールド・オスマンは、寝ると起きませんからね。では、僕も後で伺うとしましょう」

ミスタ・コルベールは歩き出した。

そして、コルベールはミス・ロングビルの気を惹こうと自らの知識を披露するかのように言った。

「実はこの宝物庫…魔法に対しての防御力は高いですが、弱点が1つあると思うのですよ」

ミス・ロングビルは驚いた顔をした。

「まあ、興味深いお話ですわ」

「それは、物理的な力です」

「物理的な力?」

「そうですとも!例えば、巨大なゴーレムが壁を殴るとか…」

「巨大なゴーレムが?」

「ええ…あ…」

コルベールが何かを思い出したかのように言った。

「もう1つ弱点がありました」

「何ですか?」

コルベールは少し間をとって言った。

「ウルキオラ殿ならいとも簡単に破壊できてしまうでしょうな〜」

「あっ…」

ミス・ロングビルは気付いたかのように呟いた。

ウルキオラの虚閃ならば、宝物庫の扉や壁どころか中に入っているものまで破壊するだろう。

ミス・ロングビルは満足げに微笑んだ。

「大変興味深いお話でしたわ。ミスタ・コルベール」

「いやはや、それは良かった…」

ミスタ・コルベールがそう言うとミス・ロングビルはミスタ・コルベールに「では」と言い、去って行った。 
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