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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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18 雪原 その一

 ガルビア半島から永久凍土にかけては見渡す限り雪原が広がっている。
 ゲーム時だとせつげんユニット大活躍なんて考えていたが、現実に見ると色々と頭が痛くなる。
 とにかく寒い。
 25年前の戦火で使われた魔法によって冷気がこの地を凍土に変えてしまったからである。
 すると今度は何がまずいかというと飢えだ。
 寒さと飢えのダブルパンチでこの旧ホーライ王国は不毛の地と化してしまった。
 という現状認識があった為に、この地への侵攻を控えていた。
 ゼノビア王国復興を宣言したとはいえ、体制が整わない時にこの地を制圧したら統治で破綻しかねないからだ。
 だが、そうも言ってられない事情ができる。

「天空シャングリラが動いてる!?」

 コリの報告に私はうかつにも悲鳴をあげた。
 顔色を変えた私に対して、コリは表情を変えずに淡々と報告を続ける。

「ああ。影からの報告だ。
 どうも帝国はシャングリラをここに落とすらしい。
 マラノの都近くに浮かんでてあんな図体だから歩くより遅いみたいだが、こっちも時間は限られてくるぞ」

 うかつだった。
 シャングリラ戦の背景でゼノビアに落とす事は知っていたのに時間を与えてしまった。
 マラノの都の近くという事はマラノ戦の後がシャングリラ戦だったから、逆算して半年ぐらいという所か。

「わかりました。
 コリ。
 この情報を王宮の侍従長ケイン殿に届けて。
 会議が開かれるだろうからこっちも準備しておくわ」

「了解」

 シャングリラ攻略ついてはそれほど問題はない。
 問題があるとしたら三つ。
 どれもこれもゲームでは想定されていなかった事態なだけに頭が痛くなる。
 で、急遽開かれたトリスタン陛下出席の御前会議の席で、私はその三つの問題点をあげた。

「まず、カストロ峡谷周辺で行われる新生ゼテギネア帝国とローディス教国の会戦が目前に迫っています。
 この二カ国を共食いさせて漁夫の利を狙うしか勝ち筋がない我らが下手に騒げば、この二カ国の耳目を集めてしまいます」

 本来コリに命じて送り出した影はこれの情報収集が目的だったのだ。
 分かっている限りでは帝国軍はフィガロ将軍を指揮官、妖術士アルビレオを軍師として五万の兵を集めている。
 対するローディス教国は属国たるパラティヌス王国の南部軍及び西部軍に動員命令を出し、ゴデスラス・ブラニク将軍を大将に三万の兵をカストロ峡谷に送り出しているという。
 監視の為かテンプルコマンドの存在も確認されているが、こいつがどこの誰かまでは掴めなかったがここまで分かればある程度の推測ができる。

「この一戦、単純に見るならば帝国軍の方が勝つでしょう。
 将の質、兵の数共に帝国軍の方が上です。
 問題はその先で、ローディス教国軍本隊が出る前に、こっちを潰しにきます。
 カストロ峡谷に兵を残しても三万はくだらないでしょう。
 そして、彼らの切り札が……」

 私の言葉をトリスタン陛下が遮って口を挟む。
 はさまずにはいられないほど、その脅威を感じているのだろう。

「……天空シャングリラか」

 皆の空気が一気に重たくなる。
 ナーナ様達が加わり新生ゼノビア王国軍は軍の再建が進んでいるとはいえ、総動員をかけても今の全戦力は二万ぐらいしか居ないからだ。
 だから、ここで空気を変える必要がある。

「まぁ、こちらからすれば助かりましたがね。
 あの五万が速攻でこっちに来られたら打つ手はありませんでしたが、万全を期した結果こちらはつけこむ時間がもらえました」

 皆を見ながら断言してみせる。
 わざと不安を提示してそれを払う事で会議の空気をコントロールするのだ。

「皆様に質問します。
 天空シャングリラは我々の英知のおよばぬ技術によって永遠に空中に浮かんでいるそうです。
 ですが、永久に浮かぶ為にあの島は、何を代償にしていると思いますか?」

 私の問いかけに宮廷魔術師となったウォーレンが即座に反応する。
 さすが魔法使い。

「魔法ですかな?」

「正確には、島を浮かせる魔法をどのような力によって継続させているかです」

 私の言わんとした事にウォーレンが気づいて顔を変える。
 ふむ。
 当たり前と思っている世界の住人は、たとえ賢者でもこれには気づかなかったという訳だ。
 学生ゆえ科学の初歩程度はかじっているから、私には不思議だったのだ。

「我々ですら魔法を連続で行使すれば疲れます。
 神の偉大なる力が働いているとしても、その対象がありまりも大きい以上、何だかの基点は必ず必要になります。
 それはきっと……」

 私のもったいぶった言葉を答えにたどり着いたウォーレンが横取りする。
 天丼は大事である。

「カオスゲートですな」

「正解。
 私にはあれぐらいしか思いつかなかったという推測だけどね」

 カオスゲートの正体は移動手段ではなく、移動先の魔力供給源ではというのが私の推測である。
 その根拠に、同じ空中都市であるオルガナとムスペルムが相互移動できていたという所だったり。
 じゃあ、何でシャングリラとシルクドが繋がっていないかと考えたら、帝国軍がシャングリラを動かしたからじゃねと言う訳で。
 穴だらけだが、カオスゲートというものはそんな穴をどうにかしてくれるパワーがあるのもまた事実。
 話がそれたが、この話をしないと懸念その二に進めないのだから仕方ない。

「さて、とりあえずカオスゲートが大事という事に気づいてもらった訳ですが、これがまた問題で。
 各地にあるこれを抑える為の手が足りません」

 これが懸念その二である。
 ゲームだったら選択肢を選んで一面ずつ攻略すればいいが、現実だと複数同時侵攻なんて事も考えないといけない訳で。
 それをするとただでさえ少ない戦力を分散して各個撃破なんて悪夢が。
 『伝説のオウガバトル』はアヴァロン島からマラノの都までで一気に選択肢が広がっているのだが、裏返せばそれらを全部落とさないといけない訳だ。
 で、これが懸念その三に繋がるのだが、私がそれを言う前に財務大臣たるトードが悲鳴をあげた。

「どこにそんな復興をする金があると思っているんですか!!!」

「……」

 天丼は二回までって空気を今度教えておこう。
 そんな事を決意しながらも会議参加者も一様に顔色が変わったのを見て、とりあえずこちらの懸念が共有できたみたいだ。
 まだ落としていない面は多少の移動はあるだろうが、およそ12。
 それらの面の多くが、落とした所で経済的においしくない面だったりする訳で内政マニア垂涎の逆境プレイができるよ。やったね。
 うん。現実を見よう。

「ごほん。
 皆様懸念を共有できたと思うので、その上で今後の対策をとりたいと思います」

 私は、地図のある一点を指差した。
 そこが次の戦場であるという事を皆に知らしめる意味をこめてその場所の名前を口にした。

「ガルビア半島を攻めます」



 で、冒頭に戻る訳だ。
 カルビア半島はおいしくない凍土が大半なのだが、地図で見れば分かるとおりゼノビアを直撃できる位置にある。
 ここに別働隊なんて置かれるとまずいので排除してしまおうというのが一つ。
 二つ目は、内政的事情。
 ホーライ王国はゼノビアとマラノの都を繋ぐ交易で栄えていたがそれだけではない。
 この海、サノスの海というらしいが、オベロ海に広がっているのだ。
 その気になれば、あのヴァレリア諸島にまで手が届く。
 まぁ、それはひとまず置いておくとして、本命はこっちだったりする。
 アンタリア大地及びアンダルシル。
 人口だけで比べたらこの二つはかなり豊かで、それを養えるだけの力があるという事。
 もちろん、闇の力が満ちているので、神聖ゼテギネア帝国の連中ですら持て余していたのが実情だろうが、こっちにはえり好みしている余裕はない。
 こんな時、自分のALIが皆に比べて低いのに感謝する。あまり低いと色々と困るが。
 この地にあるカオスゲートも狙いの一つである。
 ここからオルガナに行けるので、デスティン率いる主力はこれらの浮遊大陸を制圧して三騎士を救出する役割が与えられる。
 帝国の出方が鈍いだろうというのも考えられている。
 帝国にとっての防衛ラインはマラノの都な訳で、そこから先の凍土とかは彼らにとってもおいしくないのだ。
 だから、ローディス教国との会戦を控え、うるさいとは思うが本腰を入れるとは思えない。
 最後の一つは永久凍土にいる堕天使ミザール。
 彼女を倒すことで、神聖ゼテギネア帝国から天使を消す。
 そうなれば、ロシュフォル教会と対立し天使の加護すらなくなった神聖ゼテギネア帝国は、その正当性が完全に失墜する。
 まあ、圧倒的力を持つ神聖ゼテギネア帝国からすれば、そんなものはいらないのだろうがこっちには以下略。
 

 自前の兵千に、カストロ峡谷でスカウトした莫邪のカゲイエと干将のミツイエ二人が率いる傭兵団と、王国軍新兵を足した四千が私に与えられた戦力である。
 これを私はこんな感じで編制した。

 総大将 エリー

   エリー(プリンセス)    1000  ぽち コリ率いるニンジャ 飛行系全部 総予備
   カゲイエ(ソードマスター)  500  ファイター・ナイト・サムライ等直接打撃ユニット主体
   ミツイエ(ソードマスター)  500  ファイター・ナイト・サムライ等直接打撃ユニット主体
   デュラン(バーサーカー)   500  バーサーカー主体 ジャイアント及びトロール少数参加
   オデット(ハガル)      300  ウィッチ及び魔法攻撃系ユニット主体
   スザンナ(エニグマハンター) 400  ヴァルキリー中心で女性直接攻撃ユニット全部
   エリナ (クレリック)    300  僧侶系全部
   ヴェルディナ(アーチャー)  500  アマゾネス・アーチャー中心で間接攻撃ユニット全部


 キルケネスを速攻で落として本拠地に定めて進撃を開始。
 本拠地キルケネスはまだ雪原に届いていないのにこの寒さである。
 カゲイエ・ミツイエ・デュランを貿易都市カールスタードと貿易都市グレエングスベリに向かわせ、このラインで戦線を作る。
 途中にあるロシュフォル教会にはエリナのクレリック隊を置いて……地味にこの本拠地指揮がとりにくい。
 ゲームだと気にならなかったが途中の川が邪魔で邪魔で。

「ただいま。姫様。
 見つけてきたぜ。
 ゲートはヴェルディナ隊を置いてちゃんと確保している」

 ワイアームのボイナを使ってカオスゲート確保に動いたコリがちょうど帰ってきた。
 王国軍主力が来たらこの街を明け渡して、私達は占領したカールスタードで指揮をとろう。

「で、影から面白い噂を聞いた。
 ここは元々フィガロ将軍の駐屯地だったんだが、フィガロ将軍がカストロ峡谷に移ったので主無き地になっていたそうだ。
 そこにやってきて、この地を統治する事になった人間なんだが……賞金稼ぎのアーレスらしい」

「ぶっ!」

 たまらず噴き出した私にコリも笑顔で続きを話す。
 私が何を考えたか分かったからだろう。

「そうさ。
 姫様を逃がした結果、あの賞金稼ぎはこの地に左遷。
 そんな彼が、カストロ峡谷で目立ちまくった姫様を見つけたら、どう動くと思う?」

 彼が指揮するこの地の帝国軍は数千。
 その質は悪く、実態は帝国軍の名前の下に集まった悪党ごろつきの集団でしかない。
 つまり……

「この戦い私達の勝ちね」

「できれば勝ってから言ってほしいんだが。その台詞は」 
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