ドリトル先生と伊予のカワウソ
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第六幕その六
「ですから」
「わかった、ではそこはな」
「僕に任せてくれますか」
「うむ、わしは言った通りにする」
長老さんは先生に確かな声で答えました。
「それではここはな」
「僕にですね」
「お任せしよう」
「有り難うございます、それでは」
「うむ、ではな」
長老さんは先生に笑顔で答えました。
「お願いする」
「それでは」
「うむ、しかしな」
「しかしとは」
「先生は動じないのう」
今度はこんなことをお話する先生でした。
「わし等にもな」
「変化にもですか」
「わし等は人を殺めたり傷つけたりはせぬ」
このことは絶対にというのです。
「そんなことはな」
「そうしたことはですね」
「うむ、せぬ」
間違っても、というのです。
「そうしたことはな。しかしじゃ」
「化かすことは大好きだよ」
「そうしたことはね」
他の狸達も先生に言ってきます。
「昔からね」
「僕達の楽しむだよ」
「それも最高のね」
「左様、化かすことはわし等の生きがいじゃ」
長老さんもまさにそうだと言います。
「じゃからわし等を警戒する人間も多いが」
「先生は違うね」
「物凄く気さくだよ」
「普通に接してくれてるね」
「化かされるんじゃないかって気を張っていなくて」
「落ち着いてるね」
「そこが違うのう」
長老さんは先生のそうしたところに感嘆さえ感じていました、そのことを言葉にも出してそうしてお話するのでした。
「わし等に警戒はせぬのか」
「いや、化かすのなら」
「そのことはか」
「イギリスの妖精も同じですから」
先生はご自身のお国のことから長老さんに答えました。
「ですから」
「お国のか」
「はい、ですから」
それでだというのです。
「日本の狸さんや狐さんも同じだと思いまして」
「それでなのじゃな」
「はい、それにです」
「それに?」
「長老さん達は僕達を化かすつもりはありませんよね」
穏やかな笑顔で、です。先生は長老さんにこう言いました。
「そうですよね」
「うむ、ない」
その通りだとです、長老さんも答えます。
「先生達はな」
「そのことが何となくですが感じられたので」
「だからか」
「はい、僕も普通にです」
接しているというのです、警戒せずに。
「そうさせてもらっています」
「成程のう、実はな」
「実は?」
「わし等は化かす相手は選ぶ」
例え化かすにしても、というのです。
「悪人は化かす」
「悪い人はですか」
「懲らしめる為にもな」
「そうそう、悪い奴にはね」
「そうしないとね」
駄目だとです、狸さん達も言います。
「つけあがるだけだから」
「ちょっと化かして懲らしめないとね」
「だから悪い奴には沼にお風呂だって言って入れたりね」
「お饅頭だと言って馬のうんこを食べさせたりとか」
「そうしたことは悪い奴相手にだよ」
「そうしてきているよ」
「左様、軽い悪戯で化かすことは確かにあるが」
それでもだとです、長老さんはまた言いました。
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