【艦これ】くちくズ
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第04話 任務:46センチ三連装砲を撃てぇ!
前書き
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艦これ、こちら鎮守府前第一駐在所
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ここは某国、某県、某市、某港にある、とある鎮守府。
この物語は艦娘と深海棲艦との凄まじいまでの激戦の記録……ではない。
戦闘さえなければ、艦娘達も普通のお年頃な女の子。
今日も提督と艦娘達によるほのぼのとした一日が始まる。
ぽかぽか陽気な昼下がり。
食堂で昼食を食べている雷、電、まるゆ。
「あ、長門さんに陸奥さんなのです」
演習を終えて母港に戻ってきた長門と陸奥は、少し遅めの昼食を食べにきた。
「すっげぇなぁ。あれって呉海軍工廠砲熕部が極秘開発した、世界最大最強の戦艦主砲なんだろ?」
雷は長門と陸奥に搭載されている46センチ三連装砲を眺めている。
「艦船に搭載された世界最大の艦砲としてギネスにのっているのです」
「最大射程は40キロを超えるそうです。ちょっとした日帰り旅行な距離ですね」
雷電ゆの3人は目をきらきらさせて46センチ三連装砲に見入っている。
「私らが搭載できるのは小口径主砲の12.7センチ連装砲だもんなぁ。3.6倍以上もデカいんだぜ。あれは反則だよな、あれは」
「火力なんて13倍もの差があるのです。大口径主砲の本気を見るのです!」
「まるゆは装備スロットが存在しないので、武器とは無縁なんです。うらやましいなー。かっこいいなー」
羨望のまなざしで46センチ三連装砲を見つめる雷電ゆの3人。
そんな憧れの46センチ三連装砲が近づいてくる。
「撃ってみるか?」
いつの間にか目の前に長門がいて、驚きのあまり跳び上がる雷電ゆ。
「ええ!?」
憧れの主砲、46センチ三連装砲を撃ってみるかと聞かれ、目をぎらんぎらんに輝かせる雷電ゆ。
「ええ!?」
ちょ、マジ!? な顔をする陸奥。
「ちょっと! 姉さんったらもう、いきなりそんなエキセントリックなこと言って。そもそも駆逐ちゃんには装備できないでしょ?」
「いーえ! 3人の力を合わせれば可能なのです!」
電は陸奥にずずぃと詰め寄り、迫力のある目で陸奥を見つめる。
ぎんぎらに目を輝かせながら鼻息を荒くしている電は、本気すぎて引いてしまうほどに目が本気である。
他のふたりも目が撃ちたいと言っている。
「ダメよぉ、ダメダメ! 危ないからダぁメぇッ」
陸奥は雷電ゆ以上に迫力のある目力を発揮して、3人を見つめ返す。
そんな陸奥の気持ちを踏みにじるように、長門は雷電ゆを見下ろしながら3人に提案する。
「ここで46砲を撃ったら間宮に殺される。場所を変えよう」
「はーい!」
長門と雷電ゆはさっさと食堂を出て行ってしまう。
ひとりポツンと食堂に取り残される陸奥。
陸奥は頭に大きな怒りマークを出現させ、わなわなと肩を震わせる。
「ダメよぉ、ダメダメ! ダメよぉぉ、ダメダメッ!! ダメったら、ダぁぁぁメぇぇぇッ!!!」
陸奥はぷんすか怒りながら4人を追った。
――――――
――――
――
「ここならいいだろう」
長門と雷電ゆは海に面しているコンテナ置き場までやってきた。
「いいだろう、じゃないわよ!」
少し遅れてぷんぷんな陸奥が追いついてきた。
「姉さん、それに雷電ゆちゃん達、46センチ三連装砲なんて大口径主砲、くちくズな3人には持てないでしょう?」
雷電ゆの3人は長門が装備している46センチ三連装砲を見つめながら、額に汗を垂らす。
「大丈夫なのです! さっきも言いましたが、3人の力を合わせれば可能なのです!」
そう言って雷電ゆの3人は手をつなぎ、そして口を揃えて叫び上げる。
「合体だ!」
「ええ!?」
ちょ、マジ!? な顔をする陸奥。
そんな困惑する陸奥を尻目に、3人は飛び上がってガシーン! ガキーン! と合体する。
「2艦1艇合体! 雷電ゆ!」
3人の背後で“ちゅどーん”という爆発が起こりそうなシチュエーションだが、辺りはシーンとした涼やかな静寂に包まれる。
「……合体? なの? これ?」
陸奥は目を点にして3人を見つめる。
雷電ゆの3人は雷を先頭にして、電は雷の肩を背後から掴み、電の肩をまるゆが掴んでいる。
これはどう見ても、肩を掴む前ならえである。
「見事だ」
長門はうんうんと頷きながら、ぱちぱちと拍手をする。
「なにこれ……」
縦に並んでいる雷電ゆ、それを見て拍手をする長門。
もう何が何だかな状態である。
状況が把握でいない陸奥は口角をひくひくさせながら、ピキッと固まってしまう。
そんな陸奥を尻目に、長門は合体したと言い張る雷電ゆの上に46センチ三連装砲を置いた。
“ずしんッ”
物凄く重い。
あまりにも重くて、雷電ゆの足が地面にめりこみそうになる。
予想以上の重さに目をまんまるにする雷電ゆは、全身をぷるぷるさせながら顔じゅうを汗だらけにしている。
そんな雷電ゆを尻目に、長門はスッと海を指差し、無言のまま撃てと言っている。
「ちょっとぉ! ダメったらダメぇ! そんなことしたら……」
陸奥が言い終えるのを待たずに、雷電ゆは叫び上げる。
「雷電ゆ! 撃っちまぁぁぁぁぁすぅッ!」
“ずどごぉぉぉぉぉぉぉぉんッ!”
物凄い爆音と共に、雷電ゆは後方におもいっきり吹き飛ばされてしまう。
とはいえ、一番前にいた雷と、真中にいた電は、なんとかその場に踏みとどまった。
「ひゃあああああぁぁぁぅんッ」
しかし一番後ろにいたまるゆはもろに46砲の反動を受けてしまい、コンテナ置き場に向かって飛んで行ってしまった。
“どんがらがしゃーん”
まるゆはコンテナ置き場に放り出され、積まれていたコンテナがどんがらと音をたてて崩れてしまう。
「ま、まるゆちゃーんッ!」
陸奥は慌ててコンテナ置き場に向かって駆け出す。
“びゅごおおおぉぉぉんッ………………きらんッ”
そして支えを失った46センチ三連装砲は砲撃の反動で飛んで行ってしまい、そのままお空の星になってしまった。
長門は空を眺めながら、お星様になった46センチ三連装砲を見つめる。
「……飛んだな」
「飛んだなじゃないでしょーッ!」
陸奥は崩れたコンテナを投げ飛ばしながら、長門につっこみを入れる。
「見つけたッ! まるゆちゃんッ!」
まるゆはコンテナの瓦礫の中から逆さまになって発見された。
まるでスケキヨの死姿のような様相のまるゆ。
陸奥はまるゆの足を掴んで、ずぼっと引っこ抜いた。
「かろうじて轟沈しなかったわね」
まるゆはきゅううと目をまわし、大破している。
ちなみに雷と電はその場でへたり込み、やはり目をまわして中破している。
46センチ三連装砲を試射しただけなのに、ズタズタのボロボロな3人。
「あら、あらあら……46センチ三連装砲は反動が凄いから危ないって、言おうとしたのに……」
陸奥は残念な溜息をつきながら、周囲を見渡して困り顔になる。
そして長門は空に向かって涙を流しながら敬礼している。
「姉さん! そんなとこで泣いてないで、手伝ってよ!」
陸奥と長門はボロボロな3人を抱えてドッグに向かった。
――――――
――――
――
「ぶわっかもぉぉぉぉぉぉぉんッ!」
昭和の頑固オヤジのような怒号が司令官室中に響き渡る。
陸奥と長門、そして修復が完了した雷電ゆの3人は、司令官室に呼び出された。
「無断で46センチ三連装砲を試射! その結果、雷電ゆが中破および大破! コンテナ置き場が小破! 46センチ三連装砲を紛失! 何を考えとるんだ、お前たち!」
叱られて当然である。
ごめんなさいで済むような簡単な話ではない。
陸奥はこういう結果になるのがわかっていながらも、長門とくちくズを止められなかったことに責任を感じ、るーっと涙を流しながらお叱りを受けている。
「まったく! 3人が助かったからよかったものの、こんなことで轟沈なんてしたら泣くに泣けないぞ、まったく!」
頭から湯気を上げながら憤慨する提督を尻目に、長門は雷電ゆに向かってグッと親指を立ててみせる。
そして雷電ゆの3人も長門に向かってグッと親指を立てる。
長門と雷電ゆの目がキランッと清々しく輝く。
「ぬぅぅぅぁぁがぁぁぁぁぁとぅぉぉぉぉぉッ! くぅぅぅぅぅちぃぃくぅぅぅぅぅズぅぅぅぉぉぉッッッ! おン前ぇらぁぁぁぁぁぁぁッ!」
提督の怒りが更にヒートアップしてしまい、陸奥は、るーーーーーーっと大量の涙を流してお叱りを受ける。
この日以来、雷電ゆの3人と長門は、なんとなく仲良くなった。
(任務達成?)
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