万華鏡
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最終話 芝生の上でその五
「絶対いけるって思ったら」
「こけたりね」
「それが常だからさ」
「オープン戦調子いいけれどね」
「若手のピッチャーがいいよな」
「ドラフトで獲得した選手もね」
「それ見たら期待出来るかな」
今年も、というのだった。
「だったらいいな」
「うん、私も不安だけれど」
それでもだと言う琴乃だった。
「今年は今年でね」
「期待していいか」
「そうしよう、ファンだしね」
「だよな、まあ勝っても負けても」
確かに勝っているに越したことはない、しかしというのだ。
「楽しめるしな、阪神は」
「そうしたチームだしね」
「それじゃあな」
ここまで話してだ、そして美優はメンバーを見回した。見れば皆もう衣装を完全に着ていた。それは美優もだ。
それを見届けてからだ、笑顔でこいメンバーに言った。
「よし、あたし達の番になったらな」
「いよいよね」
「演奏ね」
自分達の番が来ることを笑顔で意識してだった、そのうえで。
五人はまずは自分達の番を待った、お互いに飴を舐めジュースおやお茶を飲みながら。
そして自分達の番になりステージに出る、そこで。
琴乃がだ、ステージからまずは四人に声をかけた。
「それじゃあね」
「うん、演奏前にね」
「卒業ライブだから」
四人も琴乃の言葉に笑顔で応える、そして。
美優がドラムの場所からだ、メンバーに言った。
「せーのでな」
「うん、せーので」
「一言ね」
四人も息を合わせる、美優はその彼女達を確認して。
そのせーの、という言葉を出した。そのうえで五人全員で言った。
「三年生の皆さんご卒業おめでとうございます」
「今まで有り難うございました!」
「これからの人生に幸あらんことを!」
「お疲れ様でした!」
「これからも頑張って下さい!」
五人全員でこう言ってからだった、演奏に入った。
演奏の曲は五人オリジナルの曲もあった、それを卒業生及び共にいる在学生達に演奏してだった。そうして。
その演奏が無事終わってからだ、五人はまた深々と頭を下げてだった。
「またお会いしましょう!」
「卒業してからも!」
こう卒業生達に言ってだった、ステージを後にした。
そうしてだ、更衣室に戻ってだった。
五人共ほっと胸を撫で下ろしそれで言う言葉は。
「終わったね」
「ええ、これでね」
「今年最後のライブも」
「先輩達への贈りものもね」
「無事にね」
失敗もなく終えられたことにだ、五人は笑顔になって言っていた。そして。
まただ、里香が飴を出して四人に言った。
「終わったからね」
「あっ、また飴ね」
「それね」
「うん、舐めよう」
こう言うのだった。
「またね」
「そうね、ほっとしたし」
「そうした時にも飴よ」
「何か里香ちゃん本当に飴好きになったね」
琴乃は笑って里香に返した。
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