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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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憎悪との対峙
  32 不安定な信頼関係

 
前書き
今回はタイトル通り、まさかの2人組が協力関係を結びます。
その2人とは? 

 
スターダストはメリーを抱えて階段を上り、数十分ぶりに地上へと到達する。
そこは上の階から見渡せる吹き抜けになっている学生ホールだった。
ウォーターサーバーや新聞、学校の歴史についての資料など学生同士の憩いの場としてだけではなく、学校としての顔をスターダスト=彩斗はこの学校に入って始めて見た。
表と裏という言葉がよく似合う学校だった。
地上の教室が表、地下の教室が裏だ。
数秒前までいた地下は学生のための機材や施設となっているが、実態は国やあらゆる組織による実験・研究設備、データ保管庫であり、秘密は地下に埋めるのが一番という発想を体現していた。
しかし若干行き過ぎてはいるが、学校は生徒たちからすれば教育施設、教授などを含めた教員たちからすれば研究施設という一般的な大学などでは当たり前とされているシステムの典型とも言えた。

「この上か...」

スターダストは上を見た。
ここからグングニルでワイヤー弾をガラス張りの天井に設置された学生ホールを照らす美しいシャンデリアに撃ちつければ、一気に4階に移動できる。
その前にメリーをグラウンドに近い出入り口のどこかに隠さなければならない。
この後の計画、それは一度4階に行き人質を救い、Valkyrieを窓から突き落とす。
幸いなことに下は噴水の池がある。
そして人質が安全な状態を確保できた状態で再び1階へと舞い戻り、メリーを連れて外に出る。
当然、人質を連れて立て篭もってる状況では警察やWAXAは突入できないが、池に立て篭もり犯が落ちてくれば、人質を救出に突入する。
内側に向わせて自分は手薄になった外へ逃げる。
あらゆる機会費用を出しながらも、人質、プログラム、メリーを救い、なおかつ自分も逃げられるというこの場ではベストな計画だった。
この状況下だけでなくあらゆる犯罪に言えることだが、犯罪者が犯罪を起こしてから警察が動く、万引きにしろ殺人にしろどれだけ教育しようと実行する者は実行する。
そういう意味では対処しようとする側の人間は後手に回るのは避けられないことであり、最初から負けている上、引き分けに出来ても勝つことは出来ない。
しかし勝ち負けの見方を変えれば、敵の目的であるプログラムを奪い、捕まえられるという大きなものがついてくる、これだけで勝ったに近いものを得られる。
メリーを抱え、グラウンドに近い出入り口を見た。
ちょうど学生ホールへの出口の通路、そちらへ走った。
しかし次の瞬間、思い描いていた計画にいきなり亀裂は入った。

「!?」

「「「突入!!!」」」

男たちの掛け声、ガラスの割れる音、扉を破壊する凄まじい音が響き渡りスターダストはとっさにホールの物置に隠れた。
この音はまさにスターダスト=彩斗の計画を破壊する音色だった。
次に響くのは突入の足音、それも1人や2人ではない。
数十人単位の歩幅も速度も違う、この状況下で考えられる最悪のシナリオだった。

「A班は地下、B班は6つに分散し、4班はホールの階段、残りは職員室隣の階段から上り、1階につき2班が残って敵の殲滅、人質の捜索を行え!!!」

「WAXA」のジャケットを着た男がホールの中心で指示をする。
悪い感は的中してしまった。
WAXAと警察が予想より大幅に早く突入してきた。


まさか...この状況で突入なんて...ありえない!!正気なのか!?

スターダストは倉庫の鍵穴からホールの光景を見て、驚きを隠せずにいた。
ここで突入するということは人質の命を見捨てることに等しい。
しかしWAXAがそこまで無能な組織だとは思えなかった。
少なくとも自分の知っているWAXAの人間ならここまで無能ではない。
スターダストは何がなんだか分からなかった。
ただ1つだけ確かなのは自分の計画は完全に終わった。
今までのように自分が早く来過ぎた敵やイレギュラーな存在を倒すという自分1人の努力だけで計画を修正し取り戻せるレベルではない。
スターダストは思わずグローブの上から右手の親指の爪を噛んだ。
このまま連中が去るのを待ってメリーとともに逃げる、今の状態ではそれしかない。
スターダスト=彩斗自身は合理的、二択を迫られれば重たい方に傾くタイプの人間だった。
もちろんこの場合ならメリーだけでも救う、それが一番正しい。
それによる機会費用、スズカ、そして40人の生徒たちの命、失うものが大きすぎる。
どうしてもその決断を下すことは出来ない。
Valkyrieと自分の争いにこれ以上、誰も犠牲にはしない。
その前提条件が守れないなら意味は無いのだ。

これ以上...Valkyrieに僕の大切な人を...

必死に計画の修正できる点を探す、鍵穴から何か状況を打開できるものを探す。
集中し眼球の動く早さ、そしてそれを処理する脳の活動はますます加速する。
そしてスターダストのシステムもそれをバックアップするかのようにアナライズ機能を作動させた。

「...アイツは」

スターダストは1人の男に目を留め、バイザーのズーミング機能が男の顔をはっきりと見せる。
身長178cm、体重67kg、システムが対象の情報を予測演算した。
肩くらいまで伸びた髪、筋肉質な体型に整った顔立ちで他の隊員とは一線を画す隊員、スターダスト=彩斗には見覚えがあった。
今ではWAXAのエース、そして過去はディーラーのエースにして裏切り者、暁シドウだった。

「...よし」

スターダストは数秒目を瞑り、頭の中を整理し、作戦を修正する。
だがこれからは変更は効かない。
間違いは今まで以上に許されず、一刻の猶予も残されていない。
すぐに動かなくてはならない。
腰のホルスターからグングニルを引き抜き、ワイヤー弾が装填されているのを確認すると倉庫の扉を物音を立てないようにわずかに開き、狙いを定めた。










「A6班は4階に向かう!!」

シドウは部隊の最後尾を着いていく。
銃の中には気絶させるためのラバー弾、これで人質もろとも撃とうとする人間を気絶させる。
この作戦に従うつもりなど無かった。
しかし逆らえば今後の作戦から外され、より多くの犠牲が出る可能性が高い。
苦渋の決断だった。
しかし階段の1段目に足をかけた瞬間、足に何か引っ掛かった。

「ん?」

ふと足を止めた。

「暁さん?急がないと!」
「あっ、あぁ...」

しかし右足が前に進まない。
見えない何かが足を止めている。
関節や筋肉など自分の内部に原因があるわけではなく、外部に障害がある。
しかし首を傾げた時、何か光る糸のようなものが見えた。

「ワイヤー...うっ!?」

「暁さん!?...あれ?」

シドウの驚いた声に前を進んでいた人間は振り返る。
だがその頃にはシドウの姿は無かった。
しかし足を止めるわけにもいかず、再び前を向くと部隊を追いかけた。

「うぉ!?」

シドウは引っ張られ、引き込まれた先は倉庫だった。
入った瞬間、扉を閉められ、持っていた銃を奪われた。

「このタイミングで突入してくるなんて、お前たちバカじゃないのか!?」

「!?お前は...」

シドウはゆっくりと起き上がり、自分をここに引きずり込んだ存在を見た。
そこにいたのは先程の映像で圧倒的戦闘力で敵を倒したロックマン=スターダストだった。
しかし全く危害を加えようとする様子も無く、一方的に殴りかかろうとする気も無かった。
そして何より何処かで見たことがある気がしたのだ。
必死にスターダストに悟られぬように自分の記憶を探る。

「僕だ」

だがシドウが考えるまでもなく、スターダストは口を開き、聞き覚えのある声でシドウの記憶を刺激した。
続けてヘルメットバイザーを外した。

「お前...シンクロナイザー?」
「よく覚えてるもんだね、裏切り者のくせに」

バイザーの下には忘れようも忘れられない呪いのように脳裏に残った顔、自分の裏切ったディーラーの中でも恐ろしいまでに自分を恨んでいるはずの人間、シンクロナイザーと呼ばれていた少年の顔があった。
電波変換の影響で髪は紫に混じり、目は青に変わっているが、中性的で幼さを残す顔立ちは全く変わっていなかった。
彩斗は自分のことをまだ覚えていることに皮肉を叩きつつも自分に危害を加えようと考えていないことを感じ取り、単刀直入に話を始めた。

「この娘をグラウンドに連れて行くんだ」
「ヒナリか!?一体何があった!?」

彩斗はヘルメットバイザーを付け直し、再びスターダストとなると声色も変えた。
そして自分の後ろに寝かせていたメリーを見せた。
シドウにとってはそれでこそ数年ぶりの再開となる。
しかし彼女もまたシドウからすれば、大きく変わっていた。
髪はショートからロングで緑色を帯び、雰囲気も彩斗に近いものへと変わっていた。

「高垣美緒、Valkyrieの1人にダークチップを射ち込まれた。Valkyrieのダークチップはネットナビだけでなく人間にも悪影響を与える。ヒナは多分、あと1時間も持たない」
「!?ダークチップだと...しかも人間にも...早く病院に!」
「病院なんかで治せるわけないだろ!?それにWAXAに保護でもされてみろ!?この娘には何の罪も無いのにディーラーの人間というだけで辛い仕打ちを受けるに決まってる!!」
「それは...じゃあどうしろってんだ!?」

「救えるのは僕らだけだ!お前に出来るのは僕の言う通りにすることだけだ!!」

スターダストを声を荒らげた。
その気迫に押されていたが、”僕ら”と言ったところを聞き逃さなかった。
倉庫の外では銃撃の音と悲鳴が聞こえる。
そんな中、シドウは決断した。
青のバイザー越しの彩斗の目から伝わる凄まじい殺気と焦り、そうして倒れ時折苦しそうに呼吸するメリーを見て、何か負い目のようなものを感じた。
間違いなく2人は自分のことを恨んでいると彩斗のようにシンクロが出来ずとも分かる。
理由はどうあれ自分は裏切り者で2人を傷つけてしまったのは間違いない。

「...分かった」

間違いだったとは思わないが、罪の意識から自然と口を開いた。
しかしスターダストはそうするしかシドウには選択肢が無いと分かっていたかのように驚きを示さなかった。
それどころかその返事から1秒もしないうちに言葉を発した。

「1つ質問。どうしてこのタイミングで突入した?どう考えても作戦ミスだ!WAXAはいつからここまで無能になった!?」
「新しい隊長様がえらく無能なんだ!人質が死んでも、最初からValkyrieに殺されていたことにすると。どうも警察と仲が良いらしい!それにこの不自然な作戦から察するに、この学校も普通じゃない...」
「そうだ。地下には政府関係の機関のためのレンタルサーバーがある。完全なるクローズドネットワーク、外部からの侵入を寄せ付けず、そしてこの学校の人間さえも企業が自身で設定したセキュリティで中を除くことの出来ない」
「政府がらみ...そういうことか...」

シドウは納得する。
当然、警察なら政府の秘密を隠そうとする立場だ。
WAXAのような海外に本部を持つある種のスパイ組織に介入されるのは避けたい状況だ。
そしてスターダストも納得した。
このタイミングは完全に5時ジャストという小学生でも守れる時間割のような作戦のようだったが、人質を最初から見捨てているなら話は別だ。
そしてシドウも自分と同様で今のWAXAの方針には否定的、そして学校の裏事情、Valkyrieとは敵対する立場だと理解できた。

「これを」
「これは...?」

スターダストはメリーに背負わせたバッグの中からメモリーカードと美緒のLumiaを渡した。
Valkyrieに対抗するならWAXAが動いた方がやりやすい。

「レンタルサーバーを使っている機関や企業、個人のリストに今回の事件に関わってるValkyrieのデータ、あとは高垣の端末だ。捜査に役立つはずだ」
「いいのか?」
「別にお前を助けようってわけじゃない。お喋りしている時間も惜しい...ここを出たらグラウンドに急げ。可能な限り陸上トラックの中央...サッカーグラウンドだ。校舎の立地からして狙い撃ちには出来ないし、あの広さならヘリも着陸できる。そこで待機だ」
「お前は?」
「上だ。これは取引だ。僕が人質たちを助ける。お前がメリーを助ける。僕はお前たちとは違う。1人だって犠牲にしない、全員助けて見せる!!だからお前もヒナを絶対に助けるんだ!!」

その言葉を聞いてシドウは自然と嬉しくなった。
自分や自分たちを迫害するWAXAに対しての怒りとは裏腹に彩斗の心の強さは変わっていなかった。
そして嫌っていてもメリーを助けるためとはいえ、自分を頼ってくれたことに。
苦しんでいるメリーを抱え、スターダストから奪われた銃を拾い上げる。

「よし...カウント3で行こう」
「3...2...1...GO!」

スターダストはそのカウントとともに扉を開けた。
そしてシドウが飛び出し、銃を向け、ホールを見渡した。
しかしその銃口に対して帰ってきたのは殺気を帯びた視線だった。

「...WAXAも警察も税金泥棒だね...指揮官も無能なら兵隊も無能過ぎる」

スターダストはその光景に思わず裏声にすることも忘れ、呆れ果てた。

「侵害だな、一緒にするな...次の仕分けで仲良く予算削減は避けられんだろうが...」

シドウもその光景に驚きを隠せなかった。
上の階に向かったはずのWAXAと警察の隊員がホールに落下、かすり傷で済んだ隊員たちも今、まさにジャミンガーの大群に殺されかかっている。
正直、スターダストもここまで多くの敵が潜んでいたとは全く想定外だった。
ウイングブレードを構え、シドウの前に立とうとする。
しかしシドウはスターダストを腕で静止し、首を横に振り、左腕にトランサーを装着すると一歩前に出た。

「行け、ここはオレが」
「お前...まさか」

「アシッド!」
『ハイ』

シドウはトランスカードを取り出すと、トランサーにリードした。
スターダストはここ数日で何度も自分が行っているのと同じ行為を見て、驚きを隠せない。

Trans Code 001

トランサーがスタンバイ状態になると、ロック調の待機音が流れ始め、シドウの体の随所には彩斗と同じように回路図のような模様が浮き上がり、リンパから目の下までが赤いラインが走る。
そしてシドウは右手で空中に円を書き、それを切り裂くようなポーズを取った。

『トランスコード001!!アシッド・エース!!!』

その掛け声とともにシドウは赤い渦に包まれ、姿を変えた。
鷹のような白いヘルメットバイザー、肩や背中にWAXAのロゴの入った翼のような刀と盾、黒のスーツに白いブーツ、グローブが装備され、それぞれに赤いラインが入っている。
スターダストと似ている部分が多く、まるでモデルになったのではないかと思える程の姿、そして迫り来る鷹のような圧倒的な力を見て取れる電波人間だった。

「お前は...」
「アシッド・エース...」

シドウの変身したアシッド・エースはメリーを抱え、左手にスターダストと同型のウイングブレードを構え、一番手前にいたジャミンガーを一瞬で斬り裂いた。

「正義の味方だよ!!」

ジャミンガーたちは口をぽかんと開け、顔を見合わせた。
アシッド・エースは自分で正義の味方を自称した。
普通に見れば間抜けかカッコつけのどちからだ。
だが一瞬で1人を片付けてしまった驚異的な速さと強さはそれを自称するには十分過ぎた。
恐ろしさで一瞬反応が遅れた。
しかしそれを振り切るために彼らに出来たのは声を上げることだった。

「カッコつけてんじゃねぇぞ!!!」
「このマヌケがぁ!!!」

「急げ!!人質を助けるんだろ!?」

スターダストはアシッド・エースのセリフを聞くまでも無く、グングニルの銃口を上に向け、シャンデリアに狙いを定めると引き金を引いた。
それと同時にアシッド・エースもメリーを抱えたままホールから廊下に入り、玄関とは逆方向へと走る。
全く別の道を進みながらも2人の目的だけは共通し、互いに敵対しながらも互いの能力だけは認め合う、変わった信頼関係で崩された計画は再び動き始めた。

「うっ!」

スターダストは体を引っ張られ、一気に4階まで到達する。
そこはまさに戦場だった。
警察の特殊部隊が数人倒れ、銃創が壁のあらゆる場所に開いていた。
そして現在進行形で銃撃の音と人質の生徒たちの悲鳴が響いている。

「マズイ...」

スターダストは焦る心を抑えながら、全力で走り出した。
















リサとマヤ、笹塚の3人は本部から才葉芸能学園へ向かっていた。
正直、本部で作業しようにもネットワークが使えなければ、最新のデータや状況が分からない。
無線機などインターネット回線が使えなくても通信可能な手段はあるが、学校から半径10キロ近くが電波妨害されている。
妨害電波の外に連絡用の基地にしており、最後の定時連絡によると17時に突入するということだ。
この作戦の意図はすなわち人質を見捨てることに他ならない。

「おい!笹塚!!運転下手過ぎだろ!?」
「仕方ないじゃないすか!?だって半年前に女の子目的で合宿に行ってそれ以来、ペーバーなんすよ!」
「はぁ!?ふざけんなよ!お前!」
「運転してみれば分かりますよ!!この車、WAXAのやつですけど、こすったりしたら間違いなく始末書ってプレッシャーと戦いながら運転するのってかなり辛いんですよ!!」

正直、笹塚は技術力があってもまともな公務員という点では疑問符のつく人間だった。
その時の試験が偶然よかったか、あまりにも他の人間が悪すぎたかのどちらかで採用されてしまったタイプだと誰もが思っていた。
これまでも分析官としては優秀でも、人間としては難有りとしか表しようの無い部分が多かった。
報告書が小学生の作文以下のものしか書けない、上司にはため口、未成年時代から飲酒、喫煙、無免許運転など輝かしいキャリアを持っていた。
これまでもいわゆる減点に当たるようなことを繰り返しすぎて、もし今度、始末書を書くようなことがあれば、減給や謹慎、最悪な場合、停職にもなりかねない。
笹塚はいわゆるチャラ男でいきがっているタイプだが、メンタル面ではノミの心臓、器の小さい人間だった。

「笹塚さんは落ち着いてブルブル震えないで運転してください。マヤちゃんはさっきの続きを」

「おっ、おう。ちょっと気になることがあった。ヨイリーのばあちゃんの件だ。正直、さっきまでの高垣と少年の件はこれ以上のことは分からなかった。特に少年の方はまるで何かに隠されてるかのように真っ白だったよ」
「うん」
「これは完全に偶然だった。例のダウンしたシステムの定期健診の記録からデンサンシティのI.P.C本社に行った時、WAXAの人間だと分かるやそこにいた科学者のおっちゃんに声を掛けられたんだ」
「ええ」
「どうやらヨイリーのばあちゃんの昔の同僚だったんだ。ヨイリーのばあちゃんはWAXAに来る前は科学省にいたんだが、数年前までI.P.Cと共同で何かを研究していた。で、そのおっちゃんが言うには、ばあちゃんがプロジェクト解散の時、何かのデータを持ち出したらしい」
「何かのデータ?」
「何日か前にそのデータが送信されたという連絡がばあちゃんから入って、ばあちゃんは今必死にその行方を探してるらしいと...」
「それって私たちが送信先を突き止めろって言われた...」

リサは気づく。
ヨイリーは何かを隠している。
自分のPCからデータが送信された先で事件が起こり、何か心当たりがあるというのに口を閉ざす。
それは何か隠さなくてはならない事情があるからだ。
それがこの研究だったとしたら、全て辻褄が合う。

「間違いないな。ここまで話したら、おっちゃんはそれ以上のことを言わなかった。多分、私がばあちゃんからなんかの遣いを頼まれたと思ってたみたいでここまで喋ったが、私が何の情報も知らない別件でやってきた人間だと知って黙り込んじまった」
「そのデータが送信された先で殺人事件が勃発、不意に未知の電波人間が現れて争った。その次の夜に同じ電波人間がまた他の電波人間と争い、現場のビルごと吹き飛んだ...間違いなく人に軽々と言えるような研究じゃなかったんでしょうね」
「あぁ。だがこれだけじゃ弱い。なんせ相手が業界じゃ権威と崇められてる、ヨイリー博士殿ではな。見た目はぶっちゃけ普通の老いぼればあちゃんだが、中身は天才だし、現実に天才は健在だ」
「別にヨイリー博士は悪人じゃないのは分かってるけど...きっとこの事件の裏で動いている何か...それをきっと知ってる」

リサとマヤはこの事件において暗躍する何かの力があるのは気づいていた。
もちろんシドウも気づいている。
Valkyrieが犯罪を助長し、WAXAが追うという正義VS悪の二大勢力構造の中に第三の勢力が潜んでいると。
敵なのか味方なのか分からないが、それがこの事件の鍵を握っているのだけは間違いなかった。

「ヨイリーのばあさんなんか年金でもアップしてやれば口開くんじゃねぇすか?」

「テメェは黙って運転に専念しろ!!始末書怖がってるだけのチキン野郎がよ!!」
「そうですよ!14歳年下の私たちと階級が同じって段階でちょっとは危機感持ってください!!」

「ちょ...それは御二人が特殊なだけで...」

笹塚は11才のお子様2人組の猛攻撃を背中に浴びながら、自分の無力さを痛感した。
正直、言われていることがもっとも過ぎて言い返すことも出来ずに泣きたい気分だった。
しかしここで途中停車することも出来ず、3人の乗った『HONDA・ヴェゼル』は高速道路を80km/hを維持したまま走り続けた。
 
 

 
後書き
シドウとスターダスト=彩斗の協定でした!
シドウは原作でもディーラーを裏切った人間で、ゲーム版ではクインティア、ジャック、ジョーカーくらいにしか煙たがられていませんでしたが、実際はディーラーの人間全員が彼を嫌っているはずです。
そしてそれは同じくディーラーの子である彩斗も同じです。
しかし同じ組織にいたからこそ彩斗はシドウという人間の能力の高さを知っています!
本来なら「テメェの顔なんざ見たくもなかったよ!!」とキレたいのは山々でしょうか...

それにディーラーを裏切ったとはいえ、いい人間であり敵でありながら信頼できる人間であるということもクインティアとジャックは知っています。
そしてシドウ自身も彩斗がロックマンになっていたということに驚きながら、指揮官とは馬が合わないということ、そして彩斗が信頼できる人間だということ、お互い敵でありながら目的が一緒ということ、彩斗の出すプランが現段階ではベストだとを分かった上で協力するに至ります。

今回はシドウ初変身ということで、変身シーンは彩斗の時はトランサーの装着された左手を右肩のあたりに持ってきて、それを思いっきり左に伸ばすシンプルなものでしたが、シドウは円を書いて斬るという何だか仮面○イダーみたいですが個性的なものを意識しました。
やはり流星は変身して戦うタイプのロックマン、つまりライダーや戦隊と同じ変身ヒーローのジャンルに入ると思いましてw
スバルも変身の時、ゲームでは空高く手を伸ばしていました。
彩斗はそれを左にしたバージョン?のつもりでした。
あと数話前の彩斗の変身の時と同じくシドウにも体中に回路図のような模様が入ってから変身というのは人間と電波体が融合するときに、人間の体の方は準備OKだよ!っていうサインが欲しいなとか勝手に思ってつけただけの要素なんですが...吉と出てくるのか凶と出てくるのか...
もし意見があったら教えてくださいw

そしてリサ・マヤの双子はマヤの得てきた情報を元に勝手に推理を進めますww
ヨイリーから頼まれた仕事をこなすうちに今回の事件との繋がりに気づいてしまい、証拠も特になく、忘れかけて、Valkyrieについて調べていたら偶然の手がかりを掴んでしまうというついている2人組ですw
この2人と比べるために大人だけどチャラい本作のダメな大人代表の笹塚さんを出しましたが、この2人が何で小学生同等の年齢で学校にも行かずに諜報機関で働くのか?
それについてのエピソードもいつか...


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