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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第五章 楽園
  第5話 都市伝説

 
前書き
ちょいと今更感がありますが、最後に日付を書いてるのはちょっとした意味がありまして……それは後々分かると思います。 

 
十香「シドー、遅かったではないか!」

士道「ゴメンゴメン。あ、そうだ凜袮、はい」

と、士道は凜袮にも鍵を渡す。

凜袮「え?どうして……?」

士道「新しく鍵を変えたんだ。ほら、十香も上条も佐天さんも」

十香「うむ!」

上条「へいへい」

佐天「ありがとうございます」

凜袮「で、でも……私なんかがもらっても、いいのかな……?」

士道「何言ってるんだよ。凜袮はもう家族同然の存在だ。もらってくれなきゃ困るよ」

その言葉を聞いて凜袮は頬を赤らめて恥ずかしそうに言った。

凜袮「あ……う、うん……そ、うだね。そうだよね。ありがとう士道。大切にするよ……」

しかし、やはりどこか悲しみが残る顔をしている。

上条「(凜袮……どうしたんだ……?)」

と、思ったのもつかの間。

上条「(あれは……?)」

見覚えのある人影が見えた。その人影は角を曲がって行き……見えなくなった。

今だ家の前で喋っている士道達に気づかれないように、その人物を追いかける。


ーーーー
ーーー
ーー


追いかけた上条だったが、なかなか見つからないため、路地裏に入ってみたりした。

上条「(気のせいか?……いや、これは……)」

どうやら、後を追いかけて正解だったようだ。

狂三「あら……探し物ですの?当麻さん……」

いつの間にか背後をとられ、耳元でそう言われた。

と言っても気配で気づいていたのでそこまで驚いてはいない。

上条「久しぶりだな、狂三」

狂三「お久しぶりですわね当麻さん。ですが、少しぐらい驚いてもらわないと面白くありませんわよ?」

狂三は背後から手を首を通して回して離さないようにする。すぐ右を見れば自分の肩に狂三の顔が乗っているだろう。

あと地味に重心を自分に傾けさせているので、背中に柔らかい何かが当たっているのが少し気になる。

上条「なら、今から驚いてやろうか?」

いや、驚きたくないのが本心。これを見られたらいろいろマズイ気がする。

狂三「その必要はありませんわ。だって当麻さんですもの」

上条「え?それってどういーー」

言葉は最後まで言わせてくれなかった。なぜならーー

上条「ひゃっ!」

つい女の子みたいな声を出してしまった。

逃げたかったが、このまま狂三を振り払うと狂三が転けてしまう可能性があるので出来なかった。

だが、大声を出すと誰かが気づいてきそうなので狂三に聞こえる最小限の声で言う。

上条「な、何すんだ!?」

狂三「言ったでしょう?当麻さんですから出来たことですのよ?」

上条「そういう事は聞いてねぇよ!なんで急に耳たぶを舐めるんだ!?」

そんなことされたら上条だけでなく男子……いや、女子も驚くだろう。

狂三「ふふ、やはり当麻さんは面白い方ですわね……」

上条「ここが路地裏で助かったよ……大通りに出てたらやばかった……」

狂三「そうですわね。社会的に抹殺されるかもしれませんわね」

上条「平然と言うな。それより今日は何の目的ーー」

またしても言葉は続かなかった。

狂三「怪我……大丈夫ですの……?」

チラッと右を見ると狂三は悲しそうな表情をしていた。屋上での交戦の時とは全く違って……

上条「……一応な。ま、退院もしたし、日常生活には支障はねぇよ。心配するなって」

右肩に乗っている狂三の頭を優しく撫でる。狂三は顔を赤らめながらも少しずつ笑顔になって言った。

と、上条は言ってるが実はそうではない。一個一個の動作にその時の傷が痛むし、身体には制服で見えないがまだ包帯を巻いている部分もある。

あまり心配させるとさすがにダメなので一応こう言っておいた。

と、そこで気づいた。狂三が今日自分に会った目的って……まさか……

上条「……ってもしかしてこれをわざわざ言いにーー」

言葉は最後まで言わせてくれなかった。

またペロッと、舐められたような気がしたーー否、舐められた。

上条「お、おい!」

狂三「ふふ。今日はこれで失礼いたしますわ。またどこかでお会いしましょう、当麻さん」

首から回していた手をほどいて狂三はどこかへ行ってしまった。

目的をちゃんと聞けなかったが、いつまでもここにいるわけにはいかないので駆け足で路地裏を出て行った。



士道一行、遅刻寸前。



ーーーー
ーーー
ーー




十香「意外と早く着いたな」

士道「危なかった……あとちょっとで遅刻だったな」

上条「朝から全力疾走って、どういうことだよ(身体中痛いし……)」

凜袮「もう汗びっしょりだよ……」

遅刻寸前だったら走るのは当たり前だよね。

しかし、少し走っただけでこんなに汗が出るとか……これが日本の夏である、とでも言っておこう。

クラスに入って自分の席につこうとした時、

?「とおっ!」

士道の横からドロップキックしてくる奴がきた。

士道「な、何すんだ!?」

殿町「よお五河。病み上がりなのに元気そうで」

士道「だからって、ドロップキックはさすがに……」

殿町「親友としての愛情表現に決まってるだろ」

上条「いつからドロップキックが愛情表現になったんだ?」

流石に大怪我して退院したばかりの上条にはしてこなかった。とはいえ殿町の言葉には疑問が……いや、疑問しかない。

殿町「だって!朝っぱらから十香ちゃんと凜袮ちゃんとイチャコラするのを見せつけるんだもん!嫉妬の炎で燃え尽きそうだぜ!グスン……」

半泣きになりながらも言った。恐らく彼の本心だろう。怪我してなければ俺もアレをくらってたかもしれない。

凜袮「本当に仲がいいよね。3人とも」

確かに殿町は変態なところもあるがいい奴だ。それは否定しない。

上条「そうか?」

殿町「ハッハッハ!それより五河」

その笑いは何なんだ?あと話が180度逆になるような気がするんだが。

殿町「今日のニュース、みたか?」

士道「チラッとだけな」

殿町「あぁ。最近天宮市ではペットがいなくなる事件が勃発しているだろ?」

士道「それがどうした?」

殿町「あれな……『天狗牛(てんぐうし)』の祟りってやつだぞ」

士道「はぁ?『天狗牛』の祟り?」

上条「聞いたことないな……それって何かの都市伝説……的な?」

殿町「上条は転校してきたから知らないだろうが……まあ、話してやるよ」


ーーーー
ーーー
ーー




むかーし昔、天宮市が影も形もなかった頃のお話。

当時あった里山に牛のような長いツノを2本生やした鼻の長い化け物がいたらしい。

それを見た村人は、そいつを『天狗牛』と呼ぶようになった。

そいつは腹が減ると山を降りて子供や家畜を食っていたらしい。

村人は毎日怯えながら暮らしていた。

村人はどうにかしなければ村は全滅する、と思っていたのだが結局『天狗牛』が怖くて何もできずにいた。

そんな6月のある日、一人のサムライが村へとやってきた。そのサムライは正義感が強く、怯えている村人達を放ってはおけなかった。

サムライは今度『天狗牛』が降りてきたら俺に任せろと言った。

ありったけの酒を用意し、村人達は家に隠れ、サムライは『天狗牛』が降りてくるのを待った。

6月11日、天狗牛が降りてきた。

日にちが分かっているのはサムライの遺書に書かれていたため。

サムライは『天狗牛』に酒を飲もうと誘った。

『天狗牛』はこんな自分に酒を飲むことを誘う人がいて、驚き、また嬉しく思った。

恐らく酒を誘われたのが初めてだったんだろう。

『天狗牛』はどんどんサムライと打ち解けていった。

サムライも誤算だった。

『天狗牛』は昔ひっそりとあの村に住んでいたところを新しく来た人間に追い払われて、こっちに現れるようになったらしい。

サムライは『天狗牛』を酒に酔わせて池に沈める予定だったが、それをやめてとことん飲み明かした。

サムライは『天狗牛』を旅に誘った。『天狗牛』は最初迷惑になるんじゃないかと言っていたが、そんなものは関係ないと言われてまた嬉しくなり終いには泣き出してしまった。

でも、最後は笑いあい、一緒に旅に出ることを誓った。


ーーーー
ーーー
ーー



士道「(嘘臭さ〜……)」

上条「(こんなの聞いて誰が感動するんだよ……)」

十香「う、う……ううううう……良い話ではないか……グスン……」

士道・上条「(えええぇぇ!?)」

まさかこんな話で感動するやつがいたとは……感動ものの映画を見せたらボロ泣きしそうだな。

士道「で?『天狗牛』の祟りはどこへ行った?」

殿町「いやんもう!五河くんたらっ!せっかちなんだからっ!」

士道「うわっ、気持ち悪っ!」

殿町「まあ待て五河。こっからが祟りになった話だ」

士道「(俺的には殿町という存在と同じクラスになったことが一番の祟りかもしれん……)」


ーーーー
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ーー


サムライと飲み明かした『天狗牛』は酔いつぶれてしまった。

それを知った村人達は『天狗牛』を縛り上げ、近くの湖へ沈めようときていた。

サムライの静止の声も虚しく、『天狗牛』は村人の手によって池に沈められた。

池の底から聞こえる絶叫と最後に、この事件は解決したかのように思われた。

だが、サムライは『化け物は他にいる』と遺書に残し、村人達を皆殺しにし、自殺した。


ーーーー
ーーー
ーー


上条「んで、それを忘れないためにこの街、天宮市も『天狗牛』になぞらえたってか?」

殿町「そういうこと。6月11日は駅前の池にお参りする儀式もあるんだぜ?」

上条「ふ〜ん……」

凜袮「でも、それが本当ならちょっと悲しいよね……」

凜袮はさみしそうにそう呟いた。

殿町「五河みたいにお供えものを忘れたやつがいるから『天狗牛』が現れ、ペットを食い荒らしているって話だぜ?」

上条「嘘くさいな」

嘘くさいではなく全部嘘である。殿町の夏の思い出を作るための。

この話をした後、殿町の提案で、今夜、祟りを鎮めるために池にお供えものをすることになった。

嘘だと気づいていない凜袮と十香はあっさりと肯定してしまい、上条と士道はため息するしかなかった。

そして、何故か折紙まで着いてくることになった。


ーーーー
ーーー
ーー


〜上条side〜


上条「(もうすぐテスト期間だっていうのに……明日は球技大会だ。確か俺はサッカーだったっけ……)」

俺、上条当麻は授業終了間際にそんなことを考え出した。

そして授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。先生が挨拶をし終わると同時、クラスの何人かは食堂へと向かって行くのが見えた。

そしてクラス名物のなりつつある折紙と十香の士道争奪戦が席の後方で始まった。

折紙「病み上がりの士道をあなたには任せられない」

十香「ぐぬぬ……せ、世話なら私一人で充分だ!あ、汗だって拭いてやったのだぞ!!」

十香がそう宣言すると同時に、クラス中がざわめいた。

士道「お、おい十香!」

現場を目撃した俺は特に驚いた表情はしていなかった。

すると、クラスの数人(いや、ほぼ全員か?)が俺のところにやってきた。

「ね、ねぇ上条くん。十香ちゃんが言ってることって本当?」

士道と同棲していることを知っているクラスの皆から質問を受けた。

上条「事実だけ言うと、十香の言っていることは正しいですよ」

その時、女子の悲鳴と男子の絶叫がクラス中に響いた。

士道「お、おい上条ッ!!」

上条「何を焦ってるんだ?上条さんの言っていることに間違いはないだろ?」

士道「で、でもよぉ!」

そして、士道にさらに追い打ちをかける一言が十香の口から告げられた。

十香「ふふふ……私はな、士道の身体を隅々まで拭いてあげたのだ!」

その刹那、

先ほどより大きい女子の悲鳴と男子の絶叫(+嫉妬の声)が俺の耳に嫌というほど伝わった。

殿町が士道に話しかけにいったが、折紙と十香はそれを見計らったように教室を駆け足で出て行った。

恐らく食堂へ向かったのだろう。

殿町の存在意義って……

それは置いといて、どうやら士道も食堂へ向かうようだ。

ちなみに俺は今日、自分で作った弁当があるから食堂などには行かない。移動も面倒くさいしな。

凜袮は……ん?凜袮の後ろにランチボックスが二つある……ってことは……

士道「もしかして先約があったのか?そりゃ悪いことしちまったな……」

士道もそれに気づいたのか、そんなことを言った。

いやいや、どう考えても士道のためだろうが。

凜袮「え?う、ううん!き、気にしないで……でも、ごめんね……?」

凜袮さん……あんた、優しすぎるよ。

士道はそんな凜袮を少し気にしていたが折紙と十香と一緒に食堂へと向かった。

俺はそこで立ち尽くしている凜袮に話しかけた。

上条「どうした凜袮?」

凜袮「当麻……」

上条「……ッ!?」

凜袮が振り向いた時の顔は、今にも泣きそうな顔をしていた。

凜袮「私……どうしよう……」

上条「え……?」

凜袮「士道のためにって思って、やったのに……逆に迷惑かけちゃってるし……」

声もいつもの凜袮とは違い、かなり弱々しかった。

俺はそんな凜袮の頭に手をポンと乗せて軽く撫でた。

上条「そんな顔してると、また士道に迷惑かけちまう。笑えよ凜袮。俺は笑ってる凜袮の方が好きだからさ」

凜袮はこの時の上条の優しい微笑みが、なんだかとても温かかった。



この日から凜袮にとって上条とは、お兄ちゃん的な存在になった。



凜袮「……うん。ありがとう、当麻……お兄ちゃん」

最後の一言は上条には聞こえない声で言った。上条には首を傾げられたが。

凜袮は一度下を向き、再び顔を上げた時には先ほどの悲しげな表情は綺麗さっぱりなくなっていた。

上条「昼飯にしよう。いつまでもこんなとこに突っ立ってる訳にはいかないしな」

凜袮「そうね。一緒に食べよう、当麻!」

上条「あぁ!」

だがしかし、彼は肝心の弁当を家に忘れてきていた。

上条「不幸だ……」

凜袮「はい、どうぞ」

凜袮は本来、士道に食べてもらうはずだった弁当を上条に渡した。

凜袮からすると、普通なら嬉しくない行動だが、相手が上条だったこともあり不思議と嫌な気分にはならなかった。




上条「サンキュー、凜袮」

凜袮「ふふ、どういたしまして」


























































今日は、6月26日。 
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