雲は遠くて
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6章 信也のマンション (その2)
信也のマンションは、清閑な住宅地にあって、
3階の1番端で、駐車場も駐輪場やバイク置場もあった。
清原美樹と、小川真央は、
ふたりとも、ロングのボリューム・スカートに、
ブラウスやTシャツを重ね着したりして、
秋向けの女性雑誌に載っていそうな優雅な雰囲気だった。
ドアを開けた信也は、そんなふたりを前に笑顔で、いまさっき、
いったように、また、「よォ!」といった。
「深まりゆく秋って感じの、ロングスカートで、
おふたりさん、なかなか、色っぽいじゃん」
そんな自分の言葉に、照れて、
信也は声を立てて、笑ってしまう。
「ありがとう」と美樹はいってほほえむ。
「ありがとう。わたしはミニスカートで来ようかと思った」
と真央はいい、信也と目を合わせて、わらった。
「ヒイェー、もし、ふたりとも、超ミニスカートなんかだったら、
おれは、目のやり場に、困るし」
三人は、また、わらった。
美樹の目のきわの、あわいブルーのアイシャドウ。
真央のほおのオレンジ系のチーク。
信也は、ふたりが精いっぱいの、よく似合う、かわいい、
おしゃれをしていることを、瞬間に、感じた。
美樹は身長が158だから、真央は160くらいなのかな、
そんなことも、一瞬のうちに、信也の頭を過った。
「まあまあ、早く、入ってください。おれの新居っす」
「おじゃましまーす」と、同じことを、
ほとんど、いっしょに、美樹と真央はいう。
「テレビ・モニター付きなんて、女性にも安心ね」と、真央。
玄関を入ると、まあたらしい、ふわふわした芝生の
感触の、楕円のグリーンのフロアマットが
敷いてある。
玄関の右側には、白いシューズボックスがあり、
靴を脱いであがると、玄関フロアの右隣には、
トイレがある。
玄関フロアの、正面のドアは開いていて、
その向こうは、9.5畳のダイニングがある。
ダイニングには、買ったばかりらしいテーブルと、
心地よさそうな背もたれのついた椅子が、
4つ置いてある。
美樹と真央は、さっきまで、ふたりでお茶をしていた、
池の上駅前の、スリーコン・カフェで買ってきた、
特製ピザトーストとかを、テーブルにひろげた。
「しんちゃんのご注文の、ドッグ・ハムチーズセットも、
おいしそう」と美樹。
「お、ありがとう。いま、おれ、コーヒーでもいれるから」と信也。
「わあ、こっちはキッチンなのね。今度来たときには、
わたしたちで、何か料理つくってあげなければね」と真央。
「うん」と美樹はうなずいて、美樹と真央は、
システム・キッチンのある台所へ入った。
システム・キッチンは、ダイニングの北側の
引き戸越しにある。
そのシステム・キッチンの前にある窓は、
北側の外の通路に面している。
ダイニングの西側には、
洗面所とバスルームが独立してあった。
ダイニングの南側には、
6.5畳の洋間が2つあった。その洋間の南側には、
掃出しの窓があって、外はベランダとなっていて、
洗濯ものも干せた。
≪つづく≫
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