ロード・オブ・白御前
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ビートライダーズ編
第5話 無自覚の芽
その日、レイドワイルドの初瀬と、インヴィットの城乃内(と城乃内の取り巻き女子二人)は、桟橋の上からステージを観ていた。
鑑賞のためではない。特に初瀬は、今踊っているチーム鎧武に挑むためにここに来たのだ。
「本当にやるつもりかい、初瀬ちゃん」
「アーマードライダーが何だってンだ。この間の女より強えってことはねえだろ」
アーマードライダー。つい先日導入された新システム。何と人間がバトルスーツをまとって自らインベスと戦うという手法と技術である。チーム鎧武の用心棒の男は、そのアーマードライダーになるためのベルトを持って、アーマードライダーに変身しては多くのチームを返り討ってきた。
「あれ、そっち~?」
「あ?」
「てっきりバロンの戒斗を引き合いに出すと思ってねえ。もしかして初瀬ちゃん、あの子に惚れちゃったり?」
「ば…! 変なこと言ってんじゃねえぞ城乃内! 俺が言ったのは、あの女が戒斗に勝ったからだっつーの!」
初瀬は耳まで真っ赤になって、しかし自覚はないようで、ずかずかとステージへ降りて行った。
「はいはい。行ってらっしゃ~い」
城乃内は手をぷらぷらさせて見送った。
「いいんですかぁ、城乃内さぁん」
「もし初瀬が勝ったなら、その時改めて奴に挑戦すればいい。それであのステージは俺らのものだ」
「「なぁるほどぉ」」
しかし、と城乃内は手摺に乗せた両腕に顎をかけた。
“この間の女より強えってことはねえだろ”
初瀬がぽろっと口にした少女、関口巴。あれについてはダークホースで、城乃内も考察を定めかねている。
今後敵になりうる人間の情報収集を怠る城乃内ではない。戒斗を破った少女が何者か、城乃内はその日の内に調べ上げた。
市内では進学校に名を連ねる私立中学の1年生。父は公務員、母は専業主婦の中流家庭。成績は下の下。これらのデータだけ見れば、親の見栄でお受験させられて、うっかり合格した学校の教育レベルに付いて行けない劣等生だ。
そんな少女が、駆紋戒斗に、リベンジとはいえ勝利した。
(いや、この場合、リベンジだから勝利した、と考えるべきかな? 一度負けたら学習するタイプってヤツかも。だとしたら厄介だ。今みたいに俺と初瀬ちゃんの二段構えで挑戦したら、後から挑戦したほうが確実に負ける。俺が先でも後でもあのコンビには勝てないことになる)
インベスを操る技術より、数より、「挑み方」。あの少女相手にはそれをよく練らなければならない。
(にしても、初瀬ちゃんも厄介なのに入れ込んじまったなあ。歳の差考えたら犯罪一歩手前だっての。って、社会からある種ドロップアウトした俺らが、世間体気にするのもおかしいか)
2体の小インベスが撃破されて負けが決まった初瀬を見下ろしながら、城乃内はくっくと笑った。
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