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小鳥だったのに

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第六章


第六章

「それもよく」
「そうだろ。俺なんてな」
「課長は?」
「一家の中で男は俺だけだ」
 妻と娘四人ならだ。それは当然だった。
「だから余計にだよ」
「奥さんがですか」
「何かあるとしてくれるんだよ」
 そうだというのである。
「いやあ、それが嬉しくてな」
「ですね。結婚って本当に」
「いいものだな」
「そう思います」
 満ち足りた笑顔はそのままだった。
「してよかったです」
「そうだろ。息子さんは元気か」
「元気過ぎる位ですね」
 少しだけ苦笑いを入れて述べた。
「それで困ってます」
「ははは、それ位がいいんだよ」
「子供はですか」
「子供は元気が第一だ」
 人生の先輩としてだ。確かな言葉だった。
「そうでないと不安で仕方がないからな」
「そうですね。それは」
 和彦は課長のその言葉にも頷いた。そしてだ。
 表情を暖かいものにさせてだ。課長に今度はこう言ったのである。
「それでですね」
「ああ、どうしたんだ?」
「二人目ができました」
 言うのはこのことだった。
「二ヶ月です」
「おお、今度はそれか」
「はい、今度は女の子ですかね」
「そうかもな。まあ男の子か女の子かどっちから」
 課長は笑って和彦に話した。
「どっちかしかないからな」
「ですね。それは」
「どっちでも楽しみだろ」
「ええ。女房も息子と俺の面倒を見ながら楽しみで仕方がないって感じです」
「子供は多ければ多いだけいいからな」
 少なくともだ。この課長にとって少子化は関係ないことらしい。それが言葉になって出ている。
「だからな」
「ええ、二人目もできましたし」
「もっと幸せになるんだ」
 課長はコーヒーを片手に和彦に告げた。
「いいな、今以上にな」
「ええ、家族で」
「そうだ。君も奥さんだけじゃないから」
「女房だけじゃないですね、本当に」
「お子さん達も大事でな」
「ええ、そうですね」
 和彦は課長の言葉に確かな顔で頷いた。そうして言うのだった。
「そうしていきます」6
「頑張るんだぞ」
 笑顔で告げた課長だった。こうしてだった。
 和彦と愛生は夫婦で、そして子供達と共に幸せに生きていった。その中で愛生は彼にとっては何時までも可愛く奇麗な小鳥だった。母親になってもだ。それを感じ取ることができたのである。


小鳥だったのに   完


                       2011・1・26
 
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