ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~
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アイングラッド編
SAO編
《圏内事件》4
前書き
5か6で圏内事件編は終わると思います。
「悪いな、友達が亡くなったばかりなのに……」
「いえ……いいんです。私も、早く犯人を見つけて欲しいですし……」
そう言いながら視線をアスナに移したとたん、驚きの声をあげる。
「うわぁ、すごいですね。その服ぜんぶ、アシュレイさんのお店のワンメイク品でしょう。全身揃ってるとこ初めて見ましたー」
「……それ、誰?」
これはキリト
「知らないんですか!?」
アシュレイさんはSAOで一番最初に《裁縫スキル》が熟練度1000になったと言われるカリスマお針子さんだ。最高級の素材を持ち込まないと作ってくれないらしい。
この世界において有名人とは攻略組の中のトッププレイヤー達つまり、キリトやアスナ等を言うのであり、一介の生産職はマイナーな存在と言える。キリトが知らないのは頷ける。
だが、中層プレイヤーにはむしろポピュラーな存在なのかも知れない。
……とはいえ数秒前とテンション変わりすぎだろ。と思ったが仕方ないことだろう。
誰かが言ってたが、オシャレというものは女性がDNAレベルで好きなものらしい。
ましてやこのゲームの服装は基本的には鉄や革の防具だ。
日常用の服はないこともないがいちいち着替えるのも面倒くさいのでさすがの女性陣も攻略組を筆頭に常時戦闘服のプレイヤーがほとんどだ。
その惰性で休日すら軽い戦闘衣を着ている人も決して少なくない。
どうやらアスナはONとOFFをきちんと分けるタイプのようだ。
最初に見たときはおや?っと思っただけだったので特にコメントしなかった(というか未だに着ているコレを着せる気だった)ので、遅まきながら気づいた俺達にどんな顔をするかと思って見てみると顔を引きつらせて、
「ち……違うからね!!」
と、自分をまじまじと見るキリトに怒鳴っていた。
妙に得心したヨルコさんをつれ、昨日食べ損なったレストランに入ると、時間のせいもあってかプレイヤーはほとんどいなかった。
飲み物を人数分だけ頼むと、キリトがこれまでに判ったことを話始めた。
黒鉄宮のカインズさんの名前はやはり、死亡を表していたこと。
殺害の動機が復讐か制裁であるかもしれないこと。
「……ね、ヨルコさん。この名前を知ってる?一人はグリムロック、もう一人はシュミット」
彼女は暫く黙っていたが、やがて肯定のジェスチャーが返ってきた。
「……はい。昨日は気が動転していたので思い出せなかった事があります。……あまり思い出したく無いことでしたし」
彼女が依然在籍していたギルド、《黄金林檎》にグリムロック、シュミットはいた。
普段の生活費を稼ぐための小規模なギルドでメンバーの仲も良かったそうだ。
しかし、ある時何となく潜ったサブダンジョンでレアモンスターを発見し、レアアイテムがドロップした。それは敏捷値が20も上がる物だった。
ギルドは使用派と売却派で別れ、多数決で売却が決まった。
リーダーでグリムロックの奥さんであるグリセルダさんが最前線まで売却に出向たが、彼女は帰って来なかった。
連絡が取れないことを不安に思って生命の碑を確認しに行くと彼女の名前は横線が入れられていた。原因は…《貫通継続ダメージ》
犯人はその日、グリセルダさんが指環を売却しにいくと知っていた者、つまりギルド内部の誰か……。誰もが互いを疑うような状況でギルドは解散し、消滅した。
それから、再びヨルコさんを宿まで送り、転移門広場まで戻ってきた。
「キリト……」
「ん、何だ?」
「俺達は彼女に何か言うべきではないか?」
「……だよなぁ」
最初に言っておくがこれは俺が楽しむための罠だ。
「よし、行け!!」
「お、おう」
コソコソしている俺達を首を傾げて見ていたアスナの視線がキリトに移動する。
「こほん……えーと。その……よ、よく似合ってますよ、それ」
言い終わった瞬間こっち向いてどや顔をするのはやめい。
で、当のアスナさんは
「うー!そーゆーのはね、最初に見たときに言いなさい!!」
着替えて来る!と反転したその前に回り込む。
「………っ!?」
感情表現がオーバーなSAOでは顔が真っ赤になると、場合によっては湯気が出たりする。
アスナは耳まで真っ赤になり、湯気がでる寸前だった。
「まぁ、待て」
「……なんですか?」
俺は黙って例のTHE探偵服をオブジェクト化し、片方をキリトにほおる。
「「…………」」
「似合うから、な?」
キリトとアスナは「はぁ…」とため息をつき、手頃な空き家に向かっていった。
「で、これからどうするんだ?」
「ああ、取り敢えず選択肢としては、グリムロックの居場所を聞き込みで探す。黄金林檎の他のメンバーを訪ねて裏付け。殺害の手口を詳しく検討……かな」
「ふむむ」
……思案顔になった2人を見て、こいつら探偵には向かないなと、思いながら切り出す
「……一つ目は人数的に難しいし、グリムロックさんに警戒されてしまう恐れがある。二つ目はヨルコさんの話と食い違いが出たときにどっちを信じたらいいか判らないからやめたほうがいい」
「……なるほど、そうすると3つ目ね」
「うーん、でももうちょっと知識のあるやつの協力が欲しいな……」
「そうは言っても無闇やたらと情報をばら蒔く訳にはいかないわ。それに、私達以上にSAOのシステムに詳しい人なんて、そうそう……」
「…………あ、居るじゃん。あいつ呼び出そうぜ」
「……やめてくれ」
「何でだよ?あいつ以上に詳しいプレイヤーこそ、そうそう…ていうかレイもあいつしか思いつかないからわかったんだろ?」
「………苦手なんだよ、あいつは」
「誰よ、あいつって。レイくんが苦手そうないう人あまり心当たりないんだけど」
「いや、アスナもよく知ってるぜ?」
「?」
キリトは名案だという顔で、俺は思いっきり顔をしかめながら、口を揃える。
「「ヒースクリフだよ!(…)」」
その名を告げた時のアスナの目を剥いて仰け反った姿を俺達は生涯忘れないだろう。
後書き
お待たせしました次回、ヒースクリフが登場します!
ついでにレイが最初の頃、どのようなことをしていたかも明らかになります。
アンケート:以前書いた黒の剣士編、心の温度編の省略の件ですが黒の剣士は「追想編(SAO終了後に予定)」でやろうと思います。
そこで、心の温度編を本編でやるか「追想編」でやるかのアンケートを取りたいと思います。つぶやきの方で取るのでご協力お願いします。
ではノシ
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