魔法薬を好きなように
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第4話 勘違いならうれしいなっと
俺のおしりからは、先が三角で真っ黒いしっぽがゆれていたかもしれない。そう思いつつモンモランシーへ
「上級貴族の未婚女性にとって、もっと興味をひく魔法薬を紹介しましょうかぁ?」
ちょっと、悩んでいるモンモランシーだ。もともとは、ギーシュに二股をかけられていたことから、無意識に気をそらせるのに、香水や魔法薬の実験に注意をむけるつもりだった。それが、アルコール量が少ないとはいえ、ワインを飲んだ酔いの手伝いもあってか、ジャックに顔をもどして、
「どんなもの?」
「女性の身体の特定の部分を、男女間の関係になる前に戻せる魔法薬ですよ」
「……そんなの、聞いたことないわよ」
「そうでしょうねぇ。まぁ、発想の転換なのですが、発毛の魔法薬の研究からできた副産物なんですよ」
「えっ? なんで髪の毛と関係するの?」
疑問に思うのももっともだよな。
「2種類の魔法薬を段階を踏んで使うもので、1種類目の魔法薬で頭皮を若返らせて、2種類目の魔法薬で発毛させる……っていうつもりだったけど、なぜか1種類目の魔法薬では髪の毛が短くなって、2種類目の魔法薬でその毛が長くなるという育毛剤になってしまったんだよね」
「そうなのぉ」
「まあ、最初から人で実験を行うわけにいかないから、動物実験をくりかえしていたんだけど、そのうちに、なーんか思いついて、おこなってみたら、膜の再生薬として使えることがわかったんだよ」
「あら」
感心しているモンモランシ―だが、実際は逆で、城内のメイドと遊ぶのは良いけれど、出て行ったメイドのうち、俺の興味をひくメイドが生娘じゃなければ、当然自領で噂になるわけで、それはさすがにまずい。なので、開発してみた薬なんだよなぁ。
ただし、開発に口実は必要だから、それが発毛の魔法薬だったわけで、モンモランシ―に使った口実も、親とかに使っていたものなんだよなぁ。
「けれど、これには副作用があってねぇ、2種類目の薬を使うと、使った場所がかゆいらしいんだよ。なので、もう1種類として、睡眠薬も使うことにするんだ」
まあ、かさぶたなんかがかゆいのと同じような現象だとは思うのだが、実際のところよくはわからない。
「あら、かゆみ止め薬は?」
「効果がないんだよ。なぜかわからないけどね」
麻酔薬でもいいんだが、部分麻酔ってないから、作りやすい睡眠薬を俺は使用している。そのあたりはモンモランシ―も理解しているのだろう。
「それで、人に試したことは?」
「2人だな。相手の素性はいえないけどね」
って、実家のメイドと、数カ月つきあっていた女子貴族だったが、女子帰属は見た目だけで、性格が悪かったので、わかれる際にだまってつかったのがあったなぁ。とてもまわりには言えないが。
さて、ここからが本題だ。
「それでこの薬を必要としそうな人間として、3年生のうち、避妊薬を三回目以降で買いにこなくなった女子生徒を、相手にするのが良いかな。特に冬休みが終わってからね」
まあ、男女間の関係になったのはよいが、わかれちゃったってやつだな。しかも3年生で次の相手がみつからないまま卒業って、そのまますっとぼけて結婚するのもいるらしいが、それだけで離婚……結婚がされていなかったという状態にすることが、男性貴族側はできるが、女性貴族側は表向き離婚とはいわれないが、離婚として知れ渡るから、次の結婚の条件が悪くなる。
モンモランシーもここまですっとんだ話になるとは、思っていなかったのだろう。俺もここまで話す気はなかったが、ついつい調子にのってしまったようだ。
「それって、今、きめなくても良いわよね」
「そうだね」
「じゃぁ、今日は帰ってちょうだい」
「わかりました」
俺は部屋へ戻る途中に、昨日今日と、身体を動かしていないことに気が付いたが、すぐに必要とすることもなかろうと思い、そのまま寝ることにした。
翌日は、朝食前から授業の終わりまではモンモランシ―とほとんど一緒にいたがって、さすがにトイレにはついていかないわな。
教室ではルイズが使い魔に水の秘薬を使った、という噂が流れている。水の秘薬は高価だから、普通は平民に使わないもんだけど、メイジであるギーシュに勝ったからか?
そのあたりはよくわからないが、ちょっとだけ、気にとめておくか。
授業の後、夕食までは、モンモランシ―の部屋で魔法や薬の実験といいたいところだが、まずは実験部屋をつくることにした。ガラスで囲った部屋になるが、硬化の魔法で壊れにくくできる。あとは、この部屋の中用の脱臭用の魔法薬をつくればよいのだろうが、あいにくと、モンモランシ―の手持ちの薬草には、それに応用できる薬草が存在しないので、今日はそっちには手をだしていない。
脱臭用の魔法薬があること自体はモンモランシ―も知っているが、それを作れるのはトライアングル以上のメイジだから、ラインであるモンモランシ―では作れなかったってところだ。
それで、香水の方に力をそそいでいたんだろうけどなぁ。
夕食までは一緒だが、夕食後は俺にとって自由時間ということになった。明日は虚無の曜日だが、いつもの時間通りとのことで、それから首都トリスタニアに向かうことになっている。
だから、今日はこの時間を有効活用として、軍杖のサバキの訓練だけはおこなっておくか。魔法は訓練時にいつもつかうわけではないので、それぞれのランクにあった呪文もどきを使うが、人によっては、多少フレーズの長いものを使っている。たとえば、俺だとはやり歌なんかう使ったりしている。精神力のたまる速度が遅い俺は、なおさら魔法を使うのに気をつけていたからなぁ。今日はガラスの部屋を錬金で作った上に、硬化の魔法も使用しているから、精神力は2~3日分ぐらいつかったことになるってぐらいかな。こればかりは、経験で判断するしかないが、ガラスの錬金なんて久々だから、どれくらい消費しているか、はっきりとはわからないからなぁ。
翌朝は朝食後のあとに、モンモランシ―が作った香水を、トリスタニアまで運ぶ役割が最初だ。半ダースに箱詰めしているが、自分で確認しながら入れていた。合計で2ダースだな。
俺はそれを魔法学園で借りた馬で大事に運ぶだけなのだが、香水の瓶が割れないように運ぶ必要もある。そのために馬をそれほど早く走らせることはできない。本当にのんびりとトリスタニアに向かうので、普通なら3時間のところが4時間近くかかるそうだ。その間、モンモランシ―の話相手もつとめるのだが、教室で、女子生徒同士の話の中でわからなかったことを聞いたりして、暇をつぶしていた。
首都トリスタニアにつくと、ブルドンネ街の大通りにある化粧品屋まで、手提げ袋に入っている香水の瓶が入っている箱を持っていった。2ダースで10エキューを受け取っていたようだが、先週はこれなかったので、2週後も2ダースでよいらしい。たまに変動するらしいのだが、だいたいは2週ごとに2ダースで、月20エキューか。小遣いとしては悪い稼ぎでないが、封建貴族の娘の小遣いとしては、それほど多くはないなぁ……っと、思ったが、軍人の封建貴族だと、領地を借金経営となるなんてきいているが、水の名門と呼ばれているモンモランシ家って、どっちのタイプだ?
そう疑問を持ち始めたところで、最初の話で「水竜よりはまし」っていってたのは、水竜が食べる食費とか考えると、貴族が一人普通に魔法学院へ通うより高くつくはずだ。ましてや俺は勉学で行っているわけではないので、学費は納める必要もない分は安くなっていると、思われる。なんか、もしこの予想が本当なら、モンモランシ家で一時的に衛兵をしたとしても、給料安いって気がしてくるぞ。なんか、今更ながら貧乏くじを引いている気がしてきた。封建貴族って見栄っ張りだから、親に後でモンモランシ家の実態を調べてもらおうかと思いつつ、昼は、カッフェで昼食をとった。初めてはいってみたが、純粋な男性向けというよりも、女性も入りやすい感じの飲食店といった感じの店だなぁ。モンモランシーの懐具合が心配になって、彼女が頼んだものよりも少々安めで量が多そうなものを注文してみた。いや、俺、家についていないので、一文無しだしなぁ。
昼食後、モンシャラン街にある親の家へ向かうが、魔法衛士隊の宿舎もわりかし近い。時間的に魔法衛士隊の知っている隊員と会う可能性もあるが、幸いにして誰にも合わずに家に入ることができた。
家でまずでむかえてくれたのはメイドだが、俺の部屋へ直接行く前に客間へと通された。客用のソファにモンモランシーは案内されて、俺は家用の下座の席にとメイドよりこっそりとすすめられた。父がいるはずだから、俺がこの席についたのであろう。
父がきたので、まずは俺が
「父のボリス・ド・アミアン」
父が軽く会釈をしたので、
「彼女がミス・モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ」
モンモランシーも軽く会釈をして、
「ミスタ・アミアン。まずは、お招きいただきありがとうございます」
「ミス・モンモランシ。我が息子が、貴女のような美しい方の使い魔とあったのも、何かの縁でしょう。不肖な息子ですが、末永くよろしくお願いいたします」
そのあとは、父とモンモランシーが簡単ながらくだらない世間話をしたあとに、俺の実験室をみせるということで、モンモランシーを俺がつかっている部屋の前へとつれていった。
「この部屋が、俺の使っていた実験室だ。水の名門であるモンモランシ家にはかなわないだろうが、魔法学院でも話したように水系統の実験だけじゃないから、驚くなよ」
「大丈夫よ」
そうして、部屋のドアをあけると、いきなり飛び出してきた。カワウソが。俺の使い魔である『エヴァ』だ。いつも実験室でおとなしくしているのだが、数日ぶりだったので、とびだしてきたのだろう。
「ああ、エヴァ悪かったな。モンモランシー。これが俺の使い魔でエヴァと名付けている。今日から、こいつも魔法学院につれていくから」
「かわいいわね。だけど、原則私の部屋にはつれてこないでね」
「ええ。まあ」
「それよりも実験室はどうなっているの?」
「どうぞ、中にお入りください」
俺は実験室のドアをあけたが、部屋の中はカーテンをかけているので暗いので、目が暗さになれるのに時間がかかるため、普通の人は外から内部のことははっきりとわからない。
さて、モンモランシーはどんな反応をするかな?
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