問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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乙 ⑭
料理対決が終了し、レティシア率いる三人のメイド組みが脱落して進んでいく。
その先には不気味な屋敷があり、鍵が開いていたのでそこに入っていく。扉の先には・・・
「・・・不気味ですよね、こういう甲冑って・・・」
「一輝はこういうの好きなんじゃねえか?」
十六夜の発言に対して音央と鳴央の二人は無言で頷き、ヤシロは目を輝かせて甲冑へ走っていく。
「こういう甲冑っていいよね~。一個くらい持って帰っても怒られないかな?」
「いや、こんなのどうやって持って帰る気よ・・・」
「う~ん・・・着て?」
「ヤシロちゃんでは、背丈が余っちゃいますよ。」
音央が半分呆れながら、鳴央が微笑ましげに見ながらそうコメントをしている。
そして、ヤシロが甲冑に手を伸ばした瞬間、それがガタリと揺れ、
「あ、やっぱりこれいらないや!」
ヤシロはすぐに、それを破壊した。
それが皮切りになったのか、屋敷の中の甲冑が次々と動き出し、彼らを襲いだす。
だが・・・
「茨姫の檻!」
「奈落落とし!」
それらは全て音央の操る茨にとらえられ、それ自身も動いて次々と甲冑を飲み込んでいく黒い穴、神隠しそのものに放り込まれて行く。
誰かが何かをする暇もなく、甲冑が危害を加える暇もなく、全ての危機を取り除く。一輝とともに行動し、危機に対する対応能力の向上からなる一連の動きだ。
「ふぅ・・・これで全部かしら?」
「はい。この屋敷にある甲冑は全て呑みこめたと思いますよ。」
「・・・素晴らしい手際でございますね。」
ようやく何が起こったのかを理解した黒ウサギが、二人の手際にそう声を漏らした。
珍しいことに問題児三人も頷いているので、この認識に間違いはないだろう。
「いや・・・一輝と一緒にいると、ね。」
「色々と荒事には巻き込まれますから。気がつけば、こういった弱い人がたくさん来た時の対応には慣れてしまいました。」
「一輝さん・・・黒ウサギたちの知らないところで一体どれだけの無茶を・・・」
黒ウサギはそんな感想を漏らすが、問題児たちは、
「全くだぜ。アイツ・・・」
「一輝くんったら、一人でやってしまうんだもの。」
「みずくさいったらないよね。」
「皆さん・・・!」
珍しくまともな問題児組みの感想に、黒ウサギは感動したように顔をあげ、
「「「そんな面白そうなこと、一人でやるなんて!!!」」」
「って、そちらですか!?」
だがしかし、続いた言葉で一気に落とされた。
だが仕方ない、相手は問題児なのだ。
彼らからしてみれば、言ってくれれば手伝うという話ではなく、自分たちも楽しいことに参加させろ!という話なのだ。
そんな話をしていたら、階段を下りてくる足音が聞こえてきた。
そちらを全員が向くと・・・ランタンを持ち、フードで顔が見えなくなっている少女がいた。
「鎧兵殲滅に十数秒・・・いやはや、予想外にもほどがある。それも、たった二人でそれを成してしまうとは。」
その声には少なくない動揺が含まれていたが、それを指摘する人物はここにはいない。
それ以上に、このタイミングでここにあらわれたことの方が重要である。
「このタイミングで出てきたってことは、このゲームの主催者なのか?」
「ん?何をいっとる。自己紹介ならとっくに済ませたじゃろう!」
そう言いながら、その少女はフードをとり・・・
「みんな大好き、ハムーズさんじゃよ!」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「言われてみれば確かに、フードもハムスターの耳っぽかったねっ。」
「いやいやいや!ヤシロさん落ち着き過ぎでしょう!?」
「ワシ、年寄り臭くてもロリじゃないとは一言もいっとらんぞ。」
「いやだからって当然のように登場されてもですね!!」
「そんなに驚くことか?ロリや変身くらい、箱庭ではよくあることだろ。」
「慣れてるーーーーーーーー!!!」
黒ウサギが突っ込み大変そうだが、誰も手伝おうとはしない。
突っ込みは突っ込みキャラに任せる、と言う方針なのだ。
「そう言えば、なぜか女性の魔王ってロリばっかりよね・・・」
「確かに、そうですね・・・少なくとも見た目は幼い人ばかりです。ヤシロちゃんは、本当に幼く感じますけど。」
これまでに出会ったのは、白夜叉にレティシア、ペスト、ヤシロ。ものの見事に幼い見た目ばかりが集まっている。
ここまで来ると、そう言う法則性があるのではないかとかんくぐってしまう位だ。
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「オイオイラシャプさんよ!さっきから防戦一方じゃねえか!それでも神霊かよ!」
「それについては、むしろ貴様が本当に人類なのかを問いたいな!」
ラシャプはそう言いながら、事実防戦一方となっている。
一輝がスレイブと獅子王の二刀流でラシャプに向かい、その攻撃を棍棒でいなし、盾で防ぐ。この一連の動作が先ほどから続いているのだ。
当然ながら、ラシャプも反撃をしないわけではない。
武器で攻撃するだけの隙を一輝が与えないので、他の手段で・・・病魔を放つ事で、一輝を倒そうとしたし、せめて武器を使う暇だけでも作るつもりだった。
彼はヘラクレスとも同一視される軍神。一度でも武器を使い、攻撃を当てさえすればこちらのものだ、と。だがしかし、その目論見は一度足りともうまくいくことはない。
一輝はなんと、ラシャプの病魔さえもギフトで無効化してしまったのだ。
放たれ、それが体に入ったと分かったその瞬間に人間の限界以上に免疫能力を高め、体内に入ったそれを全て殺しつくす。
そして、それと同時進行でスレイブで斬りかかり、逆にその隙を突かれてしまう。
「ひどい言われようだな!そりゃ妖怪の血が混ざってる可能性は否定できないが、ニアリーイコール人間と言えるくらいには人間だ!」
「それでその力はあり得ないだろう!?」
そう言いながら振り上げられた棍棒を、真っ向から獅子王で迎え撃ち、拮抗しているうちにスレイブによって斬りつけられる。
ラシャプはそれを盾で防ぎ、
「あー、それ邪魔だな。ぶっ飛べ!」
次の瞬間には、一輝によって盾を破壊された。
「な・・・!?」
「盾殺し。盾を破壊する技だ!」
ラシャプはそれに茫然としてしまい、これまでにない隙を一輝につかれる形になる。
一輝は開いた胴にスレイブを突き刺し、ラシャプがそれに気を取られた瞬間に棍棒も獅子王で切り落とす。
休む間もなくスレイブを引きぬいて、体ごと回転しながら横一文字を刻み、体の向きが正面に戻った瞬間に縦一文字も刻みこむ。
その中心にはスレイブで突き刺した傷があり、一輝は再度そこにスレイブを・・・獅子王を納刀し、火を宿らせたスレイブを突き刺そうとして、
「・・・降参、かな?」
「・・・うむ、我の負けだ」
どう見ても致命傷の傷を負っているラシャプが正直に負けを認めたので、一輝は火を消してスレイブを納刀。スレイブが人型に戻ったところでラシャプに人の悪い笑顔を向けた。
「んじゃ、全部話してもらえるかな?」
そのセリフは、今回のことが全て仕組まれたことであるということを確信していることがはっきりと分かるものだった。
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