東方変形葉
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
幻想変化
東方変形葉52話「少年は霊剣を手に入れる」
前書き
空「え~んか~い!ほら、おにいさんも温泉卵たべなよ~!」
裕海「・・・あの、これでもう10個目なんですけど。」
燐「お空、宴会だからってはしゃぐのはいいけどほどほどにしなよ~。おにいさんが困ってるじゃないか。」
さとり「地上に来るのは何年ぶりなのでしょう。地上も地上で変わりましたね。」
紫「そうかしら?」
さとり「・・・心を読まれたくないからって『ゆかりん、17歳で~す!』を心の中でループ再生しないでいただけませんか?」
萃香「ひゃっはぁ~!勇義と酒を飲むのは何年振りかねえ!」
勇義「ははは!たまには地底に遊びに来いよな!」
ヤマメ「地上って意外と楽しいところなんだね。」
キスメ「そうだね~。」
パルスィ「ああ、妬ましいわね。地上の料理がここまで美味しいなんて。」
霊夢「・・・なんだか今回の異変の連中はいろいろと突っ込みどころがあるわね。」
魔理沙「気にしたら負けだぜ。というか、それはいつものことじゃないのか?」
こいし「おにいちゃ~ん!」
裕海「おっと。あれ?こいしもしかして酒入り?」
こいし「ひっく、そんなことないよ~。」
裕海「・・・あるな。目がとろんとしてる。」
パチュリー「ふふっ、相変わらずの光景かしら。」
レミリア「そうね。裕海も私らからしたらかわいい子供みたいなものね。」
パチュリー「・・・そうね。」
さとり「『あなたのほうがよっぽど子供でしょうに。精神的な意味で。』」
レミリア「なに~!?パチェ、やるか~?」
パチュリー「レミィ落ち着きなさい。みんなわかっていることだから。」
レミリア「え~ん!パチェがいじめる~!咲夜~!」
咲夜「永久に子供体型のお嬢様・・・いける!」
レミリア「いけないわよ!」
裕海「・・・なんじゃこりゃ。」
宴会があったのは異変の日から3日後だった。そして翌日解散し、それぞれ家に戻った。
「お~い!裕海~!」
「ん?魔理沙じゃないか。どうしたんだ?」
声がしたのでドアを開けてみると、魔理沙がいた。
「今からある店に行くんだが、一緒に来るか?」
「店?」
「そう。外の世界のガラクタばっかり売っている店さ。香霖堂っていうところなんだがな。」
ふ~ん。そういえば今日は特に予定はなかったな。
「じゃあ行こうかな。ちょっと待ってて。」
「おう!」
姫雪も人形たちは少しだけ留守番にして、魔理沙と香霖堂という場所に向かった。
しばらく歩くと、外の世界の看板やらサッカーボールやら狸の置物やらが置いている店に着いた。
「こ~りん、邪魔するぜ!」
「おや、魔理沙か。・・・そちらの人は?」
店の奥にメガネをかけた白い髪の男性がいた。若干警戒しているような低い声だった。
「知らないか?葉川裕海っていう新参住民の外来人なんだが。」
「・・・そういえば聞いたことがあるな。“変幻操作の人形師”だっけ。」
「そうそう。とにかく、今日もお前の珍しいガラクタをぬす・・・見に来たぜ!」
今のはジョークか何かなのだろうか。
「じゃあ、え~っと葉川くん。僕はここ、香霖堂の店主の森近霖之助だ。よろしく。」
「聞いての通り、俺は葉川裕海だ。よろしく。」
魔理沙に「敬語じゃなくていいぜ。その方があいつも接しやすいだろうし。」と言われたので、敬語は抜きにした。
「まあゆっくり見ていくといい。」
そういって手元の本に視線を戻した。・・・この人は、人間なのかな?妖怪なのかな?なんだかどっちの気配も感じるんだが。・・・ん?
「ねえ霖之助、これは何?」
灰色の筒から、謎の五角棒が伸びている。
「ああ、それか。それは五行霊剣と言ってだね、昔の陰陽師が丹精込めて作り上げた霊剣なんだ。ただ、それはその陰陽師以外には扱えなくてね、それで忘れ去られてしまったのだよ。」
「ああ、それな~。私も使おうといろいろ試したんだが、全然駄目だったんだぜ。」
ふ~ん?そうなのか。
「これは~、どういう風に使えばいいの?」
「相乗とかそういうのを唱えればいいんだよ。ああ、ちょっと待っててくれ。五行思想に関する本があったはずだ。・・・ああこれこれ。はい。」
霖之助から本を受け取り、ぱらっと見る。内容は理解できないこともないのだが、結構難しいことが書いてある。
なるほど。要するに五大要素で世界は成り立っているということか。
「え~っと、たとえば『金剋木』・・・わっ!?」
突然、五行霊剣が刃渡り150センチぐらいの立派な剣になった。どういうこと?
「えっ!?君には扱えるのかい!?」
「やっぱお前はなんでもありだな~。」
なんとも言えない謎の金属でできている。へえ~、結構切れ味よさそうだな。
「ん~、これは使えそうだな。これ、いくら?」
「あ、ああ。それなら・・・」
言い渡された金額は意外と高かった。まあそうだろうなと思いつつ財布からお金を取り出す。
「まあ、扱える人がいて良かったよ。さすがに置物として置いておくには少し限界だったからねえ。」
「じゃあ私はどれをとろ・・・こほん、買うか見ようと思っているが、どうする?」
「ん~、そういえばあそこに最近行ってないや。じゃあ俺はこの辺で失礼するよ。」
そういった後にスキマを開き、家に戻った。
「・・・彼、何者なんだい?」
「・・・さっきも言ったろ?外来人の”変幻操作の人形師”だぜ。」
「月に行くよ~!」
依姫や豊姫、レイセンに最近会っていないことに気が付いた。
「・・・月?」
人形たちは前に行ったことがあるのではしゃいでいたが、姫雪は行ったことがないので首をかしげている。
「そう、月。姫雪は初めてだったな。というわけで、しゅっぱ~つ!」
「「お~!」」
「お、お~?」
姫雪の困った顔もかわいいと思ってしまう。まあそれは置いといて、行く前にある作業をしなければならない。
「ほいっと。」
「?」
姫雪の”穢れ”を封印した。姫雪は実は少し特殊な妖怪だが、地上の者なので必ず穢れは持っている。これで穢れを嫌う月の民に文句はないはずだ。
不思議な水晶である海岸に着いた。移動するときは夢の中に入り込むように一瞬だ。
「ん?あれ?裕海さんじゃないですか!・・・と、妖怪?にしては穢れがあまりに少ないような・・・」
「あ、レイセン。ひさしぶり、元気だった?」
そう訊くと、レイセンは元気よく挨拶をし、
「あの、裕海さん。そちらの妖怪さんは?」
「ああ、この子は小鳥姫雪っていう猫の妖怪で俺の弟子だよ。あ、穢れのほうは封じ込めてあるから大丈夫。」
「へ~、えっ、弟子ですか!?」
レイセンが大声で言った。相当驚いたのだろう。
「そう、弟子。」
「えっへん!」
こくこくと頷きながら、自慢げに胸を張っている。・・・あえて言わないけど、妖怪が人間に弟子入りなんて前代未聞だからね?そんなことを紫が言っていた。
「あら、裕海じゃない。ちょうどいいところに来たわ。」
と、向こうから依姫が来た。
「ちょうどいいところ?」
「そうなんですよ!これから豊姫様と依姫様は今から出張なので・・・え~っと、なんでしたっけ?」
「兎たちの訓練指導役がいないのよ。」
ふ~ん、なるほど。
「出張って、今日だけ?」
「ええ、悪いけど頼めるかしら。」
あの子たちの相手なら、やることがたくさんありそうだ。いい暇つぶしになる。
「わかった。出張気を付けてね。」
「ありがとう、お姉様にもあなたが来たことを伝えておくわ。」
そういって依姫は建物に走って行った。結構急ぎの用なのだろうか。
「兎たちの訓練って?」
「ああ、兎たちっていうのは月の護衛兵のこと。」
姫雪が訊いてきたので、答える。実力は・・・うん、ごく普通の人間より強いくらいかな。良く言えば。
「あっ!裕海さんだ~!」
「えっ、本当!?」
「わ~い!」
何人もの兎たちが集まってきた。
「は~い、今日は俺が訓練指導することになったから!とはいっても、ちょっと変わった訓練かもしれないけど。」
「「「「「?」」」」」
「スペルカード!」
変符「スターライトレイトンネル」
上から雨が降るようにして光弾がおちてくる。それを兎たちが避ける。カードを変えるごとに、本来は言わずに
構えるだけでいいスペルカード宣言を行う。
「ひゃあっ!?」
「わああっ!?」
声を上げながらもちゃんとかわしている。
「思っていたより上手く避けているな。よし、スペルカード!」
「人形弾幕大結界」
「いくよ~!」
「ちゃんとよけてね~!」
と、人形たちがぐるぐると飛び回り、弾幕を固定・発射する。
「ひゃあっ!?」
「わわわ、わあっ!」
「ふびゅうっ!」
「よし、休憩~!」
くたくたなのか、その場でへな~っと座り込んだり寝転がったりしている。俺もスペルカード連発で疲れた。
「はあ~、疲れました。」
「そういえばレイセンは最後まで頑張ってたね。よしよし。」
「え、えへへ」
レイセンは頬を少し赤らめながら恥ずかしそうに満足そうな顔をした。
「裕海様~、私は~?」
「うん、姫雪もよく頑張ってたね。えらいえらい。」
「にゃふぅ・・・」
姫雪も思っていたよりよく避けていた。正直、最後のスペカまでついてこられるとは思っていなかったな。
「裕海~、帰ったわよ~!この豊姫が今帰ったわよ~!」
「・・・お姉様少し落ち着いてください。」
兎達の稽古を終え、部屋でしばらく姫雪とレイセン、人形たちとのんびり話をしていたところに乱入でもするように2人が帰ってきた。
「おかえり、2人とも。」
「あっ!豊姫様に依姫様!おかえりなさい!」
さてと、2人が帰ってきたから俺達もそろそろ帰るかな。
「じゃあ俺たちはそろそろ帰るかな。」
「え~?もう少しゆっくりしていきなさいよ~。」
「そろそろ帰らなきゃいけない時間だから。今度また来るよ。」
月は空が黒いので(それでも明るさは地上と変わらない)、昼か夜かは時計がなければ分からない。懐中時計を見る限りは幻想郷は今19時ぐらいだ。
「仕方ないわねえ。今度来るときはたくさんお話しましょ♪」
「そうですね。地上の話も聞きたいですし。」
「ん、わかった。じゃあ俺たちはこれで失礼するよ。」
水晶を取り出し、空間を瞬時に張り替える。気が付くと、家の中にいた。
「さて、ご飯にしよっか。」
「は~い!」
日付が変わろうとする頃になった。姫雪も人形たちはもうすでに布団に潜っている。人形たちは布団というか、手さげの籠に入って布をかぶせている。
「さてと、紫?」
「いやん。どうしてばれるのかしら。」
紫がスキマから現れる。最近なんとなくわかってしまう。
「それで、今日は何の用?」
「そうね~。あなたは所詮人間なのだから、知恵をある程度つけなければ生きていけないのよ?」
出た出た、紫のとっても胡散臭い前振りが。こういう時は必ず何か企んでいる。
「何が言いたいの?」
「ほいっと。」
紫がスキマを開く。すると、どさどさと大量の本が出てきた。
「あなたの能力は、世界の秩序と平和を軽々と弄ることができるのよ。だけど、あなたはまだ能力を使いこなしてはいない。」
「・・・?結構頻繁に能力を使ってるけど。」
「知恵が足りないのよ。」
・・・まあ、中三がもっている知識なんて程度が知れてるから言いたいことはすごくわかるな。つまり、俺の無知さが世界の秩序や平和を揺るがしかねないと言いたいのか。
「そこで、あなたには主に理系の本を読んで勉強してもらうわ。まあ、この量ならゆっくりやってざっと100年ぐらいかしら。」
見てみると、主に数学と理科の本ばかりだ。広辞苑みたいな分厚さの本ばかりだが。
「100年、か。そっか、俺にとっては些細すぎる時間なんだな。」
「そうね。あなたは永遠の時間があるのですもの。まあ無理しないでゆっくりやっていけばいいわよ。それだけ。では私はこの辺で失礼させていただくわね。」
「ん、ありがと。」
すうっとスキマが閉じられ、紫の姿は見えなくなった。本をぱらっとめくってみる。・・・むずっ!?
・・・うん、ゆっくりやっていこう。幻想郷に来ても、勉強というものはちゃんとあるんだな。
続く
後書き
52話です。
裕海が「五行霊剣」を手に入れました。
姫雪の過去等は、また後日にお話ししましょう。
さて、次回はとある館や屋敷へ行くかもしれません。
ページ上へ戻る