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子虎迷走記

作者:蒼鈴六花
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第1話 迷子の子虎?

 
前書き
えーと、プロローグがあまりにも短かったんで投稿。

これからどんどん長くなりますよー。
10/30主人公の外見説明追加。 

 
「召喚!」

声が聞こえる。

暗かった空間が突如明るくなったと思ったら空中にいた。

俺はそのまま落ちる。

下にはスライムのような何かと白く長い髪に、背中に不思議な輪を浮かべた男がいた。

俺はスライムに落ちて跳ね返る。

男は慌てて跳ね返った俺をキャッチした。
突然出てきた俺に男は驚いている。

いきなり空から降って来たんだし驚くよな。
と思っていると、スライムが襲ってきた。

男は俺を抱えながら剣でスライムを斬り裂く。

もう一体いたスライムがその隙に攻撃しようとしている。

俺は咄嗟に男の腕から飛び出して頭突きをくらわした。

スライムは頭突きが効いたのか涙目で逃げていく。

戦闘は終了したようだ。

それと同時に男の持ってた剣は消え、長かった白い髪は短い赤髪になり、輪が消えた。
男はそれに呆然としていたが、庇っていた子供が駆け寄り泣き出してしまった。

俺はそれを見て、質問するのをやめた。

と言う訳でさっきから感じてる違和感を知るべく体を見ると……

……

「ギャウ!?」

全体的に白く、蒼い模様のふさふさの毛が生えた肉球付きの小さな前足が見えたうえに声が獣の声です。

さらに自分の体を見る。

蒼いたてがみがあったり、角が生えてたり、所々にアクセサリーが……

耳に金の輪イヤリングとか耳から生えた毛を筒のようなもので留めてたり、赤い紐の変わった首飾り、たてがみの下、首に縛ってある模様のある赤い布、尻尾の先にリングがはめてあったり……

って言うかこれ模様的に、虎か?

でも虎に角はない。
アクセサリーもしない。

何になったんだ俺……

呆然としてると二足歩行の眼鏡をかけたオレンジの猫が近寄ってきた。

「ミャー!」

ぺこりと頭を下げる。
挨拶してるらしい。

「ギャウ、ギャウウ?(えーと、よろしく?)」

「ミャーミャミャー」

「ガウ、ギャウウガウガ(すまん、お前の言ってる事が俺にはわからないんだ)」

「ミャー……」

猫は落ち込んだ。
何だかかわいそうになってくる。

「ギャウ、ガウギャオウ……(同じ動物なら、言葉が通じればよかったのにな……)」

「ミャー」

意思が伝わったのかは分からないが、猫は顔を上げる。

俺達が話してる間に、泣いてた子供は泣きつかれて寝てしまったようだ。
男は子供を抱えてこちらに来る。

「ごめんね、呼び出してそのままにしちゃって……」

「ギャウ、ガウウギャウ(気にするな、それより今は子供を寝かせてやってくれ)」

男は少し悩んで話しかける。

「……気にするなって言ってるのかな?」

おお、通じた。なんか感動だ。

っとそれより、見るからに困ってる感じだ。
さっきのスライムも元の世界にあんなものいるはずないし……今になって思えば、何の違和感もなく攻撃してた俺ってなんだって感じだ。

あんなものに襲われてる、子供の様子からおそらく今は緊急事態。それに姿が変わる謎の消える剣。

色々と分かる事があったが……うん、異世界に来たのか?俺。

「違った……かな?」

男がそういい始める。
考えに没頭してて忘れてた。

俺は違ってないと首を振る。

「よかった、あってたのか」

なんかホッとした顔してる。
子供寝かせなくていいのかと、じーっと子供を見る。

「あ、早くウィルを寝かせないと」

子供はウィルと言うのか。
男はきょろきょろと周りを見始める。

ん?ここら辺の事、詳しくないのか?
場所がわからないと言った感じだ。

今の場所は砂浜、辺りに散らばる木片やらなにやら……
えーと遭難でもしたんですか?

聞きたいけど聞けない。
うーん、不便だ。

そして移動を始めた男についていく。
と言っても、すぐそこの草の生えた所に来ただけだ。

「とりあえず、ここで野宿かな」

やっぱり遭難してたのか……

男は手早く野宿の準備をした後、焚き木の前で俺に話しかけてくる。

「そういえば、君を召喚してからずっとそのままだったね。さっきはありがとう」

子虎?相手に頭を下げてお礼を言う。

「ギャウー(どういたしまして)」

男はじーっと俺を見て。

「うーん、あの時、無のサモナイト石でサモンマテリアルを呼んだはずなんだけどなー……」

「ギャウ?(どゆこと?)」

「でも君、どうみてもメイトルパの召喚獣だよね?」

「ギャウギャオウ?(メイトルパってなに?)」

首を傾げてみる。
喋れないなら、体で表すしかない。

「違うの?でも君、幻獣だよね?」

むぅ、自分が人間だった事をどう伝えればいいのだ!
!……そうだ文字を書けば。

爪でがりがりと地面に文字を書く。

「見たこともない文字だ。でも字が書けるなんてすごいな!」

伝わらなかったーー!!

会話は分かるのに!くそ!やはりここは異世界だったという事か!!

仕方ない絵で表現してみよう!

人らしき絵、矢印、獣の絵、などで分かりやすく図解してみたぜ!(絵のうまさに関しては普通だ)

「うーん、君は元人もしくは人型の何かで、召喚された際に姿が変わっちゃったのかな?」

す、すごいよこの人!!俺の凡人な絵でわかってくれたよ!天才だ!

「すごく目をきらきらさせてる所を見ると当たってたのかな?よかったー!」

よしこの際、名前をどうにかして教え……あれ?

俺、名前なんていうんだっけ?

……

ええええええええええ!!!

名前、忘れちまった!!

「ど、どうしたの?急に?」

どう伝えればいいのか分からない。

うーん。

絵で伝えられるか!

今こそ、俺の発想力が求められている!

がりがり……(絵描き中)

さっきの図解に新たに絵をたしていく。

ふきだしを書いたり、文字ではなく記号で、頑張りました。

「……何かを忘れたとか?えーと、名前かな?」

き、鬼才!ここに鬼才がおる!!

赤毛の人マジSUGEEEEEEE!!あ、赤毛の人なんて呼んじゃだめか……でも名前知らないし。

「当たったみたい?……えーと、ここまでの話をまとめると君は召喚されて、姿が変わり、名前を忘れたって事だよね?」

こくこく。

「普通の召喚事故でもそんな事は起こんないはず……召喚の失敗時にショックで記憶が飛ぶってのは聞いた事あるような気がするけど……姿が変わるのはないなぁ……」

じゃあ俺の姿が変わったのは、召喚とは関係ないって事か?

うーん。

なんか引っ掛かるんだけどなぁ……

「君の姿が代わってしまった事には何か意味があるのかな?」

ん?

なにか思い出せそう。

意味がある?

『お前のあるべき場所へ……あるべき姿で……』

!?

唐突に何か思い出したぞ!?

確か、召喚される前に声を聞いたんだ。
さっき思い出した言葉以外思い出せないけど……

それにしても、俺のあるべき場所……あるべき姿?
どういうことだ?

この世界が俺のあるべき場所?この姿が俺のあるべき姿?
おいおい、俺は生まれも育ちも日本だし、生まれた時から人間だ。

前世がここの生まれで虎だったとか言うなよ?

っていうか、名前を忘れたのもこれ(声)のせいのような気がしてならない。

なにか?声の主は俺に虎としてこの世界で生きろとでも言いたいのか!

「急に静かになったけど、なにかわかったの?」

男が声をかけてくる。

とりあえず頷く。

「もしかして名前を思い出せた?」

首を振る。
男は少し黙ってから俯いた。

「……ごめんな、召喚事故おこして。名前を忘れたのは俺のせいだよな。多分、姿が変わったのも……」

それに対して思いっきり首を振る。

「え?」

男は驚いている。

「違うって言いたいのか?」

頷く。
図解をぺしぺし前足で叩く。

「もしかしてさっきわかった事があるって、姿が変わった事や名前に関してわかったの?」

頷く。
わかったつっても少しだけだけどな。

「どうして姿が変わって名前を忘れたの?」

うーん。どう説明するか……。
頭の中で聞こえた声のせいと言いたいが、どう表現すりゃあいいんだ!

えーと、頭の部分に丸描いて、矢印、声の表現は―

がりがり……(絵描き中)

出来たけど、これで伝わるのか?

「んー、頭の中で声が聞こえた?その声が原因とか?」

貴方は神か!

「え?ほんとにそうなの?」

こくこく。

「頭の中で聞こえる声……あの剣と同じ……」

剣?

「あ、なんでもないよ。それにしても、その声の人はどうして君の姿を変えて名前を忘れさせたんだろうね」

そこは俺にもわかんない。
声の主は何考えてんだ。

「とりあえず事情は分かったけど、名前がないと不便だよね?」

そうだな。と思って頷く。

「ずっと自己紹介してなかったけど、俺はレックス。寝ている子が俺の生徒のウィルだよ」

レックスって言うんですかー。
ようやく名前わかったよ。

「俺はあの子の家庭教師をしてるんだ。でも、船に乗ってる最中に嵐に巻き込まれて遭難しちゃったんだ」

ふむふむ。

「それで、君の名前なんだけど……」

この人のネーミングセンスはどれほどのものなのか……

「君を見てたらふと浮かんできたんだ。“ユエ”ってのはどうかな?」

それを聞いた途端、自分の名前だと思った。
元いた世界では全然違う名前だったと思うのに。

なんか女みたいな名前だなとも思うが。

「ちょっと変わってるし、なんだか女性みたいな名前だけど、なんでかな……君にピッタリな気がするんだ」

あんたも女みたいな名前だと思ってたのかよ!

「あれ?もしかして女の子だった?」

首を思いっきり振る。

「やっぱり男の子だよね」

こくこく。

「君の名前はユエでいいかな?」

俺は一声鳴いて頷く。

「じゃあ、君はこれからユエって呼ぶよ」

俺の新たな名前。
なんだか嬉しくなってくる。

変だよな、本当の名前忘れて代わりにつけてもらった名前だってのに嬉しいだなんて。

「ねぇ、ユエ。ユエは多分、元の姿に戻って還りたいんだよね?」

頷く。

「俺もその方法を探すのはもちろん手伝うけど、すぐには無理だと思うんだ……」

そりゃそうだろうな。

「方法が見つかるまで、俺の護衛獣にならないか?」

護衛獣?

「召喚師を守るためにこの世界に残る召喚獣の事だよ。まぁ、ユエがよかったらだけど……」

俺が元に戻る方法を探してくれるんだし、手助けできるんならするべきだよな。
元一般人、虎初心者の俺がどこまで出来るかわかんないけど、やれるとこまでやってやらぁ!

頷いて答える。

「ありがとう!ユエ!」

俺の方こそありがとな!レックス!

「これからよろしくな」

おうよ!

そうして俺はレックスの護衛獣になった。

寝るまでレックスにこの世界の事と召喚術について教えてもらった。

色々知っておかなきゃいけない事は多いもんな。
これから長い間この世界にいるんだし。

……

心配してるかな、父さんと母さん。

唐突に消えたからな……

でも、いつか還るから。

ちゃんと元の姿に戻って……







 
 

 
後書き
レックスさんSUGEEEEEEEな回。主人公の絵はホントに凡人クラス。実はうまかったとかってのは無いです。

ちなみに主人公の姿のモデルは牙王アイギス。最初のイメージがアイギスの子供版みたいな感じだったので。
サイズの方はテコをぎりぎり乗せられるくらい。

 
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