ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第29話 お茶会
「「「先程は大変申し訳ありませんでした」」」
と、うちのおバカ3人は言ってそれぞれ頭を下げた。もちろん龍巳はグレイフィアさんに、黒姉と白音はミラというライザーの眷属さんに。まあ殺すような攻撃をしようとしてたから当然だよね。
ちなみに私が部屋に入る前にどういう攻撃をしようとしてたのか再現させたら驚いた。見た目的にはオーラを手に纏っているようにしか見えないけど、長年一緒に修行してきた私には分かる。あれはヤバイ。龍巳はもし攻撃を外して地面に当てようものならこの学校が消し飛ぶほどの魔力を凝縮してたし、黒姉と白音の纏っていたのはミラという眷属さん程度の実力では一瞬で命を刈り取ってしまうような類の仙術だった。一体何を考えてるのかと思ったよ。
ちなみにこの時これらがどういったものか、周りの人達には説明せずに殺しにかかってるとだけ言っておいた。さすがに詳しい内容を教えるとショックが大きすぎる気がしたからね。多分行うであろうレーティングゲームにも影響が出ちゃいそうだし。ただ、グレイフィアさんだけはどんな攻撃だったか見て察したみたい。無表情が若干引きつってたし。
で、それを確認した私はちょっといつも以上にブチギレちゃった。イッセーが理不尽に害されそうになって思わずやっちゃったってのは分からなくないけど、それでもこれはやりすぎだったから。そもそも、彼女たちには以前大切な約束をさせたのよ。はぐれ悪魔みたいなどうしようもない場合を除いてなるべく殺しはしないようにしようって。だからこの間の堕天使の件だって私たちは一応誰も殺さなかったんだし。なのにはっきり敵対しているわけでもないのに殺しにかかるのはいかがなものかと。しかも相手は元凶のライザーではなく命令されただけの眷属と止めようとしたメイドさん。ここまで来るとこちらのほうが圧倒的に悪いわよね。
というわけで盛大に怒った結果黒姉は魂が抜かれたような状態に、龍巳と白音は盛大に大泣きという部屋の中の人全員がドン引きする状況になっちゃった。でもまあ悪い事した人にはお仕置きが必要だからしょうがないよね。
で、3人が謝れるようになるまでの約1時間、オカ研メンバーが3人をあやしている間に私が何をしていたかというと……もう一度ライザーに説教をしていた。いやまあ当然でしょ? さっきは食べ物を粗末にしたことで怒ったけど、まだ理不尽に攻撃しようとしたことに対しては怒ってないし。だから、この程度で怒ってるようでは器が小さいだとか、魔王輩出のグレモリー家に入ることがどういうことか分かっているのかとか、そもそも結婚するという自覚があるのかとか、そのままの態度ではグレモリー家にとって害悪にしかならないとか、最後には強制的に追い出されるだろうとか、グレモリー家のみならずフェニックス家の名前まで落とすことになるとか、そういったことを1時間ほどかけてみっちり説教してあげた。グレイフィアさんが止めに入らないことをいいことにそりゃもうみっちりと。
この時最初私とライザーは立った状態で向き合ってたんだけど、最初はそのせいもあってこちらの話に耳を傾けようともしなかったし、こちらを見下したような目でしか見て来なかった。だけどそういう態度をとるごとに腰の七天七刀を鳴らすと次第に話を聞くようになって、だんだん腰が下がっていき、最後には私の足元に正座してた。うん、自主的に反省を示すっていいことだよね。どうやらライザーも私の言いたいことが分かってくれたようだしお姉さんうれしいよ。
で、今ライザーがどうしてるかというともう限界とばかりにソファーにぐったりと四肢を投げ出して突っ伏しちゃってる。そんなに疲れたのかな? いつもうちの娘達にするよりは軽い説教だったはずなんだけど。……まあ貴族のボンボンだし甘やかされて育ったんだろうから、怒られる経験なんてそうなかったのかな?
で、今どうしてるかというと全員同じテーブルについてお茶会してたりします。お茶といっても紅茶ではなく緑茶だし、お茶請けは焼き鳥なんだけどね。……うん、自分が原因とはいえこれはなかなかカオスな状況よね。この状況に対する皆の対応も様々。緊張してる人もいるし戸惑ってる人もいる。中には
「あ、この焼き鳥美味しい」
なんて言って食べてる人もいれば我先にとバクバク食べた後おかわりをする子までいる。そんな中龍巳と白音は私の膝の上に座って鼻をすすりつつ焼き鳥を頬張ってたりする。……この怒った後甘えてくるのはどうにかならないかしら? いつものことだけどこの娘たちももう高校生なんだし姉離れして欲しいんだけどな。周りの視線も若干生温かい気がする。
で、そんな中私はグレイフィアさんに今までの経緯を聞いていた。
「で、レーティングゲームの結果で結婚か婚約破棄を決めると」
「はい」
「ゲーム開催時期はいつですか?」
「当初の予定としては10日後を予定しておりました。お嬢様はまだゲームが未経験なため準備が必要だろうとの配慮です」
「まあ当然ですね。いいんじゃないでしょうか? ……あと」
「何か?」
「お互い何を賭けているかについて詳しく教えてくれます?」
「はい、ライザー様が勝利した場合即結婚となります。逆にお嬢様が勝利した場合この婚約は破棄となります」
「……その条件はあまりにも不公平ではないでしょうか?」
「……と、言いますと?」
「そもそも部長が大学を卒業するまでは好きにさせるはずであったと聞いています。なのにこのような強硬な手段で結婚を進めるというのはいささか義に反しているのでは? そもそもこういった事態を予想してライザー様を相手に選んだんですよね? なにせフェニックス、ゲームをすれば負ける可能性はかなり低いですからね。約束を破った上このようなハメ手、いささかフェアではないのではないですか?」
「……ではあなたはどのようにすべきとお思いですか?」
「賭け金の上載せです」
「か、火織?」
部長が訝しげにこちらを見てきた。大丈夫ですよ部長。変なことはしませんから。
「……それはどのようなものでしょうか?」
「まず部長が勝った場合、婚約破棄はもちろんのこと今後グレモリー家は部長に対し結婚のことで一切の口出しは禁ずること。約束を破ったのならその程度のペナルティーはあってしかるべきかと」
「ではその逆は?」
「結婚については口出ししませんがその結婚の前に……ライザー様にはグレモリー家に入るに当たっての調kもとい教育を受けて頂きます。その教育を受けて頂いたのちに結婚ということで」
そう言った途端、バンッとテーブルを叩いてライザーが立ち上がった。
「巫山戯るな! 何故俺がそんなk「ライザー様? お食事中ですよ?」……くっ」
私が注意するとライザーは嫌々ながらも素直に席についてくれた。聞き分けのいい子は好きですよ?
「で、どうでしょうグレイフィアさん」
「……1つ条件がございます。その教育を施す方にあなたを指名しても?」
「構いませんけど……私でいいんですか?」
「是非ともお願いいたします」
「でも私、一般常識のことはともかくグレモリー家独自のしきたりなんかは知らないんですけど」
「そこは私が補佐に入らせて頂きます」
「……まあそういうことであれば引き受けます」
「ありがとうございます。ではそのような条件でこの度のゲームを執り行わせて頂きます。双方、よろしいですね」
「……ああ」
「……ええ」
そう決まった瞬間ライザーは頭を抱えちゃった。どうしたんだろう、悪い条件じゃないと思うんだけどな。なんせライザーが勝てば部長を手に入れるだけじゃなく真人間になれるんだから。一方の部長は微妙な顔をしてるわね。まあいろいろ言いましたけど勝てばいいんですよ勝てば。だからそんな顔をしないで下さい。
「では旦那様方には私からそのようにお伝えしておきます」
「ああ頼む。俺達はもう帰るぞ」
そう言ってライザーは目の前の出された物をちゃんと全部口に入れると眷属を連れ帰っていった。なんだ、ちゃんとマナーを守ろうと思えば守れるんじゃない。ちゃんと一般常識くらいは知ってるってことかな? じゃあ教育内容は私が見ていなくてもちゃんとそういったマナーを守るようにするだけで済みそうね。……まあこっちが負けてそういう自体になることは万に1つもないと思うけど。
……ところで魔法陣で転移する直前チラッと私のことを見ていったのはなんだったんだろう?
「火織」
「何ですか部長?」
「まあその……いろいろと言いたいことがあるけれど、とりあえずありがとう。当初より随分とマシな条件になったわ。それに勝てばもう結婚について家に何も言われなくなるというのは私では引き出せなかった破格の条件よ」
「いえいえ、同じ女性としてちょっとばかり今回のことは許せなかっただけですから。それよりも部長、ゲームまで10日もあるんですからしっかり準備しましょう。負ければどのみち結婚は免れませんよ」
「ええそうね。明日からはしっかりゲームに向けて準備しましょう。皆も、私のわがままに付きあわせて悪いのだけれど、よろしくお願いするわ」
そう言って部長は部の皆に頭を下げた。
「頭を上げるにゃん、部長」
「そうですわ、私たちは誰一人嫌々協力なんてしていませんわ」
「そうですよ部長! それに好きでもない奴と結婚なんて絶対間違ってます! 勝ちましょう!」
「みんな……」
うん、皆盛り上がってるわね。士気も上場、この分なら一致団結してゲームに望めそうね。……あ、そうだ。
「あの、グレイフィアさん」
「なんでしょうか? 火織様」
「1つお願いが……」
あの後解散し、いつも通り帰宅、イッセーの家で晩御飯を食べた後私達姉妹は家に帰ってきた。今はお風呂が沸くのを待ちつつ全員でリビングでまったり中。例によって龍巳と白音は私にひっついて離れてくれないわ。
「ねえ火織」
「どうしたの黒姉?」
「なんでライザー側の条件にあんなの付け加えたにゃ?」
「ああ、1つはああ言えば教育なんて受けたくないライザーは勝利することに躊躇するかな? なんて思って。まあちょっとした嫌がらせ的な遊び心よ。で、もうひとつはあんなのと結婚するんじゃ部長があまりにも不憫だと思って」
「にゃるほど」
「でも火織姉様、その心配はいらないと思います」
「そう、我らいる。ゲーム、すぐ勝利する」
まあそうよね。あの位の相手なら多分手こずることもなく勝てるでしょうね。っていうか龍巳がいる時点で負けるなんて選択肢はないんだけど。でも……
「ねえみんな、1つ考えがあるんだけど」
「「「?」」」
「今回のゲーム、私達が力を出すのは最後の最後まで控えておかない?」
「「「!?」」」
その言葉に3人とも驚愕した表情でこちらを見てきた。まあその反応は予想してたけど。
「それは……どうしてですか?」
「ほら、レーティングゲームって確かに危険ではあるけどリタイア転送があったりと安全にも気が使われてるじゃない? だったらイッセーに手っ取り早く実戦経験積ませるにはいいかなって? それに部長たちもこれから赤龍帝に関わっていくのなら強くなってもらわないと。だから部長を守りつつも攻撃には手を抜いて、他に勝つ手段がなくなったら私達で一気に終わらせることにしない?」
「にゃるほどにゃ、確かに一理あるにゃ」
「我、賛成」
「私もです……けど出来ればお兄ちゃんには危険な目にあってほしくないです」
「まあ分からなくはないけど……そのかわりイッセーのかっこいい姿が見れるかもよ?」
それを聞いた瞬間白音はとても嬉しそうな表情をしたんだけど黒姉と龍巳は微妙な表情をした。
「フェニックスが相手、それ難しいかも」
「右に同じ。今のイッセーじゃ残念だけど見せ場はほとんど無さそうにゃ」
「ええそうね。だから……前々から話してた例のアレ、用意しとこうと思うのよ」
その言葉に3人は驚いた後……黒い笑みを浮かべた。
「例のアレって……例のアレのことかにゃ?」
「そう、例のアレのことよ」
「例のアレ?」
「ええ、例のアレ」
「例のアレですか」
「例のアレよ」
その後私たちは異口同音で
「「「「楽しくなってきた!」」」」
と言いつつ私たちは揃って黒い笑みを浮かべるのであった。
☆
「報告は以上です」
「ありがとうグレイフィア。リアスはなかなか愉快な眷属を持ったようだね。特にリアスの騎士はなかなか頭も切れて頼もしそうじゃないか」
「はい、……ですが」
「ん? 何かあるのかい?」
「彼女の使い魔のことなのですが……」
「……ああ、確か義理の妹で、龍だったかな? リアスからは報告を受けているよ。何の龍かは教えてもらえないそうだけどね」
「はい、その件なのですが……どうにもあれはかなり危険な存在かと。気配が人間とほぼ変わらないにもかかわらず……力の底が私には見えませんでした」
「……それは本当かい? グレイフィアでも底が見えないほどの力を持った龍。……まさか、いやそんなはずはないと思うが」
「サーゼクス様?」
「ああいや、なんでもない。とりあえずゲームの時には私も注意深く見ておこう。グレイフィアも注意しておいてくれ」
「かしこまりました」
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