アラガミになった訳だが……どうしよう
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原作が始まった訳だが……どうしよう
41話
どうにも状況は極めて原作通りにシオは支部長に奪われ、ユウ達はサクヤとアリサに合流し、地下通路で途中で合流したコウタとともに入口のロックをツバキが解除……ここまでは問題ない。
ただ通路にイザナミが立ち塞がっていることだけが最大の問題なんだがな。
「ここでか……随分と早くないか、イザナミ?」
「そうかな?辿り着く前に片付けるのは普通だと思うんだけどな」
「イザナミさん!!今は巫山戯てる場合じゃっ!?」
「黙れよ、人間」
アリサの言葉を遮るように、イザナミの黒い腕がアリサの首を切り飛ばそうと真っ直ぐに突き出された。俺はその腕を右腕の具足で防ぎ、ユウに視線をやる。
ユウはそれで察してくれたらしく、アリサ達を守るように一歩前に出て静かに神機を構え、イザナミを正面に見据える。
「みんな、一気に抜けるよ」
「でも、リーダー!!」
「アリサ!!今はそれどころじゃないんだよ、あの人は今は敵だ。話し合いは全部終わってからだ、いいね?」
「っ!?……はい」
ユウは全員の意識をここの突破に向けさせて、俺に再び視線をやった。要するに少なくとも俺はイザナミに殺されはしないので、足止めとしてはこの場において最も最適だということだ。
さて、それじゃあ期待に応えるとしようかね。両足の具足のブースターを起動させ、イザナミの懐に潜り込む。
確かに普通にやれば俺はイザナミには勝てない。しかし、不意を突くのはそう難しい事ではないのだ。
俺がイザナミに勝てない理由はあいつを倒せる火力を叩き出すには溜めが必要という理由があるからであって、倒すことを考えなければイザナミを止めることはできる。
ただ当てることにのみ特化した拳はイザナミの鳩尾に直撃し、彼女の体勢を僅かではあるものの崩すことができた。その僅かな時間でユウ達はイザナミの横を通り抜け、咄嗟に動かしたのであろう黒い腕はユウが全て切り落とし無効化した。
それと同時に俺は後ろに跳び、遅れて襲いかかってきた腕を回避する。
「さて、お前は当分間俺とここにいてもらうぞ」
「どうかな?マキナは私がマキナを殺さないって思ってここに残ったのかも知れないけどさ……」
イザナミはダラリと体から力を抜き、俯くように顔を伏せて言葉を切った。これは……マズイかもしれないな。イザナミから明確な殺意がこっちに向けられ、体に悪寒が走る。
「私の物にならないマキナなんて……いらないんだよ?」
その瞬間、イザナミの後ろに控えていた黒い腕が一斉にこちらに向けて手を広げる。そしてその掌には紫色の瞳が淡い輝きを伴って此方を見つめた。
俺は両足のブースターを全力で吹かし、最高速度で回避に専念する。
俺の予想通り全ての瞳から光線が放たれ、周囲は穴だらけになった。こいつの元の姿を思い出せば、この攻撃が今まで出てこなかった方がおかしかったのだ。
こいつの元の姿はウロヴォロス、その特徴は巨大な体とそれを支える無数の強靭な触手、そして高威力のレーザーだ。今までのこいつは多少の応用はあれ、使っていたのは全て触手のみ。
進化の過程で捨てたという可能性もあったが、こいつは明確な知性を持っているのだ。あの長大な射程を持つ武器を自ら捨てるということはあり得ない
大方予想通りとはいえ、想定外の事が一つある。それはウロヴォロスのレーザーは広い攻撃範囲だったのが、イザナミはそれをごく狭い範囲に効果範囲を絞ることで照射時間と威力を上げたのだ。
平たく言えばイザナミのレーザーは、凄まじい切れ味の異常に長い剣とでも言うべき物になっている。それが一本なら問題ないが、十数本のそれが襲ってくるのだ。
今のところなんとか躱すので精一杯で、このままでは間違いなくジリ貧だ。近寄ればなんとかできるんだがな……
「へー近寄ってどうするのかな?」
こんな状況でも思考を読まれるんだからたまったもんじゃないな!!これじゃ完全に詰んでんじゃねぇか!!
「だったら諦めて私の物になってよ」
悪いがここで諦めるのはあまりにも俺らしくなさすぎるんで却下だ。
「だね、マキナらしくないマキナなんてそれこそいらないや」
どっちにしろアウトか……今に始まったものじゃないんだが怒ると理不尽になるんだよな、こいつ。
とはいえ、あのレーザーもそう長くは続かんだろう、残りの照射時間は長くは見積もっても一、二分だろう。それを耐えれば接近することはできるはずだ。
まかり間違っても今近付けば回避できる範囲が狭まるので、確実に蜂の巣にされる。それ故に今は逃げの一手だ。
「まぁ、大体その通りだけど……それまでに仕留めればいいってことだね」
なっ!?腕の本数が増えやがった!?
だー……これ避けれるのか?
さっきまでは完全に回避できたのだが、増えてから少しずつだが捉えられ始めちらほらと掠っている。これ以上増えた場合避けきれる自信はない。
「安心して、これ以上は無理だからさ」
そりゃありがたい……嘘じゃないことを祈らにゃならん訳だがな!!
数分後、既に具足にセットされていた杭は全て溶断され、背中のマントは穴だらけですでのボロにしか見えない。加えて体の至る所が傷だらけで、急所に当たっていないだけって状態だ。
それでもどうにかレーザーの照射時間を耐え切ったぞ……一、二分どころじゃなく五分近くだったがな。本当に五体満足でいるのが軽く奇跡だぞ。
「へー……ここまで避けるなんて凄いね」
そりゃ死にたくないから。
「その割りには反撃が無かったけど?マキナも遠距離攻撃あるでしょ?」
そりゃお前を殺したくはないからな。
「そう思うなら私と一緒に来てよ」
そればっかりは無理な話だ。終末捕食なんてされたらカノン達まで死ぬだろ?
「だからさ!!どうして他の人間を大事にするの!?
人間はマキナにどれだけ助けられても、マキナより先に死んでマキナを悲しませる!!
そんなのにどうして優しくするの!?」
……なぁ、どうして知り合いが死んだら悲しいか知ってるか?
「知るわけないでしょ?」
それはな……その悲しみと以上の物を貰ったからだ。人間ってのは馬鹿でな、大事な物というのは大抵失くしてから分かるものなんだよ。
「意味が分からないよ、私には」
そっか……そもそもお前は会話する気もないってことか。
じゃあ仕方ない……力づくでもお前を止めるとしよう。
両足のブースターに再度点火し、残りの圧縮空気を一気に爆発させる。これが俺の出せる最高速度だ。もしこれが外れたら……うん、詰みだ。
だが、これ以外俺の手がないんだから仕方ない。どうせこの考えたも読まれてるんだろうが、読んでるからって避けれるかどうかは訳ではないだろ。隠し球って訳じゃないが、今まで見せた速度より幾分か上だぞ。
イザナミとの距離を半分詰めた刹那に等しい時間の中、イザナミの後ろにいた数本の腕の瞳が輝き放ち出した。どうやら数本だけ温存していたらしいな。
……さて、間に合うか?
俺は具足の無い左腕をイザナミに突き出す。その時のイザナミの表情は穏やかな笑顔で、彼女は一言だけ呟いて静かに目を閉じた。
最初から俺に殺されるつもりだったんだろうが、俺にとってはそんな終わり方を認める訳にはいかないな。
俺の左腕がイザナミに触れた瞬間凄まじい激痛と共に俺の意識は飛んだ。
後書き
あと2話位でゴッドイーターの無印本編は終わると思います
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