ダブルデート
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第五章
第五章
「まさかな」
「いや、男も女もだしな」
「服も同じだしな」
「狙ってやってるのか?」
「そうも思えるよな」
こう囁かれるのだった。四人もそれを聞く。
それでだ。和弥がまた言った。
「なあ」
「ああ、聞こえてるさ」
「どうする?」
直弥に対して言うのだった。
「いい加減どっちかわからないしな」
「それに周りからも言われるしな」
「あれだよ。仮面ライダーとショッカーライダーより見分けがつきにくいぞ」
「俺もそう思う」
兄にこう返す直弥だった。
「これはな」
「どうする?本当にな」
「そうだな。ここはな」
「ああ、マフラーか」
「それ買おうぜ」
具体的な言葉だった。
「マフラーの色を変えたらそれでわかるからな」
「そうだな。なあ」
直弥は美恵に声をかけた。
「美喜ちゃんもそれでいいかな」
「私美恵だから」
「こうなるからな。とりあえずそれでいいかな」
「ええ、いいわ」
「私も」
美恵だけでなく美喜も言ってきた。
「本当にどっちがどっちかわからないから」
「是非ね」
「よし、決まりだな」
「そうだな」
直弥と和弥も顔を見合わせて頷き合った。そうしてだ。
二人は店に入りマフラーを買った。その色は。
和哉が赤、直弥が青だ。そしてだ。
美恵も赤、美喜もまた青だった。お互いの色は合わせたのだ。
そしてそのうえでだ。四人で店の外で話すのだった。
「これでな」
「そうだよな」
まずは和弥と直弥が話をする。
「どっちがどっちかな」
「見分けがつくよな」
「そうね、本当にね」
「わかるわ」
美恵と美喜も言った。
「本当にどっちがどっちかわからないから」
「困ってたし」
「よし、じゃあこれでいいな」
「デート再開だな」
こうしてだった。二組のカップルはデートを再開した。相変わらず周囲の声は口さがない。しかしであった。
四人はもうそれは意識しなかった。何故ならだ。
「いや、マフラーの色だけでな」
「わかるな」
「そうよね。だからね」
「もうこれでいいわ」
お互いがわかることにだ。彼等はほっとしていた。それでなのだ。
周囲の声はもう気にならなかった。そしてだった。
「なあ、それでな」
「これからだよな」
「どうする?これから」
「何処に行こうか」
男二人がこれからどうしようかと考えているとだ。ここでだった。
まず美恵が言った。
「映画館に行こう。今面白い恋愛の映画やってるのよ」
「そうね。ここは居酒屋ね」
美喜も言ってきた。
「この近くに安くて美味しいお店があるのよ」
「んっ?」
「場所が全然違うな」
和弥と直弥は二人の言葉を聞いてふと気付いた。
「行きたい場所は違うのか」
「そうなんだな」
「それでどっち行くの?」
「これから」
「ええと、俺は」
和弥は美恵の顔を見て言った。
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