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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第九幕その十二

「そうしたことはね」
「自分が自分が、じゃないね」
「昔からね」
 それこそ子供の頃からです。
「そうしたことはないね」
「謙遜?」
「それかな」
「引っ込み思案なんだ」
 ご自身ではこう言う先生でした、チープサイドの子供達に。
「僕はね」
「そうなんだ、先生引っ込み思案なんだ」
「そう言うんだ」
「そうだよ、子供の頃から前に出るタイプじゃないんだ」
 それが先生だというのです。
「そうしたことは本当に苦手だよ」
「確かに前に出るタイプじゃないね」
「我を出して」
「だから結婚も出来ないのかな」
 ご自身でこうも言う先生でした。
「やっぱり」
「いや、そこはです」
 ここでまた言ってきた加藤さんでした。
「是非です」
「相手を見付けるべきですね」
「何度も言いますが人は外見ではありません」
「心ですね」
「先生でしたら」
 先生の様なお心なら、というのです。
「それに暴力も差別も浮気もお嫌いですね」
「どれもあってはならないと思います」
 浮気についてもです、とはいっても先生はこれまで浮気をする位女の人にもてたことも相手が近寄って来たこともないのですが。
「決して」
「ギャンブルもされませんね」
「負けますよね」 
 ギャンブルをすれば、というのです。
「トランプも子供の頃から弱かったので」
「されませんね」
「お金が幾らあっても足りないと思いまして」
「そうですね、そのこともいいです」
「そうですか」
「あとお酒は」
「好きですが」 
 確かに先生はお酒をよく飲みます、ただ煙草は吸いません。
「しかし乱れることはなかったみたいです」
「うん、先生酒癖いいよ」
「絡みもしないし暴れもしないし」
「飲み過ぎて寝ちゃうとかね」
「そんなのだよ」
 動物達は先生といつも一緒です、ですから先生の酒癖についてもよく知っているのです。
「そっちも問題ないから」
「別にね」
「そうなんだ」
「とにかく先生でしたら」
 先生の様な人ならというのです。
「大丈夫ですよ」
「ううむ、縁があればいいですね」
 先生はこのことについてははにかんでいるままでした、こと結婚のことに姦すると奥手なままでいます。 
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