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小ネタ箱

作者:羽田京
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リリカルなのは
  我らは聖王の代理人その2

 そこからは圧倒的だった。
 目にも留まらぬ速さで安次郎に近づくと、銃剣を一閃。
 人体が真っ二つになる光景を想像してしまい目をつむるが、なぜか血は一滴も流れていない。
 避けられたのか、とも思うが、安次郎は白目をむいて倒れている。
 急展開についていけないのか、浮足立つ誘拐犯たちを瞬く間に制圧していく。
 ものの1分もかからず、周囲に立っている影は、白衣の男一人になっていた。


「お嬢さんたち、怪我はないかい?」


 こちらに近づきながら、腰をかがめ目線を低くして、声をかけられる。
 表情は張り付いたように無表情であり、声もまた無機質だ。
 加えて、その身なりはカソックの上に白衣を羽織るという珍妙な恰好だった。
 普通なら恐怖心が湧いてくるだろうが、この場においては、似合っているかもしれない。
 誘拐という非日常の中において、非常識な恰好は、とてもマッチしているように感じられた。


 得体のしれない人物だったが、助けられたというのが大きい。
 こわばっていた肩から力が抜け、安堵感がじんわりと身体全体に広がっていく。
 目の前の状況についていけず、いまだアリサたちは声もでない。
 それでも、無事を確認して満足したのか、男は、すばやく手足の枷を取り去っていく。
 手足の自由を取り戻したアリサたちは、ようやく助かったのだ、という実感が湧いてきた。
 それでも、アリサはわずかに警戒していたが。
 

「あ、あのっ、ありがとうございます!」


 真っ先にお礼を述べたのは、なのは。
 それに続き、アリサたちも、ありがとう、と感謝の言葉をかけていく。
 笑顔で心から感謝している様子のなのはをみて、警戒心はなくなっていた。


「何、気にすることはない。無事でよかった」


 それに何より、男が心から心配しているように感じられたからだ。。
 相変わらずの無表情で、声も平坦だったが。
 腰をかがめてこちらをみつめる優しげな目からは、アリサたちの身を案じていることが伝わってくる。
 しばらく、4人で無事を喜び合う。
 それを黙って見守る男。
 一息ついて、とりあえず、何か会話を試みようとしたとき。


「ふむ。どうやら迎えが来たようだ。もう大丈夫だ」


 それまで黙っていた男が、突然、話し出した。
 迎え?と疑問に思ったすぐそのあとに、大丈夫か!と駆け込んでくる見慣れた姿。
 高町なのはの家族、父の士郎、兄の恭也、姉の美由希だった。
 ただし、その装いは真剣だと思われる小太刀を両手に持った完全武装だった。
 少し後ろには、月村すずかの姉、忍も居る。 
 彼女も拳銃らしきもので武装していた。


 彼らは、倒れる男たちの姿に目をむく。
 その後すぐ、アリサたちの無事を確認して安堵の吐息をつくと。
 アリサたちの側に立つ白衣の男を警戒するように包囲する。
 ぴりぴりとした空気を察したアリサの反応は素早かった。


「やめて、この人はあたしたちを助けてくれたの!」


 彼は味方だと、士郎たちに声をかける。
 怪訝な表情を浮かべる彼らに、なのは、すずか、はやてもアリサと同様に、助けてくれたと話す。
 ようやく事態を飲み込めた士郎は、得体のしれない男に話しかける。


「娘たちを助けてくれてありがとう。けれども、貴方はいったい……?」

「たまたま通りがかったので、助けたまで。では、私は失礼させてもらう」


 その言葉と同時に、男を中心として風が渦巻く。
 風の中には沢山の紙片が混ざっており、男を包み込むように舞う。
 この場にいる全員が事態についていけない中で、唯一アリサだけが行動した。


「待って!貴方の名前を教えてッ!」


 アリサをちらりと見やった男は何事かをつぶやく。
 風が収まると男は影も形も消えていた。
 誰もが呆然とする中で、アリサだけが、最後のつぶやきを聞いていた。
 遠くからパトカーらしきサイレンの音も聞こえてくる。 
 最後に奇妙な出来事があったものの、とりあえずは、全員無事を喜んだ。
 ただ、はやてだけは、何かをじっと、考え込んでいるようだった。


 後日、アリサ・バニングスは、謎の男を探そうとする。
 カソックに白衣という変な恰好をしているのだから、すぐに見つかるだろうと考えていたが甘かった。
 教会の神父や科学者にも当たってみたが、まったく見つからない。
 その場に残された紙片も解析してみたが何もわからなかった。
 紙はただの紙であり、文字が書かれているだけ。
 その文字もドイツ語に若干似ているものの、地球上のどの言語体系とも異なっていた。


「……アレクサンド・アンデルセン」


 謎の男が残した名前をつぶやき、熱のこもった声を出す。


 あれから、二年。


 小学校3年生になった今でも探しているが一向にみつからない。
 怜悧な表情と裏腹に、とても優しい眼をしていた。
 颯爽と駆けつけて悪人をやっつけて、颯爽と去っていく。
 まるで物語の中の王子様のよう――と考えたところで、恥ずかしさがこみ上げる。
 何言ってるのよあたし、と一人突っ込みをしながらも、彼の姿が目に焼き付いて離れない。
 はあ、とため息をつくと、ベッドに横になるのだった





 あ、あぶなかった。


 はやてのデバイス型携帯(魔改造してある)から緊急連絡を受けた俺は、急いで現場に向かった。
 現場に到着したとき、いままさにアリサ・バニングスが撃たれようとしていたのである。
 原作主人公だし、死ぬようなことはないだろう、と気楽に考えていた俺にとっては衝撃的だった。


 いや、そもそも俺というイレギュラーがいる時点で、原作は当てにならない、か。
 今回の出来事はいい教訓になった。
 あと一歩でも遅ければアリサ・バニングスは撃たれ、はやてだって危なかったかもしれない。  

 とりあえず、その場にいた敵を一掃し、助けることに成功。
 しばらく待つと高町家の面々と月村忍がやってきたので、撤退することにする。
 顔を見られてもいいように、アンデルセン神父に変装してきたので、俺だとバレることはないだろう。 
 転移するときに、アリサから名前を聞かれて瞬間的に答えてしまったけれど。


 ……大丈夫だよね?


 あのとき、何かを考え込んでいたはやてを問い詰めてみたが、はぐらかされてしまう。 
 

 
後書き
・何たらエッティさんは、大切なものを盗んでいきました(ry 
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