アラガミになった訳だが……どうしよう
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夫になった訳だが……どうしよう?
58話
日本に帰ってきたのはいいが、流石にレオを連れてそのまま支部に向かうわけにもいかず、サカキに連絡をとって教会のある廃墟で一旦話し合うことになった。
「いやー、君達がこのタイミングで帰ってきてくれたのは本当に助かったよ。ああ、二人がマキナ君の言っていたレオナルド君とジル君だね?
初めまして私はペイラー榊、極東支部支部長代理をやっている。以後、よろしくね」
「あ、はい……」
「お、お母さん、この人大丈夫なの?」
「大丈夫、私が側にいるから大丈夫だよ」
「で、色々と聞きたいんだが、とりあえずレオの件はどうなったんだ?」
「……私に対するフォローはないのかい、マキナ君?
まぁいい、レオナルド君の扱いとしては極東支部の極秘試作兵器としての扱いとしてならば大丈夫そうだね。幸い外見もそう言えば通りそうな姿だし問題はないね……それにしてもその姿で人間の意識を保ったままとは、実に興味深い」
「そういう事を言うから俺としてもフォローのしようが無いんだよ」
そんな話をしながらサカキ達が乗ってきた車に向かっていると、そこには何というか随分と凹んだ様子のアリサが待っていた。
「あ、お久し振りですマキナおじさん、イザナミさん。それとあなたがジルちゃんで……えっと、後ろのアラガミは一体?」
「初めまして、アリサさん。僕の名前はレオナルド アンダーソン、長いからレオでお願いします!!」
「あ、えっと、こちらこそよろしくお願いしますね?」
「アリサさん、敬語は結構です。年上の方に敬語を使われるというのはレオも居心地が些か悪いので、差し支えなければ普通にしていただけると嬉しいのですが……」
「え?おじさん、レオ君って一体何歳なんですか?」
「12だった筈だが?」
アリサが唖然とした表情でレオを見るが、まぁ真っ当な反応だな。一応前もってサカキにレオとジルの外見等を教えておいたので、誤解されていきなり撃たれるって事はないんだが年齢を伝えるのを忘れていたな。
いや、伝えていたとしてこの物騒な外見で12歳の少年と言われても誰が納得できると言うんだ?
「ところで、アリサちゃんどうしたの?なんだか元気なさそうだけど?」
「はい……リーダーが怪我をしてしまいまして」
マジで?ユウが?怪我を?
そんなアラガミが出てきたのか、この辺りには……
「えっとさ……確認だけど神機の不調とかだよね?」
「え、ええ、どうしてそれを?」
「万全のユウに手傷を負わせるアラガミなんぞ想像もつかんし、そんなアラガミがいてたまるかって願望だよ。何かしらの確信があったわけじゃない」
「確かにそうですね……」
アリサは俺達の説明に何となく納得がいったようで、それ以上質問することはなく車に乗り込んだ。俺達も乗り込んだが、流石にレオはサイズ的に無理なので車に並んで走ってもらう事になり、彼は軽く項垂れたがどうやったって物理的無理なので諦めてもらった。
俺達に用意された部屋は無駄に広い倉庫のような場所だった。必要最低限の電気、水道などは通っているがはっきり言ってしまうと広い牢屋のような状態だ。
「で、俺たちはここで暮らすのか?」
「ああ、申し訳ないとは思うのだが、セキュリティの問題とレオ君が普通に生活出来るスペースとなるとここしかなかったんだよ。改装等は部屋の形を変えたりしない程度でなら、自由にしてくれて構わない」
「ごめんなさい、みんな。僕のせいで……」
「いや、それは別に気にしてないからレオはそんなに心配しなくてもいいよ。けど、サカキ、私達がちょうどいいタイミングで帰ってきたのはどういうことなの?」
「それについての説明がまだだったね。君達はハンニバルという種類のアラガミは知っているね、レオ君の体と同じ種類のアラガミだ。
それがこの極東支部の周辺でも現れるようになってね、少なからず厄介なことになっているんだ」
「それほどまでにハンニバルは強力なアラガミなのですか?」
ジルの問いに対してサカキは静かに首を左右に振った。
「強さという点では強力ではあるものの、特筆するような事はないんだ。ハンニバルの厄介な点は、コアを摘出してもごく短時間でコアを再生する驚異的な再生能力なんだ」
「それは不死という事ですか?」
「ゴッドイーター達にとっては、ね」
ああ、そういう事か……確かに俺達が帰ってきたのはタイミングがいいな。
「ゴッドイーターがアラガミを倒す時はオラクル細胞を削り、アラガミが行動不能になった時にコアを摘出するという形というのはジル君もレオ君も知っているね?」
「ええ」
「はい」
「だが、ハンニバルに対してはコアの摘出が意味をなさない。もっとも、もう少しすればハンニバルの再生能力を阻害するオラクル細胞が完成するので、いずれハンニバルの再生能力も問題なくなるのだが……それまでの間は打つ手がない。
となると、もう一つのアラガミを倒す方法でしか今のところ倒せないんだよ。けれど、それはゴッドイーターでは不可能なのでマキナ君とイザナミ君に頼るしかないというわけさ」
「その方法とは?」
「簡単だ、アラガミを構成するオラクル細胞を全部喰えばいい。そうなればコアの再生なんて何の役にも立たなくなるだろ?
ただし、そんな事は神機の捕食量じゃ無理だ。だが、俺達にとってはただ単に量の多い食事でしかない。だから、さっきサカキの言ったオラクル細胞が開発が済むまでは俺達がハンニバルをどうにかするっていう話だ」
ここ最近キュウビや赤いカリギュラとエゲツない相手ばかりだったので、久し振りに楽ができるというものだ。
「ああ、それとジル君。後で構わないが、その腕のデータをとらせて貰えないだろうか?」
「腕の?」
「調べてみなければ分からないのだけれど、もしかすると元通りとまでは言わないけれどある程度元の人間の腕にまで戻せるかもしれないからね」
ふむ……専門的な知識で照らし合わせれば何かしらの発見もあるだろうし、妙な事をする心配もないだろう。ただし、許可を出せるのはジルがそれを良しとした場合のみだがな?
「俺は構わないと思うぞ」
「私も、サカキは性格に関して問題はあるけど腕に関しては信用しているから、いいと思うよ」
「そうですね……分かりました。ただ、レオも一緒にデータをとってください。もし結果として少しでも姿形が人に近づけると言うなら、それを受けるべきはレオですから」
「ああ、それは勿論だよ。それではマキナ君達はハンニバルの出現まで自由にしておいてくれたまえ」
サカキはそう言って部屋を出ていったので、俺とイザナミはいそいそと用意を始める。三角巾、エプロン、手袋……よし、道具はちゃんと揃っている。
「お、お父さん、お母さん、一体何を?」
「二人とも、目が据わってますけど……」
今から何をするか?
そんなもの決まっているだろう!?
「「掃除!!!!!」」
こんな所薄汚れたところで落ち着いていられるか!!ここが野宿せざるを得ない状況なら我慢もできるが、ここで暮らすとなればこんな環境はとてもじゃないが我慢出来ないな。
当然お前たちにも手伝って貰うぞ、ジル、レオ。
「はい、レオは壁をお願いね。ジルはマキナと掃き掃除を、いいね?」
そう言いながら、イザナミは既に天井に手を伸ばして天井の汚れを落としにかかっている。
新居に引っ越したからにはまず最初にやるべき事は掃除だろう?
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