| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

口~春蘇与儀詩集~

作者:春 蘇与儀
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

あなたの体に

誰かに愛されたくて 泣いているのか
虐められた恨みをはらしたくて 泣いているのか
冷たい外の風に切り刻まれた痛みで震えているのか

甘い匂いのする女のヒフに堪えきれず
恋人でもない人間の肉に食らい付いた夜を思い出して
やりきれない悲しさと 心の裏側からゾロゾロと湧き出てくる
生暖かいざわめきが溶け込んだ胸の血が
体中に広がっていく感覚に怯えているのか

怖がるのは一人になった時だけだけれど

誰かを不幸にしたくて 脳を使うのか
誰かを楽しませたくて 金を投げるのか
人より幸せをかき集めて 気を落ち着けるために
ウソばかりついているのか

子供の時に母親にひどい事ばかり言った記憶に
風邪の時に炊いてくれた雑炊の優しさが食い込み
その割れ目からゴボゴボと溢れてくる紫色をした
死んでしまいたいほどの恥ずかしさを
血走った目で噛み砕いてまで生きているのに

あなたの体には 触れられず
記憶だけが 空しく残る 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧