その魂に祝福を
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魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
前書き
決断の時編。あるいは、詩的な才能が欲しいです(リアルな意味で)編。
1
そして、これは自分が辿りついた未来――新たな世界での記憶である。記憶も、身体も、名前すら失った自分の、新しい物語。その第一節の終わりの記憶である。
……どうやら、まんまと罠にはまってしまったらしい。無数の銃弾が飛び交う倉庫街の片隅、コンテナの陰に隠れながら、やれやれとため息をつく。あのチキンな情報屋が自分達をはめるような真似ができるとも思えなかったが――まぁ、利用するのは簡単そうだ。適当におだてて、旨そうな餌の一つも用意してやればそれで事は足りるだろう。なにしろ、自分達もさんざんやってきた事だ。
「クソッ! あのクソ野郎はめがやったな……」
いつになく、相棒が荒々しい声で吐き捨てる。全く、普段は人の言葉遣いにケチをつけるくせに。まぁ、気持ちは分からなくもないが……しかし、これほど罵倒の語彙が豊富だったとは驚きだ。切れ目ない銃声に負けない勢いで罵声を吐きだす相棒に肩を竦める。
ともあれ、相棒が先にキレてしまったなら、自分は冷静でいるしかない。二人揃って激高していたら命がいくつあっても足りはしないのだから。
「この状況で言う事か?」
あのヘタレチキンにお前を出し抜く度胸があるとでも?――冷静に指摘してやると、相棒は露骨に鬱陶しそうな顔で舌打ちした。それにまぁ、向こうにしてみれば足元ばかり見る客を一掃するにはいい機会だったのかもしれない。それに――
一掃するいい機会だというのは、自分達も同じだ。何せ、目につく限り――周り一面を埋め尽くすのはどいつもこいつも自分達の狙う仇である。
「何か良い手でもあるのか?」
今日は大猟だな。笑うと、相棒が不審そうな顔をした。当然だ――と、答えてやれたならさぞかし痛快だっただろう。だが、残念な事に自分が何なのかすらろくに思い出せない今の自分にはそれだけの力がない。今手元にある供物は、今の自分がこの世界で用意した代物ばかり。おぼろげながらに覚えている、かつて自分が有していた魔法の粋を集めた供物の足元にも及ばないガラクタばかりだ。しかも、どれもそろそろ限界だった。
何人かを生贄にしてどうにか回復させたが――お陰で、身体も大分縮んでいた。相棒と出会った頃くらいに……いや、それよりはまだいくらか大きいか。ずり落ちてくる服が煩わしい事に変わりはないが。
「クソ、こんなところで……」
いくらか覇気を失った顔で相棒が舌打ちする。だが、そんな顔をしなくとも、こんなところで相棒を死なせるつもりなどない。とはいえ、相棒――かつての自分が有していたあの魔術書が手元にない今、一体どうすればいいのか。
コンテナを穿つ銃弾が、派手に火花を撒き散らすのを見ながら自問する。自分達が追い詰められているのは、もはや否定しがたい事実だ。明らかな窮地。だが、この程度の窮地で膝を屈するような魔法使いはいない。それだけははっきりと覚えていた。
(ああ、思い出した……)
火花を見つめ、呟く。こんな時、魔法使いならどうするのか。それを――遥か遠い過去に刻まれたその生き様を思い出した。
そう。例え絶望的な状況であっても、それを脱する事は不可能ではない。……相応の代償を支払う、その覚悟があるのなら。
「光?!」
俺が何とかする――告げて、コンテナから飛び出した。相棒の位置は確認している。
「――遠く遠く天と地の狭間に生まれしもの」
銃弾の飛び交う中、禁忌の扉をこじ開ける特殊な魔力を練り上げていく。
「迫る災禍見据え慟哭響く前に終焉に挑め」
禁忌を冒す苦痛に、苦悶の声を止める事は出来なかった――が、身体から滲みだすその力は世界を侵し、黒く染め上げ、銃弾さえ捻じ曲げていく。
「やめろ! 何をするつもりだ!?」
相棒の叫び声が聞こえたが――そのまま魔力を高め続ける。
全身が燃え上がるのを感じた。全身を焦がした炎が、魔力を喰らって炎の巨人と化す。かくして禁忌は破られ、禁じられた術が蘇り――その力は全てを灰塵へと作り変えた。
……そして、俺はその術が禁じられた理由を痛感する事となる。
「光! このバカ野郎が……」
俺が覚えている相棒の最後の顔。見間違えでなければ、それは泣き顔だった。
2
『エマージェンシー! 海上に大型の魔力反応を感知!』
その日。何の前触れもないまま、事態は動きだした。
「ユーノ君!」
「うん。行こう、なのは!」
昼食もそこそこ、僕らはブリッジに向かって走る。大型の魔力反応。この世界でそんなものが生じるとなれば、まず間違いなくジュエルシードが関わってくる。つまり、
(光さん達も、必ずやってくる!)
あるいは彼らこそが原因かもしれない。だが、そんな事は関係ない。時間的なものも考えれば、これが最後のチャンスかもしれない。高町なのはと御神光が接触できる最後の。
絶対に。絶対に逃す訳にはいかない。どんな手段を使ってでも。
なけなしの覚悟を固めると同時、僕らはブリッジに飛び込んだ。そして、目撃する。
荒れ狂う海。それ自体が意思を持っているかのように蠢く竜巻。今にも雷を吐き出しそうな暗雲。全てを薙ぎ払わんばかり吹き荒れる風。
「ジュエルシードの……強制発動!?」
思わず悲鳴を上げていた。強制発動。それ自体も乱暴で危険な方法だが、この結果は最悪だ。発動しているのは、明らかに一つ二つじゃない。
自分でも信じられない思いで、視線を動かす。探していた情報は別の――エイミィの個人モニターに映し出されていた。
「残り六つ……。全部ここにあったなんて」
ジュエルシードの反応は六つ。つまり、残り全てが今目の前にある。そして、それが全て暴走状態にある。つまり、
(下手をすれば本当に次元断層が――!)
今目の前で起こっているのは、世界を終わりに導きかねない事態だった。思わず足がすくむ。知識としてはすでに知っていたが――いや、だからこそ目前につき付けられた光景に途方もない恐怖を覚えていた。
「あの! 私、急いで現場に――」
悲鳴のようになのはが声を上げる。だが、
「その必要はないよ。放っておけば彼らは自滅する」
クロノは冷静に――少なくとも、表面上は冷静に言い放った。その声に触発されて、沸き起こっていた恐怖が僅かに鎮まる。
(そうか。それが狙いか……)
確かにこの状況は、管理局にとっては願ったり叶ったりだろう。いくら光といえど、あれだけのジュエルシードを相手にすれば消耗は避けられない。もちろん、あの金髪の少女達も同じだ。そして、彼らの目的が世界の消滅ではないのは明らかだった。光達は全力で封印に当たるだろう。彼らの力を考えれば、封印そのものは成功する――少なくとも、致命的な暴走には繋がらないはずだ。だからこそクロノ達は落ち着いている。それはある意味で信頼だと言えるのだろう。本当に皮肉な形だが。
(確かに暴走はしない。そして――)
それに加えて、光達は深刻に消耗する。それこそ、本当に自滅しかねないほどに。自滅こそ回避しても、その後に迫る脅威を――クロノ・ハラオウンという魔導師を払いのけられるほどの余力が残るか。
(いくらなんでも、それは……)
不可能だ。目の前の魔導師は、それくらいの自負を持っているだろう。それを実証できる状況は今まさに整いつつある。そして、実証されれば何の苦労も無く、全てのジュエルシードが管理局の手に転がり込んでくると言う訳だ。
最も消耗なく。最も危険なく。最も確実にこの世界を救う手段。それは、たった三人の犠牲でなされる。だが、
『心配するな。奴らはまだこないさ』
それを見透かしたように、光の声がブリッジに響く。
『これだけの数のジュエルシードを相手にすれば、俺達は勝手に自滅する。万に一つ生き残ったとしても、その後の処理は手足を縛った人間の眉間に弾丸を撃ちこむのと大差ない。そう考えているだろうからな』
モニターの中で、彼はこちらを見ていた。こちらを見て、嗤っていた。
『ここにきて、ようやく思った通りに動いてくれたよ。ようやくな』
そこにいるのは――そこで嗤っているのは、得体の知れない怪物ではない。御神光だ。間違いなく。それ以外の誰でもない。
『魔法使いを甘く見たな。思う存分後悔しろ』
勝利宣言。その言葉は、それ以外の何ものでもなかった。
「何をする気だ……?」
クロノが警戒するのが分かった――が、この状況を打破できる手段が分からない。それは彼も同じだろう。そんな中で、リブロムがため息をついた。
『ま、相棒にとってこの程度は窮地にもならねえよな』
その言葉を証明するように、状況が変化していく。
『――遠く遠く天と地の狭間に生まれしもの』
光が詠唱を始める。彼がわざわざ詠唱するところを僕は初めて見た。
『迫る災禍見据え慟哭響く前に終焉に挑め』
その言葉に応じる様に、光の纏う深淵のような魔力が世界を黒く塗り潰していく。
『我ら古よりの法に従い捧げるは肌膚賜うは炎』
ブリッジにアラームが響く。ジュエルシードと異なる大型の魔力反応。その数値は今もなお跳ね上がっていく。
『禁忌より這い出し今ここに顕在せよ!』
光の指先に小さな炎が生じる。それと同時、彼が苦悶の声を上げた。
「ダ、ダメ! 光お兄ちゃん、その魔法は使っちゃダメ!」
なのはがその魔法の正体を知っているとは思えない。だが、彼が悲鳴を上げるということそのものが、その魔法の異常さを表していた。
指先に生じた炎が、瞬く間に光の身体全てへと燃え広がる。だが、
「何が起こってるの?!」
「分かりません。魔力値今も上昇。クラスS……クラスS+……クラスSS。まだ上がります! 上昇止まりません!」
魔力値を示す部分に表示されたのは明らかなエラーコード。測定不能という事だろう。
そんな表示が出るのを僕は初めて見た。多分、アースラのクルーだって同じはずだ。
「リブロムさん!」
思わず問いかけていた。答えがあるとは思えなかったが、
『禁術サラマンダー。魔法使いが本来その生涯においてただ一度だけ使える切り札だ』
本来なら、だけどな――リブロムはそんな事を言った。続けて嗤う。
『相棒の魔法を知りたがっていただろ? なら、よく見ておけよ。さすがの相棒もあんな
もんそう何度も使わねえだろうからな』
そして、
『―――ッ!』
声なき悲鳴。いや、咆哮だった。御神光の全身を包んだ炎はさらに膨れ上がり――炎の巨人をそこに顕在させる。それが放った叫びだった。
「なん――ッ!?」
モニターが真っ白に染まる。それでも分った。その咆哮は海そのものを干上がらせんば
かりに荒れ狂い――
「ジュエルシードの反応……安定しました」
六つものジュエルシードを、強引にねじ伏せた。だが、そんな事はどうでもいい。
「いやああああああっ!」
なのはの悲鳴。その原因は、御神光の姿だった。不思議と着衣に損傷がないためはっきり見えないが――ほぼ間違いなく、全身隈なく焼け爛れている。明らかな致命傷。生涯ただ一度。それが意味するのはつまり、こういう事なのか。
「行こう、なのは!」
崩れ落ちそうななのはの肩を抱き抱え叫ぶ。
「ユーノ君?」
「転送ポートなら、僕が操作できる! だから早く!」
覚悟を決めた。例え今さらでも。その結果、僕がどうなろうと。
「管理局に捕まる前に、光さんを助けなきゃ!」
戦闘能力では勝てない――が、これでも結界魔導師の端くれだ。バインドの扱いなら負ける気はない。なのはを庇うように前に立ち、ありったけの魔力を絞り出す。
「ユーノ、お前……ッ!?」
クロノが身構えるより早く、何かが彼を吹き飛ばした。
『ヒャハハハハッ! いいねぇ、ユーノ、漢だねえ!』
それは、リブロムの魔法だった。バサバサと頁を羽ばたかせながら、大笑いする。
『そら、チビ。今が決断の時だぞ!』
そして、なのはの腕に収まり、告げた。
「うん!」
そう。今が決断の時。
3
「光!」
「アンタ、一体何を?!」
全身隈なく沁みわたる激痛の中で、フェイトとアルフの悲鳴が聞こえた。まぁ、今の自分はかなり悲惨な事になっているのは分かっていたが。
「いいから、早く封印に行け! さすがに泡食って飛び出してくるぞ!」
「う、うん!」
言っている間にも、上空に魔力の気配を感じた。数は三つ。うち二つは、よく知ったものだった。つまり、
(なのはと、リブロムか……!)
もう一人は、良く分からないが――それはいい。だが、そのあとを追うように、さらにもう一つの魔力が出現した。この世界で俺が知っている限り、他にこれほどの魔力を持っているのは一人しかいない。
「クロノか!」
何故かなのはを追いかける様にしている。それだけ分かれば充分だ。
「剣魔女の斬撃を!」
相棒から託された力を叩き起こす。あの魔導師は、近接戦闘を苦手とする。ならば、その間合いに飛び込む方が安全だ。何せこちらは代償に苛まれた身体を引きずっている。いくら不死の怪物とはいえ、これ以上余計な傷は負いたくない。
「光お兄ちゃん!」
なのは達――妹の傍には何やら見知らぬ金髪の少年がいた――とすれ違うようにして、背後に迫っていた魔導師を迎撃する。
「よう。当てが外れて慌てて飛び出してきたか? それとも計画を破たんさせられて頭に血が上ったか?」
どちらでも別に構わないが。どの道、ここで退場してもらうつもりだった。こちらとしても、もう時間がないのだ。
「ようやく焦れて飛び出してきてくれたんだ。逃がすと思うか?」
「クソッ!」
近接戦では分が悪い。そう判断したクロノが、間合いを開こうとする。が、逃がす気はない。残り時間も少ない。ここらで余計な障害は排除しなければならない。
何度目かの接触の果て、デバイスと妖刀がぶつかり合う。このまま押しつぶすつもりだったが――
「あまり僕をなめるなよッ!」
手に奇妙な衝撃を感じた。妖刀が不自然に悲鳴を上げる。
(高速で揺さぶられている?)
感触からして他に考えられない。となると少々厄介だった。
物には固有の振動数がある。それがかみ合ってしまった場合、巨大な鉄橋がただの風に崩される事もある。つまり、これはそういう魔法だ。その性質上、防御するのは極めて困難だろう――が、種が分かればそれで充分だ。
(今になってようやく使ってきたって事は――)
固有振動数を割り出すためには、一定の時間が必要だと言う事だ。なら、それを崩してやればいい。重心を動かし、拮抗状態を崩す。そして、
「ガフ……ッ?!」
体勢を崩し、僅かに前のめりになったクロノの顎を蹴りあげる。何かしらの対策をしてきたらしく、妙な感触だったが、関係ない。
(武器を揺さぶった程度で勝てると思うな。御神流・裏は恐ろしいぞ?)
士郎や恭也、美由紀などは大切なものを守るための手段だと言っているが、元々御神流――永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術とは剣術のみならず体術や暗器などを駆使する殺人術である。その中で、裏とはさらに殺しに特化している。……らしい。少なくとも相棒はそう言っていた。その全てを受け継いだなどとは口が裂けても言えないが。
(この妖刀にはその記憶がある)
この供物を使っている限り、かなりの精度で再現できる。そうなれば、ちょっとやそっとの小細工は無意味だ。例えば、こんな打法もある。
「がッ!」
慌てて距離を開こうとしたクロノの退路を断ち、無防備な鳩尾を拳で貫く。確かに、ただの拳でこいつらの法衣を抜くのは不可能だが、
「何故だ……。物理防御も固めたはず」
「素手でも甲冑を着た人間を殺したいと思って、実際にその方法を編みだす。人間ってのはそういう生き物らしい」
甲冑の上から心臓を止める――つまりは、衝撃を貫通させる特殊な打法。それを御神流では徹と呼ぶらしい。しかも、それを剣術だろうが体術だろうが関係なく込められると言うのだから、やはりこの一族は相当に業が深い。
「魔法使いの俺には、魔法を使わない限り再現できないが……まぁ、魔法なんぞ使わなくても人は魔法使いを殺せるって事さ」
実際にセルト人は魔法を持たぬロムロス人に滅ぼされた訳だ。相棒――御神美沙斗を見ているとその理由がよく分かる。……まぁ、冷静に考えてあんな化物がそう何人もいる訳がないのだが。
「――ッ!?」
その瞬間。膨大な魔力を感じた。それの出所を理解する前に空を見上げていた。ジュエルシードの暴走が鎮まり、禁術が雲を薙ぎ払い強引に造りだした、何もない青空。だが、
(何が来る……?)
今まで培ってきた戦闘経験が叫ぶ。必ず危機が迫っていると。その瞬間が迫る中、視線を動かす。見えたのは、フェイトとなのは。そして、リブロムとアルフ。そこで起こっているのは、戦闘ではない。
なのはとリブロム――見覚えのない金髪の少年までが、フェイトとアルフと言葉を交わし、二人を守ろうとしている。それが、気に入らなかったという事か。
「クソッ! そこまでするか!?」
迫る危険に気づかないまま戦闘を続行しようとするクロノを蹴り――その反動で、なのは達に近づく。ほとんど激突するように。
「光お兄ちゃん!?」
なのはの声は無視して、用意できるだけの魔力を練り上げ――
「氷塊よ!」
空に手を掲げ、巨大な氷塊の盾を生み出す。それと同時だった。
ゴッ!――と、衝撃波が襲いかかる。紫色の閃光が視界を塗りつぶした。雷撃。攻撃の正体はそれだった。
(マズい……ッ!)
この攻撃は、相性が悪い。そのうえで、さらに異常な破壊力を秘めている。盾が悲鳴を上げ、クモの巣のような亀裂が走った。あと数秒も耐えられない――が、それだけ耐えられれば充分だ。
「リブロム、行け!」
『クソったれ! 重量超過にも程があるぜ!』
毒づきながら、それでもリブロムは魔法を発動させる。俺を除く全員の姿が消えたと同時、盾が断末魔の悲鳴を上げて砕け散った。雷撃に身体が引き裂かれる。束の間意識を失っていたのかもしれない。だが、
「邪魔をするなああああああッ!」
アルフの叫びを確かに聞いた。彼女は必死にジュエルシードに手を伸ばす――が、それよりクロノの方が速そうだ。
「クソったれが……!」
魔力を練り上げ、右手を突きつける。
轟、と風が動く。全てを吹き飛ばすような突風だが――実際は逆だ。魔力を宿すものをこちらに呼び寄せる。さすがに、クロノは踏みとどまったようだ。アルフは最初から僅かに範囲の外にいる。つまり、ジュエルシードだけが俺の手の中に飛び込んでくる。
その数は五つ。一つは、途中でアルフが掴み取っているのが見えた。
(これでいい……)
維持できなくなった翼が霧散する。重力に抗う術がなくなった。海面が迫る。今さら魔力を練り上げる余裕もないし、ついでに言えばその気にもなれなかった。必要な手札揃った。次に必要なのは状況だ。
「これからが反撃の時だ、クソ野郎ども」
管理局か。プレシアか。それとも世界の裏側でほくそ笑んでいるであろうあの連中か。誰に向けたのか自分でもよく分からないまま毒づく。
そのためには、いくつか仕込んでおかなければならないことがある。だからまずは――手の内にあるジュエルシードを間違っても落とすことのないよう懐にしっかりと収める。それと同時、海面へと激突していた。
4
「きゃあああッ!?」
急に落ちてきた雷は多分魔法によるものだったのだろう。その攻撃からは、光とリブロムが守ってくれたものの――衝撃に煽られ、私達はバラバラになってしまう。
リブロムは私がしっかりと抱えたまま。だけど、他の三人はどこに?――雷によって巻き上げられた海の水が、雨のように降り注ぐ中ではろくに周りが見えない。
「光お兄ちゃん、ユーノ君!」
あの子達の名前が分からない。呼びたいのに。今すぐにその名前を呼びたいのに。
≪僕は無事だよ! そんな事より光さん達を!≫
ユーノからの返事。ひとまずそれに安心して、何とか周りを見回す。見えたのは、まだ残っていた雷に弾き飛ばされる金髪の子と、最初の雷に巻き込まれていたらしい光の姿だった。
「アルフ、行って……ッ!」
痛みを押し殺しながら、金髪の子が叫ぶのが聞こえた。
「クソッ!」
もう一人の女のひと――アルフがジュエルシードに向かって飛ぶ。――が、彼女よりもクロノの方が早い。このままでは間に合わない。
「え?」
すごい音と共に、風が吹き荒れる――いや、違う。光に吸い寄せられているようにして向かっていく。クロノはその場で踏み止まったが、ジュエルシードはそのままあっさりと光の向かっていった。
「取ったッ!」
そのうちの一つ――少しだけ外れていた一つをアルフが掴み取る。
「さぁ、早く行こう!」
「でも、光が!」
光が海面に叩きつけられるのが見えた。下が水とはいえこの高さだ。そもそも、光は酷い火傷を負っているはず。
『いいから行きな嬢ちゃん!』
叫んだのはリブロムだった。
『相棒はそう簡単には死なねえ。オマエらが無事ならなおさらだ!』
その言葉に、アルフは金髪の少女を強引に抱え、さらに海面に魔法を叩きつける。最初の雷には遠く及ばないが、それでも大きな水柱があがった。そして、それが収まる頃には、二人の姿は消えてなくなっていた。
「あ……っ」
言葉を失う。光は海に。あの子達は空に。それぞれが消えてしまった。三人と出会うチャンスになるジュエルシードも、もうない。何より、光は……。
「行こう、なのは!」
身体から力が抜ける直前。私の肩を掴んだユーノが叱咤の声をあげた。
「光さんがそんなに簡単に死んだりするもんか。きっとまだ生きてる!」
ああ。確かにリブロムもそう言っていた。でも、あんなに酷い火傷を――
「君なら見つけられる。ううん、君だけが!」
その瞬間、ユーノが何を言おうとしているのか、理解できなかった――が、
『今日はずいぶんと冴えてるじゃねえか、ユーノ!』
「さぁ、早くなのは! 君は、いつも通り高町光の妹として会いに行けばいいんだ!」
弾かれたように、身体が動いた。そうだ。簡単な事だった。最初からそうすれば良かったのだ。私は……高町なのはは高町光の妹で。高町光は私のお兄ちゃんなのだから。
(そうだよ。答えは初めから決まってたんだ)
何も悩む事なんてなかったんだ。初めから。何がしたいかなんて決っていたのだから。
(何を迷っていたんだろう。何を躊躇っていたんだろう)
踏み込めなかったのは――距離を置いていたのはきっと私の方。今までは自然に踏み込めていたその距離を超えられなかった。それは何故?
(それが出来なかったのは、私が臆病だったから。光お兄ちゃんに邪魔だって思われたくなかったから。ううん、それも違う。それだけじゃない)
例えば今日。傍にいたら何か力に馴れただろうか。分からない。でも……。あの子のために戦う光の傍にいたかった。いるべきだったんだ。なのに、何でできなかったのか。
(私が光お兄ちゃんを怖がっていたから。もう分かっていたでしょ? 昨日リブロム君に自分でそう言ったでしょ?)
それが出来なかった理由は、ただそれだけのこと。安心したと言いながら――やっぱり怖がっていたんだ。でも、もうそれもおしまい。
(やっぱり光お兄ちゃんは光お兄ちゃんのまま。変わってなんかいなかった!)
あの子たちを何かから守ろうとしている。ただそれだけ。今まで私を守ってきてくれたように。それなら私は――
≪Master≫
レイジングハートが静かに光った。
今度は私が光を助けたい。今まで守ってきてくれたように今度は私も。それが、私が本当にしたかったことなのだから。それに今ならきっと――きっと、力になれる。
「行こう。ユーノ君! レイジングハート!」
「待て――!」
クロノが何か言っていたが――構わない。一気に加速する。
もう時間がない。私が。そう、他の誰でもない。他の何でもない。今ここにいる私が。
(私が光お兄ちゃんを――みんなを助けるんだ)
今まで光がそうしてくれていたように。最初から、それが望みだった。
5
全てが終わって。
ぽっかりと浮かんできたのは、無力感だった。
もちろん、無力感を味わったのはこれが初めてではない。今まで何度も味わい、噛締めてきたはずだった。だが、これは今までのものとは異なる。そもそも無力感と呼ぶのが正しいのかどうなのか。飛び降り自殺を止めようとして、逆につき落してしまったような。そんな絶望的な感覚だった。
『索敵範囲に御神光以下二名の反応ありません。……なのはちゃん達も該当区域から離脱したようです』
エイミィからの報告が海風に混ざって空しく聞こえた。眼下に広がるのは、今までの騒乱が嘘だったかのように凪いだ海原。雲もない。何もない。何も残らなかった。
(僕は何をやっていたんだ……?)
どうしようもない疲労感が、身体の芯から力を奪い取る。散々斬られ殴られ蹴られた身体が今さらになって痛み出した。まるで、嘲笑うように。
この世界を救うための、最善の選択をしてきたつもりだった。だが、それならこの状況は何だ。説明不足。誤解。そんなものじゃない。
高町なのはは……ユーノ・スクライアも、全てを理解したうえで決別を選択した。世界とあの三人を天秤にかけて、でさえない。
そもそも。御神光は、一度だって世界を滅ぼそうとしたか?
御神光を危険視していた理由は――未知の魔法の使い手である事と、僕らに対する敵対姿勢。そして、目覚めつつある『魔物』。
だが、それらは本当にこの世界にとっての脅威だったか?
僕らと敵対した理由はあくまでもあの少女を守るためだった。一切の予備知識を持たない状態で、あの状況に出くわせば誰だって……他ならぬ僕だってそう判断する。そんな事はすでに認めていたはずだ。それに、
『少し派手に暴れるから、お前達はもう一つの方に行っていろ』
あの日――怪物が暴れまわったあの日。御神光はこう言ったはずだ。
『ここらでこの腕を満足させてやらないと悲惨な事になりかねないからな』
彼が殺したのは、実体のない幻影。深刻化する暴走に対する、最も被害のない手段。それなら、
彼の一体何が脅威だった?
誰にとっての脅威だった?
誰が何をするための脅威だった?
そもそも、それは本当に脅威と呼ばなければならないものだったか?
「御神光は、誰かを殺そうとしている……」
言い訳のように呟く。
ああ、そうだ。その誰かにとっては脅威だろう。だが、この世界を守るためにその誰かを犠牲にするとして――それは、たった今三人を犠牲にして決着をつけようとした僕らと何が違う?
「さっきの攻撃は、誰によるものだった?」
そして、何より根本的なところで。
御神光は、誰を殺す気でいる?
その誰かを殺せば、何故殺戮衝動が止まる?
いや、そもそも何故蘇った?
『ごめん、分かんない。ただ、あの攻撃は次元跳躍攻撃だったよ。アースラも攻撃されて、被害が出てるけど……問題なのはそんな事じゃなくて、』
「それだけの魔導師が背後にいる、か……」
次元跳躍攻撃。その名の通り次元を超えて撃ちこまれる攻撃魔法。体力的にも魔力的にも消耗が激しく、並の魔導師では扱う事すらできない。単純に考えてクラスS以上。だが、
(その魔導師は、御神光達の味方だと言えるのか?)
あの一撃はどう考えても彼らを狙っていた。いや、違う。あの子だ。彼が行動を共にしている金髪の魔導師。彼女が狙いだった。つまり、御神光が彼女達と行動を共にしている理由は――
(彼女達を守るため?)
そもそも。御神光がそれ以外の理由で動いた事が今まで一度でもあっただろうか。
だとしたら、僕らは根本からこの事件への介入方法を間違えているのではないか?
「僕らはどうするべきだった?」
もちろん、ロストロギアの脅威を放置する事は出来ない。それを最優先に回収する事は絶対に不可欠だった。だが、その為の方法はこれが最適だったといえるのか。
この世界を守るために最善の選択をしたはずだった。だが、それならこの結果は何だ。誰もいない。何一つ掴めない。協力者さえ去った。
(この世界を守るために、僕らはこれからどうすればいい?)
アースラに被害が出ているとなれば、しばらく動けないだろう。二日か、三日か。詳しい事は戻って訊いてみなければ分からないが。
これから僕らがすべきこと。それを見つけ出さなければならない。
6
気がついた時、アタシ達はすでにそこに連れ戻されていた。いや、連れ戻されたと言うのは適切ではない。回収された、と言った方が正しい。目が覚めた時、アタシ達は部屋の片隅にゴミのように打ち捨てられていた。
「クソッ!」
バルディッシュ――フェイトのデバイスからは、すでにジュエルシードが抜き取られていた。あの女は優れた技術者だ。時間さえあればデバイスを誤作動させて、中身を抜きだすくらいは造作もないはず。だが、そんな事はどうでもいい。あんな石ころなんて欲しければいくらでもくれてやる。
「フェイト、フェイト!」
フェイトは、傷の手当てもされないまま部屋の片隅に打ち捨てられていた。その身体に触れて、改めて思い知る。傷の正体。それは火傷だった。あの女の魔法によるもの。
光達が庇ってくれなかったら、あのまま死んでいたかもしれない。
死。……そう言えば、光はどうなった?――あれだけの火傷を負い、あの女の魔法を受け、あの高さから海面に叩きつけられた。
(それだけの傷を負えば、さすがのアイツだって……)
何でこんな事になってしまったのだろう。空っぽだった心の中で、それが呼び水になった。虚ろな心をどす黒い何かが満たして行く。
管理局か。あの女か。それともそれより大きく漠然と広がる――例えば、運命とでもいえるものか。あるいは、それを操り嘲笑っている何かか。……その全てか。何に対してか自分でもわからないまま、ありったけの感情をこめて、罵ろうとした。
「―――ッ!」
だが、言葉にならない。言葉になる程度の安っぽい感情ではなかった。ただ、本能に従って吐き出す。喉が裂けるまで吼える。自分の本質を叩き起こすように。
(……ごめんよ、フェイト)
覚悟を決めた。もっと早く決めておくべきだった。例えその結果、自分が消される事になったとしても構わない。
主を寝かせ、立ち上がった。ありったけの魔力を叩き起こす。あの女には遠く及ばない。そんな事は分っている。だが、それがどうした。
(アタシには爪も牙も残っている)
元よりこの身は天性の狩人だ。たかが人間一人引き裂くなんて事は、当たり前のようにできる。例え魔力が及ばなかろうが――手足が引き裂かれようが、その喉笛を喰い千切る事が出来る。
「さよなら、フェイト」
もう会う事はないだろう主に告げる。例え差し違えてでも、あの女を殺す。フェイトはアタシを怨むだろうし、契約も解除されるに違いない。だが、それでも。
フェイトを――大切な主をこの地獄から解放できるなら、アタシはそれでいい。アタシはきっと笑って逝ける。後悔など何もない。
(光、後は任せたからね)
アイツはまだ生きている。あの本はそう言った。それなら、後の事はあの魔導師に――
あの魔法使いに託せばいい。もしもあの世にいたら。その時はアタシが蹴りだしてやる。
目の前の扉を蹴破り、振り向かず先へと進む。あの女の匂いはまだ残っている。どこにいるかなんて手に取るように分かる。
鬱蒼として朽ち果てた森の奥深く。その先に続く扉を無造作に殴り飛ばす。
一瞬だけ、そいつは振り返ったが――そのまま何も言わず歩き去る。
感情を吐き出すには準備が必要だった。そんなことを今さらになって思い知る。再び爆発しそうな感情が、その爆発力を保ったまま鎮まるのを待つ。
その隙にそいつはさっさと奥へと行ってしまう。だが、慌てることはない。そんな余計な感情を抱く余裕はない。細く息を吐き、その後を追った。
長い階段を下りると、さすがに気にはなったのか、そいつは足を止める。
同時、準備が整った。地面を蹴り、一切のためらいもなくそいつを引き裂く――つもりだった、
「くぅ!」
魔力による障壁によって、あっさりと弾き返される。その女――プレシア・テスタロッサが視線だけで振り返った。つまらないもの――道端にへばりついたガムでも見おろすようなその目がさらに、感情を激昂させた。
今度は準備など必要ない。ありったけの力を込めて、シールドに爪を立てる。力の差は絶望的だったが――
(この……ッ!)
距離にすればほんの数十センチ。たったそれだけで届く。
たとえ魔力では勝てなくとも、直接手が届くなら何とでもなる!
「アンタは母親で、あの子はアンタの娘だろ!」
シールドを握りつぶし、そのまま胸倉を掴み上げる。そこで初めて、自分が思ったより非情になれていない事に気付いた。そんな事をしている暇があれば、喉元を引き裂いてやれば良かったのに。
「あんなに頑張ってる子に! あんなに一生懸命な子に! 何であんな酷いことができるんだよ!!」
感情のままに叫ぶ。だが、そこで気づいた。全く意味がない。相手の目には、自分の姿など映っていないのだから。
「が、あ――っ!」
横腹を貫くように衝撃が走る。冷静さを欠いていたとはいえ、狼の反射神経でも対応できない早さで魔法を発動させたのだと、地面に叩きつけれてから理解する。
距離が離れ、そしてたった一撃で身動きが取れなくなった。
力の差は絶望的だった。分かっていたことだ。だが、
「アンタの娘は」
それでも立ち上がる。叫ぶほどの力はすでになくとも、それでも叫ぶ。
「アンタに笑って欲しくて、優しいアンタに戻って欲しくて、あんなに……!」
意味がない。腹部を貫く痛みに、妙に冷静な自分が告げた。
この相手に、自分の言葉は意味がない。決め損なった覚悟を、今さらになって決める。
「あの子は使い魔を作るのが下手ね。余分な感情が多すぎるわ」
冷酷な言葉。その手にデバイスが握られる。
今のままでは刺し違えることさえできない。絶望感と共に認める。
こんな怪物に対抗する術なんて、自分にはない。そんな術を、自分は何一つ持っていない。何もできない。
(フェイト……っ!)
それでもなお牙をむき出しにする。ここで、この女を殺す。もう、考える事はそれだけでいい。ただ吼える。それ以外の何もいらない。
「いちいち私を煩わせないでくれるかしら?」
いくら膨大な魔力を持っていたとしても、所詮この女はただの研究者だ。特別な戦闘訓練など受けていない、ただの人間に過ぎない。狼の速さについてこれる訳がない――はずなのに。
「ああああああッ!?」
蛇のように蠢く雷が、周囲一帯を無造作に薙ぎ払う。速さなんて気にもしない。周囲一帯を一掃できるなら、そんなものは必要ないと言わんばかりに。
(今の魔法は何だ……?)
あんな魔法をアタシは知らない。この女の魔法はミッド式のはずなのに、理解できない。術式が理解できないとか、そんな些細な事じゃない。何かがおかしい。
「ジュエルシードを……使っているのか?」
無様に地面を転がりながら、呻く。
「使えない石ころを集めさせるとでも思っていたの?」
当然のように言い放つ。だが、それだけじゃない。魔力が増幅されているだけでは――この何かが狂った感覚は説明できない。もっと深刻な何かが起こりつつある。
「クソっ!」
その正体を見極めている暇などないし――必要もない。アタシ達には、そんな事はもう関係ない。例え、この女が本物の怪物になろうとしていたとしても――アタシはそれを道連れにして地獄に行けばいい。やる事は何も変わらない。
「いい加減煩わしいわ」
無数に這いずりまわる雷の蛇を掻い潜る。だが、数が多すぎた。ガタが来た身体ではとても全ては捌ききれない。
「が――あああああああああッ!?」
両腕。両足。胸。腹。太腿。身体中に蛇が絡みついた。血の味を感じるほどに叫ぶ。だが、それも一瞬だった。苦痛が消えた訳ではない。肺の空気が全て絞り出されただけだ。
「あっ――うぁ――ぎぃ――ひぐっ」
得体の知れない悲鳴。毒のように注ぎ込まれる電撃に、身体中がアタシの意思を無視して好き勝手にのたうちまわる。肺が引き攣って満足に呼吸もできない。
「そんなに喘ぎながら腰を振るなんて。何を盛っているのかしらね、この雌犬は」
あの女が嘲笑うのが聞こえた。蛇が蠢く。身体を締めあげ、捩じりきり、引き千切るように。まるで本当に大蛇に締めあげられているようだった。身体中を締めあげ、喰らいつき、電撃という毒を注ぎ込んでくる巨大な毒蛇だ。
(こんな、魔―…法……アタシ、知らな――いッ!?)
消えそうになる意識を必死でかき集める。手放したら、二度と戻ってこない。それは分っていた。だが、手放さずに済んだのは――あの女が加減しているからだ。いつでも八つ裂きにできるくせに……それを分かっているから無意味に弄り続けているだけだ。
「そろそろ飽きたわね」
唐突に大蛇が姿を消す。自分の身体を支えるだけの余力がない。そのまま無様に地面に崩れ落ちる――直前、あの女の手がアタシの身体を支える。本能が悲鳴を上げた。
「消えなさい」
プレシア・テスタロッサの手はアタシの腹にある。そこに魔力が収束した。
「――ッ!?」
最初の一撃より、遥かに鋭い一撃。貫くのではなく、素直に消し飛ばすための一撃。
(ごめん、フェイト……)
その一撃に容赦なく意識を刈り取られながら――
(必ず、必ず戻ってくるから)
それでも、最後まであがき続ける。この心臓が動いている限り。自分ひとりの覚悟では届かないなら。捨て身ですら意味がないなら。
(必ず、光を連れて助けに来るから!)
こんな怪物にだって勝てる相手を連れてくる。それまでは、例え手足が引きちぎられようとも、心臓を止める事は許されない。
後書き
格好いい詠唱なんて全く思いつきません!!
……と、魂の叫びを終えたところで本日二度目の更新です。
いえ、本当なら予約だけしておいて来週公開するつもりだったんですが、また操作ミスで途中で公開してしまったようなので……。まぁ、先週更新できなかったのでちょうど良かったかもしれませんね。……来週もできるかまだ分かりませんし。
ともあれ、これで第三章も終わりです。なのは&ユーノ+保護者リブロム組は一足先に覚悟を決めたようです。ハラオウン親子はもう少しかかりそうですが。
やっぱり疲れているようなので消しておきます。慣れない冗談は言うものではないですね(苦笑)。
2014年11月8日:一部修正
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