ソードアート・オンラインー神速の剣士
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第二話
現在七十四層の《迷宮区》を出て、夕焼け色に染まった草原を抜け、古樹が立ち並ぶ森を私は歩いている。
早く自室に戻ってお風呂に入りたい、布団にうずくまりたいという気持ちを抑えつつ、足を進める。
少し進むと先ほど考えていた彼の姿を見つける。真っ黒の装備が私とかぶっている《黒の剣士》ことキリトだ。
「ヤッホー、キリト」
と気軽に声をかけようとするとキリトは、私の口に手を当て「シッ」と指を自分の唇に当てた。
コクコクと頷きキリトが指を大きな木の枝陰に向ける。
私はその方向に目を向け、モンスターの名前を見たとたんに出そうになった声を自分の両手で押さえる。
《ラグー・ラビット》
このモンスターからとれるアイテムが最高級食材で、売れば十万コルはするという代物だ。
だがラグー・ラビットの逃げ足の早さはモンスター中最高なので接近戦はほぼ不可能である。
「ブラウ、お前《投剣スキル》どれくらいある」
「穴埋め的に選択してるからそんなに高くない」
「俺も同じようなもんだ」
キリトはもとから期待していなかったという感じて言った。
なんか納得できないなぁ、まぁ我慢するけど。
「じゃあ同時に投げようよ」
「OK」
と私の提案を受け、キリトも右手にピックを構えて投剣スキルの《シングルシュート》のモーションに入る。
「「せーのっ!」」
スキル練度こそ低いものの、鍛えに鍛えた自慢の敏捷度パラメータに補正された右手が一筋の閃光のごとき早さでラビットのいた梢の陰にピックを放つ。
甲高い声とともにポリゴンの破壊音が聞こえた私たちはハイタッチ。
いまさらだがあいさつを再びして、お互いアイテム欄を覗く。
《ラグー・ラビットの肉》
期待していたアイテムは私の新規入手品の一番上にあった。
「あったよ。バッチリ」
私がキリトに言うとキリトは満面の笑みを浮かべた。
「よしっ!じゃあ後はコレをどうするかだな」
話し合った結果、この食材に見合う料理スキルがないため、売って二人で山分けすることになった。
「じゃあ早速エギルんとこに売りに行くか」
「じゃあ転移アイテム使お」
と私は腰の小物入れから高価な瞬間転移アイテムを取り出す。
キリトも普段は緊急の時しか使わない瞬間転移アイテムを取り出した。
今を緊急の場合と自分に言い訳しているのだろう。顔にすぐ出るから会ってすぐの人でもわかる。
そして私たちは同時に青い結晶を握って叫んだ。
「「転移!アルゲード!」」
周りをたくさんの鈴を鳴らすような音色とともに結晶がはかなく砕け散り私たちの体を青い光に包みこむ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
転移が終わり、私たちが今いるのは私とキリトが現在拠点としているアルゲードの街の馴染みの買い取り屋の前だ。
「よし決まった!《ダスクリザードの革》二十枚で五百コル!」
取引が終わったのか、店から大きな声が聞こえる。
「毎度!!また頼むよ兄ちゃん!」
そういうと店から取引相手の槍使いの出てきた。見た目は気の弱そうな槍使いで、おそらくエギルの見た目に萎縮しやられた口だと推測する。やれやれとキリトと顔を見合わせ店の中に入って禿頭の巨漢に背後から私たちは声をかける。
「うっす。相変わらず阿漕な商売してるな」
「ほんとほんと。あとゴリラが店主とかあり得ないよね」
「よぉ、キリトにブラウか。安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね。それとブラウ、誰がゴリラだ誰が」
「ありゃ、聞こえちゃった?」
「ばっちり聞こえたよ。このヤロウ」
「後半の安く提供ってのは疑わしいもんだなぁ」
軽口をたたき笑い合う。
「それより俺たちも買い取り頼むよ」
「二人はお得意さまだしな、あくどい真似はしませんよっ、と……」
そう言って首を伸ばし、私の提示したトレードウインドウを覗き込んだ。
トレードウインドウを見たエギルの目が驚きで丸くなる。
「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。《ラグー・ラビットの肉》か、オレも現物を見るのは初めてだぜ……。キリトにブラウ、おめぇら別に金には困ってねえんだろ?自分達で食おうとは思わんのか?」
「こんな高級食材を扱えるほど料理スキル上げてないよ。この世界の料理ってなんか味気なくてつまんないしさ」
私が少しすねた口調でエギルに言いキリトが続く。
「まぁこんなアイテムを扱えるほどの料理スキルを上げてる奴なんてそうそう・・・・・・」
そこまで言った時、背後からキリトの方をつつきながら声をかけられた。
「キリト君、ブラウ君」
キリトが肩に触れたままの手を素早く掴み「シェフ捕獲」と振り向き言う。
日ごろの行いがいいとこうも幸せは続くものなんだね。
「アスナ、おひさー」
私はアスナに軽く手を上げ挨拶をする。
「本当に久しぶりね、ブラウ君。相変わらずの美人っぷり、それで男の子って言うんだから少し落ち込むかも」
「見た目については勘弁してよ。それにアスナの方が断然可愛いってば。何せこの前のアインクラッド付き合いたい女性ナンバーワンでしょ?」
「ああ、うん。なんか恥ずかしいなぁ」
と毎度おきまりみたいな会話をする。
ていうか、アスナの後ろにいる二人の男の痩せた方がめっちゃキリトを睨んでるんだけど……
キリトが手を離し、睨んでる奴に向かって手をひらひら振りながら言葉を返す。
これだけで剣の柄握りしめるとかもし抱きしめたりしたらどうなるのやら、くわばらくわばら。
「珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」
「ここにはボッタクリのイカツイおっさんしかいないからアスナみたいな可愛い子が来る場所じゃないよ」
二人で悪口を言いエギルの顔がひきつってるが、アスナがと声をかけらただけで顔をだらけさせた。・・・・・・全く、現金だなぁ。
「まぁちょっとね。そう言えば、何よシェフどうこうって?」
アスナが聞いてきたので私が答える前に質問する。
「それを言う前にアスナって今、料理スキルの熟練度どこらへん?」
私の質問にアスナが不敵な笑みを滲ませた。
「聞いて驚きなさい、先週に《完全習得》したわ」
「なぬっ!」
「本当に!?おめでとうアスナ!!」
私たちは同時に驚いた。
キリトはアホかって顔をしてる。
でも料理できる女の子ってポイント高いよね。私もいつか彼女の手料理を食べてみたいななんて。
妄想を無理やり止めてアスナにお願いをすることにした。
「……その腕を見込んで頼みがある」
キリトがアスナに手招きして私がアイテムウインドウを可視モードにして見せる。アスナはアイテム名を一瞥し目を丸くした。
「うわっ!!こ……これ、S級食材!?」
「取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやるk――」
キリトが言い終わる前にアスナの右手がキリトの胸ぐらをぎっしりと掴む。
「は・ん・ぶ・ん!!というかキリト君が何で仕切ってるの?持っているのはブラウ君じゃない」
「見つけたのはキリトで同時に投げた私のピックが偶然当たったから。分け前は半分ってのが私たちのルールなんだ」
アスナの疑問に答え、再びアスナがキリトに詰め寄る。
「それじゃ三分の一でいいわ。それでどう……?」
キリトに比べ若干身長が低いアスナがキリトに上目遣いでのぞくように聞く。
キリトとは少し顔を赤くし
「あ…あぁ、わかった」
と言い次に私に向かってアスナが顔を向ける。(アスナと私は同じくらいの身長である)きれいな瞳で私に訴えるように見つめてくる姿に私も思わず
「うん…それでいいよ」
と肯定した。アスナが左手を握り「やった!」という。
美少女のお願いは特別な力を持っていると私は思った。そして振り向きエギルを見上げて断りの言葉をかける。
「ゴメンね、そんなわけで取引は中止。」
「いや、それはいいけどよ……。なあ、オレたちダチだよな?な?オレにも味見くらい……」
「感想文を八百字以内で書いてきてやるよ」
「私は文章苦手だから言葉で説明してあげる」
私たちの言葉に「そ、そりゃあないだろ!!」というエギルを無視していざ食事と歩きだそうとしたとき、アスナに聞かれた。
「でも、料理はいいけど、どこでするつもりなのよ?」
「「うっ……」」
すっかり忘れてた……。
◇◆◇◆◇◆
結局調理場を提供できない私たちにあきれたアスナが、自室で作ってくれるというので私たちはアスナの後を雛鳥のようにひょこひょことついて行く。
えっ?護衛の二人はどうしたって?彼らはアスナが命令して帰らせました。
キリトを睨んでいた奴が私たちを《ビーター》と知り、なおのこと激しく言ってきたけどそれを聞きアスナが怒ってくれたことに少し嬉しかったことは秘密。
そして再び転移し次にきたのは六十一層の美しい城塞都市兼アスナのホームタウンであるセルムブルグへやってきました。
「うーん、広いし人は少ないし、開放感あるなぁ」
「そだね、アルゲードとは大違い。今の場所は今の場所でいいけどさ、こんなとこに住むのも憧れるよね」
「なら君たちも引っ越せば」
私たちの感想にアスナか言うので私たちは声をそろえて
「「(お)金が圧倒的に足りません」」
と答える。
アスナが少し残念そうな顔をするのを私は見逃さなかった。
「……そりゃそうと、本当に大丈夫なのか?さっきの……」
「…………」
キリトの遠慮気味の質問にアスナが少し黙る。
ついでにさっきのと言うのは護衛を追い払ったことだ。
「……わたし一人の時に何度か嫌な出来事があったのは確かだけど……護衛なんて行き過ぎだわ。要らないって言ったんだけど……ギルドの方針だから、って参謀職たちに押し切られちゃって……。昔は、団長が一人ずつ声を掛けて作った小規模ギルドだったのよ。でも人数がどんどん増えて、メンバーが入れ替わったりして……最強ギルドなんて言われ始めた頃から、なんだかおかしくなっちゃった」
アスナの沈んだ声に私は言葉をおどけた調子で掛ける。
「困ったことがあったら私にいいなよ。親友のためならたとえボス戦だって無視して助けにいくからさ」
私の笑顔と言葉にアスナが微笑み「ありがと」と言った。
「まぁ、本当に来て欲しいのはキリトなんだろうけどね」
とアスナにのみ聞こえるような声で付け足す。
今私すっごい悪そうな顔してるんだろなと自分の顔のことを思ったりする。
「なっ、なななな何でそのことを!!」
「アスナってばわっかりやすいよね。キリトも思ったことすぐ顔に出るしお似合いじゃないの?」
真っ赤にするアスナをからかいつつ後ろで分からないといった顔をしている鈍感少年に呆れるのだった。
ヤレヤレ、アスナ先はとっても長そうだよ。
そんな風にからかったりしてアスナの先導により家に到着。まあ私は一度家に行ったことがあるんだけどさ。
アスナの部屋は目抜き通りから東に折れてすぐのところにある小型のメゾネットの三階だった。
中に入ったことはなかったので何となく腰が引け、躊躇していた(私だって男なんだから少しは意識だってします)のだが、隣で同じようにしてるキリトを見るとなんだか緊張が抜けたということがあった。
閑話休題っと。
結局《ラグー・ラビットの肉》は文字通り煮込み(ラグー)のシチューになった。
五分ほどでできた豪華な料理がおいしすぎて無中で口にかき込む私たち。同じ食材でも私が作るのとアスナが作るのはクオリティが違う!
やがて、きれいに食べ尽くした皿と鍋を前に息をついた。
「ふぅ、こんなにおいしい料理を食べたの初めてだよ」
「同じく」
「もぅ、大げさだなあ」
満たされたおなかを触っているとアスナが苦笑する。
隣でキリトも満足したという顔をしてた。
「……なら、しばらくわたしとコンビ組みなさい。ボス攻略パーティーの編成責任者として、君たちが今どれほど強いのか確かめたいと思ってたとこだし。最近私を軽く見てるようだから、私の実力もちゃんと教えて差し上げたいし。あと今週のラッキーカラー黒だから」
「な、なんだそりゃ!」
「えー!?そんなのボス戦でいくらでも見せるんだからいいじゃん。メンドクサイ」
アスナの言葉に文句を言う私たち。
「……それにお前ギルドはどうするんだよ」
「ウチは別にレベル上げノルマとかないし」
「じゃ、じゃああの護衛の二人は」
「置いてくるし」
キリトが必死に反対材料を出すが、アスナが無問題だとすげなく答える。
その姿を見て私は再びぴーんと来た。
「……ははーん、アスナってばこれを機にキリトとの距離を一気n」
そこまで言うとアスナがものすごい勢いで私に近づいてガシリと掴む。さらにすごい怖い笑顔でボソリと囁いた。
「それ以上いったらどうなると思う」
私は「ナンデモアリマセン」と言ってすぐさま身の危険を回避する。
今アスナの後ろに般若が見えたよ・・・・・・。
「おほん!とにかくわたしとコンビをくむの。わかった!!」
気を取り直して有無をいわさぬ口調でキリトに言う。
キリトも何か感じたのか、おとなしくコクコクと頷き集合時間を言う。
「わ、わかった。じゃあ……明日朝九時、七十四層のゲートで待ってる。ブラウもそれでいいよな」
「イエッサー」
「女性に対して敬礼するならマムが正解な」
「イエスマム!!」
と敬礼をしアスナがふふんと強気な笑みで笑った。
一人暮らしの女性の部屋に遅くまでいるわけにはいかないので、話が終わり一息してすぐにキリトを引っ張りながらアスナの家から出る。またアスナの手料理を食べたいなと思いつつ、私たちは明日に備え帰路につくのであった。
今日はいいこといっぱいだったから気持ちよく眠れた。
そして翌日――――
「うっすブラウ、今日も元気そうだな」
「おはよーキリト、キリトは今日の天気みたいに微妙そうだね」
午前九時
今日の天候は薄曇りだ。私たちは七十四層の主街区ゲート広場にいる。待ち合わせの時間から十分ほどしたか未だにアスナは姿を見せない。
そして転移門内部に青いテレポート光がしてキリトが見ると地上から一メートル空中にアスナが出現しそのまま私たちの方へ突撃し
「きゃああああ!よ、よけて―――!」
と声を出した。
私は素早く横に飛んだが、キリトはそのまま飛んできたモノにガツンと音が出るくらいぶつかりそのままゴロゴロと地面を転がる。
飛んできたのはアスナだった。まあ今は街中だからHPが減ることはないので大丈夫と結論を出しキリトたちに近づく。
するとアスナが自分の胸を守るように腕を交差し
「や、や――――っ!!」
と叫んだ。
私はキリトがナニを……ゲホンゲホン。何をしでかしたか察しキリトに軽蔑の目を向けて睨んだ。
このラッキースケベの主人公体質め。
「えっ?あ!!いやちがっ」
キリトも自分が何をしたのか理解したらしい。
とりあえず私はキリトのところまで行って頭をつかみ少々強引に頭を地面につけさせる。ゴチンと音がしたが無視。私も一緒に頭を下げアスナに挨拶と謝罪をする。
兄弟(のように育ってきた)のしでかした所行は私の責任でもあるのです。
「アスナおはよう、それとキリトがスケベでごめんなさい。後でお仕置きするから許してやってくれない」
「だからわざとじゃ……」
キリトが何か言ってるが無視。アスナは殺気を放っていたが、私の言葉で意識を戻してくれたようだ。
「えっ?あ、うんおはよう。じゃあ今回はブラウ君に免じて許してあげる」
「ありがと」
「わざとじゃないのに……」
私たちが仲直りをして(落ち込みモードのキリトをやっぱり無視)立ち上がるとゲートが再び輝き出す。
それを見たアスナが慌ててキリトの後ろに隠れるようにして身を縮める。
現れたのは昨日みた純白マントに赤の紋章、アスナの所属している血盟騎士団のユニフォームを着込み、装飾過多の金属鎧と両手用剣を装備してキリトを睨んでいた長髪の護衛さんだ。名前は確かク、クラヴィスかな?
近くにいるキリトに確認をとると
「誰だよソレ、クラディールだよクラディール」
と言った。
そうそう確かそんな名前だったね。興味ない人のこと全然覚えれないや。
私たちが話していると私たちを見てこちらに来る。ギリギリと歯を噛み締めたあと、いらいらした調子で口を開いた。
「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!さあ、アスナ様ギルド本部まで戻りましょう」
アスナ様はキツいなぁとか思ってませんよホントに。
ヒステリックな調子を帯びた甲高い声を出しアスナに近づく。だがアスナも相当キレ気味な様子で言い返す。
「嫌よ、今日は活動日じゃないわ!……だいたい、アンタなんで朝から家の前に張り込んでるのよ!?」
「ふふ、どうせこんなこともあろうかと思いまして、私一ヶ月前からずっとセルムブルグで早朝より監視の任務についておりました」
その言葉を聞きつい私は思ってることを口に出してしまった。
「うわっ!!それタチの悪い粘着性のストーカーみたいじゃん!私も経験あるんだよね。朝学校行こうとしたら後ろからこっそり近づいて来ていきなり声かけられるのとか特に気持ち悪いんだよね」
アスナが首をブンブンと音がしそうなくらい強く頷く。
失礼なことを言ってるかもだけど、バッサリ言って
目の前のクラディール(さん付け必要無しと判断)が額に血管を浮き上がらせ、眉間と鼻筋の皺をいっそう深くした。
でもそのうち「アスナ様」が「私のアスナ」になるんでしょ、どう考えても無理です。
「この……!」と怒りを前に出したが、すぐ落ち着きを取り戻す。
そしてつかつかと歩み寄ると無理矢理キリトを押しのけアスナの腕を掴んだ。
「聞き分けのないことをおっしゃらないでください……さぁ、本部に戻りますよ」
強引に連れて行こうとする腕をキリトがすっと掴みクラディールに言う。
「悪いな、お前さんのとこの副団長は、今日は俺たちの貸し切りなんだ。アスナの安全は俺が責任を持つよ。別に今日ボス戦をやろうって訳じゃない。本部にはあんた一人で行ってくれ」
キリトが颯爽とアスナを助けようとする姿は素直に格好良かった。
だがクラディールはその言葉で完全に切れる。
「ふ……ふざけるな!!貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるかぁ!!わ……私は栄光ある血盟騎士団の……」
「あんたよりはマトモに務まるよ」
「だね。なんせ《黒の剣士》と《黒兎》が付いてるんだから」
私たちが言い返した。
「ガキども……そ、そこまででかい口を叩くからには、それを証明する覚悟があるんだろうな……」
クラディールがそう言い終るとキリトの前に半透明のシステムメッセージが浮かぶ。
「……いいのか?ギルドで問題にならないか……?」
「大丈夫。団長には私から報告する」
「キリト、手加減しても何とかなりそうじゃない?」
「な、なめるのも対外に「いやさすがにそんなに弱いと護衛事態務まらないだろ」…」
クラディールの言葉にキリトの言葉が被る。
いやキリトさん、アンタもかなりひどい言い草だから。
キリトが受諾してカウントが始まり、アスナをつれてさっさと離れるとクラディールがアスナになにか言っていたけど無視無視。
ギャラリーも集まり、カウントゼロとともに動いたのはキリト、受け身のフェイントを見せ突進し《ソニックリープ》を放つ。対するクラディールは素直にフェイントに引っかかって《アバランシュ》だ。普通ならキリトの威力負けだが、キリトが攻撃するのは剣に向けてであり直剣の腹部分に綺麗に技をあびせた。クラディールの武器が横腹から折れ光の粒子となる。
キリトの得意技のシステム外スキルで私も絶賛特訓中の技である。これが完成すれば対人戦はすごく楽になるんだろうな。
周りから「すげぇ、今の狙ったのか」などと講評が始まる。キリトがやれやれと言った風にクラディールに言った。
「武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど……もういいんじゃないかな」
「……アイ・リザイン」
というクラディールの宣言後、キリトに近づく。
八つ当たり気味にギャラリーを追い払う中クラディールがキリトを睨んでいる。
「貴様……殺す……絶対に殺すぞ……」
殺すという言葉に本当に一瞬キリトの肩が反応した。
「っ!?アンタ簡単に殺すなんて言うな!!ここで死んだら現実でも死ぬんだよ!あなたは自分の嫉妬や一時の感情で人を殺した時、その人の人生を奪った責任とれるの!!」
「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を持って護衛役を解任。別命あるまでギルド本部にて待機。以上」
私の怒りとアスナの無表情な声に何かぼそぼそと言ったが聞き取れなかった。
大人しく転移結晶で去ったのを見届けアスナが落ち込んだ口調でささやいた。
「……ごめんなさい、嫌なことに巻き込んじゃって」
「いや……俺はいいけど」
「私もね、さて邪魔者もいなくなったしさっさといこ」
私はなるべく笑顔で明るく言った。
「ありがと。じゃあ、今日は前衛よろしく」
「「いや、ちょっと、前衛は普通交代だろう(でしょう)!」」
「前衛に二人要るじゃない」
いやそうですけど……そうじゃなくてですね。
私達に向けられたアスナの笑顔に思わずドキッとした私。誤魔化すように目的の場所へと元気に向かって行くのだった。
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