ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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クエストと真実
世界樹の内部は完全な暗闇だった。一歩足を踏み入れて、スペルを唱えようとしたが、それよりも早く、眩しい光が頭上から降り注ぐ。
広さは、かつてライトがヒースクリフと戦った、アインクラッド第七十五層のボス部屋に似ていたが、それよりも数倍は広い。そして、上を見ると、円型の扉が見えた。恐らく、あれが入り口だろう。
「ーーーーーー行けッ!!」
「オオオオオッ!!」
己を叱咤するように一声叫び、猛然と地を蹴る。
その後に、リオレウスとストレアが続く。
飛び上がって一秒も経たない内に、天蓋の発光部に異変が現れる。白く光る窓が一つ、泡となって沸き立ち、何かを生み出そうとしている。瞬く間に光は人間の形を取り、ドーム内に放出されると、手足と、そして四枚の翅を広げて吼える。
「ガーディアンか!!」
俺が叫ぶと、守護騎士は、急速に上昇する俺達に鏡の顔を向けると、雄叫びを上げながら真正面からダイブしてきた。
「「そこを退けぇえええっ!!」」
キリトは大剣を、俺は漆黒の狂戦士を振りかぶる。そして、守護騎士のマスクに映る俺達の姿に向かって、思いっきり打ち下ろす。
俺達と、奴の剣が空中でぶつかり合い、落雷に似たエフェクト光が空間を切り裂いた。
「消え去れぇええええっ!!」
全体重を乗せ、剣を守護騎士の首元に突き刺す。
「ゴガアアアア!!」
神々しい外見にそぐわない、獣のごとき絶叫を上げ、守護騎士はエンドフレイムとなり、四散する。
ーーーーーー行ける!!
俺は心の奥で確信した。この守護騎士は、ステータス的にSAOフロアボスに遠く及ばない。一対一なら、こちらに分がある。
体にまとわりつく白い炎を振り払い、俺達はゲートを見据えた。そしてーーーーーーその光景を見た途端、顔が強張るのを感じた。
未だかなりの距離がある巨大な天蓋、それを作っている無秩序なステンドグラスの、殆ど全ての窓から、白い守護騎士が出現しようとしていた。その数、数十ーーーーーーいや、数百か。
「ゼリャアアアアッ!!」
だが、俺は空を切り、叫びながら上昇する。例え、何匹来ようとも、全て切り捨てるだけ。<滅殺者>の俺が得意としてる分野ではないか。
そこに、リオレウスのブレスと、ストレアの強化魔法が飛んでくる。
ブレスが守護騎士を焼き払い、魔法が俺達を強化する。
天蓋から生み出された数体の騎士が、強化魔法を受けた俺達の前に立ちはだかろうと舞い降りてきた。その先頭の一体に狙いを定め、<ヴォーパルブレイク>を放つ。
俺の剣は、一直線に守護騎士のマスクに吸い込まれるように命中し、その後ろの騎士を貫通させて切り裂く。
「ふざっ………けるなぁああああっ!!」
「落ちろ!落ちろぉぉっ!!」
俺達は絶叫し、剣を振るい続ける。
更に、四、五匹の守護騎士が、輝く剣を高く掲げ、怪鳥の様な奇声と共に降下してきた。
俺はただ、目の前の獲物を狩る。
<滅殺者>に戻った俺は、更に加速し、キリトと共にその群れに突っ込んだ。
「「うおおおおおあああぁぁぁぁ!!」」
雄叫び共に、俺達は両手に握った剣を横一文字で薙ぎ払った。敵の剣が弾かれる。そのまま体を風車のように回転さて、限界まで加速してから守護騎士どもの首に打ち込む。
断末魔の炎が俺達の神経を灼き、更に熱く燃え上がらせる。
「もっと来いよ………もっと俺を楽しませろぉ!!!」
俺は叫び、目の前の騎士を切り裂く。
そして、右目だけが不意に紅くなる。
滅殺者スキル<滅殺眼>。
何処を殺れば一撃で落とす事が出来るか分かるこのスキルは、まさに今有効なスキルだった。
エンドフレイムが連発し、そこから剣が出てきて俺の体を切り裂く。だが、俺はただ笑い、そこにあるであろう騎士の頭目掛け剣を振るい続ける。
顔をあげると、天蓋に視線を向けた。意外な程近くに、石のゲートが見えた。
そこに向かって上昇しようとしたその時、唸りを上げて飛来した何かが俺達の右足を貫いた。
冷たく輝く光の矢だった。俺達の動きが止まる瞬間を狙い定めた様に、雨のように矢が降り注いだ。二本、三本と立て続けに命中し、HPバーががくん、がくんと減少する。
視線を巡らせると、いつの間にか遠距離で俺達を取り囲んでいた守護騎士達が、左手を俺達に向け、ディストーションのかかった耳障りな声でスペルを詠唱していた。光の矢の第二波が、甲高い音と共に殺到してくる。
「「うおおおおっ!」」
俺は<螺旋>で光の矢を消し飛ばしたが、キリトに飛んでいった矢まで対処出来ず、キリトは大剣を振るい、矢を弾き落とす。だが、更に数本が命中し、いよいよキリトのHPバーがイエローゾーンに突入していた。
「キリト、行けぇええええ!!」
俺は叫び、ロードの銃剣、純白の雷と漆黒の闇を取りだし、遠距離攻撃を放つ騎士に<ビートスプレッド>を放ち、キリトの援護をする。
ーーーーーーしかし。
キリトが後数秒と言うところで、騎士がキリトの背中に剣を突き立てていた。
加速が止まったキリトの元へ、数十匹の守護騎士が四方から押し寄せる。
「キリトォオオオオオオ!!」
俺は叫び、群がる奴等へ、<エンドレスリボルバー>を放ち、一掃する。
だが、そこにはキリトではなく、小さい残り火があった。
そして、それを掴むと、今度は俺に目掛けて騎士が押し寄せる。
「ーーーーーーあああああああっ!!」
何があっても、キリトを復活させる。
その決意が俺の中で浮上し、急降下をする。
そこに、緑の光が俺の所によってくるのが見えた。
「ーーーーーーライト君、キリト君!!」
それはリーファだった。シルフの少女は、危険を省みず、俺達の前に姿を現した。
「リーファ、キリトを連れて下がれ!!」
俺は近寄ってくる騎士達を消し飛ばしながらリーファに指示すると、リーファは頷き、降下を開始する。意図が分かったリオレウスとストレアは、近くにいる騎士達を殲滅しながらリーファの手伝いをする。
「行かせるか!!」
遠距離攻撃を放つ騎士に、<ビートバレット>を放ち、周りを巻き添えにする。そこに、近距離攻撃を放つ騎士が現れ、純白の雷でそれを受け止め、至近距離で数発撃つ。
「ーーーーーーハアッ!!」
そして、リーファ達が扉に着いたタイミングで騎士を蹴り飛ばし、加速する。
だが、騎士はそれを見逃す筈もなく、追撃をしてくる。
「くそ…………っ」
俺はそれを左右に避け、扉前で翼を仕舞い、扉から転がり出る。途端、扉が閉まり、その奥で騎士達が舞い上がるのが確認できた。
ーーーーーー死んでない。
俺はそれを確認すると、リーファの方を見る。すると、丁度キリトが蘇生した所だった。
俺は疲労した体を起こし、キリト達の方へいく。
すると、丁度キリトがリーファに礼を言っていた。
「ありがとう、リーファ。……でも、あんな無茶はもうしないでくれ。俺達は大丈夫だから……これ以上、迷惑は掛けたくない」
「迷惑なんて……あたし……」
リーファがそういうと、キリトが立ち上がり、俺達は再び扉へと足を踏み出す。
「き、キリト君!!ライト君!!」
すると、リーファが叫んだ。
「ま、待って……無理だよ、三人じゃ……」
「かもしれない。でも、俺達はどうしても行かなくちゃ行けないんだ。………アスナを助ける為に」
すると、リーファが動きを止めた。
「……今……今、何て……言ったの………?」
キリトがリーファを見て言う。
「ああ……アスナ、俺達が探してる人の名前だよ」
「でも……だって、その人は……」
口元に両手を当て、リーファが半歩下がる。
「………お兄ちゃん……なの?」
「え………………」
「お兄ちゃん…………?」
俺はキリトとリーファを見て、呟いた。そして、キリトがリーファのことを見て言う。
「ーーーーーースグ………直葉………?」
すると、リーファがよろめく様に更に半歩下がった。
「…………酷いよ………。あんまりだよ、こんなの」
リーファは首を左右に振り、キリトから顔を背け、左手を振る。出現したウインドウを操作し、ログアウトしていった。
「………何してる、馬鹿」
俺はソードスキル<メテオファイト>で固まってるキリトをぶん殴る。いや、叩き付ける。キリトはフィードバックで目覚め、俺を見る。
「ダーク………?」
「良いからとっととリーファに現実であって謝って連れてこい」
「けど………」
「けども何もあるかぁああああ!!」
今度は<ヴォーパルブレイク>を床に叩き付け、キリトを睨む。
「キリト。今リーファは、傷付いてるから行かないとか言い出すのは無しだ。お前らは兄妹だろ!?だったらとっととリアルで蹴りつけてこい!!でなかったら俺が単独でアスナを助けにいくぞ!?」
俺は剣を背に戻し、キリトを見る。
そこにいたのは、いつものキリトだった。
「……無茶苦茶な説得、久々に聞いた気がする、ありがとう」
「礼を言う前にとっとと行け」
そういうと、キリトは頷き、ログアウトしていった。
「……ダークも、意外と良いところあるんだね」
ストレアが微笑みながら俺に言う。
『ただの戦闘狂かと思ったら普通にキリトを後押ししやがって………』
『後押しの仕方が雑だったけどねー♪』
それに便乗し、ライトとロードまでもが俺に言う。
「……SAOん時に借りた借りを返しただけだ。貸し借りは綺麗に清算しとかねーとな」
俺はそういうと、キリト達が戻ってくるまで、アルンのクエストの攻略法を考えることにした。
後書き
遂に!!残すところ後三話!!
ダーク「……心残りは無いな。アスナを救えれば」
ダーク君………転せI
ダーク「しねぇよ!?AWなんかに行くわけねぇだろ!?」
ちぇー。
ダーク「ったく……」
まあまあ。さて、次回はいよいよゲーム最高潮のあの場面!!次回、グランドクエスト。遂にダークとライトがあのエクストラスキルに目覚める!!
ダーク「ライトって言ってる時点でネタバレしてる」
お楽しみに!!
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