【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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20 雪原 その三
ガルビア半島攻略戦の大勢は決したのだが、実は終わっては居ない。
その事を思い知らされたのは、自由都市エルテルスンドに向かって進撃をはじめたその翌日の事だった。
「またなの?」
「またなのよ~」
わたしのうんざりした声に、オデットのおっとりした声が返る。
その眼前には空に向かって打ち出される弓を避けて挑発するホークマン達の姿があった。
賞金稼ぎのアーレスは帝国軍総大将ではなく、最後まで賞金稼ぎでしかなかったと自分自身で呟いたが、結果賞金稼ぎという名の盗賊に戻ってからの方が邪魔で邪魔で仕方ない。
こうやってホークマンで挑発し、背後はニンジャで混乱させるのだから。
「荷馬車が燃えているぞ!」
「早く火を消せ!!」
凍土に侵攻した我が軍を待ち受けるのは見渡す限りの雪・雪・雪。
街道は雪がすくないが、帝国軍が移動した結果踏み潰されて解けて泥化して再凍結という最悪の状況に。
おかげで進撃する前に、街道整備という名の除雪をしなければならない。
ぽちのファイアーブレス大活躍である。
一方、連れてきたジャイアントとトロールだけでなく、戦いで手に入れたプラチナドラゴンやフィボルグ、ストーンゴーレムの面々も物資搬送の馬力として活躍してもらっている。
で、まだ続きがある。
「寒い……」
「凍えちゃう……」
ゲームだと気にならなかった寒さが容赦なく兵達の士気を叩く。
それだけでなく寒さで凍傷者も出る始末。
急遽全部隊にぼろぼろの布や服、バトルブーツを用意させる羽目に。
このあたり自治都市ボセーデン開放時にスザンナ隊が経験していたので事無きを得たが、何も考えずに進撃していたらと思うと寒さ以外で体が震える。
で、そんな急造耐寒防具なんて即座に定数がそろえられる訳も無く。
既に気分は独ソ戦である。
考えると、終盤のハイランド王国はこんな大地なんだよなぁ。
そのプレマップだったのかもしれない。ここは。
航空ユニットで本拠直撃カード圧殺でクリアしたからそんな苦労なんて分かる訳も無く。
かくして、地元でその手の装備を自前で持っていた新設のジュルク隊1000を先頭に、私の本隊を中核にしたオデット・スザンナ・エリナ・ヴェルディナ隊諸兵科連合2500の計3500で帝国軍本拠地ガルビア目指して進撃を開始。
デュラン隊は雪原を迂回して城塞都市トロンヘイムの開放を指示し、カゲイエ隊は得た捕虜の監視と周辺警護の為に貿易都市カールスタードにて待機。
ミツイエ隊は隣接する隣面の永久凍土への警戒の為に、自治都市ボセーデンに駐屯してもらっている。
「しっかし寒いわね」
純白のドレスの上にミンクのコートを羽織って馬車の中で震える私。
まぁ、伯爵の衣という献上品を地元から頂いたのだが、私侯爵なのでと泣きながらお断りした覚えが。
このあたり、身分が絡むから下手すると献上者に罰がいきかねないのだ。
「伝令!
ジュルク隊が自由都市エルテルスンドを開放しました!」
無血開城なのは分かっていたが、これで夜を外で過ごさなくてすむと思うとほっとする。
で、明日は自由都市ベルゲン、明後日はガルビアの前にある貿易都市ドラムメンを落として、全域制圧は三日後。
早いといえば早いのだろうが、捕虜の処遇に耐寒装備の手配等で既に6日経過している。
住民の不満はいまだ見えてはいないが、この極寒の地においてこれだけの大軍が動いた以上、早急に手を打たないと我々が新たな略奪者に認定されかねない。
「これ以上の時間は負担が大きいわね。
少しずつ行政を回復させますか」
本拠地キルケネスを中心に行政組織は立ち上げている。
現在は、ゼノビアとの間にグリフォンを使った空路を作って、パンプキンヘッドを大量に輸送してもらっている。
もちろん、食料用だ。
自分で歩いて、目的地で食料になってくれるからパンプキンヘッドはマジでありがたい。
で、ガルビア半島とゼノビアの間についての処遇で頭を抱える。
直撃できるのはたしかだ。空路ならば。
じゃあ、その下はどうなっているのかといえば、マップ的には何もないくせに土地はある。
つまり、未開の地というか、荒地というか、荒れてしまった地というか。
そんな地の最後の拠点となっているのが城塞都市トロンヘイムである。
ルートは多分こうだ。
トロンヘイムを起点とした場合、ディアスボラ地方の工業都市ペリグーとこちらの根拠地だったポアチエ、デネブの庭の貿易都市ロスアンヘルス、ゼノビアの貿易都市フィラーハと繋がっているマップがあったはずなのだ。
マップ外に道が伸びているのだから間違いない。
そこがマップすらないというのは、それだけ荒れてしまった以外に理由はない。
ホーライ王国そのものが王国滅亡と25年前の魔法による寒波で行政組織が崩壊し、ゼノビアですら辺境として荒れてルートがアヴァロン島経由の海路しか機能していなかったのだから。
使われない街道などあっという間に荒れる。
その結果である。
ちらと聞いた限りでは、バーサーカー達蛮族の巣だけでなく、ゴブリンやリザードマンの巣すらあるという。
空中補給だけで戦える訳も無く、この地に街道を敷設しないと先の侵攻すらままならないという現実に、自由都市エルテルスンドが見えてきたのに私の心はまったく晴れなかった。
翌日。
「ちょっと後お願い」
と、テレポートひとっ飛びで飛んだのは、アヴァロン島。
マーメイドのケートーの紹介でマーメイドとオクトパス数体を勧誘してガルビア半島にとんぼ返りしたのはお昼ぐらいの事だった。
自由都市ベルゲンに向かったジュルク隊はアーレスの後方撹乱に苦戦しているが、敵の数がたりないので無傷で本隊が貿易都市オーレスンを開放して船を確保。
対岸の城塞都市トロンヘイムを開放したデュラン隊を回収すると、沖にある魔法都市ゾルムスタインも我々に門を開いた。
とにかく食えないし、戦力が足りない。
足りないならば持ってくるしかないのだが、もう一つの手として戦力を集めるというのがある。
で、私が取った手段というが船をオクトパスに引っ張らせるというあれである。
ガルビア半島は交易で栄えていた事もあって交易都市、つまり港がかなり多い。
船で海路を突っ走れば、一昼夜で貿易都市ドラムメンに到着するのだ。
もちろん、海難を避けるためにマーメイドを連れてきている。
これが図にあたった。
デュラン隊が自由都市ベルゲンを開放して入場した時、本隊が分乗して乗り込んだ船団(乗れない人員はオーレスンで待機)はその夜のうちにベルゲンを通過。
翌日の昼には貿易都市ドラムメンを攻略し、帝国軍本拠地急襲・制圧したのである。
「アーレスのホークマン隊が帰ってきます!」
「ヴェルディナ隊!弓構えて!」
「スザンナ隊!魔法用意!絶対に逃がさないで!」
ここまで我々が来るのにあと一日かかると踏んでいたアーレス達は、完全に無警戒で城に近づいてくる。
ただ逃げると言い訳ができないからできるだけ抵抗して、それで撤退したという言い訳がほしかったのだろう。
その欲深さが彼らの命取りとなった。
大量の財宝等は荷造りされていて、ドラムメンにはこれらを運ぶ船まで用意されていた。
こいつらをここで逃がす訳にはいかない。
「旗を掲げよ!
これより、カルビア半島に巣食う盗賊を討伐する!!」
「馬鹿な!!
どうやってここに……」
遠目からでもアーレスの驚愕する顔が見える。
その顔を見据えながら私は手を振り下ろした。
「放てっ!」
こうして、ガルビア半島攻略戦は帝国軍の全滅という形で幕を閉じた。
とはいえ、ここで終わったら、食えぬ痩せた土地一つで終わってしまうため、王国軍は更なる進撃を急がないとならない。
目指すは、封印の地アンタリア大地。
そして、空に浮かぶ島、オルガナ。
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