普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
033 ある日の出来事
SIDE 平賀 才人
「不束者ですが、宜しくお願いします」
「……取り敢えず、お話しようか」
ラ・ヴァリエールから戻って数日のある夜。俺は自室で痛む頭を──蟀谷をぐりぐりと両手の親指で解す。……と云うのも、ルイズがベッドに三つ指をついて頭を下げて来たからだ。恐らく──というよりは確実に、ルイズにこんなアホな事を吹き込んだのはユーノだと当たりをつける。
「……と云うより、ヴァリエール公爵夫人達──カリーヌ様達との口約を忘れたのか?」
「う゛っ! ……それはそうだけど…」
ルイズは図星を突かれたのか、バツが悪そうに言う。……因みにだが、俺とルイズは未だに男女の契りは行っていない。カリーヌ様──認められたのか、そう呼ぶ様に言われた。カリーヌ様に〝学院を卒業するまではお手付き無し〟と言われたからだ。理由としては、恐らくだがルイズがまだ学生だからだろう。
ユーノ? ……〝明るい家族計画さん〟に──所謂〝近藤さん〟に、ユーノとの時はお世話になった。……とは云っても明るい家族計画を使ったのは途中からで──2回戦目からで、最初は生でしたが中ではしてないとだけ言っておく。……だが、このハルケギニアで避妊具の存在などロバ・アル・カリイエ謹製のモノとしか言い訳のしようが──
(あれ? ……別に大丈夫じゃ…。……この辺はカリーヌ様に要相談だな)
「大体、なんでそこまで──」
そこまで言ってその質問が愚問である事に気が付く。
〝大体、なんでそこまで焦るのか〟……そんなのは決まっている。〝サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ包囲網(仮)〟で男女の契りを交わしていないのは最早ルイズだけだ。それはそれは、かなりの焦燥を感じているだろう。
「……俺は…その…ルイズの事は好きだぞ?」
「……ふぇっ?」
(ヤバい! 恥ずかしいっ!)
ルイズが俺のいきなりの告白に気の抜けた声を上げる。顔が赤くなるのを自覚するが、〝これ〟は、俺に好意を寄せてくれるルイズに伝えなくてはならない事なので顔の赤さは気にせず、ルイズの目を見て矢継ぎ早に話す。
「ピンクブロンドの髪が好きだ。鳶色の瞳が好きだ。頑張り屋さんなところが好きだ。ちょっと泣き虫なところが好きだ。地味にバストサイズにコンプレックスを持っているところが好きだ」
嘘偽りの無い、俺から見てルイズの好きなところをつらつらと挙げていく。その内気恥ずかしさも消えて、頬の紅潮も治まっていくのが判った。
「ちょっ!? ~~~~~~っ!? ……っ!?」
「ルイズ」
「……サイト?」
顔をこれでもかと真っ赤にしながらルイズは背けようとする。……俺はそれを許さない。そっぽを向こうとするルイズの頭を両手で固定して俺から目を離せないようにする。
「ルイズが俺を思ってくれている事は知っている。……だから、ルイズが俺の好きなところを聞きたい。……だが、これは俺からの単なる〝お願い〟だから、言う言わないの判断はルイズに任せる」
(下衆だな。俺)
こんな言い回しをすれば、ルイズは断る事が出来ない事を知っているのにこの言い回し。昔──前世よりも思考がめっぽう下衆くなっている事に内心で嘆く。
「ズルい。サイトって、ズルいわ。……そんな風に言われた言うしかないないじゃないの……」
「〝ズルい〟、ね。……わりと自覚しているよ。……でも、そんな俺は嫌いになったか?」
軽く俺に依存し始めているルイズには、この言葉は中々に堪えるだろうという事を承知して言い放つ。
「その言い方はさっきよりズルい。……私がサイトを嫌いになれるはずが無いのに。……私はね、サイトのカッコイイところが好き。サイトの優しいところが好き。サイトの強いところが好き。サイトのちょっとズルいところも好き。……大体こんな感じよ」
俺が少々弄り過ぎた弊害か、ルイズは涙目になりながら俺の好きなところを挙げていく。始めは顔を真っ赤にしながらの涙目であったが、その内に吹っ切れたのか気丈に俺から目を逸らさずに俺の好きなところを挙げていく。
「……ありがとう。……でだ、これで俺達は両思いだったことが証明された訳だ」
「? ……そうね」
ルイズは疑問を付けながら──頬を朱に染めながらも頷く。頬が朱に染まっているのは〝先程の事〟を思い出した気恥ずかしさ故か。
「だからさ、そこまで焦らなくてもいいんじゃないか?」
「でも──きゃっ!? ……サイト?」
ルイズをそなままベッドに押し倒す。
「……怖いんだろ?」
「怖くなんか! ……っ!」
ルイズの顔には少しばかりの〝恐怖〟が在った。……ルイズは自分から近付いて来る分にはそこまでの嫌悪感は表さないが、俺が近付いて行くとやや引き気味になる。……要は、ルイズは軽く男性不信になっているのだ。……俺がルイズに手を出さないのはその事が在るからだ。ヤるなら和姦が良い。
(理由は恐らく──)
「ワルドか」
「っ!」
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。……ルイズの婚約者だった存在で、ルイズ曰く昔は優しくして貰ったらしい。それがいきなりの豹変…トラウマになっていても仕方ないのかもしれない。
「……まぁ、これは時間が解決してくれるだろうから今回はこれで勘弁な」
「サイ──っ!??」
唇同士──では無いが、ルイズの手の甲に軽く触れるだけの簡単なキス。ルイズは一瞬だけ目を──それこそ目一杯に開かせ、驚いた様子を見せた。……が、俺のした事に気が付くと、その内目を閉じて俺の事を受け入れてくれた。
「……ユーノが言っていたわ。……こう云う時は〝こう〟言えば良いのよね? ……〝ヘタレ〟」
「ぐはっ!」
こうして俺はルイズと──ほんの少しだけだけだが、深い仲になれた。……因みに数日後、〝近藤さん〟の試供品を使用方法の簡略図、使用効果の略文をカリーヌ様に送ったところ、カリーヌ様からOKサインが出たのは、ルイズにはまだ内緒である。
(学園を卒業するまで色々と自粛するか)
……ルイズが寝に自室に戻った後にそんな事を考えていると、いつの間にやら朝になっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いきなりだが、俺が使える──“弓矢に選ばれし経験者達(アーチェリーピッキング)”……他者の経験値を奪うスキルで歴代所有者たちの経験から〝使える〟武術は剣術、簡単な槍術、体術──所謂中国拳法と云う塩梅で、使える武術割りと少ない。……それも〝このドライグ〟は歴代の所有者には恵まれなかった様子で、【ハイスクールD×D】で登場した歴代の銘々──エルシャにベルザードは存在しなかった様だ。
……つまり、俺の言いたい事は──
「自分で自分の手札を増やしていくしかないか」
例えば、この前使った“なんちゃってメドローア”。あれは〝気〟だけでやったが、〝魔法力〟と〝気〟の両方でやったらどうなるだろうか?
「やってみれば判るか」
この時俺は、熱のエネルギーとしてのプラスマイナスにしか目がいってなかった。陽と陰──〝魔力(魔法力)〟と〝気〟を混ぜ合わせたらどうなるか、識っていたのに気が付かなかったのだから、相当どうか──主に頭がどうかしていたと思う。
(……ん?)
〝それら〟を混ぜて数秒。漸く違和感に気付く。……まぁ、違和感とは云ってはみても、悪いモノではない。むしろ、良いモノに感じる。
「身体がかなり軽くなった。それに、今なら何でも出来る気がする。……あ゛っ、もしかして“咸卦法”か?」
“咸卦法”……相反し合う〝気〟と〝魔力〟を融合させ身の内と外に纏い、強大な力を得る【魔法先生ネギま!】に登場した高難度技法。究極技法(アルテマ・アート)にその名を列ねていて、上記の呼称以外の別名では“気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)”とも呼ばれている。
流石、究極技法(アルテマ・アート)と呼称されているだけあって、“咸卦法の”恩恵は多岐に渡る。まずは“戦いの歌カントゥス・ベラークス)”や“戦いの旋律(メローディア・ベラークス)”にも有る〝肉体強化〟〝加速〟等の膂力の強化に、〝物理防御〟〝魔法防御〟等の防御力強化。……おまけに、〝耐熱〟〝耐寒〟〝鼓舞〟等の恩恵がある。……先程、何でも出来るような気がしたのは、恐らくは〝鼓舞〟のお蔭か。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE OTHER
「クソッ! 何ですか、あの男は!」
≪神の頭脳≫──ミョズニトニルンは鬼気迫る表情で焦っていた。その理由は至極簡単で、自身が傀儡にしていたオリヴァー・クロムウェル──引いてはレコン・キスタが瞬く間に壊滅的な損害を受けたからだ。……それもたった一人の大立ち回りによって。
更に、レコン・キスタについては当初は5万もの人数が居たが、今では10分の1程度しか存在していない。……壊滅はしていない。だがそれは慰み程度にしかならない。
「サイト・ヒラガッ……!」
ミョズニトニルンのシェフィールド。性別は女。
「ッ……!」
……〝レコン・キスタが潰された〟と報告した時の〝彼〟の楽しそうな声がシェフィールドの頭の中でリフレインされる。ガリアの虚無の使い魔の彼女は、彼女を召喚した〝彼〟に心酔していた。……それ故に、彼女にとって〝彼〟を心底楽しませるサイト・ヒラガの存在は邪魔でしかなかった。
「次の手は──」
彼女はサイト・ヒラガを消す為の策を頭の中で回らす。……サイト・ヒラガ──目の上のたんこぶな存在を排除する為に。
SIDE END
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