【完結】剣製の魔法少女戦記
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第六章 正義の在り処編
第百七十五話 『襲撃、暗殺者の名は……』
前書き
更新します。
今回から戦闘に入ります。
そして敵の一人が明らかに……。
それではどうぞー。
最高評議会の判明しているメンバーが収容されている監獄施設。
そこにシホ達は到着して色々と支度をしていた。
この施設の周辺になにかしら反応があったら反応するオートスフィアを数十個設置して暗殺者集団の襲撃に備える。
各自バリアジャケットをすでに纏っていて、融合騎であるアルトリアも青いドレスの上に甲冑を纏い、ネロとオリヴィエのサーヴァント二人も戦闘服(英霊のデフォルトの姿)になる。
施設の人にはシホが説明に当たる。
「いいですか? いいと言うまで施設の中の鍵を開けてはいけませんよ?」
「はい。この施設の警備体制は完璧とまではいきませんが、管理局の精鋭達が作った犯罪者を閉じ込めておく施設ですから抜かりはありません」
「そうですか。それならよいのですが……。では施設周辺の警備は私達にお任せ下さい。襲撃者が来てもしっかりと対応させてもらいます」
「お願いします」
そう言って警備員は帽子のつばを掴みながら挨拶してくる。
それにシホも敬礼で答える。
それからシホ達は外で警備を開始しながら、各自思念通話で話をする。
《……さて、それじゃ作戦を伝えるわ》
《《《はい!》》》
シホの思念通話にみんなが反応を返す。
《もう配置に付いているからわかると思うけど、まず私とネロが東側、なのはとオリヴィエ陛下が西側、ランにレン、アルトリアが南側、ヴィータにスバル、ティアナが北側を警備。
もし何かの反応があったら即座に全員に通信を繋げること。そしてオートスフィアで映像を常時記録すること。最後にみんなの力に頼ることになるわ。ここで今まで鍛えてきた力を発揮するのよ》
《《《了解!》》》
《それと、ロングアーチスタッフが常に待機しているからみんなも気負いせずにね》
そこに、
『私達が監視しとくから後のことは任せとき!』
はやての声が通信で聞こえてくる。
続いて、
『敵影の反応はすぐに察知したら報告しますからお任せ下さい!』
『スカリエッティ事件での戦闘機人やガジェットでの後手に回った経験を活かしてセンサーも強化しましたのでいつでも対応します!』
シャーリーとルキノの頼もしい声が聞こえてきてスターズ、そしてセイバーズの面々はバックアップがちゃんとなされている事に安心し、もし戦闘が起きたら頼りにさせてもらおうと思ったのだった。
それで全員はそれぞれで各自警備を開始するのであった。
その中、ランとレンがプライベート通信でヴィータに話しかけていた。
「ヴィータ副隊長」
『……ん? どうした?』
グラーフアイゼンを肩に担ぎながらヴィータはランの言葉に反応して言葉を返す。
「先ほどの話の続きですが……私達、シホさんの過去を聞きたいと思っています」
「うん。今の僕とラン姉さんがあるのはシホさんのおかげなんです。そうじゃなかったら僕達ももしもの話ですが、復讐者に落ちていたかもしれませんから……」
それでレンは何かを思っているのか、目を瞑っている。
瞑りながら、
「そんな僕達を掬い上げてくれたシホさんには感謝の言葉がいくらあっても足りません。だから、僕とラン姉さんはシホさんの過去を聞いても絶対に拒絶しないつもりです。
シホさんが僕達を受け入れてくれたように、僕達もシホさんを必ず受け入れます」
「うん!」
ランとレンがそう言って力強く握りこぶしを作る。
それを黙って聞いていたヴィータは「ふっ……」と笑みを零して、
『お前等がそこまで覚悟を決めてんなら、あたしはもうなにも言う事はないぜ。
後でシホに相談してみるんだな。あ、でもそん時はフォワード全員集めてだからな。奴らにもシホの過去は伝えとかないといけないしな。
前になのはの過去を語った時、シホだけは語らなかったからいい機会だしな』
「はい! シホさんに絶対聞いてみます!」
「うん! 頑張ろう、ラン姉さん!」
『ククク……』
そんな二人の様子を見てヴィータは小さく笑い、『お前はもう幸せを掴んでるぞ、シホ』と思うのであった。
◆◇―――――――――◇◆
それから警備は何度か交代しながらも継続されて時間は深夜の十二時近くまで迫ってきていた。
「……もうすぐ十二時ね。このまま何事も起こらなければいいけどね」
「そうもいかないようだぞ? 奏者、警戒せよ。なにかが迫ってきている」
「あ、やっぱり……?」
ネロの言葉にシホは緩んでいた意識を即座に警戒態勢に移行する。
そこに同時にロングアーチから報告の声が聞こえてくる。
『ロングアーチからスターズ、そしてセイバーズに通達します! 監獄施設周辺に百を越える敵影の反応をキャッチしました』
『どうやら転移魔法のようで次々と反応が増えてきています!』
シャーリーとルキノの報告にシホは一度頷いて、
「了解! 索敵と生体反応、最終的な敵の数の把握を専念してお願いね!」
『『了解!』』
そしてシホ達の目の前には何十人ものフードを着ている謎の集団がいた。
《なのは! こちらで敵が現れたわ!》
《うん! こっちでも十人くらいの集団が目の前に現れたよ! オリヴィエさんが先行して倒しにかかっているところ!》
《シホ! こちらでも出現を確認しました。交戦に入ります!》
《シホさん! あたし達のところにも十人以上の敵が現れました!》
それぞれの報告が入ってくる中で、
(全方位で攻めてきたか……。本格的に狩りに来たわけか。でも、そう簡単にはいかせないわよ!)
一瞬で思考をまとめてシホはその手にアンリミテッド・エア、ツヴィリングフォルムを展開して構える。
「ネロ! 全員生きたまま制圧するわよ!」
「うむ! 任されよ!」
シホは一瞬で敵の一体に肉薄し右手の剣を振るう。
しかし、敵の一体はシホの攻撃に的確に反応してその手に持つ剣で受け止めてしまった。
それに対してシホは内心(へぇ……)と純粋に驚いて、しかしすぐに気持ちを切り替えて次々と剣戟をぶつけていく。
シホの攻撃を最初は受け止めていたが、シホのギアも上がってきているためにすぐに反応できなくなってきた敵は一旦空中に浮き上がって、その手に換装でもしたのだろう銃が握られている。
そして引き金が引かれて銃口から数発の弾丸が放たれる。
シホもそれをすぐに察して、すべて剣で払い落とす。
ネロも大剣ですべて弾いていた。
「実弾兵器! 殺傷設定の武器か! 全員に通達! 敵は遠慮という言葉を知らないようだわ。各自防御魔法に頼らないで避ける事に専念して!」
『了解!』
全員の声が聞こえてきて、シホは遠慮をする事をなくした。
「………あなた達がそう来るなら私も遠慮はしないわ。いくわよ! 投影開始!!」
そしてシホは剣の群れを投影して空中に浮かび上がらせる。
「全投影連続層写!!」
一気に放たれた剣の群れは複数の敵に的確に足や手などに突き刺さっていく。
そこにシホの背後にネロが飛び降りてきて大剣を構えながらも、
「奏者よ。実体剣を使ってよかったのか……? あくまでも敵は人間なのだろう?」
「いえ、私の解析の目はすぐに見抜いているわ。奴らは……機械の人形よ!」
「むっ! それはまことか!」
それでネロは視線を敵に向ける。
そこにはシホの剣で貫かれながらもお構いなしと言わんばかりに突撃をかましてくる機械兵士がいたのだ。
「ロングアーチ!」
シホが機械兵士に全投影連続層写を連続して射出を繰り返しながらもロングアーチに通信する。
それにシャーリーはすぐに反応を返してくれる。
『わかってます! 今、解析中………解析結果出ました! 監獄施設周辺の敵対反応、そのほとんどが機械兵士です』
「やっぱりね。でも、“ほとんど”……?」
シホが疑問の声を出すとすぐにシャーリーは答えてくれた。
『はい。サーチの結果、一体だけ生体反応が確認できました。それが検出された区画は北側のスターズ2のヴィータさん、スターズ3のスバル、スターズ4のティアナが交戦しているエリアです!』
「ッ! ヴィータ! 通信は聞いたわね?」
『おう!』
「おそらく指揮している奴がいると思うのよ。そいつを決して逃がしちゃダメよ!」
『わかってる! ぜってーふん捕まえる!』
「私達もそれぞれ持ち場の機械兵士を片付けたらすぐに向かうからそれまで三人だけで頑張りなさいね!」
『わかったぜ!』
『了解です!』
『やるだけやってみます!』
三人の返事を聞き、シホも自身の戦闘に神経を集中させるのであった。
◆◇―――――――――◇◆
「スバル! ティアナ! あたしが道を切り開くからお前等二人が指揮している奴に突っ込め!」
「あたし達がですか!?」
「でも、この場で突破力があるのはヴィータ副隊長ですよ!」
ヴィータの提案にスバルは驚き、ティアナはヴィータの方が適任だと言う。
だが、ヴィータはやれやれといった感じにかぶりを振り、
「状況を考えてからものを言え! 確かにあたし達の中で突貫力があるのはあたしだって事はわかってるよ……。
だがな、あたしが行っちまったらお前等がお留守になっちまう。
さっきから見ていたがお前等は機械兵士を一体も倒しきれていねぇだろ? ならあたしが周りの奴らをぶっ倒している間にお前等二人が指揮者を倒すんだ。
これくらいならできるだろ?」
ヴィータの正論の言葉に二人は「ぐぅ」の声も出ず反論できないために渋々だが、しっかりと頷いた。
「よし……。そんじゃ、いくぜ!」
それでヴィータはその手に鉄球を出して、
「くらいやがれ! シュワルベフリーゲン!!」
グラーフアイゼンで鉄球を打ち放ち、それらは次々と機械兵士に直撃していく。
「駆けろ! スバル!!」
「はい! ウイング…ロードッ!!」
道が開けてヴィータの言葉を合図にスバルとティアナの二人はウイングロードを駆けていく。
ヴィータがうまい事直線上の機械兵士をシュワルベフリーゲンで次々と撃墜しているために二人は一切被害に遭わずに指揮者まで一直線で向かう。
『スバル! ティアナ! 解析出たよ! 一番奥の奴が一人人間よ!』
シャーリーの報告に、スバルは笑みを浮かべて感謝の言葉を贈る。
「ありがとうございます! いくよ! リボルバー……シュートッ!」
リボルバーナックルに魔力を集めていき次には青い魔力弾が放たれる。
それは指揮者に向かっていく。
まずは最初の一手。
これが決まれば事を優位に運べる可能性は上がる。
しかし、指揮者はそこで手に双剣型なのだろうデバイスを取り出して、スバルのリボルバーシュートを迎撃した。
右手に持つ黄色い剣、左手に持つ緑の剣、それはシホのツヴィリングフォルムに酷似しているデザインだった。
リボルバーシュートは双剣のたったの一閃で斬り伏せられてしまった。
しかもおかしい事に普通は四散するだろう魔力がまるで消滅したかのように消えてしまった。
しかし、スバルとティアナの二人はその事には気づかずに、
「スバル! あたしが援護射撃と撹乱をするから一発相手にかましてやりなさい!」
「オッケイ、ティア!」
それでスバルはマッハキャリバーで敵対者の周りを何度も移動し続け打ち込むチャンスを窺う。
ティアナはフェイク・シルエットでスバルと自身の分身を生み出し様々な動きをさせながら撹乱させる。
スバルはティアナのフェイク・シルエットの分身に紛れ込み、いざ突撃と機会を計ろうと思っていた矢先に敵対者は一直線にスバルに向かって駆けてくる。
「ッ!?」
「嘘ッ!?」
二人の驚き様は当然だった。
なにせフェイク・シルエットの分身とあわや衝突するかもしれないと普通なら回避しながら動くだろうはずなのに、敵対者は分身を一切気にせずに向かってくるのだ。
すでに何度もスバルの分身と当たっている筈だが、敵対者は衝突の恐怖はないのだろうか?と思わず思ってしまう程にフェイク・シルエットを完全無視している。
「くっ!?(センサーの類でも使っているって言うの!?)」
思わず内心で毒づきながらもティアナは、ならばと、
「それならこれでどうよ!」
ティアナ本人と他の分身のティアナが全員クロスファイアを精製する。
思念通話でスバルに《タイミングは任せるわよ!》と話して、
「受けてみなさい! 虚実入り乱れたあたしのクロスファイアを!」
ティアナの「シュートッ!!」という掛け声と共にクロスファイアの弾丸の嵐が敵対者に殺到する。
これにさすがの敵対者もその場で足を止めて両手の双剣ですべて叩き落とそうと構える。
だが、クロスファイアの後にすぐにスバルが追従し、リボルバーナックルのタービンを回しながら、
「うおおおおおーーーっ! リボルバー・キャノン!!」
クロスファイアを囮にしながらもスバル自慢の打撃魔法であるリボルバー・キャノンが敵対者の顔面に迫る。
それを敵対者はギリギリの角度で避けようとする。
スバルの拳と敵対者の羽織っていたフードが接触しているのか『チリチリッ……』という擦れる音が聞こえてくる。
だが、決定打にならなかったのか敵対者はジャンプして後方に下がる。
だけどその時に敵対者が被っていたフードがスバルのリボルバーナックルのタービンで起きた風に揺られたのだろう、それが後ろに下がりフードの下に隠れていた敵対者の顔があらわになる。
「えっ………?」
一瞬の意識の忘却。
スバルは目の前の光景が脳が理解できていなく拳を振り抜いたまま茫然自失となる。
それは………、
あらわになった敵対者の顔は、肩口まで伸びた黒い髪、整った顔立ちは可愛くて、眼鏡をかけているのか知的な印象を与えてくれるそんな彼女。
しかし、今の彼女の表情は無表情に近く、且つ今すぐにでも泣き出しそうな、そんな儚い印象である。
そしてスバルは彼女の事を知っていた。
つい先日も話の話題に出たスバルとティアナの同期。
「リ、オン………?」
スバルはただ彼女の名前を呟いた。
そう、敵対者の正体は『リオン・ネームレス』。
スバルとティアナの親友、その人だったのだ。
後書き
はい。というわけで空白期以来の登場のリオンさんです。
覚えている人はいるかな、と。
色々と謎もいれましたので次回はスバルとティアナは荒れるかも……。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。
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